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『ようかい体操第一』から9年。大原優乃がエロティックサスペンスなどヒロイン3本の背景

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『秘密を持った少年たち』より(C)日本テレビ

一世を風靡した『妖怪ウォッチ』のテーマ曲『ようかい体操第一』を歌ったDream5のメンバーとして、小学生でデビューした大原優乃。グラビアでも2019年のカバーガール大賞など活躍しつつ、女優として頭角を現して数々の作品に出演。今月にはドラマ『秘密を持った少年たち』、『おいしい給食season3』に映画『さよならモノトーン』と3本でヒロインを務めている。ルックス力の高さだけに留まらない躍進の背景は?

芝居に真っすぐすぎるので遊び心も持てたら

――今月は映画1本に連続ドラマ2本と、ヒロインを務めた作品が相次ぎます。

大原 ありがたいことに、今年はずっと作品に入らせてもらっています。いつもはお仕事が大好きで、お休みなんて要らないくらいですけど、最近は珍しく「そろそろお休みをください」とお願いさせてもらいました(笑)。

――女優として順調な歩みが続いていて。

大原 今までは、私のパブリックイメージに近い明るい役が多かったんです。今年は初めての教師役や人間でない吸血鬼、陰のある女の子と、演じたことのない役に挑戦させていただいてます。

――そういう役にも自信を持って取り組めていますか?

大原 自信はまったくなくて、自分の不器用さ、実力不足を実感しているところです。でも、作品に入るたびに必ず持って帰らせてもらうものがあるので、経験の分、強くなれてはいるかなと思います。

――自分を不器用だと捉えているのですか?

大原 私は長所も短所も真面目なんです。それで悩んだりもしていて。芝居に対しても真っすぐすぎるので、役に関して準備はしながら、もう少し遊び心を持てたらいいなと思っています。

エイベックス・マネジメント提供
エイベックス・マネジメント提供

初レギュラーの『3年A組』で危機感を持ちました

――大原さんは『妖怪ウォッチ』のテーマ曲で一世を風靡したDream5から、グラビアでもトップに立ちましたが、女優に対する意欲はどの辺で高まったんですか?

大原 初めての連続ドラマのレギュラーだった『3年A組-今から皆さんは、人質です-』で、同世代の役者の皆さんから、たくさん刺激をいただきました。私は芝居の現場の業界用語も知らないまま入って、役と作品への向き合い方から学ばせてもらいました。

――今では主役やヒロインを務めている方々が、たくさん出演していました。

大原 自分はこのままではいけないと、ある意味、危機感が生まれて。お芝居を「やっていきたい」から「やらなくてはいけない」と意識が変わりました。

――では、演技の楽しさを感じ始めた作品というと?

大原 『ゆるキャン△』です。自分が変われたと思います。オーディションでなでしこの役をいただいて、クランクイン前にドラマ化とキャストが発表されたんです。原作がたくさんの方に愛されていて、今までにないプレッシャーを抱えながら、その分、誰よりも役に向き合った自信があります。

演じた役を愛してもらえる嬉しさを知って

――あのふわふわしたキャラクターを3次元でナチュラルに体現するのは、大原さんにしかできないことに思えました。

大原 今でもSNSに「なでしこ」と呼んでコメントをくださる方もいます。自分が演じた役を愛していただけるのが、こんなに嬉しいことなんだと知りました。

――『ゆるキャン△』での“楽しさ”は、演じている最中というより、放送後の評価で感じたわけですか?

大原 シーズン1のときは本当に余裕がなくて、毎日苦しくて、撮影から帰って泣いたりしていました。クランクアップのときも、「終わって良かった」という気持ちで号泣していて。本当に実力不足でしたけど、今振り返ると「頑張って良かった」と思えます。シーズン2では役が自分の中でできていて、もの作りをキャストやスタッフの皆さんとする楽しさを感じられました。

台詞ひとつで気持ちが揺れて涙も出て

――悩んだ役や大変だった作品もありますか?

大原 初主演の『あせとせっけん』で、またひとつ自分の意識が変わった感覚があります。そのあと、『3年A組』のプロデューサーさんとお会いしたとき、「主役をやってみてどうだった? 自分が主演でないとき、真ん中の人を支えたいと思ったでしょう」と言われて、その通りだったんです。今までにない角度から現場を見るようになって、自分の幅を広げていただいたように感じました。

――でも、撮っている間は苦しかったわけですか?

大原 日々考えながら、役と向き合いました。監督や相手役の佐藤寛太さんとたくさん話し合って、とても救われました。原作のコミックに答えがすべてあると思って、いつも片手に持ちながら脚本を読み込んでいました。

――“悩んだ役”ということで挙げてもらいましたが、そこまで深く悩みはしなかったと?

大原 そうかもしれません。今までは役を必死にコーティングする感覚だったんです。自分で足して足して、役を作っていました。でも、『あせとせっけん』では最初に役の軸を作れたので、ブレずにできたと思います。台詞ひとつでも気持ちが自然に揺れるのを感じて、ト書きに「涙する」と書いてなくても涙が出てきたり。お芝居の面白さを改めて実感できました。

かわいらしい役が得意とは思っていません

――最初に出たように、今月は新境地の作品が続きますが、大原さんは基本的には、『あせとせっけん』や『-50kgのシンデレラ』のようなかわいらしい役が得意ですか?

大原 私的にはそう思っていません(笑)。ありがたいことに、そういう役を多くいただきながらも、たとえばコメディだと全力でふざけたくなって。逆に「もっとかわいくできませんか?」と、演出を受けることも多いです(笑)。

――女優デビューから6年、作品が途切れず続いているのは、自分の何が強みになっていると思いますか?

大原 普通なところでしょうか。私、見た目も性格も普通なので。

――見た目は普通ではありません(笑)。

大原 いえ、いえ。でも、お芝居の世界では、普通さをひとつの武器として受け入れてもらえて。役に親しみを持ってもらえたらと、コンプレックスをポジティブに変えられました。

日々を大切に生きれば役の引き出しも増えるなと

――演技力向上のために、日ごろからしていることはありますか?

大原 最近思っているのが、毎日をていねいに生きたいなと。お仕事をしていて役と向き合っていると、自分自身を疎かにしがちなんです。でも、日々をどれだけ大切に生きられるかで、役者としての引き出しも増えるのを感じるようになって。自分の気持ちが動いたり揺れたりすることに、敏感でありたいと思っています。

――それで生活が変わった部分もありますか?

大原 コロナ禍を経て、行動力が少し増しました。やってみたいと思ったら、ちゃんと挑戦する。「いつかやろう」はもったいない。今を大切にするようになりました。

――何か始めたことも?

大原 運転免許を取って、車で旅行したりしています。最近はドライブには行けていませんが、自分の車が届いたので、トレーニングにも運転して通ったり。サウナが好きなので都心からちょっと離れたところまで、弟を乗せて行って帰って、深夜ドライブみたいなこともしています。

(C)2023「さよならモノトーン」製作委員会
(C)2023「さよならモノトーン」製作委員会

陰なキャラクターとして生きるのが心地良くて

――映画『さよならモノトーン』では、人との関わりを避けて生きる主人公の瀬野修太(中田圭祐)と同じ大学に通い、自分と重ねて支えようとする園田美鈴役。「オーディションを受けてから、ずっと離れないくらい生きてみたいと願っていた役」とコメントされていますが、審査ではどんなシーンをやったんですか?

大原 瀬野くんと初めて出会ったシーンと、美鈴も閉ざしていた心を初めて瀬野くんに開くシーンです。手応えはまったくなくて、悔しくて「チクショー!」と叫びたいくらいの気持ちで(笑)、帰っていたのを鮮明に覚えています。

――美鈴役を「生きてみたい」と思った一方で、イメージ通りに演じられなかったんですか?

大原 いつものオーディションと違って、会場で10分前くらいに台本をいただいたんです。役を処理できなくて台詞もしっかり入らないまま、「もっとできることがあったのに!」という。でも、ト書きにないことを勝手にしちゃったら、役が決まって脚本が出来上がったとき、その動きを入れてくださっていたんです。監督が役者に寄り添ってくださって、自由度の高い作品になりました。

――それにしても、美鈴の何がそこまで引っ掛かったんでしょう?

大原 美鈴のような(父親に暴力をふるわれていた)過去が私にあるわけではないです。ただ、今まで陽のキャラクターをいただくことが多かったんですけど、自分は陰だと思っていて。美鈴として生きている時間はすごく心地良かったです。

自分と重なる弱さがあって不器用なのも似ていて

――大原さんも心を閉ざしていた時期があったわけではなくて?

大原 自分の弱さと重なる部分はあって、美鈴の気持ちを理解してあげたい、味方でいたいと思って演じていました。私も人間関係で悩んだことはあります。美鈴も不器用で、根本的な性格がちょっと似ていると思います。

――合コンに行っても、居心地が悪くなるタイプ?

大原 合コンは絶対行きません! 知らない人がいるごはん会も本当に苦手なんです。

――劇中の美鈴は友だちの付き添いで合コンに来て、1人で帰った瀬野くんを追い掛けて、質問攻めにしていました。自分と似たものを感じたとはいえ、内向的なのに初対面でそこまでするものかなと、ちょっと思いました。

大原 現場で瀬野くんの言葉や表情から受け取るものが、すべてでした。撮影に入る前に、もちろん台本は一度全部読みましたけど、それからは自分が出ていないシーンは記憶から削ぎ落しました。

――つまり、美鈴が知らない瀬野くんは、大原さんも知らないでおこうと。

大原 そうですね。そこは知りたくなくて。その分、現場では、瀬野くんからもらうものはこぼさず受け取る気持ちでした。

(C)2023「さよならモノトーン」製作委員会
(C)2023「さよならモノトーン」製作委員会

自分のことを信じてほしい心情が出ました

――オーディションでもやったという、瀬野くんに父親のことを話して「ただ愛してほしかった……」と言ったあと、1人でむせび泣くシーンも、自然に沸き上がるものがありました?

大原 少しでも瀬野くんの力になりたくて、どんなときも瀬野くんを信じてあげたいと思いながら演じていたのが、いつしか「私のことも信じてほしい」という気持ちになっていて。その心情が現れました。自分の過去や弱さを人に見せても、解決するわけではないけど、瀬野くんには知ってほしい。それだけでした。

――瀬野くんは無言で去っていきました。

大原 でも、その時点で、美鈴自身も変われていたと思います。

――瀬野くんに「家族って何なんだろうな」と聞かれるシーンもありました。大原さんだったら、何と答えますか?

大原 味方、ですね。私の家族はどんなときも味方でいてくれて、私も何があっても味方でいたいと思える存在です。

(C)2023「さよならモノトーン」製作委員会
(C)2023「さよならモノトーン」製作委員会

求愛行為だから美しさも意識していて

――ドラマ『秘密を持った少年たち』では、主人公の光石玲矢(佐藤海音)の初恋の相手で、3年間姿を消して、人の血を吸う“夜行”になっていた吉野ユキ役。中田秀夫監督の作品を観たことはありました?

大原 私はホラーが本当に苦手で……(笑)。この作品が決まってから、『スマホを落としただけなのに』を拝見しました。

――現場では独特な演出とかありますか?

大原 画的に欲しいものを明確にくださいます。かつ、疑問に思ったことを質問すると、すごくていねいに教えていただいて。私には珍しく、迷いなく演じられているのは、中田監督のおかげです。リハーサル期間があって、監督が役に求められているものを知って現場に入れたので、ありがたかったです。

――玲矢の首に噛みつくシーンも、画的にも求められたものがあって?

大原 夜行になったときは眼球の色が変わって、首から頬にかけて血管が浮かび上がります。目に見えて変化するので、お芝居もひとつギアを上げないといけなくて。狂気的だけど、この作品で吸血シーンは求愛行為でもあるので、美しさも見せることは大事にしています。

――「衝撃のエロティックサスペンス」と謳われています。

大原 その看板に偽りのない、見たことのない衝撃の映像になっていると思います。吸血シーンは繊細で、心情の変化をしっかり見せないと、作品がブレてしまうのも感じました。ただの求愛行為でなく、覚悟が揺れ動く葛藤もしっかり残そうと思いました。

(C)日本テレビ
(C)日本テレビ

真っすぐさを失くしたら自分ではないので

――先ほど“悩んだ役”をうかがいましたが、このユキ役こそ難しくないですか?

大原 今までに演じたことのない役柄で、回想ではさわやかな青春シーンが描かれながら、玲矢と再会したら変わり果てていて。抱えているものがとても大きいので、強くいたいと思っています。でも、ト書きになくても涙が止まらなかったり、本番でやってみないとわからないところまで来ています。

――この「金曜ドラマDEEP」枠は大人の女性がターゲット。大原さんもかわいいイメージから、大人の引き出しを増やしていきたいとも思いますか?

大原 特に意識はしていません。いただいた役を生きるのみだと思っています。

――『さよならモノトーン』では「変わらなきゃいけない」という台詞もありましたが、そういうことを考えたりは?

大原 むしろ、「変わったらいけない」というふうに思っています。

――それは「初心を忘れない」的な意味で?

大原 『おいしい給食season3』で市原隼人さんとご一緒して、カットが掛かった瞬間、モニターまで走ってチェックされたり、役に真っすぐ向き合われている姿を間近で見させていただきました。私も性格が真っすぐすぎると言われることはあっても、そこが変わってしまったら自分ではないと思うので。どのお仕事にもひとつひとつ、しっかり向き合いたいなと、最近改めて感じています。

(C)日本テレビ
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初めての先生役は感慨深いです

――その『おいしい給食season3』では初めての教師役を演じています。

大原 感慨深いですね。『3年A組』から生徒役をたくさんやらせていただいて、数々の先生役の皆さんのお芝居を拝見してきたので。自分がそちら側になって、責任感がすごくあります。比留川愛という役で、生徒役の皆さんが「愛ちゃん」とたくさん話し掛けてくれて、本当に先生になれたみたいで嬉しかったです。

――キャラクターとしては先生っぽくないところもあるようで。

大原 新米教師で自分の思っていることをなかなか伝えられず、すぐ泣きそうになってしまったり、内向的な部分があります。だから、先生らしさはなくていいかなと思っていて。作品の中で成長していく姿を残せるようにしました。1980年代の設定で、衣装やヘアメイクもかわいいので、所作や言葉づかいもかわいらしく見せることを意識しました。

――給食を食べるシーンで思い出したこともありました?

大原 楽しみだったのは揚げパンですね。でも、その頃は食にあまり興味がなくて、食べるのも遅くて。昼休みの最後まで残って、給食を食べているような小学生でした(笑)。

(C)2023「おいしい給食」製作委員会
(C)2023「おいしい給食」製作委員会

家でもダラダラせず趣味の時間を大切に

――このドラマのために、英会話を勉強したそうですね。

大原 帰国子女で怒ったときだけ英語が出るキャラクターなので、その台詞のお手本のボイスを聴いて練習していました。自分で英語の先生も見つけて、教えていただいて。『おいしい給食』らしいコメディシーンになっていると思います。

――最初に「日々を大切に」というお話がありましたが、最近も仕事が忙しい中で、プライベートも充実させていますか?

大原 前はお仕事が終わったら直帰して、家でダラダラしていることが多かったのが、趣味の時間を大事にするようになりました。料理したり、映画やドラマやアニメをひたすら観たりしています。

――秋のお楽しみもありますか?

大原 地元の鹿児島から母が遊びに来てくれるので、2人でお買い物や旅行をする予定です。ブドウ狩りができたらいいなと思っています。

(C)2023「おいしい給食」製作委員会
(C)2023「おいしい給食」製作委員会

Profile

大原優乃(おおはら・ゆうの)

1999年10月8日生まれ、鹿児島県出身。

2009年にDream5としてCDデビュー。2014年にアニメ『妖怪ウォッチ』のエンディングテーマ『ようかい体操第一』がヒット。女優として、2019年にドラマ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』で初レギュラー。主な出演作はドラマ『ゆるキャン△』、『あせとせっけん』、『-50kgのシンデレラ』、『なれの果ての僕ら』など。映画『さよならモノトーン』が公開中。ドラマ『秘密を持った少年たち』(日本テレビ系)に出演中。9日スタートのドラマ『おいしい給食season3』(テレビ神奈川、テレ玉ほか)に出演。

『さよならモノトーン』

監督・脚本・編集/神村友征 出演/中田圭祐、大原優乃、岐洲匠、木村知貴、池津祥子、山口香緖里ほか

池袋HUMAXシネマズほかで公開中

公式HP

(C)2023「さよならモノトーン」製作委員会
(C)2023「さよならモノトーン」製作委員会

『秘密を持った少年たち』

日本テレビ系/金曜24:30~(一部地域を除く)

公式HP

(C)日本テレビ
(C)日本テレビ

『おいしい給食season3』

テレビ神奈川/月曜21:00~(10月9日より)、TOKYO MX/水曜17:59~(10月11日より)、BS12トゥエルビ/土曜21:30~(10月14日より)ほか順次スタート。TVerで配信。

公式HP

(C)2023「おいしい給食」製作委員会
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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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