相続で困る人たちを救え!美人税理士が考える、独立税理士の成功術は使命感

必ずしも「ママだけで」育てることが正解だとは思いません(ペイレスイメージズ/アフロ)

初出:「会社を辞めたぼくたちは幸せになったのだろうか」の一部を大幅に加筆して掲載

このところ、第二次、第三次の起業ブームが起きています。個人がサラリーパーソンから独立し、士業やコンサルタント、また個人事業主として食っていくとき、どのような困難が待ち受けているのか。私は一人の独立した人間として、他の先人たちに興味を持ちました。彼らはどのように独立して、食えるにいたったのか。それはきっと起業予備軍にも役立つに違いありません。さきほど、「第三次の起業ブーム」と入力しようとしたら、「大惨事」と変換されました。まさに大惨事にならない起業の秘訣とは。税理士・久野綾子さんにお話を聞きました。

――久野さん、今日はよろしくお願いします。まず、独立のきっかけについてお話しいただけますか。

はい、よろしくお願いします。女性であっても一生仕事を続けられる資格をとろうと中学生の時に決めてから、結婚、出産、大学院進学、税理士資格取得、本の出版……。すべてが人生予定どおりでした。そんな中で訪れた「離婚」という転機です。

そう、私の独立物語は、離婚からスタートします。外資系大手税理士法人から主人とともに独立し、税理士法人の副代表として実務経験を積んできたという自信とは裏腹に、今度は主人が代表ではなく、自分自身が代表を務めなければいけないという責任と、子どもを新しい環境で育てていけるかという不安……。独立時の状況を言葉で表すと、「光が見えそうで見えない暗闇」という表現がぴったりきます。

もちろん、声をかけてくれる会計事務所も幾つかあり、救われる気持ちだったんですが、ほとんどの会計事務所は、「平日9時~18時」勤務でした。相続の仕事に12年携わってきた私としては、「土日祝日、夜間対応」は当たり前です。相続税申告数にこだわる会計事務所や、払ってもいない仮の節税額の何%かを生前対策の報酬として要求する会計事務所では、相続で困る人を救えない!という強い使命感から、安定した収入や地位の勧誘を断り、独立を選択しました。

――独立後、最初の壁について、お聞かせください。

順風満帆とはいえないスタートに気づいた最初の壁は事務所を借りることでした。コピー機とパソコンがあれば自宅でも仕事ができるとはいっても、数年先を見据えたらこのタイミングで事務所を借りるのが賢明と判断し、事務所を探し始めると……。「個人で借りるには保証人が必要です」と言われました。

当たり前ですが、独立したばかりの個人は信用がありません。そこで、新しい選択肢が芽生えました。会社を作って、会社で借りて、私が保証人になろう、と。しかし、「これで、借りられます」と返事が来てからも、一向に進まない賃貸借契約です。やはり、貸主が渋っているということが判明しました。資格をとって、出産育児をしながらもずっと専門的な仕事を続けてきて、本も出版して……。でも、社会的な信頼が低いという現実をつきつけられた瞬間でした。

ただ、本当に私は運がいいのです。最終的には、当初借りる予定だった事務所よりも良い物件が見つかりました。紹介してくれたのは前職で懇意にしていた社長です。主人と私、二人で力を合わせて頑張ってきても、独立した途端に多くの取引先が主人側につく中、結局救われたのは、「人としての信頼関係」でした。

――初仕事はどうだったのですか。

初仕事は、相続税申告のお手伝いをしていた前職から引き継いだお客様でした。兄弟間で考え方が合わず、相続争いになりそうな状況であったのですが、「人の死を相続争いにしたくない」という強い想いのもと、相続争いになると色々な特例が受けられず、相続税の金額が上がってしまうこと等を引き合いに出し、一生懸命伝えました。

その結果、お互いが納得する形で話がまとまり、兄弟両方から感謝されました。独立して初めての仕事は、このお客様からの紹介でした。資格とか地位とかシングルマザーとか表面的なものではなく、一個人としての感謝や信頼が初仕事の受注に繋がりました。

――本当の壁はなんだったのでしょうか。

その後仕事の受注は一つずつ増えていきました。ところが、女性ということだからなのか、自分の確認が甘いからなのか、もらえるべき報酬がもらえなかったり、社員が休みがちになったり、「こんな話ではなかった!」ということの連続でした。仕事には真剣に向き合っていましたが、経営と実務の両立の難しさを痛感しました。

多くのコンサルタントからアドバイスは受けました。ただ、どれだけそのアドバイスが良いものであっても、どれを選び、どれを実践するかは結局自分次第です。減っていく預金残高と今の仕事はあっても先の受注が見えない精神的不安……事業を継続できるかどうか、これが本当の壁でした。

――独立したからこそ得られたものはありますか。

そんな中、相続で一番問題となる「不動産」について全面的に相談にのってもらっていた松浦平憲氏(以下、「松浦氏」という)に経営面についても相談をするようになりました。当時、松浦氏はある大手企業で支店幹部をしていました。私が仕事上で相続税のアドバイスをしていた中の一人でもあります。

松浦氏に経営の相談をした理由は幾つかあります。近々独立を考えて経営について勉強をしていた事もその一つですが、何より大きな理由は、仕事に対する姿勢が私と類似していたからです。相談後、具体的に問題解決に向けて動いてもらいました。報酬の問題、社員の問題、コンサルタントの整理等です。結果、予想以上の成果が得られました。この大きな壁を解決するための行動は、更なるメリットをもたらしました。

相続財産に占める不動産の割合は一番大きいです。そして、その不動産の分け方が原因で多くの相続争いが起こり、社会問題になっている。私は相続税専門の税理士ではありますが、不動産の実務経験がありません。一方、松浦氏の不動産実務歴は約20 年。話し合いの中で、松浦氏を代表取締役とした「不動産と相続の両方の問題が解決できる会社」が誕生します。

不動産屋でもない、建築屋でもない、公平な立場から不動産についてのアドバイスが受けられ、なおかつ、税金についても相談できる数少ない会社。起業=独立する=社長になる、というのも一つの考え方ですが、必ずしもそうではありません。会社の考え方をより多くの人に広めていくには、信頼できる良き協力者が不可欠です。

そして、その協力者の方が経営面、調整力で優れていると判断した時は、形にこだわるべきではありません。数字で図るわけではありませんが、松浦氏の代表就任後、取引先も増え、売上も急激に伸びました。社会問題に一緒に立ち向かうという決断をしてくれた松浦氏には感謝してもしきれません。

独立したからこそいいパートナーと出逢えた、というのは結果論かもしれません。ただ、独立をせず、壁にぶち当たってもいなければ、今の状態はありません。私がパートナーを決めた時の判断基準がある。一つめは、社会性(人の役に立つ)と経済性(儲ける)の考え方が同じであること、二つめは、仕事に対する姿勢や休日の捉え方が同じであること、この二つはしっかりと確認しておきたいと思っています。

そして忘れていけないのは、意見が異なった時どちらの意見を採用するか、ということを明確にしておくこと。共同経営であっても、上下をつけておくことが大切です。

――家族の支えがあってからこそ、仕事ができたのでしょうか。

「お子さんはどうしているの?」

「子どもが小さいのに……」

子育てに専念し、子どもとの時間を最優先に……確かに、これは大切なことであることに違いありませんが、必ずしも「ママだけで」育てることが正解だとは思いません。平日は伯母と同居、週末は両親、妹の助け……そして何より子ども達自身が応援してくれるという特殊環境があるからこそ、仕事が続けられています。

「働くママ」のスタイルを考えたとき、少し角度を変えてみて、独立も選択肢の一つに入れてみてはどうでしょうか。今までの社会人としての経験にママの経験値が加われば、新しい何かが生まれるかもしれません。

――独立を考えている方へ、ぜひメッセージをお願いします。

独立を考える時、どうしても先行してしまうのが、儲かるかどうかということです。もちろんこれは大切ですが、儲けが先行してしまうと、サービス・製品の質、非正規雇用の増加、貧富格差等、色々な場面で歪みを生むし、よき協力者も得られにくいです。

だからこそ、まずは、社会性です。その事業は社会に必要とされているのかどうか、社会の役に立つことか、を考えることが大切です。そして次に独自性です。その事業は自分にしかできない取り組みか。最後に経済性。その事業は利益を生み、雇用を生み、継続的に行うことができる内容か。社会性、独自性、経済性、この順番で考えると、きっと自分が独立しなければいけない理由や使命感が見つかるでしょう。

<プロフィール>

久野綾子(ひさの・あやこ)

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久野綾子税理士事務所 所長税理士

株式会社ローズパートナー 取締役

1979 年生まれ。名古屋大学卒。名古屋大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。税理士法人トーマツを経て、2014 年久野綾子税理士事務所を開業。税理士会、司法書士会での研修講師をはじめ、大手企業での講演多数。第32 回日税研究賞受賞論文。

著書に「相続貧乏になりたくなければ親子でこまめに贈与しましょう」「相続貧乏になりたくなければ親の家を賢く片づけましょう」(アチーブメント出版)がある。

現在、松浦氏とともに@FM(FM愛知)で相続相談コーナーを担当。

http://www.rosepartner.net

初出:「会社を辞めたぼくたちは幸せになったのだろうか」の一部を大幅に加筆して掲載