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不倫ものでインパクトを残しタップに挑戦。中村静香がグラビアから女優と変わらず目指すものは?

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)映画「レディ加賀」製作委員会

中学生でデビューし、グラビアから女優、バラエティと幅広く活躍を続け、キャリアは20年以上になる中村静香。最近も大河ドラマ『光る君へ』など出演作が相次ぐ中、映画『レディ加賀』が公開された。加賀温泉郷の新米女将たちが町おこしのためにタップダンスチームを結成する物語で、東京でNo.1キャバ嬢だった役。この作品への取り組みや、35歳の今、見据えていることまで聞いた。

苦しさも糧になるのはわかっているので

――中村さんは見た目はお変わりないですが、キャリアは20年以上になりますよね。

中村 事務所に入ってからカウントすると20年くらい経ちますけど、最初は何もわからないままやっていて(笑)。始まりがグラビアで、お芝居も並行して、私の世界を広げてくれたのがバラエティでした。いろいろな番組に呼んでいただくようになって、今に至っています。

――自分ではもともと、芸能界でどんなことをしたかったんですか?

中村 お芝居はやりたいなと思っていましたけど、特別なこだわりはありませんでした。好きだったのは永作博美さんや石田ゆり子さんや大竹しのぶさん。年齢を重ねられても変わらないかわいらしさをお持ちで、永作さんだと『八日目の蝉』で芯の強い女性を演じられたら、ちゃんと逞しさも感じる。そういう女性に憧れがあります。

――20数年の中で浮き沈みは感じましたか?

中村 もちろん、良いときもあれば悪いときもあったと思います。でも、ありがたいことに何だかんだと、お仕事を続けさせてもらってきました。

――ピンチみたいなことはなかったと。

中村 ピンチと捉えてないかもです。そのときは苦しさや悔しさはあっても、何ごとも経験値。いろいろな役に共感できたり、自分の糧になるのはわかっているので、ピンチとしてインプットはしていませんでした。

オスカープロモーション提供
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あの頃にしかできないお仕事でした

――グラビアも最初からやりたいことのひとつだったんですか?

中村 ぶっちゃけ事務所の方針でした(笑)。でも、やって良かったです。

――せっかくのスタイルですからね。

中村 今になって昔の写真を見ると、本当にパンパンですね。何も食べてなくても、水を飲んだだけで太っていたので(笑)。でも、健康的な丸さで、あのときにしかできないお仕事ができました。

――20代前半は、DVDを3ヵ月に1本ペースで出していました。

中村 楽しかったけど大変でした。まず、ごはんを満足に食べられません。撮影に照準を合わせて、良い体型で映るように食事を抜く。当日もお腹が出ないように、ちゃんと食べてなくて。あと、だいたい南国で撮るので、お日さまが暑い。せっかくサイパンやバリに行っても観光はできず、朝から晩まで撮影で、ホテルに帰ったら、お風呂に入って寝る。次の日もまた朝イチから……という感じでした。でも、身に付くことも多かったです。

オスカープロモーション提供
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自分の体型に合った見せ方を鍛えられて

――身体的な表現力が高まったり?

中村 ポージングがめちゃめちゃ勉強になりました。何もない海辺に行って「そこに立って」みたいな中で、レパートリーが増えて。正面、横向き、振り返り、ひざまずいて座り。同じポージングでも人によって違うんです。私の場合、身長163cmのわりには腕が長くて。

――手脚が長い印象があります。

中村 その分、後ろに手を付いて座ると、首が埋まってしまう。スッときれいに首を出すには、人より遠いところに手を置く。そうすると、今度はカメラから腕がはみ出てしまったり。そういうところがグラビアは奥深くて。三角座りをすると、膝下も長いので体が全部埋まって、膝の上に頭が乗ってる感じになってしまう。そんな中で、自分の体型に合った見せ方を鍛えられました。

――やり甲斐も感じました?

中村 DVDの発売記念イベントを年に4回できたのは、ありがたかったです。デビューからファンの方とガッツリ交流できて、生の声を聞けて。本当にいろいろな人が来てくださいました。30代からお父さん世代が多いけど、珍しく20代の若い男の子が来てくれたり、50代のご夫婦がお2人で応援してくださったり。

――娘のような感覚なんですかね。

中村 脚が不自由で車イスで来られた方もいました。「ふさぎ込んでいたけど、DVDを観て元気をもらえて、外に出てみました」と言ってくださって。私なんかでも人に元気を与えられるんだと思うと、すごくやり甲斐がありました。

「飲み姿カワイイグランプリ」が転機に

――先ほど出た「世界を広げてくれたバラエティ」とは、『ゴッドタン』の「飲み姿カワイイグランプリ」ですか?

中村 そうです。ターニングポイントだったかなと思います。

――勝負と思って挑んだんですか?

中村 3連覇したんですね。最初は飲み姿がカワイイって、どういうことかわからなかったけど(笑)、何でも一生懸命取り組んでいた時期で、「よーし、頑張るぞ」と。2連覇して、もう1回呼んでもらったときは、3連覇の称号を獲りにいきました。ボルテージをさらに上げて、「気合いを入れて酔うぞ!」みたいな(笑)。

――女優業でも、特に思い出深い作品はありますか?

中村 いろいろあります。20代にしかできなかった役、今だからできる役……。最近だと不倫ものや浮気ものが多くて。

――『金魚妻』とか『サブスク不倫』とか。

中村 世の中でそういう作品が増えてますけど、私は既婚者ではないんですよね(笑)。『金魚妻』では子どもが欲しいのに旦那さんが向き合ってくれず、元カレに行っちゃう役。『サブスク不倫』では幸せな家庭なのに、アプリから不倫に沼ってしまう役。満たされない心を何かで埋めようとする孤独を、役を通して教えられている気がします。自分の経験上も、お付き合いしてもモヤモヤを感じたことはあるので、共感できる部分を見つけて役に繋げていました。

自分がどう見えるかよりチームで素敵な作品を

――初期の頃だと、『ライフ』でのいじめグループの1人から、付いていけなくなる役も印象に残っています。

中村 あれも実際にある役らしいです。最初はいじめる側だったのが、その輪から抜け出せなくなって、次は自分が標的にされるから転校する。苦しかったし、集団心理の怖さもありました。

――『ごめんね青春!』のお寺に嫁いできた元グラビアアイドルの役も、インパクトがありました。

中村 あの役は濃かったですね(笑)。面白がってもらえて嬉しかったです。

――面白がらせようともしていたんですか?

中村 あれくらい濃いキャラクターだと、振り切るしかないなと。変にまとまっても、面白くないと思っていました。あと、クドカン(宮藤官九郎)さんの脚本が面白すぎて、自分でも楽しんでできました

――演技に対するポリシーみたいなものはありますか?

中村 自分が台本を読んで感じたニュアンスが、現場に行くと監督のイメージと違うことがあるんです。私が考えるのは自分の役のことだけですけど、監督には作品を通して伝えたいメッセージがあって、それをどう描くかが第一。そこは監督の方向性に近づけることを意識します。役がどう見えるかの個人戦でなく、チーム戦で素敵な作品を作りたいので。

(C)映画「レディ加賀」製作委員会
(C)映画「レディ加賀」製作委員会

大河ドラマでは十二単とかつらが重くて

――放送中の大河ドラマ『光る君へ』にも、藤原遵子役で出演しました。

中村 十二単でたくさん着込んで、めちゃめちゃ重くて腕が上がらなくて。かつらも首が後ろに持っていかれる感じ。アゴが上がらないように姿勢をキープして、体幹が必要だなと思いました。その中で所作もあって、落ち着きと上品さを出すのも大変でしたけど、親が本当に喜んでくれました。初めての大河で地元の京都が舞台。何かのご縁だと勝手にありがたく思っています。

――現場で大河ならではと感じたことも?

中村 セットが本当に豪華です。朝廷内もすごく広くて。しかも、平安時代はいくさがなかったので、雅な感じがします。

――1話の入内シーンでは、何人も引き連れて廊下を歩いていました。

中村 ファンタジーではなくて歴史上であったことを、遵子として演じさせてもらいました。

おもてなしの心は職業が何でも変わらないと

――『レディ加賀』で演じた星野麻衣は、東京から来た元No.1キャバ嬢で、女将の講座に通う役どころ。以前『恋と弾丸』でも、高級クラブのNo.1ホステスを演じていましたね。

中村 キャバ嬢役は多いです。キャバクラに行ったことはないけど、キャバドレスはグラビア時代に慣れていました。タイトなので着るたびに苦しかったです。

――麻衣は旅館の女将について、「大変だけどやり甲斐MAX、クイーン・オブ・接客業」と言ってました。

中村 女将という職業にちゃんとリスペクトを込めているんだと思います。他のシーンで、キャバ嬢でも女将になっても「おもてなしの心は誰にも負けない」とも言っていて。来てくれたお客さんが求めていること、一番心地いいことをしてあげる心構えは、職業が何であっても変わらない。芯を突いた台詞ですね。

――タップダンスは初めてやったんですか?

中村 初めてで、めちゃめちゃ難しかったです。先生のお手本を見て、脳内ではイメージできて、リズム感も把握しているんです。でも、鉄の板が入った特別なシューズが重くて、足首から下が思うように動かせず、音も鳴らない。まったく勝手が違いました。

――劇中のように、最初は脚が絡まって倒れたりも?

中村 倒れはしなかったんですが、1日何時間も練習して、重いシューズを何百回と踏み鳴らすので、踵や膝はしょっちゅう痛くなりました。

(C)映画「レディ加賀」製作委員会
(C)映画「レディ加賀」製作委員会

仕事以外の時間があれば自主練をしてました

――レッスンの他に自主練もしたんですか?

中村 最初に自主練から始めました。クランクインの4~5ヵ月前、まだ台本ができてない段階で「ここに習いに行って、できるだけレベルアップしておいてください」という期間があって。仕事以外、時間があればそこに通って教わっていました。途中で台本が出来上がって、1ヵ月前から全体練習が始まって、お着物を着て小道具も付いて……という流れでした。みんなで支え合いながら、部活のような空気感でした。

――劇中であったように、普通にイスに座っているとき、足を踏み鳴らしたりも?

中村 そんなことだらけです。みんなスニーカーで、草むらとか空き地とかどこでも練習していました。クランクインしてからは、みんなが泊まっていた宿の使用許可をいただいた宴会場で、撮休の日に集まって自主練も。個々のスキルを上げるだけでなく、全員で揃えないといけなかったので。

――チームで踊るストーリーですからね。

中村 スマホで動画を撮り合って、「今は〇〇ちゃんが遅れたかも」「和傘の角度はもうちょっと上に」とかアドバイスを共有しました。みんなクランクイン前からタップで頭がいっぱいで、不安で押し潰されそうにもなりました。

――そうした練習の成果もあって、本番は自信を持って臨めたような?

中村 自信はそこまで持てませんでしたが、本番には踊れるようになりました。和傘やデッキブラシも使ってタップを踏みながら、隙間にお芝居パートもちょっと挟んで、何とか乗り越えて。めちゃめちゃ大変でしたけど、すごく貴重な経験をさせてもらいました。

加賀のおいしいものと温泉で乗り切れました

――加賀に馴染みはあったんですか?

中村 金沢には行ったことがありましたけど、加賀は初めてでした。石川県だとお寿司がおいしくて、お水がきれいだから日本酒も楽しみで、実際にガッツリ滞在したら、加賀が大好きになりましたね。毎日のようにお寿司を食べに行きましたし、甘エビより甘いと言われるガスエビにも出会えて。とにかく海産物がどれもおいしい! しかも、東京よりも安い。日本酒も撮休の日に飲み比べに行きました。

――食が豊かなのはいいですね。

中村 そのうえ、のどかで自然に溢れていて、宿のお部屋から見える景色も最高。高い建物がなくて、遠くまで見渡しが良くて。温泉地だけあって、大浴場もあったんです。1日の撮影が終わって入りに行くと、共演者さんがいて「お疲れ」ってねぎらい合って、疲れた足も温泉で癒やせました。

――加賀の温泉に毎日つかれるのも幸せですね

中村 クライマックスでタップダンスを披露する重要なシーンがあって、みんな気持ちも体力もそこに照準を合わせていたんです。加賀だからこそ、癒やされながら伸び伸びとたくましく、撮影できたかなと思います。

――中村さんは温泉好きだったんですか?

中村 結構好きで、撮影中にサウナデビューもしました。キャストに何人かサウナ好きがいて、この機会を逃したらチャンスはないと、作法を教えてもらって、ととのいました(笑)。でも、サウナーに言わせると、ととのうときはグルーンと回って、宇宙と繋がるそうなんです。私はまだ虹の上くらいで、もうちょっと行けるかなと。今は有名どころのサウナを回って、ちょこちょこカジっています。

国は違っても女性としての共感を

――自分でも映画はよく観ますか?

中村 機会があれば。去年、久しぶりに『名探偵コナン』を劇場で観ました。子どもの頃はテレビのアニメを毎週観ていて、今回は友だちに誘われたんですけど、灰原哀ちゃんとコナンくんの友情みたいな話で泣いちゃいました。あとは、Netflixの一気見のドラマや映画ですね。

――女優として刺激を受けた作品もありました?

中村 韓流ドラマの『ペントハウス』が衝撃的でした。韓国で社会現象を巻き起こすくらい話題を呼んで、最終回は視聴率が初回の3倍以上になったそうですけど、本当にストーリーが面白くて。キャラクターも1人1人濃くて、役柄のパターンとして勉強になりましたし、配信を通じて世界に魅力が伝わるのが面白いなと。日本からもそういう媒体で、世界への入口になる作品に携われたらと思いました。

――世界のナカムラシズカを目指すわけですか?

中村 『金魚妻』もNetflixで世界配信されていて、平穏でも満たされないみたいなことは、日本人だけの話ではないと思うんです。国は違っても女性として共感できる。そして、「勇気をもらえた」と言ってもらえる役柄に出会えたら嬉しいです。

――先ほど出た、グラビアで元気を与えた喜びと通じるような?

中村 そうなりますかね。話がまとまりました(笑)。

結婚はしてなくても母親役をしっかりやれたら

――そうしたことも含め、今後の女優業にはどんな展望がありますか?

中村 子どもを持つ母親役をしっかりやってみたいです。最近は本当に不倫に走ったり、裏切られる役が多いので(笑)。私自身はまだ結婚もしてませんけど、母親の大変さや夫婦生活の周りからは見えない内側を、演じることで知りたくて。あとは、単純に子どもをあやしたい(笑)。

――母性本能が強いんですか?

中村 そうなんです。広い目で見ると、やっぱり世界配信の作品に出たいのと、大河ドラマで親孝行も少しできて嬉しかったので。次は朝ドラを目標に掲げたいなと思っています。

(C)映画「レディ加賀」製作委員会
(C)映画「レディ加賀」製作委員会

Profile

中村静香(なかむら・しずか)

1988年9月9日生まれ、京都府出身。2003年に「第9回全日本国民的美少女コンテスト」の決勝に出場。2006年に映画『幸福のスイッチ』で女優デビュー。主な出演作はドラマ『緊急取調室』シリーズ、『ごめんね青春!』、『金魚妻』、『サブスク不倫』、『光る君へ』、映画『太秦ライムライト』、『てぃだ いつか太陽の下を歩きたい』など。映画『レディ加賀』が公開中。『カイモノラボ』(TBS)に出演中。

『レディ加賀』

監督/雑賀俊朗 脚本/渡辺典子、雑賀俊朗

出演/小芝風花、松田るか、青木瞭、中村静香、八木アリサほか

新宿ピカデリーほか全国ロードショー

公式HP

(C)映画「レディ加賀」製作委員会
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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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