Yahoo!ニュース

「どん底の気分に浸りたいときに合います」SKE48がアイドルに異例の重い失恋ソング

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/松下茜

SKE48が“孤独な愛”をテーマに32枚目のシングル『愛のホログラム』をリリースした。アイドルの曲には珍しい、夜をさまようシリアスで切ない失恋ソング。メンバーが操り人形のように踊るMVも注目を集めている。2作連続でセンターに立つ末永桜花、写真集の発売も決まった菅原茉椰、10作連続で選抜入りの佐藤佳穂、初選抜の大村杏の4人に、思うところを語ってもらった。

センターは二度とない心づもりでした

――『愛のホログラム』では末永さんが2作連続でセンターとなりました。前作との気持ち的な違いはありますか?

末永 前回は初めてのことだらけで、右も左もわからなくて。シングルでの活動を最後まで成し遂げられるのか、ずっと不安が付いて回っていました。今回は二度目なので、もっと楽しめそうですし、悔いをひとつも残さないように、できる限りのことをしていきたいと思っています。

――一度センターを経験して、成長できたところはあったと?

末永 ずっと目指していた場所に立って、大きな目標をひとつ叶えたのは、人生においても大きかったです。

――次も自分がやる気でいて?

末永 いやいや。それは思ってなかったです。前回「もう二度とないかもしれない」という心づもりでやっていたので。2作連続センターはSKE48歴代でもあまりいなくて、そこに肩を並ばせていただく驚きが強かったです。

――昔の松井珠理奈さんのような、絶対的センターを目指そうとは?

末永 そうなりたい気持ちもありますけど、魅力的なメンバーは多いですし、自分はまだまだ力不足と感じる部分もあるので。継続することが一番難しくて、まずは今回のセンターをたくさんの方に納得していただけるように頑張りたいです。そこから、ファンの方と「また目指そうね」となると思います。

末永桜花(すえなが・おうか) 2002年2月26日生まれ、愛知県出身
末永桜花(すえなが・おうか) 2002年2月26日生まれ、愛知県出身

寝起きに初選抜と聞いて夢かと思って(笑)

――大村さんは初選抜で、発表の配信では「寝起きに知らされて号泣」とのことでした。どんな状況だったんですか?

大村 本当に寝ていたところに、マネージャーさんから電話が掛かってきました。起きた瞬間に「選抜メンバーに選ばれました」と言われて、何が起こっているのかわからず、呼吸が乱れてしまって。マネージャーさんに「しっかりして。ちゃんと息して」と言われたくらい(笑)、衝撃的でしたけど嬉しかったです。

――電話のあとは、どうしたんですか?

大村 夢だったのか現実かわからなくて(笑)、とりあえず妹が家にいて報告したら、クールな子なので「ああそう。良かったね」と言われて。そのあと、お母さんに電話したら、泣いて喜んでくれました。

――前作で11期研究生から原優寧さんが選ばれて、「次は自分も」みたいな予感はありませんでした?

大村 「選抜メンバーになりたい」というのは口に出して言っていましたけど、まさか今回で選ばれるとは思ってなくて。すごくビックリしました。

大村杏(おおむら・あんず) 2005年9月20日生まれ、愛知県出身
大村杏(おおむら・あんず) 2005年9月20日生まれ、愛知県出身

目標はひとつひとつ言うようにしていて

――選抜を目指して、特に頑張っていたことはありますか?

大村 私はポジティブな部類の人間で、好きな言葉は「人生一度きり!」です。アイドル人生も今しかないので、目標はひとつひとつ言うようにしていて。それをファンの皆さんも真剣に受け取ってくださって、応援いただいたおかげで、こうして選抜メンバーになれたと思っています。

――大村さんは末永さん推しなんですよね。学んだこともありますか?

大村 はい。桜花さんはSKE48に対して、すごく熱い想いを持っている方で、それがパフォーマンスに出ています。私は桜花さんのモバイルメール(SKE48 Mail)にも登録してますけど(笑)、ファンの方に日々感謝の気持ちも伝えていて。そういう姿勢に憧れがあって、尊敬しています。

末永 ありがとう。

メンバーが何を考えているのか気をつけています

――佐藤さんは末永さんとは初選抜が一緒で、“さとながコンビ”での活動もありました。

佐藤 そのときから見ていて、どんどん光っていくタイプだなと思っていました。

末永 光ってないよ(笑)。

佐藤 吸収したものを全力で全部出していくんです。前作でセンターをやっている姿も近くで見ていて、今作はより輝いているので、私も嬉しいです。

――末永さんからは、TeamEでの佐藤さんのリーダーぶりはどう映りますか?

末永 すごく良くやってくれています。佳穂ちゃんは考え込むタイプだから、大丈夫かなと思っていましたけど、もう完璧。今、私のことを言ってくれたように、メンバーのことをよく見ているのが佳穂ちゃんらしくて、リーダーとして際立っています。だからこそ、みんなが付いていくんだと思うし、私も付いていきます。

佐藤 ありがとうございます。チームの中でも、自分からいろいろ話す子もいれば、話せない子もいて。そういう子には「今、何を考えているんだろう」と気をつけながら、話を引き出すようにしています。以前はそう思っていても、声を掛けられなかったんです。リーダーだから許されるかなと、ポジションが後押しになって、いろいろな人と話すようになりました。

佐藤佳穂(さとう・かほ) 1997年5月16日生まれ、愛知県出身
佐藤佳穂(さとう・かほ) 1997年5月16日生まれ、愛知県出身

写真集のためにラーメンを2~3ヵ月我慢して

――菅原さんも末永さんとは、7D2(7期生+ドラフト2期生)の絆がありますか?

菅原 そうですね。一緒にたくさんお仕事をしてきて、同じ目標に向かっていた時期もあったので。

――菅原さんは4月に1st写真集を発売します。ビジュアルメンバーの本領発揮ですね。

菅原 そういうお声をたくさんいただいて、すごく嬉しいです。写真集はずっと夢でした。このシングルでは選抜メンバーとして、みんなと力を合わせて頑張って、写真集では自分自身をたくさん売り出して、SKE48にも広げていければいいなと思います。

――黒ビキニの最初の先行カットはセクシーでした。

菅原 第2弾では沖縄ロケ、第3弾では地元の宮城で撮った写真を公開して、表情も雰囲気も見え方も全然違うと思います。セクシーだけに寄らず、かわいいとかいつもの自分とか、いろいろなものを詰め込んで、すべてが菅原茉椰だと思える1冊にしています。

末永 グラビアでは菅原の素材の良さが光っていますね。スタイルだったり、素晴らしいものをお持ちなので(笑)。

――撮影に向けて、体作りとか準備もしたんですか?

菅原 私はラーメンが大好きで、SKE48ラーメン部を相川暖花ちゃんと一緒にやらせてもらっているんですね。おーちゃん(末永)もいちおうメンバーなんだよね?

末永 私もラーメン大好きなので「入ります」と言いました。

菅原 『麺屋 ドラゴンラーメン』のゲームとのコラボでも、ラーメン部を名乗っていて。でも、写真集の撮影前は2~3ヵ月、食べたいのを我慢していました。撮り終わってすぐ、お店に駆け込みました(笑)。

菅原茉椰(すがわら・まや) 2000年1月10日生まれ、宮城県出身
菅原茉椰(すがわら・まや) 2000年1月10日生まれ、宮城県出身

笑顔でない曲が意外と似合ってました

――『愛のホログラム』はシングル表題曲では珍しい失恋ソング。前作『好きになっちゃった』は王道アイドルソングで、桜花さんのセンターにピッタリな感じがしましたが、こういう曲はどう捉えていますか?

末永 私には笑顔のイメージがあるかもしれませんけど、他のセンターでいただいた曲は失恋系が多いんです。『触らぬロマンス』とか劇場公演の『君ダケ好キダッタ私ヲ置イテユク』とか。『好きになっちゃった』も全開の笑顔でなくて「ちょっと落として」と言われました。意外としっかり笑う系は来ません。今回も失恋ソングということで、22歳にもなりますので、大人な雰囲気を表現していけたら。

菅原 今回のミュージックビデオは目線が大事で、おーちゃんは目力にすごく印象があって、曲調に合っているなと思っていました。スタッフさんにも言われていたよね?

末永 言われた。

菅原 1人で映っているところとか、真ん中でドーンと踊っている映像を観て、引き込まれました。もちろん私も、おーちゃんにはプリティなイメージも強くて。

末永 “ぷりちぃ”ね(笑)。

菅原 でも、こういう失恋ソングが意外と似合うんだなと感じました。

落ちるところまで落ちてたそがれます

――菅原さん自身は切ない曲は好みですか?

菅原 こういう曲調のほうが好きです。劇場でおーちゃんがセンターの『君ダケ好キダッタ私ヲ置イテユク』をやるときも、感情を入れやすくて。むしろ、笑顔の曲のほうが苦手。笑いすぎちゃって、かわいい笑顔ができないんです(笑)。『愛のホログラム』を聴いたときは、「よし来た!」と思いました。

――普段、家とかで聴いているのも、こっち系ですか?

菅原 そうですね。ポップな曲も聴きますけど、落ち込んだときや心がザワザワしているときに、自分の感情に浸りたくなって。気分をどん底まで落とすには、こういう曲調がいいです。

――明るい曲で上げていくのではなくて。

菅原 逆に、落ちるところまで落ちて、たそがれるのが好きなんです(笑)。K-POPが多いんですけど、J-POPで失恋ソングとか気分が落ちるようなカテゴリーを選んで、ランダムで聴いて気分を下げています(笑)。

――佐藤さんはどうでしょう?

佐藤 私が任されるのは、頭が堅そうな楽曲が多くて(笑)。難しい曲をやりすぎて、もういいかなと思う瞬間もあります。でも、表現がひとつに絞られるより、歌詞と曲調からそれぞれの解釈ができる曲が好きです。『愛のホログラム』も、歌う方も聴く方もいろいろな形の受け取り方ができそうで、すごく良いなと思います。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

悲しい気持ちを無表情で表現しようと

――18歳の大村さんには、『愛のホログラム』はちょっと大人な感じがしますか?

大村 自分では歌ったことがないような曲で、不思議な感覚になりました。表情作りがすごく難しいです。失恋の悲しい気持ちを表現したいけど、無の表情でまばたきもしないということで、ちょっと苦戦しました。気持ちを想像するのも難しくて。

――<始発電車が動き出すまで アスファルトを歩こう>としたこともないし(笑)?

大村 ないですね(笑)。

菅原 ちょっと危ない。

佐藤 私は電車が止まって、歩いたことはあります(笑)。

――大村さんはMVを撮影していると、初選抜の実感があったのでは?

大村 そうですね。周りが憧れの先輩ばかりで、自分がその中にいるのが不思議で。同じ衣装を着て撮影していると、選抜メンバーになれた実感が湧きました。

佐藤 口数が少なかったよね。

大村 ずっと緊張していました。すごく静かだったと思います。

『VIVANT』を観て考え込む前に動こうと

――先ほど、菅原さんから「どん底」の話が出ました。皆さんも失恋でなくても、こんなふうに暗闇に落ちるような夜はありますか?

末永 夜は1日の反省をして、気分が落ちやすいです。人生について、いろいろ考えたりします。今の自分の生き方で大丈夫なのか、これから生きていけるのか……。結論としては、とりあえず必死に今を生きてみよう、となります。

佐藤 良かった(笑)。私は考えすぎるタイプで、自分のことだけでなく周りのこともいろいろやらないといけなくて、時間がなくて悩むときもあります。そういうときは、とりあえず寝るようにしています。あと、最近は『VIVANT』を観ていて、堺(雅人)さんが「考える前に動け!」と言っていたんですね。私も今年は、考え込む前に動いていこうと思いました。そしたら、悩んでいたことも気にならなくななって。歌を聴いたり映画を観たりして、考えの幅を広げるようにしています。

――大村さんは青春の悩みもあったり?

大村 いろいろ考えますね。そういうとき、私は菅原さんと逆に、明るい曲を聴きがちです。K-POPのノリノリでアガる曲を聴いたり、踊ったりして発散します。あと、私は1人で抱え込まないタイプで、すぐ周りの人に相談します。

菅原 アイドルも人間ですし、人と関わることが多いからこそ、悩むこともあります。そこをみんなで乗り越えています。

鉄道模型を走らせてくれて愛を感じました

――『愛のホログラム』ではSKE48の新たな顔が見られますが、歌でもMVでも、皆さんそれぞれの見せどころはどの辺ですか?

末永 私が鉄道を好きなことを、ミュージックビデオの監督さんがご存じで、間奏のソロのリップシーンで、後ろに鉄道模型を走らせてくださったんです。スタッフさんも頑張ってタイミングを合わせていただいて、愛を感じる部分です。セットのこだわりも伝わって面白いので、細かいポイントですけど注目していただけたら。

菅原 前作と選抜メンバーがだいぶ変わって、曲も雰囲気が全然違っていて。こういうシリアスな曲は、たぶん『金の愛、銀の愛』以来。いつもは体育会系のSKE48が、この重たい雰囲気をどう見せるか。皆さんにギャップを感じてもらえるところで、メンバーそれぞれ孤独な愛を感じながら挑んでいます。

孤独にならないように愛をたくさんください(笑)

大村 さっきもお話ししたように、私はこういった楽曲をやったことがないので、ファンの皆さんも新しい私を見ていただくことになると思います。その表情やダンスにも注目して、選抜メンバーの中にいる私を見つけてください。

佐藤 個人的なことだと、私は今回、選抜入り10作目で初めて、フロントのポジションで撮影させていただきました。ファンの皆さんと目指していた場所で、感謝の気持ちでいっぱいでした。孤独な愛を歌った曲で初めてフロントになったのは、「皆さんの愛がないと、かほりんが孤独になっちゃうよ」と示していると思います(笑)。だから、もっとたくさんの愛をいただきたいです。

――実際、孤独を感じることもあるんですか?

佐藤 不安になってしまうことは本当に多くて。私のファンの方も私に似て重たい方が多いので、しっかり愛を届けてくださるんですけど、それ以上に私が重たい(笑)。ちょっとよそ見をされるのもイヤだし、毎日好きかどうか確認したくて。日々皆さんの愛で、私をキラキラのホログラムにしてほしいなと思っています。

末永 おーっ!

菅原 すごいことを言っていますね(笑)。

エイベックス提供
エイベックス提供

SKE48

AKB48プロジェクトの全国進出第1弾として、2008年7月に名古屋・栄で誕生。エンターテインメント発信ビルSUNSHINE SAKAEの2階にあるSKE48劇場にて、S・KⅡ・Eの各チームと研究生の公演を開催している。2009年に1stシングル『強き者よ』をリリース。2011年発売の5thシングル『バンザイVenus』から27作連続オリコン1位を継続中。

『愛のホログラム』

発売中

Type-A 初回盤
Type-A 初回盤

Type-A~C  CD+DVD 1750円(税込)

劇場盤 CD 1150円(税込)

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

斉藤貴志の最近の記事