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HKT48出身の矢吹奈子が不倫希望の新妻役。初のキスシーンも「緊張しなかった」理由は?

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)わたなべ志穂/小学館/ABC

今年4月にHKT48を卒業した矢吹奈子がドラマ『18歳、新妻、不倫します。』で初のヒロインを務めている。大富豪の一人娘で、お見合い結婚を拒むため、ボディガードだった主人公と“互いに不倫OK”の偽装結婚をした役。本物の恋を見つけようとしていたが、形だけのはずの夫に心惹かれて……という展開になっている。日韓合同グループで世界でも活躍した歌唱力を持ちつつ、女優を目指した矢吹に現在の想いを聞いた。

お芝居は現場でないとわからないことがあります

――HKT48を卒業してから、ドラマにバラエティとたくさん出演されていますが、生活はだいぶ変わりました?

矢吹 ここ2ヵ月くらいはほぼ毎日ドラマの現場に行っていたので、変わった感じはします。早起きになったのが一番大きいかもしれません。

――ドラマの撮影は朝早いですからね。

矢吹 休みの日でも早く目が覚めてしまうんです。ずっと5時起きの日が続いていたときは、目覚ましを掛けてないのに5時半くらいにパッと起きて、「ヤバい! 遅刻する!」となっていました(笑)。

――気持ち的にも、アイドル時代と変わったところはありますか?

矢吹 お仕事の仕方が全然違います。アイドルのときは、ダンスや歌を体に染み込ませてから、ライブなら1回きりの本番。前日にリハをして、どんな衣装を着るかも全部決めて、そのままやる形でしたけど、お芝居は現場でやってみないと、わからないことがあるんです。

――台本はありつつ。

矢吹 自分の想像とまったく違う現場もありますし、相手の言い方によって自分の感情が動いたり、そこでは動かなかったり、いろいろ変わるんです。その違いは面白いなと思います。

作品以外のことは考えたくなくて

――改めてですが、奈子さんは女優を目指してアイドルを卒業されました。『SPEC』やハン・ソヒさんが好きだったとか、学園ドラマに出演して演技に興味が高まったという話を聞きましたが、一方で奈子さんは歌唱力も高くて。それでも女優業のほうに強く惹かれたんですか?

矢吹 もちろん歌も好きなので、いつかミュージカルをやってみたい気持ちもありますけど、お芝居がすごく面白いなと感じて、いろいろな役に挑戦したいと思うようになって。それで卒業を決めました。

――卒業してから、演技に対する取り組みが変わったりもしました?

矢吹 今回の『新妻不倫』で初めてヒロインをやらせていただいて、出番も多いですし、台詞もたくさんあって。現場にいる時間も長いので、もうずっと作品のことを考えていました。だから、友だちとの連絡は全然できてなかったです。あまり他のことを考えたくなくて。

――家に帰っても役のことを考えていたり?

矢吹 そんな感じです。ラジオとか他の仕事もしてましたけど、役についてしっかり考える時間が増えたのは良かったです。現場で仮眠を取っていたときも、明花を演じている夢を見ました(笑)。

ラブコメで女の子の憧れは全部やりました

――『新妻不倫』では大富豪の一人娘でお姫(ひい)様と呼ばれる三条明花役。親の決めたお見合いから逃れるために、ボディガードだった藤宮煌(藤井流星)と偽装結婚をしました。こういうラブコメ的な世界観は好きだったんですか?

矢吹 映画を観ていて、ラブコメをやってみたいとめっちゃ思っていました。

――今回の壁ドンや頭ポンポンで、醍醐味を味わえました?

矢吹 お姫様抱っこもありましたし、ラブコメでやれるものは全部やった感じで、満足しました(笑)。他に何ができるか、監督と話し合いながら、いろいろ作戦を練って。お芝居でキューンとなったりはしませんけど(笑)、こういうのが女の子の憧れなんだろうなと感じました。

――お姫様抱っこをされるのは、どんな感覚でした?

矢吹 スカートが滑る感じだったので、グッと掴んだりするのが難しかったです。藤井さんは私を軽々と持ち上げてくれて、ビックリしました。1話の結婚式のシーンでも、地面から起き上がらせてくれる場面があって。私が態勢的に力が入らないところで、スッと持ち上げてくれたのが、まるで赤ちゃんの扱い方だったんです(笑)。「大人があんなふうにされるのを初めて見た」というSNSのコメントに笑いました。

感情を全部出すのは自分と真逆です

――あの結婚式の場面では打ち掛けを着ていました。

矢吹 初めて着ました。重いし、撮影した日は猛暑で35度くらいあって。汗が出ないように必死でした。

――よく女優さんは夏でも汗を止められるし、冬でも汗をかけると言われます。

矢吹 どうなんですかね? でも、私は普段めっちゃ汗かきで、ライブでも他のメンバーより汗をかいていたのが、あのときは確かにあまり出なかったです。

――あそこでは暴漢を組み伏せるアクションもありました。

矢吹 練習もなく、その場で教えてもらってやったんですけど、楽しかったです。明花のカッコいい一面を見せるところだったので、ハキハキしゃべって動きを機敏にするように心掛けました。

――基本的には、お姫様らしい育ちの良さも意識しているんですか?

矢吹 かわいらしさもありますけど、感情を全部出す子で、わがままなところも見せていて。私自身は真逆で、感情をグッと抑えてしまう性格なので、そこをすごく意識しています。

傷ついても「大丈夫」と言ってしまうのは似ていて

――煌は明花のことを「プライドが高くて、強がりで、融通が利かなくて、バカみたいに正直で、正義感がいっぱい」と言ってました。奈子さん自身に当てはまるところはないですか?

矢吹 強がりではあるかな。傷ついたりして大丈夫でないときも「大丈夫」と言ってしまうところは、明花とちょっと似ています。プライドも高いから、そう言ってしまうのかもしれません。あと、自分で正義感がいっぱいとは言えませんけど(笑)、困っている人がいたら助けたいと思います。

――電車でお年寄りに席を譲るとか?

矢吹 そういうこともしますし、友だちが悩んでいると、声を掛けたほうがいいのか、そっとしておくべきか、めっちゃ考えます。人のためになる行動はしたいです。

――明花はコンパで連絡先を聞いてきた男に、「私の友だちに適当な告白をしたことを謝ってください」と言ってました。

矢吹 あれを言える明花はすごいと思います。心の中で思うだけでもやさしいですけど、それを言葉にして口にできるのがカッコいいいですね。私だったら、絶対日和っちゃいます(笑)。

――「どうしても恋がしたい」というのは、元アイドルとしてはわかる気持ちですか?

矢吹 わからないかもしれません(笑)。でも、自分の意志で結婚とかは決めたいです。人に言われて気持ちを抑えたくはなくて。

脚がブルブルしてサポーターを付けて撮りました

――2話では初のキスシーンもありました。30秒くらいの長いキスでしたが、ラジオで「あまり緊張しなかった」と話されてました。

矢吹 緊張しなかったのは、たぶん理由があって。あのシーン、結構大変だったんです。ただキスするだけでなくて、そのまま2人で崩れ落ちて、床に座らないといけなかったので。脚がブルブルしちゃって、お互いを支え合いながら頑張っていたので、緊張どころではなかったんです。

――アクションみたいなもの?

矢吹 私、膝にサポーターを付けていましたから(笑)。なかなかないですよね。

――キスシーンの前に歯を磨くとかは聞きますけど。

矢吹 「このあとキスシーンなので、サポーターを付けます」って、意味がわかりません(笑)。藤井さんは「イナバウアーみたいになっていた」とおっしゃっていました。でも、明花の初めてのキスでもあるし、すごく慎重に撮影させていただきました。

――モノローグで「違う、好きじゃない」から「私は煌が好きだ」となっていましたが、演じているときもそういう変化は見せようと?

矢吹 明花の中で「好きかもしれない」と葛藤していたので、苦しい表情をしています。目をつぶっているし、キスされているから、どう表現するか難しかったです。

――オンエアを観て、どんなふうに感じました?

矢吹 藤井さんの手が大きいなと思いました(笑)。撮影中は気づかなったんですけど、私の顔が全部包まれていて。そこに目が行ってしまいました。

「お前」と呼ばれるのはイヤでも一途さは素敵

――奈子さん目線だと、煌に惹かれるものはありますか?

矢吹 ボディガードだからといって、GPSを付けられるのはイヤですけど(笑)、困っていると急に現れて助けてくれるのは嬉しいかな。でも、実際にああいうふうに出てこられたら、怖いですかね(笑)。一途なところは素敵だと思います。元カノがいて、キスされても抵抗しなかったのはちょっと許せませんけど、明花は煌のことを好きでなかったのに、ずっと好きでいてくれたのは大きいです。

――「お前、早く俺を好きになれ」とも言われてました。

矢吹 「お前」と呼ばれるのはイヤです(笑)。「早く俺を」も難しいですよね。好きな人に言われたらキュンときますけど、好きでない人だったら「ハァ?」となりそう(笑)。

――藤井さんが言うから様になる、というのもありますよね。

矢吹 そうですね。「あのドラマのマネをしたのに」とならないように、気をつけてほしいです(笑)。そこは少女マンガの世界なので。

心の声が出ていて気持ちを作れました

――今回はヒロインで、出番も台詞も多いのは嬉しいことでしょうけど、大変さもないですか?

矢吹 ヒロインでない役のときは、台詞が多くない中で、過去や心情を自分で作らないといけなかったんです。それが正解なのかどうかは正直わからなくて。でも、明花は感情をすごく表に出しますし、心の声のモノローグが多いんです。このときはこう思っていたんだと、全部書いてあるから、やりやすかった気がします。自分だったら違うという部分を寄せていく努力はしながら、気持ちはスーッと作れました。

――では、あまり演技に悩むことはなく?

矢吹 いえ、悩みました。初日から10話のシーンがあったり、順番に撮っていくわけでないのは大変でした。キラキラのシーンのあとにドヨーンとなる場面を撮ることもあるので。家に帰って「今日はあまりできなかった」と落ち込んだり、完成した映像を観て「もっとこうすれば良かった」ということはありました。

――関東圏で土曜26:30からのオンエアは、リアルタイムで観ているんですか?

矢吹 今は別のドラマの撮影もあって、朝が早かったりするので、配信で観ています。チャンスがあれば、リアルタイムでも観たいですね。あと、「#新妻不倫」で皆さんがポストしてくれるのは見させてもらっています。

モノローグを誉められたのは嬉しいです

――SNSでは意外な感想もありませんでした?

矢吹 嬉しかったのは「モノローグがうまい」と言われたことです。「声の仕事もしていたの?」みたいな。今までやったことはないと思いますけど。監督にも「いろいろな声の出し方ができるね」と言っていただきました。

――技を使っているんですか?

矢吹 「他の言い方もしてみる?」となったとき、いろいろ試してみたくなります。ラブコメだし「何でもやっちゃえ!」と(笑)。その日にやったシーンを、合間や終わってから思い出しながら録るので、そんなに難しい感じはしませんでした。

――明花を演じるに当たって、原作以外に参考にしたものはありますか?

矢吹 同じわたなべ志穂先生が原作を描かれた『王様に捧ぐ薬指』の映像は観ました。どんな感じなのか気になって。

――あちらも偽装結婚ものでした。

矢吹 作品もキャラクターも全然違うんですけど、私も頑張ろうと思いました。

目がハートになっているように演じました

――撮影はもう全部終わったそうですが、放送された前半では、特にどんなシーンが印象的でした?

矢吹 お姫様抱っこもされた3話から、少女マンガ感がグンと増したんです。明花が浮かれてフワフワしていて(笑)、すっかり恋する女の子。マンガでいう目がハートみたいになっていたり、キラキラした映像もあります。かわいらしく演じたつもりなので、楽しみにしていてほしいです。

――1話の友だちに誘われた新歓コンパのシーンで、明花は「いいなー」と言ってましたが、奈子さんも参加したいと思いました?

矢吹 私はイヤです(笑)。人の多い場所は苦手で、初めましての知らない方がそんなにいたら、私はハーッ……となっちゃいます。

――『午前0時の森』でも「こっち側」として出ていましたね。

矢吹 そうなんです。もちろんコンパなんか行ったことないですし、役では「楽しそう」という感じで演じてましたけど、実際はご遠慮したいです(笑)。

――このドラマ、原作だと後半は急展開があります。

矢吹 普通の少女マンガではないようなお話になります。最後のほうはサスペンスみたいで。明花がいないところで話が進んだりもしたので、私もどうなっているか楽しみです。

現場で人格が変わってテンションが高まって

――今後もドラマにバラエティに幅広くやっていくんですか?

矢吹 演技をメインにしたいです。バラエティも好きですけど、実は人前で話すのが苦手で、すごく緊張してしまって。

――これだけバラエティに出ていながら(笑)?

矢吹 『ラヴィット!』の『マヂ肉(マヂラブの本気肉調査隊!)』だけはハッチャケて、普段のふざけた自分を出せますけど、何か変にいい子ぶってしまって。ただ、最近気づいたのは、私、現場によって人格が変わるんです。『新妻不倫』の現場では、めっちゃテンションが高かったです。明花を演じていたからなのか。

――意識して上げていたわけではなくて。

矢吹 何だかすごくしゃべっていて、自分が怖かったです(笑)。日によっても、よくしゃべる日とスーンとなる日はありますけど、『新妻不倫』ではずっとメイクさんたちとワーワー騒いでいました。

私だからできる役をやっていきたい

――自然に役に引っ張られる女優体質なのかもしれませんね。日ごろから演技力を上げるためにしていることはありますか?

矢吹 鏡を見ています。恥ずかしいですけど(笑)。“女優ライト 鏡”で調べた大きめのライト付きの鏡をネットで注文して、自分の部屋のいつも座っている場所の目の前に置いたんです。たとえばお母さんに怒られてイライラしたとき、自分はどんな顔をしているんだろうとチラッと見たり。それで、場面ごとの感情の引き出しを作れるようにしています。

――『新妻不倫』では藤井さんとの30cmの身長差に、キュンとくるという声もあります。

矢吹 そういうコメントがたくさんあって、嬉しかったです。

――IZ*ONE時代に身長がコンプレックスだったのが、個性だと考えらえるようになったというお話もありました。女優としても、そこは武器になりそうですか?

矢吹 まだわかりませんけど、私だからできる役をやっていきたいと思っています。

TWIN PLANET ENTERTAINMENT提供
TWIN PLANET ENTERTAINMENT提供

Profile

矢吹奈子(やぶき・なこ)

2001年6月18日生まれ、東京都出身。

2013年にHKT48に3期生として加入。2018年から2021年まで、日韓合同オーディションからIZ*ONEのメンバーとして活動。2023年にHKT48を卒業し、女優活動を本格的に開始。主な出演作はドラマ『顔だけ先生』、『沼る。港区女子高生』、『癒やしのお隣さんには秘密がある』、映画『向田理髪店』など。ドラマ『18歳、新妻、不倫します。』(ABC・テレビ朝日系)に出演中。11月22日スタートのドラマ『恋愛のすゝめ』(TBS)に出演。ラジオ『アッパレやってまーす!月曜日』(MBS)、『レコメン!』(文化放送)でレギュラー。

ドラマL『18歳、新妻、不倫します。』

ABCテレビ/日曜23:55~ テレビ朝日/土曜24:30~

TVerで見逃し配信、NetflixとHuluでも配信中

公式HP

(C)わたなべ志穂/小学館/ABC
(C)わたなべ志穂/小学館/ABC

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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