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『仮面ライダーギーツ』でツムリ役の青島心 「しんどくて声も出ない時期もあったのが明るくなりました」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/松下茜

クライマックスを前に映画が公開される『仮面ライダーギーツ』。仮面ライダーたちを見守るナビゲーターのツムリを演じて、人気が爆発したのが青島心だ。ストーリーでは創世の力を宿す怒涛の展開となったが、彼女自身、デビュー後の雌伏の期間を経て、この作品で女優としての覚醒を果たしたようだ。

迷いが出た回から感情がガラリと変わりました

――当初は素性不明だったツムリですが、第二の創世の女神として覚醒しました。この展開を聞かされたのはいつ頃でした?

青島 撮影の3日くらい前に台本をもらって知りました。事前に教えてもらうことはなくて(笑)。

――どう受け止めたんですか?

青島 何となく予想はしていたので「ですよね」という感じでした。(デザイアグランプリの創始者の)スエルさんとそれっぽいシーンがあったりしたので。ただ、どこまで感情を出していいのか、どんなふうに弱り切っているのか、短期間で考えるのは難しかったです。

――その前から、ツムリはだんだん感情や葛藤を見せるようになって、演じるうえで考えることは増えていたのでは?

青島 考える分量は変わりません。感情を出さないお芝居でも、単に淡々と演じるわけでなく、出さないなりに考えないといけないので。

――ナビゲーターの立場では、仮面ライダーたちを見守るしかなかったけど。

青島 その辺の心情は33話・34話の中澤(祥次郎)監督回で、がっつり話し合いました。「どういう解釈をしている?」と聞いてくださったので。ツムリはデザインされた存在で、ゲームのナビゲートが役割として脳に組み込まれているんです。長い年月を生きて、周りの人たちが幸せになれると思って頑張ってきたけど、本当はみんなが不幸になっていた。それがわかる回でした。自分のしてきたことが果たして正しかったのか? 迷いがこの回から出て、その後のツムリちゃんの感情がガラリと変わった気がします。

かわいくなくていいので思い切り来てくださいと

――一方で、ゲームマスターのチラミに怒って「はぁ⁉」と言ったり、頬をムニュッとされるシーンもありました。

青島 シリアスなシーンが多い回だったので、その中で面白さを出そうということで。ムニュッは現場で当日に指示があって、どういうやり方がいいか、山崎(樹範)さんと話し合いました。山崎さんはどんな角度がかわいいか探ってくださいましたけど、私は「ブスになっても全然いいので、思い切り来てください」と言って、わりとスムーズに行けました。

――25・26話でツムリがデザイア神殿を出て、寺の祭りに法被を着て参加したのも印象的でした。

青島 英寿(仮面ライダーギーツ)にキツネの手でおでこをつつかれたり。デザイアグランプリが開催されてなかったので、私もロケに行けて楽しかったです。

――でも、花粉症が大変だったとか。

青島 本当に鼻水がひどくて、台詞をしゃべっている途中に出てきちゃって(笑)。何回もやり直しました。

泣こうと思ってなかったのに怖くて涙が

――他に思い出深い回はありますか?

青島 ツムリは英寿とのシーンが多かったんですけど、41話や42話は景和(仮面ライダータイクーン)と1対1でのお芝居があって。しかも、お姉さんを目の前で助けられなくて、いつもの景和でなかったので、受ける芝居が新鮮でした。あと、新しいゲームマスターでジットさんが出てきて、佐藤流司さんのお芝居が本当に怖くて(笑)。泣こうと思ってないところで涙が出てきたり、自然に気持ちを乗せてくださったのが衝撃的でした。

――英寿に祈りを捧げて、仮面ライダーギーツを復活させたのも大きかったのでは?

青島 そこで創世の女神の力が発動してしまいましたからね。たぶんツムリの個人的な想いもあったんだろうなと。英寿は特別な存在だったんだと思います。

感情を作ろうとしなくても自然に出るように

――1年以上撮影していると、メンタル的に落ちたときもなかったですか?

青島 落ちているときはわりとあります(笑)。みんなはロケとかに行けますけど、私は1人でグリーンバックを見ながら、お芝居をすることが多くて。自分が上手にできているのかわからなかったり、緑色ばかりで気持ちが乗らない日もあって、ズーンとしていました。

――そういうときは、どう乗り越えたんですか?

青島 1回休憩をいただいたり、監督のところに行ってツムリの気持ちがわかるまで、徹底的に話し合ったりしました。お時間をいただいてしまって、申し訳なかったですけど。あとは、つまずくのがわかるシーンがあると、共演のみんなに相談します。「ここはたぶん気持ちが入らなくて、どういう感じでいったらいいかな?」と。そうするとヒントをもらえます。

――そうこうありながら、自分の成長を感じることもありますよね?

青島 私はチラミさん役の山崎さん、ジットさん役の佐藤さん、ニラムさん役の北村(諒)さんと、ベテランの方たちとのお芝居で揉まれることが多いので、ありがたいです。ここ最近、感情を作ろうとしなくても、自然に出てくることが増えてきました。それを維持できるように、技術を身に付けていきたいです。

やっとスタートラインに立てた1年でした

――やっぱり『仮面ライダーギーツ』に出演して、人生が変わりましたか?

青島 プライベートの人生はたぶん変わっていませんけど、女優としての人生は変わったと思います。やっとスタートラインに立てた感じの1年でした。

――知名度も爆上がりで。

青島 上がっているのかな(笑)? みんなほど気づかれないので、あまり実感していませんし、私は知名度は特に気にしてないんです。

――オンエアを観て、レギュラー出演の幸せを感じたりも?

青島 感じますけど、「私はレギュラーなのか?」と思うくらい、出演時間の少ない回もあるので(笑)。でも、自分だけでなく、みんなの姿をオンエアで観られるのは幸せですね。

苦しみから脱出するには出演を掴むしかなくて

――その前の5年ほどは、ドラマでは単発のゲスト出演しかありませんでした。

青島 しんどくて声が出ない時期や「大丈夫?」と言われる時期もありました。それを考えると今は本当に明るくなって、人としゃべるのが怖くなくなった感じがします。

――この世界をやめてしまおうと思ったことも?

青島 やめる選択肢すら、与えられていないと思っていました。たぶん同世代でも、ちょっとつまずいて「お芝居をやめようかな」と考える人はいるでしょうけど、私はその選択肢が頭の中から排除されている状態だったんです。この苦しみから脱出したいなら、頑張って作品を掴むしかない……という感覚でした。

――チャンスさえあればできるという、密かな自信があったりは?

青島 なかったです。『ギーツ』の前は、チャンスをいただいてもたぶん迷惑を掛けてしまうと、負の気持ちが多かったかもしれません。

――今は自信が付いたと。

青島 ちょっとは付いたかなと思います。気持ち面が全然変わりましたし、技術面でも少なからず成長できているので、良かったことしかないですね。

キャラクターソングは4時間半かけてていねいに

――キャラクターソングの『デザイア宮殿で会いましょう』も配信されました。

青島 正直、クランクイン前の打ち合わせのときから「歌はできません」と言ってました(笑)。でも結局、いい曲を作ってくださって、スタッフさんもプロで乗せ上手というか、気持ち良くレコーディングさせていただきました。

――あまり時間もかからず?

青島 時間はかかりました。みんなは2時間くらいで録り終わったそうですけど、私は4時間半くらい。でも、うまくいかなくて時間がかかったというより、おしゃべりしながら楽しくやっていたので。15分歌ったら15分休憩みたいな感じで、ゆっくりていねいに録っていただきました。曲調も楽しくて、大変だった感覚は全然ないです。

――ボイストレーニングもしたんですか?

青島 『ギーツ』の撮影に入る前に、演技の発声のためのボイストレーニングには通っていましたけど、キャラソンに備える歌の練習は行ってませんでした。

映画では本編で絶対しないことをしています

――今回の映画では、英寿がなぜか4人になった中で、ツムリは無人島に現れます。

青島 崖と海という感じのロケーションで、本当に無人島のような景色でした。場所が遠かったのとトイレになかなか行けないのは大変でしたけど(笑)、楽しかったです。

――ツムリの衣装はボロボロになっていて。

青島 無人島に空から飛び降りてきて、地面に足を付けた瞬間にビリビリビリって破れる音が入るらしくて。ツムリちゃんが「うぇーん、ビリビリだー」って、子どもみたいな泣き方をするんです(笑)。

――へーっ。

青島 台本ではト書きにも「子どもみたいに」とか書いてなかったんですけど、現場で監督から「うぇーんと泣いて」と指示がありました。あとは「エーーーッ⁉」とめっちゃ叫んだり、本編では絶対しないことを映画ではしています。英寿のことも、いきなり呼び捨てになっていて。

――ツムリキックも繰り出すようで。

青島 蹴ったあとに「ヨッシャー!」と言うシーンが入っています。それも本編のツムリちゃんだったら、絶対言わないんですよね(笑)。

――青島さんは少林寺拳法の黒帯で、本編ではジャマトを相手にアクションもちょっとありました。

青島 坂本(浩一)監督の回ですね。当日に手を付けてくださって、わりと反響もいただいたみたいで良かったです。

一生残る役なので愛し続けていきます

――この記事が出る頃には、本編の撮影は最終盤でしょうか。

青島 めちゃめちゃ寂しいです。こんなことを言ったらダメですけど、何かトラブルがあったら撮影が延びるかなと、考えてしまうくらい(笑)。毎日誰かと会って、スタッフさんは1年間一緒にやってくださった方が多いので、その撮影がなくなってしまう実感がありません。

――ツムリへの愛着も大きいですよね。

青島 さすがに1年以上演じていると、愛着は湧きまくっています。終わったあとに自分からツムリちゃんが抜けるのか怖くて。でも、自分の中では一生残っていく役なので、忘れずに愛し続けていきたいと思っています。

――最後にツムリはどうなってほしいとか、ありますか?

青島 普通のツムリに戻って、みんなと仲良くしてほしいです。ずっと言っているのが、最終回で景和が働いているお蕎麦屋さんに行きたくて。ハッピーエンドになっていたらいいですね。

悪い役や暗い役もやってみたいです

――前クールでは『Dr.チョコレート』にもゲスト出演されていました。『仮面ライダー』シリーズは登竜門と言われている中で、今後の女優活動の夢も広がっていますか?

青島 ビッグになりたいとかはあまりなくて、続けてお芝居ができたらいいなと思っています。

――野心が強いタイプではないと。

青島 もちろん売れたらいいですけど、だったらどうするのと。売れたいなら技術を上げて、もっと実力を付けるのが根本的な話という気がします。それはデビューした頃から言っていました。

――そうでしたね。前作の『仮面ライダーリバイス』のキャストは、すぐ連続ドラマに続けて出演するようになりました。

青島 前田(拳太郎)さんや日向(亘)さんのドラマは観ています。いつか共演できたら嬉しいですね。

――いずれにしても、今後いろいろな役が来るかと思いますが、青島さん自身はツムリのイメージと違う面もないですか?

青島 私はツムリちゃんほど良い子ではありません(笑)。ツムリちゃんは自分より人が優先で良い子すぎて、私はそこまでかしこまってないというか。だから、真逆の悪い役や暗い役もやってみたいなと思います。

ファイナルステージで甲子園の阪神戦も観られたら

――余談ですが、応援されている阪神タイガースが今シーズンは首位を走っています。

青島 絶好調です(笑)。野球好きのスタッフさんと毎日「昨日は勝ちましたね」「負けましたね」と話していて、今シーズンが始まってからは「勝ちましたね」と言うことが多くて、めちゃくちゃ気分がいいです(笑)。

――推しの小幡選手の活躍もありました。

青島 そうなんです! 去年は代走やベンチが多かったのが、今年は開幕からスタメンを張ってくださって。木浪選手とレギュラー争いをしてますけど、サヨナラヒットも打ちました。守備はめちゃくちゃうまいので、打撃でも活躍していただくと励みになりますね。

――観戦にも行きました?

青島 今はテレビ中継すら観られていません。でも、秋のファイナルステージで大阪に行くので、そのときに甲子園に行けたらいいねと、巨人ファンの(英寿役の)簡(秀吉)さんとも話しています。今年こそ、日本シリーズでも観たいです。

みんなで過ごす最後の夏に思い出を作ります

――その前に、この夏はどう過ごしますか?

青島 何だかんだ『ギーツ』で染まりそうです。夏映画の宣伝や舞台あいさつもあるので。みんなと過ごす夏の思い出を作りたいです。

――夏は好きな季節なんですか?

青島 好きではないかもしれません(笑)。暑いので、冬のほうが好きです。

――忙しくなくても、海に行ったり山に行ったりするノリはありませんか?

青島 家にいたいです(笑)。クーラーをかけて寝たり、サブスクや動画を観たり、おいしいものを食べてゆっくりできたら、何もしなくてもいいタイプです(笑)。

撮影/松下茜

Profile

青島心(あおしま・こころ)

1999年5月19日生まれ、静岡県出身。

2017年にドラマ『絶狼<ZERO>-DRAGON BLOOD-』で女優デビュー。主な出演作はドラマ『私たちはどうかしている』、『アンラッキーガール』、『青野くんに触りたいから死にたい』、映画『放課後戦記』、『映像研には手を出すな!』、『乾いた鉢』など。ドラマ『仮面ライダーギーツ』(テレビ朝日系)に出演中。映画『仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐』が7月28日より公開。

映画『仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐』

監督/中澤祥次郎 脚本/高橋悠也

出演/簡秀吉、佐藤瑠雅、星乃夢奈、杢代和人、青島心ほか

7月28日より全国公開

公式HP

(C)2023映画「ギーツ・キングオージャー」製作委員会(C)石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映(C)テレビ朝日・東映AG・東映
(C)2023映画「ギーツ・キングオージャー」製作委員会(C)石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映(C)テレビ朝日・東映AG・東映

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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