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アイドル卒業後に見つけた自由と結婚観。高柳明音がSKE48合格から15年で初のソロコンサート

斉藤貴志芸能ライター/編集者
エイベックス・マネジメント提供

SKE48を3年前に卒業し、舞台を中心に女優として活躍中の高柳明音。3月29日でオーディション合格から15周年を迎えた。11月にはグループ時代にもなかった初のソロコンサートを行う。久々のステージへの想いと、これまでのソロ活動を経た32歳の現在地を語ってもらった。

名古屋駅まで1人で行くのは冒険でした

――15年前、SKE48の2期生オーディション最終審査に合格した日のことは、覚えていますか?

高柳 名古屋駅から歩いて会場まで行ったんですけど、私は学校に行くとき以外、電車に乗ることがなくて。名古屋の中心に出掛けるのは、冒険みたいな感じでしたね(笑)。

――当時は高3になる前の春休みですよね?

高柳 そうです。でも、遊ぶといったら、地元の友だちの家。名古屋駅に1人で行くのは「明音は変な人についていっちゃいそうだから、やめなさい」と、同級生に心配されるくらいだったんです(笑)。

――それは小学生の頃の話ではなくて(笑)?

高柳 高校生になっても(笑)。だから、都会に出たことがなくて。確か2次審査で仲良くなった子と待ち合わせて、会場まで行った気がします。

――高校では、どんなタイプだったんですか?

高柳 目立つのは得意でなくて。今もプライベートでは目立ちたくないので、変わっていませんけど、本当に普通の高校生でしたね。

――文化祭で張り切ったりは?

高柳 張り切らないです(笑)。そういう人たちを見て、すごいなと思っていました。

――部活もやってなくて?

高柳 小学校では陸上や音楽をやってましたけど、高校ではやりたい部活がなくて、何も入っていませんでした。

自分がモーニング娘。さんに救われていたので

――青春の思い出みたいなことはないですか?

高柳 特になかったですね。私たちの校舎は女子しかいなくて、友だちと遊んでいるのが楽しかったので。キラキラしたようなことは、学校ではありませんでした。

――でも、アイドルのキラキラした世界に憧れはあって?

高柳 自分がモーニング娘。さんを好きで、アイドルに救われていたんです。キラキラしたいというより、好きだったアイドルに自分もなれないかなと思っていました。

――オーディションのことはテレビで知ったんでしたっけ?

高柳 そうですね。私がオーディションに合格したところもテレビの番組で流れて、学校にバレました。

――歌唱審査では『ハナミズキ』を歌って、審査員だった秋元康先生の顔も知らなかったとか。

高柳 そうなんです。すごくリズムを取って聴いてくださっている方がいるなと思ったら、それが秋元先生でした(笑)。

料理学校に行っても挫折していたかも

――もともとは料理の専門学校に進むつもりだったんですよね?

高柳 趣味も料理しかなかったので。コックになりたいというより、料理を学べば自分でも食べられて、職にも就けるし……というくらいでした。

――オーディションに受かってなかったら、今ごろ自分のお店を持っていたり?

高柳 料理の職に就けずに、違う仕事をしていたかも(笑)。最初は皿洗いしかできないから、そこで挫けそうな気がします。あと、私は腕の力が弱すぎて、今も家でフライパンを振るだけで「痛っ!」と、けんしょう炎になったりするので(笑)。

――フランスに料理修行に行くような勢いでもなかったと。

高柳 私はSKE48に入ってから1人旅が好きになりましたけど、それまでは親にも「1人になったらダメ」と言われていて。高校の友だちにも守られて過保護だったんです。SKE時代に1人行動が楽しくなって、今は海外にも行きたいですけど、当時は留学なんてできませんでした。人って変われるなと思います。

グループで場所を取り合うのはキツくて

――SKE48を卒業して3年になりますが、思い描いていた通りの活動ができてますか?

高柳 楽しくお仕事させてもらってますが、思い描いていた理想とは違いますね。私はめちゃめちゃテレビっ子なんです。家に帰ったら、まずテレビをつけて、寝る前もずっと観ていて、起きたらまたつける……という生活をしていて。だから、テレビに出たい気持ちがずっとあります。去年は地上波のドラマに2本出られましたけど、もっともっと出たいです。

――今は舞台が多くなっていますが、どんな形であれ、この世界で15年続けてきただけでもすごいです。

高柳 本当にそう。初めはこんなふうになるとは、考えてもいませんでした。15年続けて、ソロライブができるなんて、私的にはすごいなと思います。

――グループから1人で活動するようになって、厳しいことはなかったですか?

高柳 自由になれました。SKEのときは、ずっと闘っていましたから。自分との闘いもあるし、メンバーは年の離れた子でもライバル。同じ仕事で場所を取り合うのはキツくて。自分が出たいのに、年齢の関係で出られない苦しさもありました。もちろんSKEは楽しかったけど、選抜でのポジションや売上げのことをずっと言われていて。卒業したら、そういう邪念は解消されて、生きやすくなったんです。今のメンバーに会うと、素直に「かわいいね。頑張ってね」と言えます。

比べたらキリがないので割り切って

――今はより広い世界での闘いがありませんか?

高柳 でも、個人戦なので。SKEのときは個人戦でありながら、団体戦もしないといけなくて、バランスが難しかったんです。今も「あの人はあんなに出ているのに、私は……」というのは、めちゃめちゃあります。だけど、自分もその人ができない仕事をできている。比べたらキリがないと、割り切れるようになりました。

――SKE48時代の高柳さんはファンの方と強い絆がありました。卒業しても離れた人は少ないですか?

高柳 変わらず付いてきてくれる方たちがいます。だけど、アイドル時代のように握手会で追い掛けることもなくなったし、結婚して家庭ができて、足を運べなくなったという方もいらっしゃいます。私もみんなに幸せになってほしいから、「全然いいよ。来られるときに来てね」と言っています。

正解が毎日変わるので必死でした

――もともとテレビ志向だったにせよ、今は舞台のやり甲斐も大きくなっていませんか?

高柳 学びの場ですね。ドラマは練習を重ねるというより、1~2回テストしたら本番で、そのままテレビで流れる世界。舞台は1ヵ月とか稽古して、最初に目指していたものが変わっていく。その違いが面白くて、舞台は舞台で楽しんでやらせてもらっています。

――卒業後の舞台で、特に大きかった作品というと?

高柳 去年のタクフェス『晩餐』(宅間孝行主宰の舞台)ですね。急に出演が決まったこともあるし、それまでと稽古スタイルが全然違っていて、ついていくのに必死でした。

――何がどう違っていたんですか?

高柳 今まではひとつの正解に辿り着こうとする演出家さんが多かったんですけど、宅間さんはこれも正解、あれも正解と、いろいろな可能性を試す方なんです。昨日の正解が今日は違うときもあって、ずっと闘っていました。

――本番に入っても?

高柳 そうです。私は稽古は1週間ちょっとしかしてないので、本番のほうが長くて。役のキャラクターも変わりましたし、喜び方も悲しみ方も間も変わる。「そんなに間はいらない」と言われた日もあれば、「もっと間を取って」と言われた日もあったり。お客さんも観るたびに新鮮だったと思います。

タクフェス『晩餐』より(C)友澤綾乃
タクフェス『晩餐』より(C)友澤綾乃

ヒロイン役が増えて責任感が強くなりました

――役者さんによっては、そういうスタイルが合わないかもしれませんね。

高柳 私は途中から参加して、ハードな現場という噂を聞いて、覚悟していました。自分のためになると思って頑張りました。

――千秋楽には納得のいく演技ができました?

高柳 Wキャストで千秋楽はカーテンコールだけ出させてもらいましたけど、自分の出演日の最後の最後まで、怒られていました(笑)。その本番が終わって、やっと「もう何も言わないから」と。

――ここまで出演作を重ねて、自分の女優としての資質が見えてきたりも?

高柳 客観的に観たことがないので難しいですね。私、出演作のDVDが出ても、観返せないタイプなんです。観ると「なんでこうできなかったんだろう?」と、反省点ばかり目についてしまって。次に活かせることがあるかもしれませんけど、もう終わった作品を引きずって、後悔が渦巻くのはしんどくて。

――ひたすら前を向いていく感じですか。

高柳 グループにいたときは3番手か4番手で、主人公の友だち役とかが多かったのが、今はヒロインや主演が増えてきて、責任感や気持ちの変化は出てきました。観てくれた方に何かを受け取ってもらえる作品にしなければと、強く思うようになりました。

舞台での固定観念を全部覆されました

――4月にも舞台『無垢ども』に出演されます。エイベックスの若手俳優がメインキャストで、高柳さんは支えるポジションになりました。

高柳 今回はそこだなと。自分が最年少に近い舞台もまだ全然あって、舞台が初めてとか演技経験が少ない方たちと共演することは、そんなにありません。それもまた勉強です。そういう人だからできるお芝居は、絶対あるので。

――フレッシュさだったり?

高柳 固定観念がなかったり。私は「客席に背中を向けない」「顔が見えるように動く」というのを、ずっと言われてきたんです。それをタクフェスで全部覆されました。普通に生活していて、背中を向けながらしゃべることはある。右にあるドアを閉めるのに、わざわざ左を向いたりしない。インプットされていたことを「やらないで」と。舞台が初めての役者さんには固定観念がなくて、フラットにお芝居ができるのは強みだと思います。どんな舞台になるか楽しみですね。

――高校生のお話で、高柳さんは校内でカウンセリングをする役。

高柳 生徒の悩みに答えるというより、「まずお互いのことを話そう」という立場の臨床心理士なんです。仲の良い人より、そういう距離感の人のほうが相談しやすいということで。

――役写真ではタバコを指に挟んでいて。

高柳 我が道を行く感じで、生徒のカウンセリング中に「ちょっと吸っていい?」みたいな。そんな学校もないと思いますけど(笑)、私自身はタバコは無理で、初めて演じるような役です。

(C)AOI Pro. Inc.
(C)AOI Pro. Inc.

体力は絶対必要なのでジムに行こうかなと

――現在32歳で、体力的なこととか、昔と違ってきたところもありますか?

高柳 年始に出演した『伊賀の花嫁』という舞台で、モーニング娘。さんの楽曲を盛り込んで、みんなで全力で踊るのが見せ場のひとつでしたけど、1曲だけで結構大変でした(笑)。SKE時代のコンサートでは、35曲とかよくやっていたなと。

――しかも、SKE48は激しいダンスが多い中で。

高柳 そう。あの舞台では殺陣もあって、ちょっとしたものを飛び越えるところで、1回うまく飛べなくて、膝をガッツリ打ったんですね。SKEの頃だったら、すぐ痛みは消えていたのに、しばらく痛くて。私は筋トレとか運動を普段しないので、体力の衰えは感じます。ソロコンサートでは絶対に体力が必要だから、そろそろジムに行ったほうがいいかなと考えているところです。

――食生活には変化はありますか?

高柳 グループのときは実家と東京を行き来していて、お母ちゃんのごはんか外食でラーメンでしたけど、卒業して1人になってからは自分で料理をしています。ダイエットで野菜を多めにしたり、ちょっと安い隣り町のスーパーまで、運動を兼ねて買い出しに行ったり。もともと料理は好きなので、ストレス発散にもなっていて。舞台の稽古でうまくいかなくてワーッとなったとき、家に帰って夜中に作り始めたりもします

――煮込んでいると無になるとか?

高柳 切っているきも、味付けしているときも、煮込んでいるときも、ずっと無というか、おいしく作ることしか考えていません。ある意味、感情はなくて、仕事のことをいったんゼロにできるので、料理は楽しいです。

結婚について考えるのは一度諦めます

――人生観が変わってきたようなところもありますか?

高柳 そんなに大きくは変わっていません。ただ、人生観とは別かもしれませんけど、コロナ禍があって、お仕事をさせてもらえるのが当たり前でなはないと、感じるようになりました。舞台は人がギュッと詰まる場所で、席がひとつ空きの時期もありましたし、「行くのが怖い」という方もたくさんいました。今、舞台に立てることは、本当にありがたいと思っています。

――結婚観はどうですか?

高柳 家庭を持てたらいいな、という思いはありますけど、まだ1人でやりたいこともたくさんあって。仕事もしたいし、いつか海外に短期でも住みたい。そうなると、子どもを育てたりは無理ですよね。もういい年ですけど、考えるのは一度諦めて、とりあえず今年は15周年を頑張ります。

――同世代の大場美奈さんは、SKE48を卒業して、わりとすぐ結婚しました。

高柳 美奈はすぐでしたね。周りでも結婚する人がちょっとずつ増えてますけど、私はまだ仕事をしたいんです。まだ、というか、ずっと? 結婚できるのか……と考え始めると、だんだん落ち込んで、料理をしたくなります(笑)。

まず1人で歌える曲を選別しないと

――11月のコンサートはソロでは初、ステージ自体も久々になりますが、最近は歌にはどう関わっていました?

高柳 毎年の自分のバースデーイベントでは、何曲か歌っていました。コロナ禍でみんなが声を出せる曲は歌えなかったんですけど、去年はAKB48さんの『ハート型ウイルス』や『キャンディー』を入れました。SKEの曲はあえて入れてこなかったんです。15周年でライブをやれたら、歌いたい気持ちがあって。

――では今回、満を持して歌うわけですか?

高柳 卒業した年のバースデーイベントで、(卒業ソロ曲の)『青春の宝石』だけは歌いました。卒業コンサートに行けなかったという方がたくさんいたので。それ以外のSKEの曲はここで披露できたら。でも、1人で『クロス』とかは体力的に無理で(笑)、セトリはこれから考えます。

――卒業後はボイストレーニングをしたり、カラオケに行ったりはしてました?

高柳 ミュージカルにも興味があって、ボイトレはたまに行ってます。カラオケはめっちゃ好きで、昔はしょっちゅう1人で行ってました。近々また行くつもりです。セトリの候補を出すためにも、まず1人で歌えるか、歌えないか選別しないといけなくて。でも、SKEの表題曲はほとんど歌えないんですよね(笑)。『パレオはエメラルド』とか歌割りがブワーッと変わるので。実際に何が歌えるのか、カラオケで確かめたいと思います。

――普通に遊びでカラオケに行くと、どんな曲を歌うんですか?

高柳 48グループの曲はまったく歌いませんけど、他のアイドルさんは歌います。ハロプロさんとかi☆Risとか。若井友希ちゃんと一緒にラジオをやっていて友だちで、i☆Ris自体も好きなので。あとはaikoさん、三浦大知さんのスローで歌える曲、ポケモンの曲や昭和のナツメロも歌います。広瀬香美さんも好きです。

肺活量を付けて踊れるかはそのとき次第

――11月のソロコンサートも、SKE48の曲ありカバーもあり……という感じに?

高柳 カバーも入れます。48グループの「歌唱力No.1決定戦」のおかげで、歌うことがちゃんと好きになりました。それまでダンスと歌で表現していたのが、歌だけで表現する楽しさを知ったんです。だから、スローで聴かせるコーナーも、みんなが明音コールを入れられるコーナーもある形にできたらと考えています。

――踊ったりもするんですか?

高柳 そのときの体力次第ですね(笑)。歌えなくなったら、元も子もないので。去年の『ハート型ウイルス』はスタンドにマイクを立てて、サビだけ踊ったので、それくらいはできるかな。『オキドキ』は歌いながら踊ったら死にますね(笑)。

――基本そんなに踊るわけではなくても、体力は必要そうですか?

高柳 必要だと思います。歌うだけでも絶対に息切れしますし、肺活量が落ちているので。昔からそんなになかったけど、もう1回鍛えないと。プールに行こうかなと思っています。私、走ると脚に筋肉がパンパンに付いちゃうし、ウォーキングだけだと肺活量が付かない。それで泳ぐのがいいかなと。

――音楽を聴くことは、日常でありますか?

高柳 はい。アイドルもめっちゃ聴いていて、今好きなのは超ときめき宣伝部さんやJuice=Juiceさん。自分が歌うというより、毎日同じ映像を観て「かわいい、かわいい」と思って生きています(笑)。

もっと忙しくなれたら幸せです

――今、幸せを感じるのは、どんなときですか?

高柳 自分に自信がないからこそ、私とお仕事をしたいと声を掛けていただけるのは嬉しくて。あとは変わらず、実家のインコと遊んでいるときは幸せですね(笑)。

――そういうささやかな幸せもありつつ。

高柳 たくさん悩んでいますし、苦しいこともありますけど、現状で大きな挫折はないのは幸せなのかな。仕事が生きがい、求めていただけるのが生きる意味、みたいなところはあります。それがなくなると、心の拠りどころを失うのはリスクですけど、もっともっと忙しくなれば、より幸せになれます。SKEのときは忙しさのレベルが今と違っていました。1日10コ取材を受けたり、朝に東京で撮影して夜は名古屋で公演とか、意味がわからないスケジュールだったので(笑)。

――しかも、急に入る仕事もあったんですよね?

高柳 それも全部楽しかったんです。だから、またもっと仕事ができたら、私は幸せ。ファンの方や家族にも喜んでもらえる。それが一番かなと思います。

Profile

高柳明音(たかやなぎ・あかね)

1991年11月29日生まれ、愛知県出身。2009年にSKE48の第2期メンバーオーディションに合格。2021年4月に卒業。主な出演作は舞台『ナナシ2021』、『ホロー荘の殺人』、『幾度の群青に溺れ』、タクフェス『晩餐』、ドラマ『スタジオより愛を込めて』、『17歳の監督』、『秘密を持った少年たち(TVer編)』、『推しが上司になりまして』、映画『まくをおろすな!』など。『高柳明音の生まれてこの方』(ラジオ日本)、『高柳明音・若井友希のやおだがね!』(CBCラジオ)でパーソナリティ。

ACTORS STAND vol.1『無垢ども』

4月17日~21日 赤坂RED/THEATER

公式HP

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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