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深夜に移り一発目が「特撮ヒロイン パンチラ史」。『私のバカせまい史』がくだらなさでGP帯より真価発揮

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『私のバカせまい史』公式HPより

 4月の番組改編でゴールデンタイムから深夜枠に移った『私のバカせまい史』(フジテレビ)。その初回が4日に放送された。「誰も調べたことのない“せま~い歴史”を徹底研究し、成果を独自の考察で発表する」という趣旨のバラエティ。研究長としてバカリズムがMCを務めている。

 今回の放送冒頭、研究員の森田哲矢(さらば青春の光)が「プロデューサーには聞かれたくないけど、深夜のほうがいいんじゃないか」と話し、同じくせいや(霜降り明星)が「これが『バカせまい史』の本来の姿」と同調していたが、枠移動して最初のテーマは「特撮ヒロイン パンチラ史」。まさに深夜ならではの、くだらなくも抜群に面白い内容で、ゴールデン時代にもなかったほど楽しめた。

マニアックすぎる視点で大真面目にふざけて

 『私のバカせまい史』は2022年に特番としてスタートし、同年に3回放送された。5月の第2弾はギャラクシー賞の月間賞に選出。この回は「ドロドロ昼ドラ 愛憎グルメ史」でたわしコロッケや財布ステーキなどを紹介したほか、「『犬神家の一族』スケキヨの足史」、「都道府県別 虫歯の数ランキング史」などがテーマ。「マニアックすぎる視点が冴えている。大真面目にふざけている感じがとても良い」と選評された。

 11月からは深夜枠で全6回の期間限定レギュラーとなり、2023年4月から毎週木曜21時に放送されるように。バカリズムにとっては、ゴールデン・プライム帯で初の単独MCとなった。今年2月の「いつからボケられなくなった…クイズ番組 芸人の苦悩史」では、二度目のギャラクシー賞月間賞に選ばれている。

ゴールデン進出もバランスが難しく

 ただ、全体的に視聴率はいまひとつ。ゴールデン進出に当たり、バカリズムは「普通テレビはたくさんの人に見てもらうことをやる場所。でも、その逆を行く番組ですから、かなりの挑戦だと思います」と語っていた。確かに、マニアックさと幅広い層への遡及のバランスは難しいところだっただろう。

 毎回番組の事細かいリサーチ力には驚かされつつ、「マスメディアによる東大生イジり史」、「動物たちの動物園脱走史」、「卵かけご飯の食べ方史」といったテーマは、“せまさ”が中途半端で面白さも微妙に感じられた。1時間枠で毎週2~3本のどれもが当たりとなることも、なかなかハードルが高い。

『私のバカせまい史』公式HPより
『私のバカせまい史』公式HPより

パンチラは『魔女先生』から偶然の現象で?

 そして、この4月から木曜24時25分~という深夜に引っ越し、30分番組に戻った一発目が「特撮ヒロイン パンチラ史」。昨今のGP帯では取り上げにくいテーマで、森田とせいやが「深夜だな~」「今までと全然違う」と笑う。研究長のバカリズムが自らプレゼンした。

 「衣装の関係で発生する偶然の現象だが、その頻度が異常」という特撮パンチラの元祖に挙げたのは、1971年放送の『好き!すき!!魔女先生』。変身ヒロインの草分けで、1話から主人公の月ひかる先生が、小学校の体育の授業でスカートを穿いたまま大車輪をしたという。

『キカイダー01』などでエスカレート

 それから、『人造人間キカイダー』、『トリプルファイター』、『スーパーロボット レッドバロン』などでのパンチラシーンを、イメージイラストやスクリーンショットと共に紹介していく。

 『キカイダー01』ではビジンダー=マリが戦闘中に、キックや側転でパンチラを連発していた。番組中では触れられなかったが、マリを演じたのは後に女性アクションスターの第一人者となる志穂美悦子だ。

 その後、最初から見えやすい衣装で戦うヒロインも増えて、特撮パンチラはエスカレート。1976年の『ザ・カゲスター』のベルスターは、登場からミニスカートが風でめくれ上がり、パンチラどころか丸見え。

 「少年少女向けのコンテンツだから、すべて偶然」と言い張るバカリズムに、森田が「撮り直しはできた」とツッコむも、「芝居が完璧だったから」と譲らないくだりも。パンチラの多い作品は「偶然にも」高視聴率だったとか。

『宇宙刑事シャイダー』のアニーをパンチラクイーンと

 さらに1980年代からはパンチラが「黄金期」に入ったと、1999年までの52番組が記された一覧表が示され、パンチラ回数ランキングも発表。全番組の全話をチェックしたのだろうか。こんなものをよく調べたとおかしくもなるが、1位は『宇宙刑事シャイダー』の167チラで、2位の『超新星フラッシュマン』の79チラに大差を付けてダントツ。1話平均3.4チラとなる。

 キャラクター別でも『シャイダー』のアニーが1人で155チラ。ミニスカートに片膝立ちで銃を構えたり、回し蹴りをするシーンをイラストで見せる。バカリズムはアニーを「パンチラクイーン」と称し、特撮好きだった小学生時代に父親から、『シャイダー』だけは録画を頼まれたとのエピソードも話した。

 アニーを演じた森永奈緒美は当時、千葉真一が創設したJACの新鋭で、激しいアクションを見せながら、アイドル的な風貌で人気を博していた。思春期に入った子どもから父親世代まで、パンチラに胸躍らせていたのは事実。懐かしくもあり、回数の多さを数字で示されると妙に納得できた。

TVerより
TVerより

激減もコンプライアンスのせいではなく?

 バカリズムはパンチラの多様化にも言及し、『地球戦隊ファイブマン』のファイブイエロー=星川レミが、地中に潜った敵怪人をおびき寄せるために、自らパンチラを見せた回も“罠チラ”として紹介された。

 まとめでは、2000年代に入るとヒロインの衣装がパンツなどに変わり、パンチラはほぼ絶滅と語る。だが、理由は厳しくなったコンプライアンスのためとはせず、「パンチラはすべて偶然。昭和も平成も関係ない」と最後まで言い張った。「だからこそ、またパンチラが多発する時代が偶然来ないとも限りません」と締めた。

似つかわしい時間帯でより自由な深掘りを

 とにかく、30分を貫くテーマがパンチラという時点でバカバカしいのを、大真面目に考察するのが素晴らしく面白かった。かつ、ほとんどの男性が特撮ものを観て育ったはずで、ピンポイントに刺さるものもあったと思う。ゴールデンタイムだと「不適切」のそしりを受けたかもしれないが、深夜に薄笑いで楽しむのは多めに見てほしい。

 もともとの特番時代には「芸能人の「家では全裸」発言史」といったテーマもあった。そうしたくだらない題材を“歴史”として過剰に深掘りしていくのが、この番組の醍醐味。深夜の放送になり、より自由に真価を発揮できる気がする。森田の振りの通り、似つかわしいのはこの時間帯だ。

 「特撮ヒロイン パンチラ史」の回はTVerで11日の24時40分まで無料視聴できる。次回はヒコロヒーによる「ヤンキー御用達ファッション史」。他に「古畑任三郎 今泉くんへのパワハラ史」、「Mr.マリックのボツネタ史」といったテーマが発表予定だという。

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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