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大詰めの『波よ聞いてくれ』の裏側は? ミキサー役の井頭愛海が語る小芝風花の豹変とコメディの間

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『波よ聞いてくれ』より(C)テレビ朝日

来週、最終回を迎えるドラマ『波よ聞いてくれ』。小芝風花のやさぐれたラジオパーソナリティーぶりが話題を呼んできたが、他にも個性的なキャラクター揃い。その中で一番まともなレコーディングエンジニアを演じているのが井頭愛海だ。波乱万丈で学びも多かったという撮影を振り返ってもらった。

実家では朝ごはんにラジオを流してました

――ラジオに馴染みはあったんですか?

井頭 実家にいた頃は、いつも朝ごはん中はテレビをつけず、ラジオを流していました。大阪のFM802の番組で、8時になるとガウガウちゃんというキャラクターが恐竜の鳴き声みたいにワーッと吠えるんですね。そうすると「学校に行きなさい」と言われるのが日課になっていた記憶があります。

――ご家族で朝からラジオを聴いていたんですね。

井頭 そのほうが顔を見て話せるというのと、みんな音楽が好きだったので。それと中1から高1まで、「国民的美少女コンテスト」の同期とラジオのパーソナリティを担当させていただきました。ぶっ飛んだ寸劇で急に妖精の役を振られたり、広いスタジオの中でフリートークで笑わせたら勝ち、負けたら罰ゲームでめちゃくちゃダッシュしたり(笑)。だから、今回のミナレさんの番組も、自分で体験したことがあるような気がしています。

本物の音声さんからお墨付きをいただいて(笑)

――演じている箱坂富美のレコーディングエンジニアの仕事も、何となくわかっていたような?

井頭 そんなことはなくて。しゃべることに必死でしたし、今まで機材を近くで見ることはなかったので。今回は本当のラジオ局で撮影していて、実際のスタッフさんに教わりました。どうしたら本物っぽく見えるか、相談しながらやっていました。

――それらしく見せるコツがあるんですか?

井頭 機材にずっと手を添えて音を調節するんですけど、メーターの針としゃべっているパーソナリティを交互にチラチラ見ながら、ツマミを微妙にキュッ、キュッと動かすことを意識していました。

――なるほど。

井頭 セットではなくて本物のラジオブースで撮っていたので、扉を閉めてスピーカーをオフにしていると、中の声が聞こえなかったりするんですね。それで、私がボリュームを上げたり下げたり調整していたら、音声部さんから「本職みたいだね」とお墨付きをいただきました(笑)。

(C)テレビ朝日
(C)テレビ朝日

冷静なツッコミも流れに乗せないと

――富美はあのラジオ局で、唯一まともなキャラクーということで。

井頭 皆さん、それぞれキャラが立っていて、私は冷静にツッコむ役をいただきました。受けの芝居が多くて、皆さんがバーッとしゃべっているところに、ひと言入れたりするんですけど、そのテンポ感が難しいです。流れにうまく乗せないといけなくて、コメディの間を教えていただきました。あと、北村(一輝)さんが台本に書いてないことを提案してくださって、みんなで楽しみながら作っていきました。

――どんな提案があったんですか?

井頭 たとえば、6話でラジオ局にクレームがたくさん来て、北村さんが演じるチーフディレクターの麻藤さんが電話線を抜いてしまうところがあって。台本では富美は「ちゃんとしてください」と言うだけだったんですけど、「2人がやり合う感じにしたら面白くない?」と提案していただきました。それで、電話線を入れたり抜いたりし合いました。

ガンマイクで肩がもげそうでした(笑)

――富美もまともと言われつつ、ADの瑞穂が落ち込むと包丁を研ぐということで、ミナレに「確認用に」と太い大根を渡したりしていました(笑)。

井頭 節々で変にズレたところがあるのかもしれませんね。スピンオフでは、誕生日プレゼントに欲しいものを「ビールを箱でもらえたら」と言っていたり。服装とかはイマドキでも、中身は意外とオジサンなのかなと(笑)。

――5話では他のラジオ番組の話をしながら、アルゼンチンバックブリーカーの格好をしていました。このプロレス技は知っていたんですか?

井頭 台本を読んでわからなかったので、調べました(笑)。それで「これをやったら面白いな」ということになりました。

――4話では拉致された放送作家の久連木の救出&収録に、富美もガンマイクを担いでミナレたちに同行しました。

井頭 めちゃくちゃ大変でした! 放送ではテンポ良く流れましたけど、1日じゅう撮影していて。あのカバーの中に本物のマイクは付けてなかったんですけど、それでも重くて、肩がもげそうで腕が筋肉痛になりました。いつも構えてくださっている音声部さんのありがたみを、改めて感じました。

――それで階段を駆け上がったりもしていましたからね。

井頭 風花ちゃんがすごく足が速くて、付いていくのに必死でした。音声部さんに腕が疲れない持ち方を教えてもらって、足音を立てずに歩くのもめっちゃ難しくて。やっぱり職人技はすごいです。

(C)テレビ朝日
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撮影で急に切り替わるのに圧倒されました

――ミナレ役の小芝風花さんのやさぐれモードへの切り替えは、現場で見ていてすごいですか?

井頭 すごいです! 普段は気遣い上手で「大丈夫?」とか声を掛けてくれて、撮影直前まで普通に会話をされていることも多いんです。それで「用意スタート!」となったら、完全にミナレに切り替わって、数ページ分の台詞がどんどん出てくる。私だったら、そんなシーンの前におしゃべりしていたら、台詞が抜けてしまいます。前に共演させていただいたときも、尊敬できるなと思いましたけど、今回は圧倒されました。

――勉強にもなる感じでした?

井頭 なりました。ずっと1人でしゃべっていても、表情も面白いので見ていて飽きませんし、逆に普段からミナレ口調ということもなくて。ギャップがすごすぎて、みんなで「あれは本当に風花ちゃん?」と言っていることもあります。

――ADの瑞穂役の原菜乃華さんとは初共演でしたっけ?

井頭 初めてです。本当にかわいらしくて、瑞穂にピッタリ。私より二つ下で年が一番近いので、よく好きなアーティストの話とかしています。あと、菜乃華ちゃんは差し入れのお菓子をよく食べていて(笑)。私は「太っちゃうかな……」と思うときもあるんですけど、菜乃華ちゃんが「シェアハピしましょう!」というのが決め台詞みたいになって(笑)、「また明日からダイエットしよう」と言いながら、一緒に食べています。

(C)テレビ朝日
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大河ドラマでは言葉にできない感情を紐解いて

――愛海さんは3月に、大河ドラマ『どうする家康』の9話にも出演しました。松山ケンイチさんが演じた本多正信の幼なじみだったお玉役で、長い出演シーンではありませんでしたが、胸を震わせて印象に残りました。

井頭 リハーサルをていねいにやってくださって、「一瞬にお玉が背負っているものを込めよう」と監督とお話しさせてもらいました。台詞はなくても、言葉にできない感情を自分の中で紐解いて心の台詞を作って、表情で表現する感じでした。すごくやり甲斐のある役をいただけたと思います。

――「はよ仏様の元に行きたい」と言いながら亡くなって、正信が家康に反旗を翻すに至る影響を与えました。

井頭 お玉は子どもの頃に連れ去られて遊び女をさせられて、過酷な人生を送っていた中、唯一の汚したくない思い出が、正信とのことだったと思うんです。だから、今の自分の姿を見られたくなくて、「違う違う」と逃げようとしました。浄土真宗にすがって、極楽浄土で幸せになりたいと願ってましたけど、お玉の過去が直接描かれているわけではなくて。リハーサルがなかったら、パッと役に入り込もうとしても難しかった気がします。

――逆に、リハーサルで深いところから役を作っていったんですね。

井頭 そうですね。資料もいろいろいただきました。当時の人たちの生活ぶりや街並みを描いたイラストだったり。浄土真宗のことも調べましたし、監督と話し合って、お玉の人物像を作り上げた感じです。放送後に皆さんのお声をいただいて、お玉の背負っているものを少しでも届けられて良かったですし、次は大河にレギュラーで出たい気持ちも強まりました。

オスカープロモーション提供
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最近は「もう誕生日が来たのか」と

――先ほども出ましたが、『波よ聞いてくれ』のスピンオフドラマ『荒波よ揉んでくれ~南波瑞穂のAD奮闘記~』では、富美はプレゼントに欲しいものにビールを挙げてました。愛海さん的にもリアルな感じですか(笑)?

井頭 私、ビールは今まで飲めなくて、最近、台湾ビールは飲めるようになりました。中華料理屋さんに行ったとき、「おいしいよ」と勧められたんです。日本のビールは苦味が強いですけど、台湾ビールはスッキリしていて。

――好きなお酒は何ですか?

井頭 さっぱりした感じのレモンサワーとかですね。

――実際に3月に22歳の誕生日がありましたが、欲しかったプレゼントをもらったりは?

井頭 私はいつも服とか、自分へのご褒美にしたり、「あれを頑張るから」と買っちゃっているんです(笑)。なので、特別に何かというものはなかったんですけど、朝に実家の弟と妹から録音メッセージで、「おめでとう」と『ハッピーバースデー』の歌を入れてもらったのは嬉しかったです。

――誕生日はまだ嬉しいものですか?

井頭 そうですね。現場でお祝いしてもらえるので(笑)。でも、高校生の頃は誕生日が待ち遠しかったのが、最近は「もう誕生日が来たの?」という感じです(笑)。

スピンオフドラマ『荒波よ揉んでくれ~南波瑞穂のAD奮闘記~』がTVerで配信中
スピンオフドラマ『荒波よ揉んでくれ~南波瑞穂のAD奮闘記~』がTVerで配信中

オシャレなバーで1杯飲んできました

――22歳は特に区切りというわけではないですかね。

井頭 通過点ですけど、大学に行っていたら社会人1年目の年で、『波よ聞いてくれ』でも仕事をしている役をいただきました。普段いろいろ悩んだりはしても、結局「まあ、何とかなるでしょう」という精神に行きつきますし、昔よりものごとに対して、深いところまで考えるようになりました。

――大人になったんですね。

井頭 お仕事でも人間関係でも、20歳を過ぎてから、新しく知ることが増えました。自分が見たことのない世界がまだまだたくさんあるので、さらにいろいろな経験をしたいです。

――どんな新しいことを知ったんですか?

井頭 私が20歳になる前にコロナ禍になってしまったんですけど、最近落ち着いてきたので、友だちとオシャレなバーに行って、1杯飲んできました。オープンな感じで陽の入るお店で、ちょっと大人になった気分でした(笑)。

――競馬のお仕事もされてましたね。

井頭 全然知らない分野でしたけど、競馬場で見たら、すごく迫力があって。もっと知りたくなりましたし、お仕事で新しい経験をさせてもらうのはありがたいです。

お医者さん役で手術をしてみたいです(笑)

――これからも社会人役は増えると思いますが、どんな職業を演じてみたいですか?

井頭 お医者さん役で手術をしてみたいです(笑)。あと、小さい頃になりたかった保育士さんの役だったり、王道の警察官や探偵も楽しそう。学生役は自分も実体験がありましたけど、そういう役は未知の世界。OLさんの役でも、私はパソコンも普段そんなに触らないので。いろいろな人を見て勉強して、ぜひ演じたいと思います。

――最近も韓国ドラマは観ているんですか?

井頭 今は舞台にハマってます。去年『るろうに剣心』のミュージカルをやらせてもらってから、積極的に観に行くようになったら、すごく面白くて。この前はPARCO劇場で『ラビット・ホール』を観ました。成河さんのお芝居を動画で観てから、ずっと気になっていて。舞台で観たら、もうすごく感動しました。

――成河さんは引き付けられる役者さんですよね。

井頭 お芝居が本当に細かいんです。ぬかりがないというか。それがすごく面白くて、いつか共演できるように頑張りたいと思いました。他に、下北の本多劇場にも小劇場にも行っていて、自分もまた舞台に出たい気持ちも強くなっています。

――今後に備えて磨いていることはありますか?

井頭 6月からキックボクシングを始めます。良いところを見つけたので。以前習っていたアクションにも繋がりますし、フィットネスジムだと長続きしないので、パンチやキックでストレス発散もしながら(笑)、磨いていけたらと思います。

(C)テレビ朝日
(C)テレビ朝日

Profile

井頭愛海(いがしら・まなみ)

2001年3月15日生まれ、大阪府出身。

2012年に「第13回全日本国民的美少女コンテスト」で審査員特別賞。2013年に映画『おしん』で女優デビュー。主な出演作は、ドラマ『べっぴんさん』、『さくらの親子丼2』、『少年寅次郎』、『サムライカアサン』、映画『鬼ガール!!』、『メイへムガールズ』、ミュージカル『るろうに剣心 京都編』など。ドラマ『波よ聞いてくれ』(テレビ朝日系)に出演中。

金曜ナイトドラマ『波よ聞いてくれ』

テレビ朝日系/金曜23:15~(一部地域を除く)

公式HP

(C)テレビ朝日
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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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