Yahoo!ニュース

アイドル卒業から1年。須田亜香里がさらけ出した欠落と「同棲に興味ある」理由とは?

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/松下茜 ヘア&メイク/後口早弥香 スタイリング/池田めぐみ

昨年11月にSKE48を卒業した須田亜香里。独り立ちしてからも活躍が続く中、フォトエッセイ『がんこ』が発売された。アイドル時代には抑えていたリアルな素顔を写真と文章でさらけ出している。1年前の自身を「もう別人」と言うほど、内面的に大きな変化があったようだ。

肩書きでなく人として見てもらえたのが嬉しくて

――SKE48を卒業してからも、仕事は順調のようですね。

須田 どうなってしまうんだろうと思っていましたけど、卒業タイミングで名古屋で(千原)ジュニアさん、大久保(佳代子)さんとのレギュラー番組(千原ジュニアの愛知あたりまえワールド☆)が増えて、今までのレギュラーも続けさせてもらえて、大きな自信になりました。私を使ってくださっていた方も対応が変わってしまうのか、アイドルの肩書きがあってのご縁なのか、ずっと不安だったんです。「卒業しても継続で」と言っていただいたとき、人として見てもらえていたことが嬉しくて。肩書きがなくなったからこそダイレクトに感じられて、幸せをたくさん噛みしめた1年でした。

――グループ時代から個人での活動が多かった亜香里さんでも、不安はあったんですね。

須田 はい。アイドルをやめたら、お仕事はなくなるかもしれない。でも、今のままでは何も変わらなくてダメな気がする。いい波に乗せていただいていた中で、モヤモヤ感は常にありました。どうしたら、そこから抜ける勇気を持てるかが、アイドル時代の最後の3年くらいは自分の課題になっていました。

――アイドルの頃より、仕事の幅はむしろ広がった感じもしませんか?

須田 それはあります。土・日は握手会やライブに活動が限られていたのが、今は個人で三重の津まつりで船の山車に乗せてもらったり、愛知で1日警察署長をやったり、いろいろな地域の方に会いに行けています。自分のイベントでも、ファンの方のそばでやりたかったことを試行錯誤しながら実現できていて。アイドルを卒業したら会えなくなると、ファンの方に心配されていましたけど、「こんなに会えて思い出が作れて嬉しい」と言ってもらっています。

リアルなアラサー妻を等身大で演じられました

――ドラマ『around1/4』ではサレ妻役で、夫の不倫相手との修羅場シーンがありました。「どんなつもりで人の夫に手を出したんですか?」などと冷たく追い詰めていくのが、怖かったです(笑)。

須田 お芝居でも今までにないアプローチをさせてもらいました。25歳前後の人たちが主軸の作品に、リアルなアラサーとして出演して。結婚して妊娠中なのは、自分の引き出しにない部分でしたけど、年齢的には等身大で演じられました。

――最後は土下座した相手の頭に、カフェラテをかけて。

須田 あそこは一発勝負でぶっかけました(笑)。非日常すぎてアドレナリンが出ていて、お芝居の魔法だったと思います。生まれてくる感情がとても強いと、あんなに思い切りできるんだなと。すごく楽しかったです(笑)。

――『がんこ』のエッセイによると、今の事務所は歩合制とのことですが、これだけ多くの仕事をしていると、だいぶ入ってきているんでしょうね(笑)。

須田 いやいや、全然。まだまだですけど、そんなお金の話も書いちゃいました。アイドルだったら書きませんよね(笑)。

セーブした自分を見せるのはイヤだなと

――今回、写真集でなくフォトエッセイにしたのは、亜香里さんの希望ですか?

須田 リクエストをいただきました。フォトエッセイだとしても、文章はインタビュー形式で構成されるのが私の希望でしたけど、「須田さんの言葉には力がある」とプッシュしていただいたので、勇気を出して書きました。

――新聞連載もしていて、文章を書くのもお手のものでは?

須田 自分で自分のことを書くと、取り繕った部分しか出せなかったり、制御してしまうと思うんです。せっかくこんな機会をいただいたのに、セーブした自分をお見せすることになったらイヤだなと。だから、文章を書いては提出して、自分が制御していたようなところを「ここを膨らませたらどうですか?」とアドバイスをどんどんもらいながら、作っていった本です。

――自分発信で形にしたこともありました?

須田 日常に近い写真にしたいということで、進めてもらいました。たとえば海に行くなら、コントラストがきれいになるような赤いスカート。デートでカウンターのあるごはん屋さんに行くなら、あざとめなニットのワンピースとか、本当に私がチョイスしそうな服を着させてもらったり。すっぴんでパンを買いに行って、公園のベンチでボーッと食べているとか、私が実際やっていることです(笑)。そういうリアルな部分と、妄想のデートや旅行での理想の自分を詰め込みました。

ワンピース=グレースクラス/グレースコンチネンタル代官山本店(03-5456-0209)、ニット=ジネス/ジオン商事(03-5792-8003)、アクセサリー=ラティス(06-6231-3817)
ワンピース=グレースクラス/グレースコンチネンタル代官山本店(03-5456-0209)、ニット=ジネス/ジオン商事(03-5792-8003)、アクセサリー=ラティス(06-6231-3817)

旅館で本当にお酒を飲んで撮りました

――旅館にお泊りふうの写真で、だんだん浴衣をはだけていくのは、まさに妄想が広がります(笑)。

須田 撮っていて乗ってきました(笑)。あれは愛知の日間賀島の旅館に宿泊して、本当にお酒を飲んで撮っているんです。私、ごはんとお酒の組み合わせを楽しむので、島の名物のタコを食べて、フグのひれ酒を飲んでいて。それで写真でも、だんだん顔が赤くなっています。

――きれいに紅潮しているなと思いました。

須田 チークではないです。日本酒を飲むとご機嫌になるので、ヘラヘラ笑いながら、畳をゴロゴロしていました(笑)。

――先行カットになった、古民家にランジェリーで横たわる写真も色っぽいですね。

須田 あれは夏バージョンです。旅館などで撮ったのが冬で、約半年置いて湿度高めで、じっとりと撮影してもらいました。

撮影/青山裕企(扶桑社刊)
撮影/青山裕企(扶桑社刊)

暑くて服が脱げた妄想を楽しんでもらえたら

――ああいう艶のある表情も自然に出たものですか? 何かをイメージしていたり?

須田 自然です。笑わなきゃいけないとか、ああしなきゃ、こうしなきゃというのは、表情の面でもあまり意識せずに活動したいと思っています。アイドルのときはステージに立ったら、笑顔でないといけなくて。今もTPOによって「今日は笑顔を届ける」とかありますけど、今回の撮影はそうでなくて。できるだけ素に近い自分を心掛けました。笑いたくないときは笑っていません。そういうのは、アイドル時代には難しいことだったりもしたので。

――素であの表情が出るのは、さすが大人ですね。

須田 夏がこうさせたんでしょうね。でも、畳のシーンは妄想寄りです(笑)。冬はリアルに近い感じでしたけど。こういうのも良くないですか? 私はお気に入りです(笑)。

――どんな妄想をしていたんですか?

須田 ストーリーがあって、同棲している彼氏がいる設定です。でも、同棲していても、普通はこんなふうに横たわったりしませんよね(笑)? キッチンに座っている写真は、自由にしていて座りたいなと思いました。畳のシーンはこうしたかったのかと言ったら、どうなんですかね(笑)。暑くて脱げちゃった、みたいな感じです。そんな妄想を楽しんでいただけたら。

撮影/青山裕企(扶桑社刊)
撮影/青山裕企(扶桑社刊)

半年前の自分の写真を「これ誰?」と思って

――撮影は冬と夏に分けたんですね。

須田 冬に3日間、夏に1日で撮影しています。本当は冬だけの予定でしたけど、本をいつ出すか決めたとき、私がSKE48のオーディションに受かった日で、卒業した日でもある11月1日が、ちょうど1年後でいいということになって。となると、撮影してからが長いなと思ったんです。エッセイを書きながら、写真は半年も前なのかと。

――それが気になったんですか?

須田 その半年の間に、お仕事で本当にいろいろな経験をさせてもらって、感性がアップデートされたんです。カメラの前に立つときも、以前より自然体でいられるようになったり。久しぶりに舞台をやる決断も自分にとって大きいことで、苦手なことにもう1回挑戦しようと頑張っていた時期でした。感性がすごく変わった分、半年前の自分の写真を見たら「これ誰?」と思ってしまって(笑)。

――そこまででしたか。

須田 それで「夏バージョンで今の私も撮ってもらえたら嬉しいです」と、ご相談しました。「冬の私はもう別人なんです!」と一生懸命お願いして。半年経って撮りたかったのが、あのランジェリーかと言えば、よくわかりませんけど(笑)、あんな自分も出したかったんです。

撮影/青山裕企(扶桑社刊)
撮影/青山裕企(扶桑社刊)

湿り気でヘルシーに露出したかったんです

――半年はそこまで長い月日でもありませんが、亜香里さんにはかなり濃かったわけですか?

須田 そうですね。あと、冬は乾燥していて、私の苦手な季節なんです。撮影でも、布をいっぱい着ているのがあまり好きでなくて。冬バージョンで外で撮ったシーンは、ほとんど首から下が服で隠れていて、私の本領を発揮できなかったのが心残りでもありました。

――自慢のスタイルをもっとアピールしたかったと。

須田 自分の体は出してナンボだと思っているので(笑)。冬バージョンは旅館のお風呂のシーンはしっかり濡れてますけど、それ以外の写真は汗ひとつかいてなくて、乾燥している。それも心残りだったんですよね。湿り気が欲しかったし、ヘルシーな露出もしたかった。夏バージョンでは私の内面が変わったこともあって、結果的に湿度高めのカットが生まれました。

自分のお尻がお気に入りでキープしようと

――亜香里さんはネットニュースになるとき、よく「美バスト」とか「美脚」と見出しが付きますが、自分で特に好きなパーツはありますか?

須田 それで言うと、私はお尻推しです。今回、どの写真も素敵に撮っていただきましたけど、ひとつ挙げるなら、お尻は健在(笑)。以前に写真集を出したときとか、ファンの方にもメンバーにも、お尻を誉められることが多くて、自分でも気に入ってました。これからもキープしなきゃと、ピラティスにも通っていたので、その成果も出ていると思います。

――アイドル時代に出した写真集は「売れなかった」とネタにしてましたが(笑)、今回はいけそうですか?

須田 そんなにいっぱい刷らなければ、大丈夫じゃないですか(笑)。何部出すのか私は知りませんけど、身の丈に合った冊数で出版すれば、叩かれることはないと思います(笑)。(*取材後に発売前の重版が決定)

恋愛したら自分の感情を操縦できないかも

――エッセイに関しては、特に書きたかったテーマはありました?

須田 恋愛の部分は今まで自分の中で抑えていた部分でした。抑えなくていい1年を過ごしたから、書けることはいろいろあって。何があったとか、どういう恋愛をしたかという話でなく、自分の感性で書いていいことが新鮮でした。とは言え、私が恋していても恋してなくても、知りたくないファンの方は今もいらっしゃると思います。一方で、私が普通に人として幸せに生きていくことを望んでくださるファンの方も、一定数いらっしゃって。いったん「私はこういう人なんです」とお見せして、大丈夫かどうか、アドバイスをもらえたらいいなと思っています。

――愛の感情について、「欠落」しているという言葉を使われていました。

須田 それを痛手に感じることは多いです。アイドルも裏では恋愛していると思われたり、「人間だから恋をして当然」というのが大前提になっている中で、私はそこが欠落しているから、関わっている人に「変な人」と思われるのが怖かったりもします。いざそういう感情が生まれたら、制御の仕方があるのかもわかりません。今まで知らなかった感情を操縦できないかもしれない。

――愛に暴走してしまうかも?

須田 怖いですよね(笑)。そんな不安もありますし、もしかしたらエッセイにも「この人、大丈夫か?」と思われるようなことを書いているかもしれません。でも、自分の中では思ったままです。他に体型キープやお肌などについても、今まで語ってなかったことがたくさん出てますけど、自分では当たり前すぎて、語るまでもないと思っていました。

向いてないことを夢見る時間はもう無駄なので

――いずれにしても、「欠落」というほど大きいと、さすがに1年で埋まるものではなかったでしょうね。

須田 わかりません。でも、欠落していても自分は自分。それはそれで楽しんでいます。人づき合いがうまそうに見えてうまくない私を、全部ひっくるめて愛してくれる人が周りにいてくれるので、本当に恵まれていて。幸せに生きてはいます。

――先ほど同棲の妄想という話が出ましたが、夏に取材させていただいたきも、「同棲を始めてもいいように家の中を整理しています」とおっしゃってました。

須田 家は結局、散らかっています(笑)。同棲はただの夢。本当はしたくないことでもあります。ひとり暮らしや家族で暮らすのに慣れているので。家の中に好きな人がいたら、どんな感じなんだろうと、怖いもの見たさです(笑)。

――同棲に甘い夢があるわけではなくて。

須田 ないです。憧れも希望もありませんけど、興味はあります。私、イヤなことも良いことも、全部味わってみたいと思うので。たぶん同棲には向いてないタイプですけど、本当に向いてないのか知りたい。向いてないことを夢見る時間はもう無駄なので、そこは効率的に(笑)。諦めるべきものは、早く諦めたいです。

1人の時間より人に会いたくなりました

――エッセイのほうも取り繕ってない感じになりました。

須田 タイトルの『がんこ』も、ずっとファンでいてくださっている方は「あかりんらしいね」と笑ってくれます。でも、たまにお会いする方には「意外だね」と言われて。二極化しているのは、私がまだまだ自分をさらけ出し切れてないから。自分という人間をいろいろな形で見せる仕事をやらせてもらいながら、まだこんなにギャップがあるんだと実感しました。もっと自分を上手にさらけ出せるようになったら、お仕事の幅も広がるかなと、希望を持てた制作期間でした。

――32歳を迎えるというところで、肩の力も抜けてきたのでは?

須田 はい。たぶん抜けすぎてます(笑)。

――自分を縛っていたものから解かれて?

須田 きっと、そうですね。縛らなければとも、アイドルはこうあらねばとも思っていたわけではないですけど、卒業したら、グループを意識する生活から自分の人生を考える生活に、自然に切り替わりました。

――具体的には、どう生活が変わったんですか?

須田 友だちや身の周りの人と会う時間が増えました。グループにいると毎日若い女の子たちと過ごしているから、プライベートまで人に会いたくなかったんです。1人の時間を大事にしていました。でも、今は人に会いたい。寂しいからというより、人と会ってないと自分が進化しないと感じるようになって。そういう部分で行動が変わりました。

美しくなくても内面を出す実践トレーニングでした

――今の順調な芸能活動をずっと続けていくために、長いスパンで見据えていることはありますか?

須田 さっき「自分をさらけ出す」と言ったように、こうありたいという姿でない部分や欠点も、あっていいものとして見せられるかどうかで、仕事でできることが変わってくると思っています。私が一番好きで落ち着ける仕事って、ラジオの生放送なんです。他のどのお仕事もやりがいは感じますけど、リアルタイムでリスナーさんと番組を一緒に作れるのは最高に心地良いです。

――パーソナルな部分が出るメディアですよね。

須田 ファンの方に成長させてもらった私だからこそ、生放送で人と繋がれる時間はすごく好きです。そういう番組を任せてもらえる人になるために、もっともっと自分の言葉や内面を、美しくなくても楽しく出せるようになりたくて。今回のフォトエッセイでは、どうやって自分をさらけ出すか、実践トレーニングさせてもらった感覚もあります。ここで培った感性をこれからも活かして、もっと頑張りたいと、夢を持てました。

撮影/松下茜

Profile

須田亜香里(すだ・あかり)

1991年10月31日生まれ、愛知県出身。

2009年にSKE48の3期生オーディションに合格。2018年の選抜総選挙で2位を獲得。2022年11月に卒業。『熱闘!Mリーグ』(テレビ朝日系)、『千原ジュニアの愛知あたりまえワールド☆~あなたの街に新仰天!~』(テレビ愛知)、『ドデスカ!』(メ~テレ)、『スイッチ』(東海テレビ)にレギュラー出演中。フォトエッセイ『がんこ』が発売中。

須田亜香里フォトエッセイ『がんこ』

撮影/青山裕企 発行/扶桑社 定価/2200 円(税込)
撮影/青山裕企 発行/扶桑社 定価/2200 円(税込)

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

斉藤貴志の最近の記事