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元アイドルが性に奔放なヒロインに。スパガ1期生の田中美麗「エッチな動画を観るのに手が震えました」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『こういうのがいい』より (C)双龍/集英社・ABC

気負わず何でも話せてエッチも気楽に。束縛のないフリーダムフレンド(フリフレ)の男女を描くドラマ『こういうのがいい』がスタートする。性に奔放なヒロインを演じるのは田中美麗。アイドルグループSUPER☆GiRLSの1期生で、5年前に卒業して女優に転身。今回は大抜擢となった。原作マンガに合わせて髪をピンクに染め、露出も多い役でハードな体作りに取り組みつつ、チャンスに懸けたという。

話が来たときはゲストか端役かと思いました

――美麗さんが久しぶりのドラマ出演で、しかもヒロイン。嬉しいニュースでしたが、正直驚きました。

田中 私が一番ビックリしました(笑)。

――どういう経緯があったんですか?

田中 以前、『ファースト・クラス』でご一緒したスタッフさんが、声を掛けてくださいました。

――話が来た時点で、『こういうのがいい』でヒロインと聞いていて?

田中 まったくなかったです。私、腰痛の持病でちょっと休業していたので、この1年くらい、表舞台にあまり立ってなくて。ご連絡が来たときは、スケジュールの確認と「ドラマの話がある」とだけ聞いて、「へーっ」というくらいでした。いきなりだったのでゲスト枠か、レギュラーとしてもチョイ役かなと思っていました。

――普通はそういう話になりますよね。

田中 それが実はヒロインという。一度マネージャーさんに「これ、間違いではないですか?」と確認しました(笑)。そしたら、本当に私が友香役ということで、とりあえず原作のマンガを買って読んだら、「こんなにエッチなの⁉」とビックリ(笑)。「これを実写化するのか」と思いつつ、三木(康一郎)監督との顔合わせがあって、本読みの後に1週間もしないで撮影。急展開でドタバタな感じでした。

自分を見失いそうでテレビをシャットダウンして

――ここ2年ほどでは、舞台『BASARA』や8年ぶりの写真集が大きな仕事でした。

田中 やりたいことをマイペースでやらせていただいてました。ただ、一番やりたいのは映像のお仕事だったので「どうしようかな?」と、フリーから今の事務所に入る前に、ちょっと悩んでいました。

――ドラマや映画を観てはいたんですか?

田中 テレビもSNSもシャットダウンしていました。人と比較して、焦ったり「うーん……」となると、自分を見失いそうだったので。年齢的にも四捨五入したら30歳の分岐点ですから、人生を考えたりはしました。そんな中で今回のお話をいただいたので、もう「やるしかない!」という。大胆なシーンもありますけど、縁というか運命というか。チャンスなので挑戦しました。

――もしこのヒロイン役が来てなかったら、どうなってました?

田中 どうなっていたんでしょうね。自分でもわかりません。ずっと家にいて、たまにSNSを開いて、ファンの方の動向を見ていただけだったので。そこまで深刻に焦ってはいませんけど、スパガの同期たちが結婚しているから、そういうことも一瞬考えはしました。でも、好きなことをやりたいから、このままで行こうかなと。

姪っ子のベビーシッターをしてました

――プライベートは充実していたんですか?

田中 私、叔母になったんです。妹が子どもを産みまして。一緒に暮らしていて、姪っ子のベビーシッターをやったりしてました。

――まだ実家暮らしなんでしたっけ?

田中 ずっと実家です。私は埼玉出身で、家族で都内に来てくれたので、ひとり暮らしをする理由はないかなと。よく言えば、にぎやか。マイナスに取ると、うるさいんですけど(笑)、和気あいあいでワチャワチャしていて、楽しい感じはします。

――夜遊びもしてますか?

田中 しないです。私、お酒を飲まないので、休みの日も家族と過ごします。この前は旅行で、伊東に4泊してきました。何も考えず、みんなで1日じゅう海で泳いで、ホテルに帰ったら温泉に入って寝て、次の日はプール。そういうのが一番の幸せだなと思いました。

日常で三大欲求を繰り返すストーリーが斬新です

――『こういうのがいい』の話に戻ると、やっぱり原作は衝撃的でしたか。

田中 驚きが大きかったです。主人公たちがエロに貪欲で、友香もエッチが大好きなので。ストーリーは日常系というか、起承転結があって盛り上がったり挫折したりするわけでなく、ごはんを食べて、エッチして、寝る(笑)。三大欲求を繰り返すのも斬新だと思いましたけど、友香みたいに性に開放的な女性って、あまりいませんよね。演じるに当たって、初めてエッチな動画を観たりしました(笑)。

――友香はAVも大好きなんですよね。ネットで観たんですか?

田中 (ドラマを同時配信する)DMM TVさんで観させていただきました。検索するとき、26歳にもなって「観ていいのかしら」と手が震えてしまって(笑)。

――どんなワードで検索したんですか?

田中 最初は「おすすめ」みたいなのを観ました。友香は生粋のエロ好き女子で(笑)、好みがすべてのジャンルを網羅しているので。それから、台本に出てくる「露出系」というのがよくわからなかったから、検索で打ち込んで「こういうものか」とインプットしました。カメラの前で、それを思い出しながら、台詞を言っていました。

――短い台詞でも、観てわかっているのといないのでは、違うんでしょうね。

田中 自然に出る表情が変わってくると思います。

キスシーンも初めてなのにベッドシーンは激しくて

――原作だと、友香は1話の登場シーンからベッドで半裸になって、お尻を掻いたりしてました。

田中 ドラマもそんな感じですね。原作そのままのシーンもあったり。テレビなりに攻めていると思います。

――エッチのシーンも、いろいろなパターンで毎回あって。

田中 大切なところを炊飯器で隠したり、試行錯誤しながらやっていました。私はキスシーンも初めてだったので、不安もあって。しかも、クランクインした初日にキスシーンとベッドシーンがあって、そう来たかと(笑)。最初は緊張しましたけど、何もわからないので、やってみるしかないなと。

――女優さんとしては、抵抗はなかったですか?

田中 ないわけではないです。女性として。でも、現場の雰囲気が良くて、恥ずかしがっているのが、逆に恥ずかしく思いました。いろいろな方にケアしていただきながら、相手の村田役の西山潤くんにも助けられました。

――そういう絡みのシーンって、役者さんはよく「アクションみたいなもの」と言います。

田中 本当にアクションです。カットが掛かったら過呼吸になるかと思うくらい、ハァハァ、ゼェゼェしてしまって。撮影は9月で真夏日が続いている中、密閉空間で激しい動きをするのは、かなり過酷でした。

ファンの方は抵抗あるだろうなと葛藤しました

――元アイドルとしては、イメージを破る感覚もありました?

田中 そうなったと思います。このドラマに出ると決意したときも、ファンの方々の顔がよぎりました。アイドルをやめても応援してくださっていて、ドラマのことが発表されたときは「イヤだ!」という声が多かったです。それはそうですよね。自分の好きなアイドルがあえぎ声を出したり、脱いだりしているシーンを観るのは抵抗があるだろうなと、私も思いますから。

――スパガを卒業して5年になっても、アイドルのイメージは根付いていて?

田中 そういうふうに見てくださる方はいると思います。でも、自分で決めた挑戦なので、温かい目で見ていただければ。

――自分の中では葛藤はなかったと。

田中 多少はありました。けど、こんなチャンスが舞い込んでくることはないので、楽しみながらやりたいと思っていました。

夜に撮影が終わってからジムに行ったり

――実際、楽しんでできました?

田中 楽しくはあったんですけど、こんなに大変だとは思いませんでした(笑)。脱ぐシーンが多いので、体も絞らないといけなくて。結構ハードなスケジュールで、入りが朝早くても、撮影が始まるギリギリまで筋トレをしたり、マッサージ器具を当てていたり。終わるのが夜10時ごろで、そのあとにジムに行ったりもしました。

――1日じゅうハードな撮影をして、10時過ぎからジム!

田中 それがルーティーンになって、こなせてはいましたけど、最初の頃はしんどかったです。でも、やらないで何か言われるのもイヤだし、自分でも後悔したくなくて。体的にもメンタル的にもキテしまったときは、家族が支えてくれました。

――どんな形で?

田中 私は今回、ロケ弁も一切食べなかったんです。体作りのために、自分でサツマイモやブロッコリーのヘルシーなお弁当を作ってました。中盤からはその気力もなくなり、「何も食べなくてもいいや」と思ったんですけど、朝5時入りでも、起きたら母の作ってくれたお弁当が用意されていたんです。ありがたいなと思って、現場で食べようとしたら、メモも入っていて。「あと何日だ。頑張れ!」とかポジティブな言葉が書いてありました。

恋人でなくて自然体でいられる関係はいいなと

――劇中の村田と友香のフリフレ関係は、美麗さん的にも「こういうのがいい」と思います?

田中 全話通して「いいな」と思う瞬間はたくさんありました。お互い気負うことも気を遣うこともなく、自然体でいられて、大股開いて座ったり、お尻を出して寝ちゃったりもできる(笑)。恋人ではないけど信頼していて、最終回で村田が友香に掛けてくれた言葉に泣きそうになりました。三大欲求だけでない、見せどころです。4話には「恋人とは?」という定義について真面目に話すシーンがあって、私も考えさせられました。

――美麗さんは、どういう存在が恋人だと?

田中 難しいですけど、フリフレはちょっと考えられません(笑)。エッチも気軽にするくらいなら、恋人になったほうがいいと思うので。でも、恋人関係に疲れた人にとっては、欲だけ満たし合える間柄はメリットなのかなとも思います。

――友香の台詞にある「恋人はまだ面倒」という感覚はわかりますか?

田中 わかります。友香がモラハラ彼氏に悩んでいたように、人はみんな自分の好みや意見を持ってますから、価値観がぶつかることはあって。恋人なら、その違いをどう受け入れるかが大事。押し付けるのは良くないし、我慢しすぎても友香みたいに爆発してしまう。良いあんばいで駆け引きができるかどうかという問題ですけど、それを考えること自体が面倒くさくなると、恋人疲れしてしまうんでしょうね。

NOと言わなくても感づいてほしい

――どんなに好きな相手でも、気を遣いすぎるのはしんどいものですね。

田中 自分で自分の首を絞めるようなことは、しないほうがいいと思います。

――でも、アイドルもファンの期待に応えないといけない部分は、多くなかったですか?

田中 私は求められるものと違うことをしてきたので(笑)。伝説ですけど、握手会でファンの方の目を見てなかったり、わりと自由にやっていました。でも、髪を染められないとか、ショートでいないといけないとか、そういう縛りはありました。

――友香がファミレスのバイトを休んだとき、心配した後輩からの長いLINEに怒りがこみ上げるシーンもあります。その気持ちも理解できます?

田中 できます。そのシーンは感情が乗りすぎて、めちゃくちゃ不細工な顔をしていました(笑)。人間、ないものねだりなんですよね。恋人にしてほしいと思っていたことを、他の人にされるとウザくなったり、ほっといてほしいときもある。女の子はYESは言ってもNOは言わないことが多くて、たぶん私もそういうタイプ。言葉にしなくても、感づいてほしいんですよね(笑)。

日常で「しょう油じゃ」と言ってしまったり(笑)

――友香は言葉づかいがオタクっぽくて独特です。

田中 自分のことを「わい」なんて言います(笑)? 語尾も「~じゃ」とか「~でのう」とか、「どこの人?」という感じだったので、繰り返し練習しました。でも、撮っていくうちに、友香なのか美麗なのかわからなくなる瞬間もあって、馴染んできました。逆に、最近は日常でも、友香みたいな口調になってしまって(笑)。

――どんなふうに出るんですか?

田中 電車で座るときに「どっこらしょ」と言ってしまったり(笑)。あと、朝ごはんを妹と作っていたとき、しょう油の賞味期限が切れていて。取り替えて「これは新しいしょう油じゃ」と普通に言っていて、笑われました(笑)。

――それと、友香はゲーマーでもあります。

田中 私はまったく知らない世界で、撮影前にちょっとやってみました。名前はわからないんですけど、パソコンでやる戦闘系のオンラインゲームで、開始5秒で死にました(笑)。あれは難しいです。片手で移動して、片手で撃って。皆さん、器用ですよね。

――ゲームにハマりそうな予感はありませんでした?

田中 まったくありません(笑)。私はハマらないですね。

――美麗さんはどんな趣味があるんですか?

田中 最近、休みのときは家で、家族のために料理をしています。ラザニアとか酢豚とか凝ったものに挑戦して、和・洋・中と作れるようになりました。

失いつつあった何かを役から得られました

――友香は奔放ですが、バイトでの仕事ぶりとか料理の手際とか、しっかり者でもあります。

田中 デキ女なんです。学生時代から部活をやらないでファミレスでバイトをしていたので、仕事ができて素晴らしい。やることはやって、自分の好きなことには素直。かわいらしい女の子だと思います。

――そういう意味では、やっぱり美麗さんがハマるということで、ヒロインに抜擢されたんですかね。

田中 重なるところは全然あります。何ごとにも正直にぶつかるところや、本当は繊細で心やさしくて……と自分で言うのもアレですけど(笑)、友香はいい子だなと感じました。

――撮影は全部終わったそうですが、友香を演じたことで、自分の中に変化もありました?

田中 達成感がすごかったのと、鍛えられて強くなれたと思います。新たな世界も知れましたし、役を通して、失いつつあった何かを得られた気がします。

叶わない目標を立てることはやめました

――放送スタートを前に、美麗さんは27歳を迎えました。

田中 ヤバくないですか(笑)? スパガを始めたときは中2で13歳でしたから。今回の取材のメイクさん、スタイリストさんもスパガの頃からの方で、「結婚どうするの?」という話になりました。でも、今はそんな話も希望もなく、好きな仕事をしているから、いいかなと思っています。

――30代を見据えて、目指していることはないですか?

田中 変に目標を作らないことにしました。アイドル時代から、ずーっと思い描いていたものがあって、3年計画みたいなものを自分の中で作っていたんです。何年後にこの仕事をする、そのためにここで何をする、みたいな。でも、いっさい叶わないので(笑)。

――身も蓋もないですね(笑)。3年前は、今ごろどうなっている計画だったんですか?

田中 結婚していると思っていました(笑)。叶ったこともありますけど、願い続けて叶わなかったときの落胆は大きくて。だから、もう考えることはやめたんです。それより、今を生きる。欲張らずに、ひとつひとつをていねいにこなして、その先に何があるかは運次第。そしたら、このドラマのお話をいただきました。

――そういうことの連続なのかもしれませんね。

田中 何が起こるかを楽しみに、フラットにフリーダムに生きようと思っています。

Fing’s提供
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Profile

田中美麗(たなか・みれい)

1996年10月14日生まれ、埼玉県出身。

2010年に結成されたSUPER☆GiRLSのメンバーとなり、メジャーデビュー。2018年に卒業して、女優中心に活動。主な出演作はドラマ『ファースト・クラス』、『ようこそ、わが家へ』、『JKは雪女』、映画『青春カレイドスコープ 明日きっともっと』、『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』(声優)、舞台『ハイスクール奇面組3~危機一髪!修学旅行編~』、『BASARA』ほか。10月29日スタートのドラマ『こういうのがいい』(ABC)に出演。

『こういうのがいい』

10月29日スタート

ABCテレビ 日曜24:55~

DMM TVで同時独占配信、TVerで見逃し配信

公式HP

(C)双龍/集英社・ABC
(C)双龍/集英社・ABC

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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