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『アイのない恋人たち』で男性経験のないアラサー役。GP帯で初ヒロインの岡崎紗絵が見たリアルな恋愛事情

斉藤貴志芸能ライター/編集者
ABCテレビ提供

恋愛偏差値の低い男女7人の群像劇として話題の『アイのない恋人たち』。遊川和彦のオリジナル脚本で、この時代ならではのアラサーの孤独や葛藤がリアルに描かれている。結婚に憧れも焦りもなく、男性経験がないまま30歳を超えたヒロインを演じているのは岡崎紗絵。モデルから女優へ活動を広げて着実にステップアップし、ゴールデン・プライム帯のドラマで初のヒロインとなる。これまでで自身と一番離れた役と言いつつ、等身大の女性像を体現している。

今までで自分と一番離れた役です

――髪がだいぶ伸びましたね。

岡崎 私、伸びるのが速いんです。ショートにしてから3~4年で、最近みんなに「こんなに伸びたんだ」と言われます。

――『アイのない恋人たち』の今村絵里加役では、持ち前の華やかさを消して、地味なアラサーぶりを醸し出しています。

岡崎 メイクもほとんどせず、メガネで髪は1本しばり。今まで演じた役柄とは違う感じがあります。

――そういう地味な役を演じる難しさはありますか?

岡崎 お芝居を始めてから、自分と一番離れている役なので、すごく悩みました。考え方とか人との距離感とか、自分にないところがたくさんあって。

気難しくて近づきにくい空気を醸し出して

――人との距離感は、岡崎さんはもっと近いと?

岡崎 私はコミュニケーションを大事にしていて、まず相手の方がどんな人かをすごく知りたいし、お話しすることも好きです。絵里加は一見して気難しそうで近づきにくい、堅いイメージがあって。そういう空気を醸し出すのが、今までの役と全然違いました。

――テンションを下げて演じる感じですか?

岡崎 気持ちを切り替えて、メガネを掛けることもスイッチになりますけど、自分の中に絵里加の要素がまったくないわけでもないので。自分の奥のほうにあるものを取り出して、高めるイメージでした。

――岡崎さんも1人で本を読んだりはするとか?

岡崎 人とお話しする時間も大事ですけど、同じくらい、1人の時間もないとイヤなんです。本を読むこともありますし、ひたすらボケーッと考えごともしています。そこを広げると、絵里加に近づく感じがします。

恋愛に積極的でない女性は多いようです

――このドラマのPR特番で、岡崎さんは「それぞれの悩みや葛藤がリアル」と話されていました。絵里加についても、自分とは掛け離れているにせよ、女性像としてリアリティを感じますか?

岡崎 アラサーの女性は特に、仕事や恋愛で抱える問題は多いと思うんです。20代とは違う選択肢が出てきて。絵里加も壁は作りながら、人と繋がりを持ちたい気持ちはあるので、周りから影響を受けながら、ちょっとずつ動いていく。そこは等身大のリアルさを感じます。

――30歳を過ぎても、ちゃんと恋愛した経験がないのも、奇異なことではないと?

岡崎 そういう人が増えていると聞きますし、私の周りでも恋愛に積極的でない女性は多いです。仕事のほうが勝ってしまう。昔は寿退社がステイタスだったのかもしれませんけど、今は女性がどんどん社会進出していて。そういう方たちに話を聞くと「仕事以外に悩みを増やしたくない」と言うんです。だから、恋愛はいったんストップ。そこまで手が回らなくなっているのかなと思います。

「一生独身でいい」は強がりもあるかなと

――「恋愛に向いてない」という台詞も出てきますが、恋愛に向き・不向きはあると思いますか?

岡崎 メソッドみたいなものはないはずで、向き・不向きという捉え方は違う気がします。絵里加は恋愛をし慣れてないので、うまくいかない。それを「向いてない」と判断してしまっているように思います。

――「一生独身でもいい」という考えは、岡崎さんにもよぎることはありますか?

岡崎 どっちにも決め込んではいなくて、いつか幸せな家庭ができたらとやんわり考えていますけど、今はお仕事を頑張りたいのは絵里加と一緒です。でも、絵里加が「一生独身でも」と言うのは、強がりもあるんですよね。「私はこう決めてますから、これ以上触れないでください」とガードしていたり、「結婚できなかったのでなく、しなかったんです」と言える保険を掛けておきたい。本当に100%独身でいいのか聞かれたら、そうではないと思うんです。

――「好きな人ときれいな言葉で話をしたり、きれいなものを見て一緒に感動したい」というのは共感どころですか?

岡崎 絵里加は家庭のゴタゴタが1話から見て取れるんです。お母さんに「いい年して色気がないから恋愛できない」とか、キツいことをズカズカ言われたり。そういう環境だから、真逆のものに憧れを抱く気持ちはすごくわかります。

人知れずモテて面倒くさくなったようです

――絵里加の10代、20代の頃も想像しましたか?

岡崎 脱サラしてブックカフェを始めたので、20代は会社に勤めて頑張っていたんでしょうけど、プライベートで遊ぶような同僚はきっといなくて。学生の頃は人知れずモテてしまうタイプだったんじゃないかと、脚本家の遊川さんとお話ししました。1人で静かに本を読むのが好き。それを見て男子たちが密かに好きになるのを、女子がやっかんで「気取ってるんじゃないよ」みたいな。そこで最初の「恋愛は面倒くさい」モードになった、という。なるほどなと思いました。

――そこも岡崎さんの学生時代とは違いましたか?

岡崎 私はおとなしく本は読めなかったですね(笑)。動き回って外で遊んでいることが多かったです。

――高校生の頃って、恋愛するのが“義務”みたいな風潮がありませんでした?

岡崎 しないといけないとまでは思っていませんでしたけど、周りの子たちが初めて恋をしてキラキラし出すから、いいなって広がっていくことはありましたね。

マッチングアプリはハードルが高い感じ

――1話では「合コンという言葉さえ知らない若い子がいる」という会話がありました。岡崎さんは合コンを知ってはいましたよね?

岡崎 知ってはいて、私も「合コンって死語なんだ」と思いました。今の若い世代だと、マッチングアプリが主流なのかもしれませんね。私は出演したドラマの中では、合コンに結構参加しています(笑)。自己紹介をどうするのか、ちょっと気になりました。

――実際の合コンには出たことないですか?

岡崎 ないですね。知ってる人で集まることはありましたけど、知らない人たちと合コンという場で会うのは、ちょっと怖いところがあります。

――絵里加もやったマッチングアプリは、どう思いますか?

岡崎 知らない方といきなり1対1でコミュニケーションを図るのは、私はちょっと緊張しちゃいそう。それがいいという人もいると思いますけど、ハードルが高い感じがします。

知らなかった感情がたくさん芽生えて

――絵里加はマッチングアプリで、売れない脚本家の真和(福士蒼汰)と出会います。つき合うのは難しいタイプだと思いますか?

岡崎 うまくいかないですね(笑)。いろいろ揺れて、いい感じになったと思ったらトラブルがあって……ということが続きます。このドラマの登場人物たちはみんな、言葉や行動がもっと上手だったら、うまくいくこともあったと思うんです。でも、絵里加は恋愛に慣れてなくて、思ったことを強い勢いで言ってしまうところもあって。いろいろ慣れている真和とは、経験0と100の人が出会った感じですから、揺れは大きいです。

――だけど、絵里加は真和を好きではあって。

岡崎 好きは好きですね。出会って、知らなかった感情がたくさん芽生えて、「これが好きということなのか」とジワジワ気づいている感じかと思います。自分はこんなに嫉妬深かったんだ、メンタルが弱かったんだと知って、意外と恋愛に染まっているぞと。

女性3人の会話のラリーは楽しいです

――遊川和彦さん脚本のドラマは観たことありました?

岡崎 『女王の教室』は学校で話題になりました。天海(祐希)さんが怖い先生役で、すごくインパクトがあって。遊川さんの脚本というと、そういうキャラクターが出てくるイメージはありました。

――その中では、『アイのない恋人たち』は現実寄りですかね。

岡崎 令和版というか、現代の等身大な感じかもしれないですね。でも、絵里加も真和もクセはあるし、7人のキャラがバラバラ。全員が揃ったら、どうなるんだろうと思いました。

――群像劇の面白みは演じていて感じますか?

岡崎 1シーンが長くて、会話のラリーは楽しいです。女性3人だと、だいたい恋愛に積極的な奈美さんが先導する図式になります。演じる深川(麻衣)さんがコミカルで、かわいらしい感じがあって。台詞で説明してくれる内容に「そうなんだ」と教わることがあります。

――演技で張り合う感覚もあったり?

岡崎 本当にラリーが多いので、頑張らないといけないと思います。深川さんの台詞量が多いので、こちらがトチってNGを出すわけにはいかない。そういう緊張感もあります。

「クズ野郎!」にすべてをぶつけました

――序盤の撮影で、特に印象的だったのはどの辺ですか?

岡崎 それはもう1話のラストですね。パンチ力のあるシーンで、すべてをぶつける気持ちでやりました。

――キスしてきた真和を突き飛ばして、「このクズ野郎!」と罵ったところですね。

岡崎 「クズ野郎」をどう言ってやろうかと、台本をいただいてからずっと考えていました(笑)。現場で回数を重ねて、監督に「もっと行こう」とか調整していただきながら、育てていった「クズ野郎」です(笑)。

――結構な勢いでした。

岡崎 真和を思い切り投げ飛ばして、ワーッと罵倒しました。ちょっと前のシーンが本当にいい感じだったんです。真和の書いた脚本を読んで、感動の涙を流して、嬉しくなった真和にキスされて。そこでラブストーリーが生まれるかと思ったら、投げ飛ばすというまさかの展開(笑)。ギャップをうまく見せられたらいいなと思いました。

――台詞でも、そこまで強い言葉を投げつけたことはなかったのでは?

岡崎 「クズ野郎」を本人にぶつけることは、まあないですよね(笑)。貴重な経験で、思い切りやらせていただきました。

『ヒロアカ』を観てブワーッと泣きました

――真和の脚本を読んだところでは、「自分を信じていればいいんだと勇気が出た」「明日も仕事を頑張ろうと元気になった」と言ってました。岡崎さん自身、本でも映画でも、そういう気持ちになった作品はありますか?

岡崎 めちゃくちゃあります。映画でもドラマでも小説でも、感動してポロポロしちゃうことは多くて。最近だと、アニメでこんなに涙するんだという発見もありました。昔だったら、そういうふうには観てなかったなと。

――どんなアニメでそう思ったんですか?

岡崎 『僕のヒーローアカデミア』が大好きで、気持ちが沈んだときに観ているんです。そういう話をすると、「5歳の甥っ子と観てる」と言われたりします。ヒーローもので小さい子は楽しいと思いますけど、大人が観てもグサッと来る台詞がたくさんあって。

――超常能力を持たなかったデクが、限界を超えていくところとか?

岡崎 最初は、デクが強くなろうと鍛錬するシーンに心を打たれました。でも、私の一番の推しキャラはかっちゃん(爆豪勝己)。「この人、大人だな」と思います。若い頃って、自分が劣っていることを認めるのはすごくイヤですよね。でも、かっちゃんは高校生なのに、自分より弱かったデクに負けを認めて、「俺はいつからか、お前の背中を追うようになっていた」と言うんです。そこで私はブワーッと泣いてしまいました。

――そっちでしたか。

岡崎 そんなこと、普通は悔しくて言えないと思うんです。でも、ちゃんと伝えて「ここからだ!」と宣言する。カッコよくて涙が止まりませんでした。

――まさに大人の見方ですね。

岡崎 子どもたちはヒーローが強いのが楽しいと思うんです。でも、大人はまた違う目線で観られるから面白くて。アニメって、やっぱり凄いです。

「1000本ノック系だね」と言われました

――岡崎さんは今回、ゴールデン・プライム帯の連続ドラマでは初ヒロイン。気合いもより入っていますか?

岡崎 気合いは十分です。大役を任せていただいて責任感もあって、頑張らねばと思っています。

――女優活動を始めてから、順調にステップアップしています。何か秘訣はありますか?

岡崎 ただ目の前のことに打ち込むだけでした。今の自分が持っているものを、とにかく全力で出そうと。初めてご一緒した監督に「岡崎さんは1000本ノック系だよね」と言われたことがあります(笑)。

――どんなにダメ出しされても立ち向かうとか?

岡崎 頑張る気持ちは絶やしません。気力も体力も要るので大変ですけど、その気持ちを持ち続けるのは、すごく大事だと思います。

主演したら現場の見え方が違いました

――『教場Ⅱ』で大きな壁を乗り越えた話を、以前うかがいました。近年で特に糧になった作品はありますか?

岡崎 座長の近くにいて気づくことは毎回あって、吸収できるのは大きいと思っていました。でも、『花嫁未満エスケープ』で初めて自分が主演させていただいたとき、見え方がまったく違いました。そこに立たなければ、わからないことがいっぱいあって。視野を広げて、現場の空気を感じる。チームワークをどう作るか考える。今までなかったところで、脳を働かせないといけなくて。学びが多くて、座長の見え方もまた変わりました。改めて大尊敬ですね。

――去年だと『転職の魔王様』のゲスト出演で、今の時代の女性感がすごく出ていました。

岡崎 漫画家の恋人と同棲していて「私が働いて支える」という。強い女性を演じることは多くなったかもしれません。

――今回もですが、そういうアラサー女性をリアルに演じることに、岡崎さんは長けている印象が強くなっています。

岡崎 そんな年齢になってきました。結婚だったり、恋愛と仕事というワードが出る役に、乗っかっているのは感じます。

今は考えつかないことが考えられるように

――『アイのない恋人たち』の絵里加は31歳で、実際の岡崎さんは28歳。この3歳差は意識するところではありますか?

岡崎 30歳を超えていると、ちょっと落ち着きが必要かなと思います。20代の中での3歳差は何となく違うくらいですけど、30代では気持ちが変わるのかなと。

――「今さら大恋愛でもない」というのも、30代ならではの感覚でしょうか?

岡崎 ちょっとした諦めの境地に達したところはあるのかも。恋愛はいつしてもいいと思いますけど、「大恋愛」って何だろう? 何を持って大、小なのか(笑)。

――「小恋愛」というのは、あまり聞きません(笑)。

岡崎 きっと穏やかな恋愛だといいんでしょうね。学生時代のような波の激しい恋愛は、30代には体力的にもちょっとキツいのは、わかる気もします。結婚に向かうことを考えても、穏やかさは必要なのかなと。

――岡崎さんの30代は、女優として黄金期を迎えそうですね。

岡崎 だといいですけど、もっと成長して30代を迎えたいです。今は考えつかないことが考えられるように、ひとつひとつの作品に気持ちを込めて臨んでいきます。

Profile

岡崎紗絵(おかざき・さえ)

1995年11月2日生まれ、愛知県出身。2012年に「ミスセブンティーン」でグランプリ。「Seventeen」モデル卒業後の2016年から「Ray」専属モデルに。女優として2015年に映画デビュー。主な出演作はドラマ『教場Ⅱ』、『ナイト・ドクター』、『花嫁未満エスケープ』、『ケイジとケンジ、時々ハンジ。』、映画『mellow』、『シノノメ色の週末』、『緑のざわめき』など。

『アイのない恋人たち』

ABCテレビ・テレビ朝日系/日曜22:00~

公式HP

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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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