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『ゼイチョー』で菊池風磨のバディ役の山田杏奈 「やる人が少ないことを自分がやる気持ちでいます」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)日本テレビ

税金の滞納を巡り、市役所の徴税吏員たちの姿を描くドラマ『ゼイチョー~「払えない」にはワケがある~』。菊池風磨が演じる主人公のバディ役で、山田杏奈が出演している。GP帯の連続ドラマのヒロインとコア層を唸らせる映画の主役級を行き来しながら、それぞれにインパクトを発揮。今回もメガネ姿で熱意のある新社会人役で、リアルな存在感を放っている。

どちらかしかできないことはないので

――『ゼイチョー』では放送スタート前から、菊池風磨さんと共に宣伝でたくさんの番組に出演されていました。ああいう仕事もお好きですか?

山田 何度やっても慣れない感じがします(笑)。出るたびに「面白いことを言えるようになりたいな」と思うのですが、やっぱり難しいですね。

――去年から増えているGP帯の連続ドラマのヒロインのポジションは、元から目指していたものではあるんですか?

山田 仕事を長く続けていくうえで、たくさんの方に観られるドラマや映画に出るという道はあると思います。そういう意味で、この時間帯でお芝居させてもらえるのは嬉しいです。

――当然の志向かと思いますが、杏奈さんはテレビの人気者より、ミニシアター系でも玄人受けするような路線に行くのかと見えた時期がありました。

山田 変わっていきますし、どちらかしかやったらいけないことはないと思います。そういう人が少ないのだとしたら、私がやりますという気持ちでいます。それができれば一番ですけど、まず仕事を任せていただけることがありがたくて。どんな作品でも時間帯でも媒体でも、自分のできることを精いっぱいやらせてもらっています。

――そのうえで、人気や知名度もほしいと?

山田 それもあるといいですよね(笑)。

税金を納めてもらう仕事に人間味が出ています

――『ゼイチョー』で描かれる徴税吏員の世界に、馴染みはなかったですよね?

山田 そうですね。でも、近いところに公務員の知り合いがいて、いろいろ話を聞きました。その方自身は徴税吏員ではなくて別の部署ですけど、大変な仕事なんだと感じました。

――演技に役立つような印象的な話はありました?

山田 ドラマで市民に「人の税金でメシを食ってるくせに!」と言われるシーンがあって、本当にあることなのか聞いたら、「ある」と言ってました。職員に対する市民の方の向き合い方はそれぞれで、1人1人と接するのは苦労が大きいだろうなと思いました。

――税金も普段はそんなに意識することはないですか?

山田 「いろいろな種類の税金があるなぁ」と思いながら(笑)、ちゃんと納めています。

――市民が文句言いたくなる気持ちもわかると。

山田 わかります(笑)。納税課では税金を「納めてください」とお願いしてますけど、普通は「払う」と言いますよね。進んで税金を払う人っているのかなと、思ってしまうところがあって。三係のメンバーも華子自身も仕事に熱意はあっても、自ら税金を納めたいか聞かれたら、たぶん「うーん……」となってしまう。それでも、市民の皆さんには納めてもらうようにお願いする仕事なので、人間味が出ていて。堅くなりすぎずに観られる部分に、繋がっているかと思います。

節約と時間を天秤にかけています

――お金の大切さを実感することもありますか?

山田 常日ごろから感じて生きています。ドラマでは、いろいろな事情で税金を払えない人たちが出てくる中で、スポーツ選手の話があって。去年までバリバリ活躍していたのがケガをしてしまって、前の年の収入で決まった税金が払えなくなってしまう。私たちみたいな職業でも全然起こりうることで、ハッとしました。

――1話で華子がスーパーの安売り情報をアプリで調べる場面がありました。杏奈さんも節約のために何かしていますか?

山田 節約と時間を天秤にかけて、どっちを取るか、みたいなことはあります。スーパーで買うほうが安くてモノもいいので、時間がある日は行きますけど、疲れていて元気がない日は、ちょっと割高でもデリバリーで頼んでいて。

――時間はお金に代えられませんからね。

山田 うまくバランスを取れたら、いいんじゃないかと思っています。

腕時計をすると社会人の気持ちになります

――ドラマでは初の社会人役ということで、パンツスーツも普段は着ませんよね?

山田 役でもこんなにしっかり着るのは初めてです。学生時代の制服みたいに、着るものが決まっているのはいいなと思いました。移動もスーツのままでしていて、パンツだとすごく楽です。

――形から社会人に入るところも?

山田 気持ちが引き締まります。時計を付けると、働いている人だなという感じがします。私、普段は時計はしていかないんです。現場に着くと、すぐ外さないといけないので。バンドを通すと社会人感が出て「よし!」となります。

――メガネは普段は掛けているんですか?

山田 目が悪いので、仕事のときはコンタクトで、家ではメガネをしています。このドラマの撮影中は、朝起きたらメガネを掛けて、コンタクトをして現場に入って、また役のメガネにして、コンタクトで帰って、家で外してメガネを掛けて(笑)。1日じゅう、メガネをしています。

――家宅捜索をして逃げようとする人を、華子が後ろ手に捻り上げて組み伏せる場面もありました。あれは練習したんですか?

山田 撮る前日まで、誰もそのことに触れなくて(笑)。アクション部さんがいなくて、「やってください」と言われたらどうしようかと、ちょっとソワソワしていました。そしたら、前日の終わりに練習させてもらって、何とか形になりました。

――普通に護身に使えそうですか?

山田 使えないと思います(笑)。私では人を倒せない気がします。

能力はあっても実際に働くと違うことを学びながら

――華子の人物像は掴みやすかった感じですか? 新人だけどやる気も能力もあって、ちょっと先走る姿が、いろいろな職場にリアルにいそうに見えます。

山田 想像しやすいキャラクターで、頑張って仕事をしっかりしているところに、私自身も愛着を持てます。自分と年齢も一緒で、確かにこういう人はいそうですね。華子は仕事の能力はあるけど、実際に働いてみると何か違う。その差を学んで、どんどん成長していくのは、演じていて楽しいです。

――杏奈さんの女優人生にも、そういう形の成長はありました?

山田 私は小さい頃から仕事をしてきて、現場でやれることとやらないほうがいいことは、ちょっとずつ学んでいきました。もう仕事を始めてからの年数のほうが長くなりましたけど、今も学んでいることはあります。

――ちょっとしたことだと、弁当に大きい肉巻きおにぎりがドンと入っていたりしたのは、華子の何かを反映しているのでしょうか(笑)?

山田 人生の何かを反映してはいないと思います(笑)。でも、取り繕わない感じですね。饗庭さんの華やかなお弁当と正反対で、機能性重視のようなところが出ています。1話だけ「手榴弾かと思った」とツッコまれて、その後もおかずがミートボールだけ、ウィンナーとウズラの卵だけとか、変なお弁当ですけど、スルーされていて(笑)。たぶん華子は食べられればいい、節約できればいい、というタイプなんでしょうね。

――そこは共感できますか?

山田 私とは全然違います。1食1食、めちゃくちゃ大事にしていますから(笑)。でも、華子は毎日、自分でお弁当を作って持ってきているだけでも、偉いなと思います。

ユルさと熱意のやり取りが面白いです

――菊池風磨さんが演じる饗庭と華子のバディものというところで、参考にした作品もありますか?

山田 『リーガル・ハイ』は観ました。2人の関係性は、あの感じなのかなと考えていて。

――演じていて、バディものならではの醍醐味も感じます?

山田 1話から出来上がったのを観て、華子と饗庭さんが良いバランスだなと思いました。饗庭さんのユルさを華子がつついていく。華子の熱意に、饗庭さんも「しょうがないな」という感じになったり、あのキャラクターだからこそ交わせるやり取りが、すごく面白いです。

――ここまでの序盤で、特に印象的だったシーンというと?

山田 菊池さんがすごいなと思ったのは、1話の終盤で差し押さえをして、ひと段落したあとです。「でも、あのお店は営業を続けるんですよね」「逮捕でもすると思った? 俺たち警察じゃないんだから」という一連の台詞が終わったあと、菊池さんが「もう終わりだと思った? 逮捕しちゃうぞ」と言ったのは、アドリブなんです。

――そうだったんですか。

山田 台本にはそんな台詞はまったくなくて、前の台詞に絡めて入れてきて、すごいなと思いました。私もその場でリアクションを取れて、饗庭さんと華子のキャラクターがよく出た場面になりました。

――杏奈さんは制作サイドの信頼もすごく厚いようですが、今の自分に必要だと思うことはありますか?

山田 今回のドラマでは、周りの方たちの芝居感がすごく良い要素になっていて。華子はツッコんで締めたり、説明をしっかりしないといけない役ですけど、温度感を上げていきたいと思うところがあります。クールに見えるキャラクターではありながら、面白くするのとは別の意味で、皆さんのコミカルさに溶け込める熱量で演じたいなと。それができたら、またひとつ、自分の新しいストックになると思っています。

Profile

山田杏奈(やまだ・あんな)

2001年1月8日生まれ、埼玉県出身。

2011年に「ちゃおガール☆2011オーディション」でグランプリ。女優デビューして、2018年に映画『ミスミソウ』で初主演。主な出演作は映画『ジオラマボーイ・パノラマガール』、『名も無き世界のエンドロール』、『ひらいて』、『彼女が好きなものは』、『山女』、ドラマ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』、『17才の帝国』、『新・信長公記~クラスメイトは戦国武将~』、舞台『夏の砂の上』など。ドラマ『ゼイチョー~「払えない」にはワケがある~』(日本テレビ系)に出演中。2024年1月19日公開の映画『ゴールデンカムイ』に出演。

『ゼイチョー~「払えない」にはワケがある~』

日本テレビ系/土曜22:00~

公式HP

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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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