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「自分は本当に女優をやりたいのか」元AKB48・北原里英が悩みから“脱・仕事人間”をできた理由

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)2024劇場版「マーダー★ミステリー斑目瑞男の事件簿」フィルムパートナーズ

AKB48グループを卒業後、女優として活躍を続け、昨年は小説家デビューも果たした北原里英。キャストが自分の役の設定と行動しか知らないまま、殺人事件を巡るミステリーで即興劇を行った『劇場版 マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿 鬼灯村伝説 呪いの血』に出演している。事件が起きた屋敷に居合わせた元看護師の役で、アドリブで推理を繰り広げながら、演技に対する発見もあったという。ここ数年、出演作が続いた中での悩みと乗り越えるまでも語ってくれた。

厄年が良い1年になりました

――しばらく前に「宝くじで高額当選」と話題になりましたが、全般的に運気がいい感じですか?

北原 去年は本厄だったわりには、良い1年でしたね。小説を出して、結婚式を挙げて、YouTubeの企画でカレー屋さんを開いて、宝くじも当たって(笑)。

――ただ、北原さんにとっては、10万円は「高額」でもない感じですかね。

北原 北原にとってというより、皆さん「高額当選」でネットニュースを開いて、10万円だとガッカリされますよね(笑)。私は人生初で嬉しかったです。スクラッチくじって結構厳しい世界で、2等で10万円。しかも、全国で75本しかないので。

――それを当てたのは、やっぱりすごい運だったと。

北原 本当にビックリしました。懸賞やビンゴも当たったことがなかったので。その10万円はボートレースに注ぎ込んで、なくなっちゃいましたけど(笑)。去年はやっぱり、2年かけて書いた小説を出版できたことが大きかったです。

故郷に錦を飾れて良かったです

――女優業も去年から、好調が続いているようですね。

北原 私、去年は何に出ましたっけ(笑)? いつ何をやったか、すぐ忘れてしまって……。

――映画『女子大小路の名探偵』でカギを握る役だったり。

北原 あれは去年の公開でしたね。責任重大な役で緊張しましたけど、名古屋で撮影して、故郷に錦を飾る感じで嬉しかったです。それで言うと、地元の一宮市で開催されたTGCにも呼んでいただいて。七五三をやった神社でランウェイを歩いて、親もすごく喜んでくれました。愛知の番組に出させていただくことも多くて、帰省がたくさんできて良かったです。

――ドラマでは『特捜9』や『育休刑事』などにゲスト出演。

北原 『育休刑事』は久しぶりに同年代だらけの現場で、ほとんどの方と共演したことがあったんです。山下リオさんは『フルーツ宅配便』以来、健人さんは舞台でご一緒しました。張り切って騒いでしまったのは反省ですけど(笑)、それだけ自分がいろいろな作品に関わってきたんだと考えたら、嬉しかったです。

――同じ元AKB48の前田敦子さんがメインキャストでした。

北原 めっちゃ久しぶりでしたけど、変わってなかったですね。でも、息子さんを現場に連れてきて一緒に遊んだりしたのは、時の流れを感じました。

――同窓会の話で、高校時代の回想シーンも演じてました。

北原 久々に制服を着ました。現役高校生と並んだら無理ですけど(笑)、実年齢も近い方たちばかりだったので成り立って。たぶん、あれが最後の制服ですね。

展開がわからなくて本気で驚いて焦りました

――マーダーミステリーについては、体験型ゲームとしては知っていました?

北原 私、仕事ですごくやっているんです。コロナ禍のオンライン演劇や日テレさんのドラマで参加させてもらって、去年も全然別件でマーダーミステリーの舞台をやりました。今回は劇場版で、全メディアを制覇できるんじゃないかと(笑)。

――では、お手のものですね。

北原 マーダーミステリーの作品は、本番前に必ずテストプレイをするんです。本番が始まったら止めることはできなくて、ルールがわかってないと困るので。それも含めたら、結構な回数を経験しています。今回はマーダーミステリーが初めての方が多くて、不安もあったと思いますけど、私はちょっと余裕がありました。

――キャストにはキャラクター設定と行動指示のみが与えられているということで、犯人も本人以外は知らないんですよね?

北原 もちろんです。展開がわからなすぎて、本気で驚いて本気で焦っています。

――普段のお芝居でも、アドリブは入れるほうですか?

北原 私にそんな度胸はないです(笑)。AKB48時代にMCとかやっていたので、アドリブに苦手意識はないですけど、やるたびにヘタかもと反省しています。

素が出ざるを得ないのが楽しいかなと

――こういう即興劇だと、普通の芝居のような役作りはしませんでした?

北原 むしろ、しっかり役作りをしてないと危ないです。最初に役のプロフィールと死体が発見されるまでの動きを教えられて、途中で間違えることはできない。完全に頭に叩き込んでアリバイを言えないと、怪しまれてしまう。そこはドキドキでした。いつものお芝居以上に設定書を読み込んでおかないと、できない感じでした。

――即興で演じていて、キャラクターでない素の自分が出てしまっても、良くないわけですよね?

北原 良くはないですけど、出ざるを得ません(笑)。話が進むにつれて、皆さんもちょこちょこ素が出てきたようで、そこも楽しいポイントかと思っています。キャストの方たちの初めての表情が見られるんじゃないかと。

――どういうところで素が出ました?

北原 本筋より、面白いことが起きたときが、笑ってしまいそうで大変でした。自分が話題の中心になったり、攻められているときは、役になることによって逃げられるんです。(劇団)ひとりさんや八嶋(智人)さんがカマし始めたときのほうが、お客さん感覚になってしまって。私はもともと、ひとりさんのアドリブが大好きなんです。『ゴッドタン』の「キス我慢選手権」は、『THE MOVIE』を2本とも映画館で観ましたから。それをあんな近くで見られて、すごく嬉しかったんですけど、笑いをこらえるのは苦労しました(笑)。

『劇場版マーダー★ミステリー」より
『劇場版マーダー★ミステリー」より

やり直しができない緊迫感がありました

――何テイクも撮ったりはできないわけですよね?

北原 全部1テイクです。カメラマンさんも緊張していたと思います。万が一撮れてないなんてことがあったら、やり直しはできないので。キャスト同士も、この状態ですれ違ったらダメだとか、全員がいろいろなことに気をつかっていました。

――演じるうえで、即興劇ならではの面白みもありました?

北原 面白かったです。最初のフェーズが終わって、それぞれ証拠探しに出て再集合したときは、誰が誰の証拠品を持っているのかわからなくて。誰から行くのか、緊迫感はすごくありました。

――北原さんは推理力はあるほうですか?

北原 『名探偵コナン』が好きなので、得意だとは思っています(笑)。今までのマーダーミステリーもので、犯人を当てたこともありました。でも、たぶん違うと思いながら、苦し紛れで言ったことが偶然当たっていたので、へっぽこ探偵みたいな感じです(笑)。

ナチュラルに映っていたのをヒントに

――この『劇場版マーダー★ミステリー』を観ていると、台本があるように思えました。

北原 そう疑われてしまいますよね。皆さんのお芝居が上手すぎて、現場で私も「これ本当に台本ないの?」と思ったくらいなので。でも、本当にないんです。

――完成して自分の即興演技を客観的に観ると、どう感じました?

北原 どこで自分が抜かれているか、わからなかったこともあって、ナチュラルな状態で画面に映っていました。「私はこういう顔をして話を聞いていたんだ」とか発見があって。お芝居と素の狭間というか、作っていない表情をしていたんです。それを一緒に観た夫(俳優の笠原秀幸)に誉められました。

――芝居自体もナチュラルになっていて?

北原 そのほうが良いと言えば良い。演じていたときには気づかなかった学びもありました。この後に自分が何を言われるかわからない、自分が言うことも決まってないときのほうが、当然ですけどナチュラルですよね。役者あるあるで、テストのときのほうが良かったりもするんです。本番は2回目。段取りも入れたら何回も同じシーンをやる中で、新鮮味を保てる人が上手でプロだと思うんです。今回は全部1回目の台詞で、こういうことだよなと。

――ある意味、演技の本質的な問題ですね。

北原 そういう発見があって、これをヒントに芝居のやり方を考え直したら、もう1コ上に行けるんじゃないか。そんな話を夫としました。

選抜総選挙を思い出して心が痛くて

――話は変わりますが、去年は「日プ女子(PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS)」にハマっていたとか。

北原 視聴者参加型のオーディション番組で初めてハマったのが、前回の男の子たちの「SEASON2」でした。最初はちゃんと観られなかったんです。(AKB48グループの)選抜総選挙を思い出してしまって。あの緊張感、「獲得票数」という言葉、「第〇位は〇票で」とみんなの不安げな顔が抜かれると、心が痛すぎました。でも、最後のほうに自分も投票するようになったら、完全に国民プロデューサーとして観ていましたね。「日プ女子」は男の子と違って、より思うことがあって。友だちと話すと「そんな目線で観てない」と言われました(笑)。

――どんな目線で観ていたんですか?

北原 「この子は一緒に活動したら、こうだと思う」とか(笑)。性格が良さそうな子を推したくなります。あと、NGT48のとき、自分も初めてオーディションで審査をさせてもらって。そのときに「ここを見るんだ」と発見があったのも思い出しました。

――どこを見て審査していたんですか?

北原 骨格です。痩せることはできても、骨格は変えられないから、体型のバランスは見ますね。一般視聴者としても「この子は骨格がいい」と言っています(笑)。

――IZ*ONEを生んだ「PRODUCE48」も、もっと早く開催されていれば参加してました?

北原 したかったです! でも、卒業間際で年上すぎたので。もっと早くハマっていたら、参加だけでもしたかった。私は歌もダンスもできないから絶対Fクラスで、きっと早い段階で落ちていましたけど、(テーマ曲の)『NEKKOYA』を踊りたかったと心から思います。

K-POPが趣味になってダンススタジオへ

――YouTubeでIVEのライブを観に行ったことを話してましたが、K-POPが好きなんですか?

北原 大好きになりました。前回の「PRODUCE 101」でK-POPに触れてハマって。それまで私は邦バンドが好きだったのが、今はK-POPしか聴いていません。日本語の歌は何が流行っているのか、もう全然わかりません(笑)。

――K-POPの何にそこまで惹かれたのでしょう?

北原 本当に何がこんなにいいんでしょうね。曲のテンション感も好きだし、私はダンスに苦手意識があったのが、見ていて踊りたくなりました。それでプライベートでダンススタジオを借りて、踊っています(笑)。今まで私は趣味がなかったんです。仕事以上に好きなことがなかったのが、K-POPが趣味になりました。Stray Kidsのファンクラブに入って、自分でライブのチケットに応募して、良い席を取れるように頑張っています(笑)。推し活にもハマりました。

――ライブはどんなふうに観ているんですか?

北原 めっちゃノリノリです(笑)。陽キャなので、普通にお客さんとして明るく乗っています。迷惑行為をするファンにはならないように心掛けながら。

母親役は気持ちが入るのでやりたいです

――映画やドラマも観るのは韓流ですか?

北原 確かに、Netflixで韓国の映画やドラマばかり観ています。最近観たのは『ペントハウス』で、しばらく前には『夫婦の世界』にハマりました。韓国ドラマって、めっちゃキレてますよね。『ザ・グローリー』なんかでも「そこまでする?」と思いながら観ていて、面白いです。

――そこも役者目線が入りつつ?

北原 国民性がありますから、私があんなキレ方をしても、意味がわからなくて浮いてしまうと思います。ただ、あれほど感情を爆発させたら、気持ちいいだろうなと。自分の性格的に絶対できないからこそ、あんなふうに叫んでみたいと憧れるところはあります。

――北原さんも以前は「不倫ものをやりたい」と話されていました。

北原 そう言えば、『ペントハウス』も『夫婦の世界』も不倫の話ですね。日本でも深夜ドラマとか不倫ものが多くて。でも、今の私はドロドロより、母親役をやりたいです。年齢的なこともありますし、子どもちゃんとお芝居するのが好きで、すごく愛情が込められます。

――今までも母親役はありましたっけ?

北原 最近増えてきました。去年『駐在刑事SP』に出させてもらったときは、『フルーツ宅配便』で共演した浅田芭路ちゃんが娘役だったんです。久しぶりで大きくなっていて、成長を見られたのも嬉しかったし、彼女を守る役ですごく気持ちが入りました。たぶん母性本能が強いので、母親役は向いていると思います。

止まったらダメで新しいことを探さないと

――出演作は相次ぎつつ、現状に満足してない部分もありますか?

北原 あります。私は常に新しいことに取り組んでいたい回遊魚タイプで、止まったら死ぬ(笑)。去年は小説を出したりカレー屋さんをやって、これに勝る新しいことがあるのか、不安はあります。それでもやっぱり何かしたくて。見つけなければと思っています。

――現状では、具体的なものが見つかってはいなくて?

北原 まだないですね。小説の2作目を書き始めたいとは思っていますけど、話が来ているわけではないので、出せるかわかりません。去年出した『おかえり、めだか荘』の映像化が実は夢ではあります。

――登場する4人の女性のうち、誰かを自分で演じようと?

北原 いえ、出るならモブで。作者として、北原里英レベルの役者は使いません(笑)。撮影現場に定期的に良い差し入れを持っていく原作者になりたくて、その夢は何年かのうちに叶えたいです。

振り返るとずっと必死すぎたかなと

――イチ女優として、目指していくものはないですか?

北原 この数年、自分がお芝居をやりたいのか、やりたくないのか、わからない時期があったんです。10代の頃からずっと女優になりたかったので、そう思ってないといけないような感覚になっていて。でも、価値観は変わっていくので、本当に女優をやってないとダメなのか、悩んでしまいました。それが最近、ようやく心からお芝居をやりたい気持ちが戻ってきたんです。

――何かがあって、そうなったんですか?

北原 たぶん、他の趣味ができたのが良かったのかなと思っています。今まであまりに仕事第一だったのが、新たにK-POPを好きになったりして、いい意味で脱・仕事人間ができました。プライベートも充実して、振り返ると、ずっと必死すぎたのかなと。

――別の世界に触れて、相対的に女優業への向き合い方が変わったとか?

北原 もうちょっとナチュラルにやってもいいかと、思うようになりました。おこがましいですけど、ミュージカルのオーディションを受けたくて。人前で歌うなんて何年もしていませんけど、経験ないからこそ、やってみたいんです。

太田プロダクション提供
太田プロダクション提供

Profile

北原里英(きたはら・りえ)

1991年6月24日生まれ、愛知県出身。AKB48のメンバーとして2008年にデビュー。2015年にNGT48に移籍し、2018年に卒業。主な出演作は映画『サニー/32』、『としまえん』、『女子大小路の名探偵』、ドラマ『フルーツ宅配便』、『女の戦争~バチェラー殺人事件~』、舞台『「新・幕末純情伝」FAKE NEWS』、『どろろ』など。映画『神さま待って!お花が咲くから』が公開中。『劇場版 マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿 鬼灯村伝説 呪いの血』が2月16日から公開。2023年に『おかえり、めだか壮』で小説家デビュー。

『劇場版 マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿 鬼灯村伝説 呪いの血』

2月16日より新宿バルト9ほか全国ロードショー

公式HP

(C)2024劇場版「マーダー★ミステリー 斑目瑞男の事件簿」フィルムパートナーズ
(C)2024劇場版「マーダー★ミステリー 斑目瑞男の事件簿」フィルムパートナーズ

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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