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『お迎え渋谷くん』で保育士役の田辺桃子。スター俳優をキュンとさせる愛らしさはどう生まれているのか?

斉藤貴志芸能ライター/編集者
カンテレ提供

イケメン俳優が妹のお迎えから保育士に恋をする『お迎え渋谷くん』。京本大我が演じる主人公の渋谷大海をキュンとさせる、青田愛花役が田辺桃子だ。多彩な役になり切るカメレオンぶりには定評があり、この2年で『スイートモラトリアム』、『癒しのお隣さんには秘密がある』など主役やヒロインも相次いでいる。今回のラブコメディで、さらに新境地を開いた裏側を聞いた。

難しい役に挑戦することが楽しくて

――役の振り幅が広い田辺さんですが、自分の中では得意とか入りにくいとか、役柄によってありますか?

田辺 どの作品でも難しいと思うことは必ずありますけど、それに挑戦することが楽しかったりします。今回の『お迎え渋谷くん』でも、コメディ要素がたっぷりあって、自分の新しい可能性と出会えて、楽しいと思うことが多いです。

――今までで、悩みどころが多かった役もありませんでした?

田辺 たくさんあります。最近だと、たとえば『スイートモラトリアム』だったら、(鈴鹿)央士くんが演じた彼氏と元カノとの三角関係がいびつで、他ではあまりない立場でものごとを考えていたり。

――3人で一緒に住むことを提案していました。

田辺 その行動力は理解できるけど、言っていることとやっていることにギャップがあって。彼に「応援しているよ」と言いながら、本当は応援したくない気持ちもある。0か100かでは絶対ないので、今はこっちが何%で、あっちが何%の気持ちなのか。何をどれくらい見せるか。そういうバランスがすごく難しかったです。

――小西桜子さんが演じた元カノが奔放、田辺さんの今カノが清純という構図にはなっていましたが。

田辺 その中でも、清純なだけではないという。アグレッシブなところも、傷つく日もある。そんな狭間で何を言葉にできるのか。常に考えていました。

「大丈夫か?」とツッコまれるのが嬉しいです

――これまで恋愛ものもコメディタッチの作品もありましたが、ラブコメのヒロインはあまりなかったですかね?

田辺 ありましたけど、ここまで純粋に癒されながら、笑えたりホロッと泣けたりする作品は、なかなかなかった気がします。

――自分でもラブコメは好きではあったんですか?

田辺 好きですね。恋愛ものにもいろいろありますけど、個人的には出てくる人がみんな愛おしくて、葛藤やすれ違いがあっても「やさしいな」とほっこりできる作品をよく観ていて。自分でもやりたいと思っていました。

――子どもに蹴られて鼻血を出したり、ホースの水をかぶってびしょ濡れになったりもしています(笑)。

田辺 今までなかったですね(笑)。このキャラクターだからできることを最大限楽しみたいですし、「大丈夫か?」みたいにツッコまれるシーンができたことが嬉しいです。

ふと見られたときにハッとさせられたら

――愛花先生は渋谷くんをキュンとさせますが、本人はキュンとさせようとしているわけではなくて。その辺はどう取り組んでいますか?

田辺 「キュンとさせるぞ!」とは考えず、ふと見られたときにハッとなるシーンをいかに作るか、現場でもいろいろ考えながらやっています。自分が原作を読んだとき、愛花先生のこんなところが好きだなと思った気持ちを、大事にしていて。原作のファンの方もドラマから観る方も、そこは共通してキュンとなるポイントかなと思います。

――田辺さんは愛花先生のどんなところを好きだと?

田辺 すごくいろいろな表情が出るのが、愛くるしいというか。こんなに表情豊かでいられる大人は少ないと思います。1人で勝手にワチャワチャしたり、焦ったりドキドキしても、渋谷さんを前にしたら何の邪心もなく、人として大切に思う姿が一番キュンとしました。

――渋谷くんのほうは、保育園で愛花先生がホースで水を撒いて、子どもたちのために虹を作ってあげる姿にキュンとしていました。

田辺 現場では実際にハッキリと虹ができて、撮影を重ねて仲良くなった子どもたちが喜んでいたのが嬉しくて。何も考えず、ただ自分が楽しんでいました。それがキュンに見えていたらいいなと。

原作に忠実で自分にも似合うような外見に

――原作に合わせてロングヘアを10cm以上切ったとのことで、愛花役の写真を見たときから、かわいいなと思いました。いつもそうだと言えばそうですが、今回ビジュアルからこだわったこともありますか?

田辺 どの作品でも原作に忠実にしたい想いはありつつ、私がやるなら、どうしたら似合うか、衣装さんやメイクさんと一緒に考えました。髪の長さやメイク、エプロン以外の服の着こなしでも、どれだけ魅力的に見えるかを追求するように心掛けています。

――髪のハネ具合まで数センチ単位で作ったり?

田辺 そうですね。保育士は動くことが多いので、たとえば子どもたちと話すためにしゃがんだとき、横顔がきれいに見えたらいいね、とか。マンガだと静止画なのが、映像だとコマ送りで見せられますから。私自身、外見に惹かれて作品にのめり込むことは多いですけど、演じる中でキャラクター性が出るのが素敵だなと。そのサジ加減ですね。愛花先生の愛らしさや天真爛漫さ、一生懸命な姿×田辺桃子、みたいなところで、実写でも面白くできたらいいなと思います。

子どもたちと一緒の場で遊んでいます

――田辺さん自身がキュンとくるのは、どんなときですか?

田辺 たくさんあります。今回の現場だと、渋谷さんの妹の音夢(りずむ)役の(諸林)めいちゃんが本当にかわいくて。最初はちょっと緊張していたのが、最近は「おはー」と言うと「おはよう」と言ってくれたり。劇中で「先生おはよう」と言って走りながら来るシーンがあって、何回も撮っているのに声のボリュームひとつ変えず、遠くから「せんせーい!」と来てくれる姿とか、いつも“りずキュン”しています。

――作品ごとに役をかなり掘り下げるそうですが、今回は保育士について調べたりもしたんですか?

田辺 原作には保育士さんの日々の大変さや苦労も、ていねいに描かれていて。こんなところで頑張っているんだ、ということはいろいろ吸収させてもらいました。

――現場では、園児役の子役さんたちと馴染むために、何かしていたりも?

田辺 リハーサルをしてカメラのセッティングから本番直前まで、基本的に教室にいます。子どもたちとしゃべったり、ちょっと遊んだり、一緒の場に身を置くことは意識的にしてます。

――どんな遊びをしているんですか?

田辺 外だったら走り回ったりはできないから、その場でじゃんけん大会をしたり。教室の中だと、他のシーンを撮っていて座っていないといけないとき、ぬいぐるみがあるのでイスを持ってきて、「ここ座っていいですか?」みたいにお店やさんごっこやご近所さんごっこをしました。

予測できないようなヒューマン作品が好きです

――役の人物が聴いてそうな音楽のプレイリストを作ることもあるとか。愛花についてはどうですか?

田辺 愛花先生はハキハキしていて、子どもと過ごすことが大好きなので、アップテンポでリズミカルで、さわやかに盛り上がる曲だったり。一方で28歳ですから、夜中にもの思いにふけながら帰るときに合う曲も入っているかなと。テイラー・スウィフト、Vaundy、羊文学とかを聴いていると思います。

――田辺さんは映画のフライヤーを集めるのが趣味と聞きます。観る映画も幅広いんですか?

田辺 洋画が多いです。ヒューマン系やアートっぽい質感の作品をよく観ます。『グッド・ウィル・ハンティング』を最近になって観たり、『アメリ』や『キャロル』が好きです。ヨーロッパの映画も観るようになりました。

――フランス映画の『アメリ』だと、独特なキャラクターに惹かれたり?

田辺 それもありますし、こちらが予測できないような生き様が素敵ですね。台詞もちょっと詩的で、比喩が多かったりするけど気持ちは伝えている。直線的でない言葉選びが良いなと思います。

自分を縛っていた鎖が外れて怖さがなくなって

――女優として刺激を受けた作品もありますか?

田辺 あります。ヒューマン作品が好きだからこそ、自分もこういう感情表現をしてみたいと思いながら観ています。『ドラゴン・タトゥーの女』のルーニー・マーラさんは、フラットに見えて感情が爆発する瞬間がたくさんあって。

――『キャロル』にも出演していました。

田辺 やっぱり演じる側も観る側も、予測できないことは楽しいんです。そのためにお芝居をしているところもあって。なので、ルーニー・マーラさんは刺激になりますね。

――田辺さんは子役からのキャリアが15年になりますが、この数年で主役やヒロインが増えてきました。何か努力してきたことが実っている感覚もありますか?

田辺 それはあまりなくて、変わらず継続してきた感じです。ただ、挑戦することが怖くなくなってきました。こういう姿は恥ずかしいとか、羞恥心を持っていたときもありましたけど、それを取っ払ってキャラクターとして楽しむ。普通にやったら恥ずかしい表情も、そのキャラクターなら面白くなると思ったとき、自分を勝手に縛り付けていた鎖が外れました。

――それは、『ゆるキャン△』で再現率の高さが話題になった、メガネにツインテールの大垣千明役の辺りから?

田辺 そうですね。面白がったほうが自分も楽しく感じられたので、その変化はあると思います。

役に責任感を持って最後までまっとうしようと

――監督とかに言われて、演技の指針にしていることがあったりは?

田辺 振り切る、ってことですね。高校生まで演技レッスンを受けていて、そのときの恩師に「感情が溢れたときも自分を止めるな」とよく言われていました。自分を解放することは、今もすごく心掛けています。

――大役が続いている中で、自分の女優としての強みだと思うことは何ですか?

田辺 何だろう? あまりわかりませんけど、キャラクターに対して、責任感を持って演じたいとは思っています。現場に入ってカメラが回って、撮って終わりでなく、お芝居にない世界でもキャラクターは生きていると、リスペクトを持って最後までまっとうする。そういう気持ちはいつも大事にしています。

――どんな役でも?

田辺 変わりません。大きい、小さいに関係なく、そこは貫いて演じています。

自分と掛け離れた役をもっとやりたいです

――今後さらに磨いていきたいことはありますか?

田辺 今まで以上に、私自身と似つかわしくない役や掛け離れたキャラクターを、やらせてもらいたいです。これまでもいろいろな役をいただきましたけど、今回の愛花先生で柔らかいイメージが付いたら、今度は私が渋谷さんみたいなストイックなキャラクターをやってみるとか。このキャラクターを当てられたら、どんなことになるのか。そんな面白さがある役をやってみたいですね。

――さらに売れたい、みたいな野心はないですか?

田辺 まだ自分の中で目標に向かっている途中なので、売れたいというより、そこだけを見ている感じです。

――その目標というのは……。

田辺 内緒です(笑)。作品を観ながら察して、楽しんでもらいたいなと思います。

Profile

田辺桃子(たなべ・ももこ)

1999年8月21日生まれ、神奈川県出身。2019年に『こんな未来は聞いてない!!』でドラマ初主演。主な出演作はドラマ『ゆるキャン△』、『リコカツ』、『受付のジョー』、『スイートモラトリアム』、『癒しのお隣さんには秘密がある』、映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』、『愚鈍の微笑み』など。ドラマ『お迎え渋谷くん』(カンテレ・フジテレビ系)に出演中。映画『先生の白い嘘』が7月5日に公開。『Dito』が2024年に公開予定。

火ドラ★イレブン『お迎え渋谷くん』

カンテレ・フジテレビ系/火曜23:00~

公式HP

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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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