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性暴力を受けた親友を支える役と先生に恋するヒロインのライバルと。殻を破った川床明日香の21歳の新境地

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)Blue Imagine Film Partners

映画界での性暴力に声を上げる女性たちを描いた映画『ブルーイマジン』が公開される。被害を受けた主人公を支える親友役を演じたのが川床明日香。放送中のドラマ『先生さようなら』ではヒロインの恋敵の役でインパクトを残している。ティーン向けファッション誌のモデルから女優に活動を広げ、清楚な透明感が注目されてきたが、昨年21歳を迎え、殻を破って新境地に挑んだようだ。

信じてもらえたのが自信に繋がりました

――「nicola」でモデルデビューしてから、今年で10年になります。当時は特技に“けん玉”とありました。

川床 今もけん玉は特技に書いています(笑)。家にマイけん玉があるので、たまに遊んでいます。

――専属モデルを卒業してからは女優活動が中心になりましたが、自分の中で大きかった作品というと?

川床 『沈黙のパレード』(『ガリレオ』シリーズ劇場版)は大きかったです。演技をするに当たって、どういうふうに役と向き合えばいいのか、どれだけの時間を費やせばいいのか、学ばせてもらいました。歌手を目指している役だったので歌の練習もしましたし、どんなアプローチをして役について考えていくか、とにかく真剣に取り組んだ作品でした。

――その後の演技の指針になるようなことを、監督から言われたりもしました?

川床 私のことを信じてくださったのが、自信に繋がりました。私も自分を信じてあげようと思えました。

アミューズ提供
アミューズ提供

日常を一生懸命生きることを大事に

――普段から演技力を高めるために、していることはありますか?

川床 「演技のために」と考えていなくても、自然に繋がることはあるかもしれません。プライベートで起きた出来事や、そのときの感情をお芝居に活かせたりするので、日常を一生懸命に生きることを大事にしています。

――映画を観て勉強したりは?

川床 撮影に入る前に、自分の役と繋がりそうな作品があれば、観るようになりました。普段はそんなにたくさん観ているとは言えませんが、好きな作品を定期的に観たりはしていて。

――それはどんな作品ですか?

川床 『レディ・バード』という洋画はよく観ます。高校生の娘と母の話で、初めて観たときに強く刺さって、心に残りました。すごく元気をもらえますし、こういう作品に出演したいなとも思います。

距離があったけど知っておくべき問題と思いました

――『ブルーイマジン』は社会性のある作品で、性暴力を受けた主人公の親友役の話が来たときは、どう思いました?

川床 性暴力の問題は自分があまり触れたことがなくて、距離がある感じがしたので、ちゃんと知るところから始めないといけないと思いました。

――劇中でも、川床さんが演じた佳代が「いろいろ本とか読んでみた」という台詞がありました。

川床 私は本は読んでいませんけど、ネットで#MeToo運動のことを調べました。身近に苦しんでいる人がいるかもしれないので、知っておくべき問題だとわかりましたし、この作品も観た方が考えるきっかけになればいいなと思います。

――主人公の乃愛役の山口まゆさんは「演じていて辛かった」と話していました。佳代が乃愛たちが取材を受けたのに立ち会って、「あんなひどいこと……」と絶句する場面もありましたが、寄り添う役も演じていて辛さはありました?

川床 もし自分の大切な友だちがそういう目に遭ったら……と考えたら、苦しくなることはありました。佳代は支える役ではあっても、自分が被害を受けているわけではないから、わかり合えない部分も絶対ある。そのもどかしさは、撮影期間中ずっと感じていました。

疑問をわかりたい想いが強まって

――佳代は音楽ユニットを組む友梨奈(北村優衣)には、危ない目に遭いかけたのにパパ活をやめないことを憤ってもいました。

川床 乃愛が被害を受けて苦しんで、どうにかしようとしている一方で、友梨奈はパパ活を続けている。佳代はなぜだろうと思っていましたし、私としてもずっと疑問のままでした。

――ミュージシャン志望という以外の佳代のバックグラウンドは描かれていませんが、わりといい部屋に住んでいたり、英語がわかって教養がある描写もありました。

川床 お金持ちであることをイジられるシーンがあって、友梨奈にはそれを理由に「あなたにはわからないでしょう」と言われている気がして。だからこそ、ちゃんと彼女たちのことをわかろうとしているし、わかりたい想いも強まっているのかなと思いました。

(C)Blue Imagine Film Partners
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普段はあそこまで怒ることはないです

――クライマックスでは、乃愛たち以上に怒りを爆発させるシーンもあって。川床さんの日常にはないことですよね?

川床 あそこまで怒ることはないですね。私は感情の波は激しくないほうだと思います。怒ったときも大きい声を出すより、涙が出てきてしまうタイプです。

――あのシーンの撮影前には気持ちを高めたんですか?

川床 高めるというより、怒る背景があったというか。乃愛や友梨奈への想いが大きいからこそ、あのようなお芝居になった気がします。2人それぞれへの想いをていねいに考えて、気持ちを作って撮影に挑みました。

――そうして普段ない怒りを出せるのは、さすが役者さんですね。他のシーンでも、特に悩むことはありませんでした?

川床 印象に残っているのは、乃愛が性被害に遭っていたことを告白するシーンです。山口さんがすごく考えられていたようで、どういうふうにしたらいいか、監督や皆さんと話し合いました。乃愛はどんなときに言おうと思ったのか。そういうことを考えて、意見を出し合いました。

(C)Blue Imagine Film Partners
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音楽も役へのアプローチに大事だなと

――川床さんは今回のミュージシャン志望の役の他にも、『沈黙のパレード』で歌手を目指す役だったり、サカナクションの演劇と融合したオンラインライブに出演したり、音楽とは縁がありますね。

川床 ありがたいことに、音楽絡みの仕事をいただくことは多いかもしれないですね。今回はピアノを練習しました。役を作っていくアプローチのひとつとして、音楽は大事だと思っていて。

――ピアノは初挑戦だったんですか?

川床 小さいときに習っていました。今回演奏するシーンは少しでも、1曲を弾けるようにしました。

――去年はThis is LASTの『おやすみ』などMVにも5本出演しました。普段はどんな音楽を聴いているんですか?

川床 K-POPが好きで、特にLE SSERAFIMをよく聴きます。パフォーマンスのひとつひとつに一生懸命なのがすごく伝わってきて、自分も頑張ろうという気持ちになります。

――カラオケでLE SSERAFIMの曲を歌ったりも?

川床 歌いたいです。でも、1人で歌うように作られてないので、すごく難しくて。カラオケはたまに1人で行きます。昭和歌謡が好きで、松田聖子さんの曲をよく歌っています。

――お母さんの影響とか?

川床 両親が松田聖子さんを好きなので、車でよく流れていたんです。その影響ですね。私は『SWEET MEMORIES』とか好きで歌います。

初めての役柄で強さを出しました

――ドラマ『先生さようなら』では高校生を演じていて、今は社会人とどちらもできる年齢ですね。

川床 やっと会社員の役などもできるようになりました。高校生役もまだ違和感ない……と思います(笑)。

――まだ全然いけるかと。先生と生徒の恋の話は、ドラマや少女マンガでは結構ありますが、身の周りではどうでした?

川床 本気で好きになることはなかなかないと思います。推しとして「この先生めっちゃ好き!」というような話は聞きました。

――川床さんが演じるレイナは、主人公の田邑先生(渡辺翔太)を好きで、ヒロインの弥生(林芽亜里)の恋敵のポジション。演じ甲斐はありました?

川床 やったことのない役柄で、撮影に入る前のリハーサルでは、どう演じたらいいのか悩んでいて。監督やプロデューサーさんが「もっとやっていいよ」と言ってくださったので、殻を破る気持ちでレイナを演じました。

――「もっと強く」ということでしょうか?

川床 そうですね。自分の中でどれくらい気持ちを出したらいいのかわからなかったのが、強さを調整できるようになりました。

(C)「先生さようなら」製作委員会
(C)「先生さようなら」製作委員会

表情から怖い子に見えるように

――弥生に「まさか田邑っちのこと狙ってたりしないよね?」などと圧を掛けていくところは、怖かったです(笑)。

川床 レイナは怖いシーンが多くて(笑)。共演している方に本当に怖い人だと思われて、「話し掛けていいのかな」という雰囲気になっていたそうです。

――穏やかそうな川床さんがそう見られるくらい、現場ではレイナと同化していたわけですか。

川床 撮影の合間では、徐々に皆さんと楽しくお話しさせていただくようになりました。

――怖く見えるように演じてはいたんですか?

川床 それはすごく意識しました。どんな表情を作ったらいいのか、というところから役にアプローチしたのは初めてです。まばたきをあまりしないで、笑っていて急に真顔になったり、緩急を付けるようにして。田邑っちには良く思われたいので、弥生ちゃんに見せるのとは違う顔をしています。

――田邑先生が結婚していたことを知って問い詰めようとして、弥生と言い合いになったりもしました。

川床 たぶん視聴者の方には、レイナは超イヤな子に見えていると思います(笑)。でも、今後レイナが成長していく部分もあるので、そこにも注目していただきたいです。

(C)「先生さようなら」製作委員会
(C)「先生さようなら」製作委員会

韓国ドラマが教科書のようになりました

――ドラマの公式サイトでは、レイナ役について「全てが私にとっての挑戦」とコメントされています。怖く見せる以外にも、挑戦したことはありました?

川床 レイナ役が決まったときは、挑戦という気持ちでした。撮影に入ったら、どうしたら怖く見えるか考えたりするのが、どんどん楽しくなってきました。

――「役と繋がる作品があれば観る」とのことですが、『先生さようなら』の撮影前には何か観ましたか?

川床 韓国ドラマが教科書のように学ぶことが多いので、撮影期間中は特に観るようにしていました。『ザ・グローリー』とか『シスターズ』とか。

――韓国の俳優さんは感情表現が大きいですよね。普段から観ていたんですか?

川床 K-POPが好きなので、その流れで韓国のドラマもよく観ています。

――そうこうありつつ、『先生さようなら』でのレイナを自分で観ると、どう感じますか?

川床 ちょっと怖いです(笑)。自分で「こんな顔をしていたんだ」とも思います。

焦ってもプラスにならないのでマイペースで

――これまでの女優人生では、壁に当たったようなこともありました?

川床 嬉しいことより、悔しかったりすることのほうが多いお仕事だと思います。その分、嬉しさも大きくなります。

――悔しいというのは、自分のイメージ通りに演じられないとかで?

川床 どう演じたらいいかと葛藤もしますし、オーディションを受けて落ち込むこともあります。でも、反省点を考えて、次に活かすようにしています。

――落ち込んだとき、立ち直るためにすることもありますか?

川床 ミスチル(Mr.Children)さんの『ヒカリノアトリエ』を聴きます。朝ドラの『べっぴんさん』の主題歌として知って、いい曲だなと思いました。

――女優としての将来的な展望もありますか?

川床 どんな女優になりたいか、具体的な像はまだ見えていません。ただ、人と自分を比べることも多かったのが、マイペースでやっていくことも大事かなと、思うようになりました。焦っても、あまりプラスにはならないので。

(C)「先生さようなら」製作委員会
(C)「先生さようなら」製作委員会

学生最後の1年を悔いのないように

――4月からは大学4年生になります。

川床 単位は順調に取れていて、このままいけば無事に卒業できそうです。

――仕事との両立が大変でもないですか?

川床 作品に入ると授業に出ることが難しくて、試験が立て込むとヒーヒー言いながらやっています(笑)。でも、そこはうまく調整していて。仕事をしているときと学校に行くときで、自分の中でオン・オフになるので、負担とは感じません。

――キャンパスライフも楽しんでいるわけですか。

川床 学生最後の1年は、悔いのないように充実させたいです。友だちと遊ぶ時間は今後少なくなっていくと思うので、大事にしていきたくて。ドライブとかしたいですね。

――自分が運転して?

川床 まだ免許を持ってないので、助手席で(笑)。私は『マリオカート』でいつも逆走しているので、友だちには「免許が取れても乗りたくない」と言われています(笑)。

Profile

川床明日香(かわとこ・あすか)

2002年7月10日生まれ、福岡県出身。2014年にニコラモデルオーディションのグランプリから専属モデルに。2018年に女優デビュー。主な出演作は映画『ピア~まちをつなぐもの』、『沈黙のパレード』、ドラマ『俺の話は長い』、『なつぞらSP 秋の大収穫祭』など。ドラマ『先生さようなら』(日本テレビほか)に出演中。映画『ブルーイマジン』が3月16日より公開。

『ブルーイマジン』

監督/松林麗 脚本/後藤美波

出演/山口まゆ、川床明日香、北村優衣、新谷ゆづみ、細田善彦ほか

3月16日より新宿K’s cinemaほか全国順次公開

公式HP

(C)Blue Imagine Film Partners
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シンドラ『先生さようなら』

日本テレビ・月曜24:59~ほか

出演/渡辺翔太、北香那、林芽亜里、川床明日香ほか

公式HP

(C)「先生さようなら」製作委員会
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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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