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『VIVANT』ハッカー役の飯沼愛が『マイハル』で優等生の女子大生に。「自然体の役は逆に緊張します」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『マイ・セカンド・アオハル』より (C)TBS

大ヒットとなったドラマ『VIVANT』で、OLで実は天才ハッカーの太田梨歩を演じた飯沼愛。2年前にTBSの女優発掘番組でグランプリとなり、大きな期待を掛けられていたが、一気に注目度を上げた。続けて現在は『マイ・セカンド・アオハル』に出演中。広瀬アリスが演じる30歳で大学生となった主人公の同級生役だ。デビューから2年で20歳になり、成長に加速が掛かる中での心境を聞いた。

ウーバーイーツは都会の遊びだと思って(笑)

――2年前に香川から上京して、もう東京暮らしには馴染みました?

飯沼 人の多さには慣れました。ちょっと前まで、ウーバーイーツという都会の遊びにハマっていました(笑)。

――ウーバーイーツは遊びではないかと(笑)。

飯沼 田舎だと、まず家にごはんが届かないので、自分の中では都会の遊びだと思っています(笑)。少し前に手を染めてしまって、なるべくヘルシー料理を意識して注文していたんですけど、たまにドーナツも頼んでしまっていましたね。

――今は飽きたんですか?

飯沼 さすがにお金がもったいないので、もうやめました(笑)。

――1年前の取材では、東京の好きなスポットに谷中銀座を挙げていましたが、渋谷や六本木に行くようになったりは?

飯沼 あまり行かないです。谷中銀座が一番好きなのは、今も変わってなくて、落ち着いた場所を求めがちなのかもしれません。渋谷は乗り換えでよく通っていて、交差点の大きなTSUTAYAは好きです。品揃えが多くて、アーティスト本人のサインもあるので、東京だなぁと感じます。

――行きつけのカフェができたりはしました?

飯沼 できました。家の近くに居心地の良いカフェがあるんです。オシャレな雰囲気で、体に良い食材のスイーツがいっぱいあって、充電器も使えて。多いときは2日に1回とか行っています。

――そこで何をしているんですか?

飯沼 勉強したり、台本をまったり読んだりしています。おうちでやるより、作業がはかどるので。

地元に帰っても「変わらないね」と言われます

――地元の香川に帰ると「変わった」とは言われます?

飯沼 「変わらないね」と言われます。友だちには「オーラないよね」とか、ひどいんです(笑)。その通りなんですけど。お正月に帰省したとき、高校のバスケ部のOG会があって。みんなに混じって試合をしていたら、隣りのコートで見ていた先生に「一緒にいると普通だね」と言われました(笑)。ちょっと嬉しくはあります。

――でも、お顔はオーディション番組の『私が女優になる日_』の頃より、だいぶ大人っぽくなったのでは?

飯沼 その頃から知ってくださっているスタッフさんには、「アカ抜けた」と言ってもらいました。土がちょっと落ちてきたかな(笑)。

――見た目の部分で、頑張ったこともあるんですか?

飯沼 やっぱり人に見られる機会が圧倒的に多くなったので、自分でも気づかないうちに意識していると思います。スキンケアもするようになりました。前は「乳液って何ぞや?」というレベルだったのが(笑)、最近はメイクも楽しくなってきて。

――『私が女優になる日_』以前はメイクをしたことがなくて、1年前は「メイクに飽きた」と話されてましたが、また1周回った感じ?

飯沼 そうでしたね。(デビュー作の)『この初恋はフィクションです』のときにメイクに一気に興味を持って、すぐに飽きて(笑)。この2ヵ月くらい前から、またメイクをするようになりました。ちょっとはうまくなったと思います。

日常で泣くと「この感情を覚えておこう」と

――演技に関しては、準備の仕方とか大事にすることとか、変化は大きかったでしょうね。

飯沼 初めの頃は台詞を覚えるだけで必死だったのが、今は少し余裕が出てきた気がします。周りの空気感に合うようにしたり、スタッフやキャストの方と積極的にコミュニケーションを取るようになりました。

――現場以外でも、日ごろから努力していることもありますか?

飯沼 お芝居を始めてから、日常の中で悲しくて涙が出たり、イライラしたり笑ったり、心が大きく動いた瞬間に「この感情を覚えておこう」と思うようになりました。泣きそうになったら、鏡で自分の顔を見に行ったり。どこか俯瞰して「これはお芝居で使えるかも」と考えています。

――監督か誰かに言われて、指標になったことも?

飯沼 『VIVANT』では監督から、貴重な話をたくさん聞かせていただきました。お芝居や役のことはもちろん、このお仕事を続けていくうえで大事なことも。

――どんな話が刺さったんですか?

飯沼 いっぱいありますけど、細かいことだと、現場には先輩より早く来る、待たせたらダメ、先輩がいるのに勝手にいなくならない、とか。そういう基本の部分をていねいに教えていただくことはなかなかないので、勉強になりました。

ハッカーのシーンは5ヵ月考えていました

――『VIVANT』の反響は大きかったですか?

飯沼 すごかったです。ありがたいことに、ラジオ番組のXや事務所のインスタのフォロワー数がかなり増えました。他にもいろいろな場面で、『VIVANT』のパワーを感じています。

――6話での、飯沼さんが演じたブルー・ウォーカー=太田梨歩の「ハッキングなんて最後は運! 神様の気まぐれ!」も、インパクトがありました。

飯沼 恥ずかしい……(笑)。でも、ああいうお芝居の機会をいただいたのは、本当にありがたいことでした。確か撮影の5ヵ月くらい前に、6話までの台本をいただいていたんです。それからずーっと、あのシーンをどう演じるか考えていました。私にやり遂げられるのかなと。

――結果、納得のいく演技になりました?

飯沼 難しいですよね。たぶん、どう演じたとしても、完全に納得することはできない気がします。でも、あのときの全力は出せたかなと思います。

建築学科の役なので模型を作ってみました

――『マイ・セカンド・アオハル』の沢島真凜は大学の建築学科の1年生。事前の準備は何かしましたか?

飯沼 高校のときの友だちが建築科に通っているので、その子に話を聞きました。やっぱり課題の締め切り前は寝られない日が続いて、追い詰められるそうです。

――劇中でも同級生のそういう台詞がありました。

飯沼 あと、実際に模型を作ってみました。たまたま本屋さんで、公園のキットみたいなものを見つけたんです。自分で遊具の配置とかを決められて、出来上がったものを監督に見せたら、誉めてもらえました。「置けそうなところがあったら置く」と言ってくださったので、もしかしたら劇中で見られるかもしれません(笑)。

――建築に興味を惹かれる部分も?

飯沼 調べる前は馴染みがなくて、難しいイメージでしたけど、触れてみると自由で面白いなと思いました。友だちに建築科に入った理由を聞いたら、小さい頃に自分のおうちが建っていく様子を間近で見て、すごいなと思ったから、ということでした。あと、新築の匂いが好きだと。そんなふとしたことがきっかけになると知って、建築がとても身近に感じられました。

――大学生やキャンパスライフには、どんなイメージがありました?

飯沼 憧れでした。ずっと行きたくて、今も行きたいくらい(笑)。大学での撮影では実際に通っている学生の方もいて、楽しそうです。学食でみんなでごはんを食べたり、広い講堂で授業を聞いたり。今の私の生活には全然ないことで、学生時代は貴重だなと思います。

自分と似ている役で共感できる部分が多くて

――真凜のキャラクターは「冷静で何ごとにも動じない優等生」とのことで、飯沼さんにハマるのでは?

飯沼 掛け離れてはいないかなと思います。

――飯沼さんも『私が女優になる日_』のオーディションから、動じない感じがありました。

飯沼 自分に似ているというか、共感できる部分が多いです。掴めないところはあまりなく、自然体で演じられます。

――真凜はテキパキもしていますね。

飯沼 思っていることをハッキリ言えるタイプで、だからこそ、たまにデリカシーのない部分が出ちゃったり(笑)。でも、すごく真面目で良い子です。

――30歳で大学に入って、学食でぼっち状態だった佐弥子(広瀬アリス)に声を掛けて、自分たちの輪に入れたりもしてました。そういうことは飯沼さんもします?

飯沼 人と話すのが好きなので、向こうに嫌がる素振りがなければ、結構自分から話し掛けにいきます。

日常的な台詞の難しさを実感してます

――では、特に役作り的なことは必要ないわけですね。

飯沼 本当に自然体です。ただ、本読みのとき、監督に「しっかりしすぎている」と言われました。「(『VIVANT』の役柄の)OLをちゃんと忘れて大学生になってね」と。確かに最近、実年齢より上に見られることも多くて。真凜は年齢は自分と1歳しか変わりませんけど、ちょっと幼くするように意識しています。

――話し方や振る舞い方で気を配ることもありますか?

飯沼 真凜はみんなと平等に接する子なので、佐弥子さんが1人にならないように、近くで手助けすることも多くて。そういう部分は台本にも書かれていて、意識しています。

――ラジオの『明日、恋するために…』では、この現場は「変な緊張がある」とも話されてました。

飯沼 それはたぶん役柄とは関係なくて。今回、(学生たちのシェアハウスの)サグラダファミリ家での大人数でのシーンが多いんです。自分の台詞がないところで何をするかが意外と難しかったり、いかに自然に台詞を言えるかが大事だったり。今までは、そういう“THE日常”みたいな場面をたくさん撮ることがなかったんです。

――天才ハッカー役とかは非日常の世界ですよね。

飯沼 高校生役でも、『この初恋はフィクションです』では転校生が誰だかわからない状況だったり、『パパムス(パパとムスメの7日間)』ではお父さんと(人格が)入れ替わっていたり。今回は日常的な会話が多くて、「自然にやって」と言われると「自然って何だっけ?」と、逆に難しいのを実感しています。それで緊張するのか……。今、自分で話していてピンときました(笑)。

私のアオハルは終わってしまった気がします(笑)

――8月で20歳になったばかりの飯沼さんは、まだファースト・アオハルの最中ですか?

飯沼 私のアオハルは終わってしまった気がします(笑)。リアルで大学生になった友だちと久しぶりに会うと、年齢は同じでも「若いなぁ」と感じるので。高校生のときは一緒にワーキャー騒いでいたのに、今の私は落ち着きすぎたように思います。

――大人の世界で仕事をしているから?

飯沼 その分、このドラマの現場では、たっぷりアオハルしようと思っています!

――飯沼さんのアオハルの思い出というと、部活のバスケですか?

飯沼 まさに私のアオハルは部活でした。中学時代はバスケ部中心の生活で、毎日練習があって。当時は本当にキツかったけど、大人になると、あんなに汗水流して頑張れる経験は貴重だなと。みんなでガムシャラになって、必死でボールを追い掛けて、すごく青春だったなと思います。

――20歳になって、ラジオではビアガーデンのレポートをされていましたが、プライベートでも行きました?

飯沼 行ってないです。大人の場ですよね。でも、20歳になった実感は、誕生日当日に「おめでとう」と言われたときから、すごくあります。「もう10代ではないんだ」という。

火ドラに出るのは目標のひとつでした

――火ドラ枠では、森七菜さん主演の『この恋あたためますか』を観て影響を受けたんですよね?

飯沼 もともと火ドラファンでした。ラジオでも火ドラの主題歌特集をやりましたけど、自分が出演することは目標のひとつでもあったので、お話を聞いたときはめちゃめちゃ嬉しかったです。

――現場でも火ドラならではの雰囲気はありますか?

飯沼 女性のスタッフさんが多いです。『VIVANT』はキャストの方も含めて、ほとんど男性だったので、全然違います。

――火ドラに限らず、勉強も兼ねてドラマや映画をよく観たりはしていますか?

飯沼 ドラマは地元にいた頃から好きで、よく観ています。上京してからは、映画館にも足を運ぶようになりました。地元の映画館は小さくて、誰かしら知り合いと会うので、あまり行ってなかったんです(笑)。今はチケット代が安くなる水曜日によく行っています。

――どんな映画を観ているんですか?

飯沼 印象に残っているのは、綾瀬はるかさん主演の『リボルバー・リリー』です。あと、『すずめの戸締まり』をIMAXレーザーというので観ました。ちょっと割高なんですけど、臨場感たっぷりで楽しかったです。

――アニメも観るんですか?

飯沼 『すずめの戸締まり』は同い年の原菜乃華さんが主人公の声優をやられていたので、観に行きました。すごいなと思いながら、勉強になりました。

女優オタクで同世代の方に刺激を受けます

――そういう作品を観て、刺激を受けることもありますか?

飯沼 めちゃくちゃあります。綾瀬さんのバチバチなアクションは本当にカッコいいですし、たたずまいはとてもきれいで。そういう大先輩の方はもちろん、同世代の方の演技を観ても、すごく刺激を受けますね。

――気になる同世代の女優さんもいると。

飯沼 もともと女優オタクなんです。最近ブレイクした方でも、前から「絶対に来るだろうな」と、おこがましいですけど勝手に思ったりしていました(笑)。

――原菜乃華さんもそうなりました。

飯沼 女優さんのお芝居に惹かれると、一気にトリコになってしまいます。私はインタビュー記事を読むのも好きなので、お人柄を知って素敵だなと思うと、より追い掛けたくなってしまいます。

――森七菜さんもそんな感じでした?

飯沼 森さんは私が好きになった頃には、もうすごかったです。同世代だと、同じような役を獲りにいくライバルではありますけど、女優さんは好きなので。その気持ちには抗えません(笑)。

初めての忘年会を何が何でも実現させたいです

――飯沼さんこそ、ブレイクする女優として、今いろいろな人に注目されています。そんな中、『マイ・セカンド・アオハル』は12月まで続きますが、行事ごとも多い時期で、個人的に盛り上がることもありますか?

飯沼 忘年会ですね(笑)。ラジオのスタッフさんと「絶対やろう」と話しています。20歳になって、お酒も飲めるので楽しみです。

――忘年会って10代ではやってました?

飯沼 部活の集まりがあったくらいですかね。去年やおととしはコロナもあったので、ちゃんとやる忘年会は初めてで、何が何でも実現させたいです(笑)。そこで「良い年だった」と思えるように、今はとにかく『マイハル』の現場で頑張ります!

田辺エージェンシー提供
田辺エージェンシー提供

Profile

飯沼愛(いいぬま・あい)

2003年8月5日生まれ、香川県出身。

2021年 にTBS スター育成プロジェクト『私が女優になる日_』 で初代グランプリ。同年にドラマ『この初恋はフィクションです』に主演してデビュー。主な出演作はドラマ『パパとムスメの7日間』、『アトムの童』、『VIVANT』など。『マイ・セカンド・アオハル』(TBS系)に出演中。ラジオ『飯沼愛の「明日、恋するために…」』(TBSラジオ)でパーソナリティ。JAバンク香川のCMに出演中。

火曜ドラマ『マイ・セカンド・アオハル』

TBS/火曜22:00~

公式HP

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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