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『それってパクリじゃないですか?』など友だち役が続く福地桃子 「何でもない場面を丁寧に作ってます」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)日本テレビ

ドラマ『それってパクリじゃないですか?』で芳根京子が演じる主人公の親友を演じている福地桃子。5月スタートの『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』でも同じポジションの役が続く。親しみを感じさせるたたずまいからも打ってつけに思える友だち役に、どんなスタンスで挑んでいるのか?

主人公の周りの個性で話のリズムが作れて

――昨年9月に公開された主演映画『あの娘は知らない』が、今も各地で上映が続いてます。

福地 3月に井樫(彩)監督、岡山天音さんと舞台あいさつをさせていただく機会がありました。より多くの方に届いているのを、直接感じることができています。4月から新たに上映が始まった映画館もいくつかあって、 ローマでのアジア映画祭で上映されたのも嬉しかったです。

――意外な感想を聞いたりもしました?

福地 「手紙を書くね」と言うシーンがあったのを見て、感想を手紙でくれた方がいました。思いもしなかったサプライズで、心が温まりました。

――現在は『それってパクリじゃないですか?』に、芳根京子さんが演じる主人公の藤崎亜季の親友・根岸ゆみ役で出演中。主役のときと心持ちの違いはありますか?

福地 携わる作品ごとに準備や取り組むことが新しくありますが、参加するに当たっての心持ちは変わりません。これまでの作品でも、とても興味深いなと思う役をやらせていただくことが多くて。登場人物の個性でお話のリズムが作られていくシーンがあったり、何でもないやりとりが楽しいなと感じています。

――主人公の個性が親友役によって引き出されることもあります。

福地 そうですよね。今回のドラマだと、私も会社などでの亜季の様子を、まだ撮影で見たことがないんです。仕事をしているときとゆみといたりするときの違いが、きっとあるんじゃないかと思います。

部活の友だちと似た経験がありました

――主人公との距離感について、考えたりもしましたか?

福地 お芝居以外のところでも、芳根さんや共演者の皆さんとたくさんお話をしているので、そのままの空気感が画面に出たりもしていると思います。

――亜季とゆみは高校時代に同じソフトボール部員だった設定です。

福地 1話でソフトボール部時代の回想シーンがあって、2人の関係を築いていくうえで、とても大事だったと思います。撮影では現役のソフトボール部の皆さんに掛け声や構え方も教わりながら、部活の温度感を全身で感じることができました。それで、ゆみの亜季への想いも含めて自分の中で埋められなかったものが、いろいろ想像できたんです。

――頭で考えるだけでは見えなかったものがイメージできたと。

福地 あと、芳根さんが持っている明るさや愛らしい部分は、亜季にもあるなと感じます。近くでいろいろな表情を見ていると、ひとつひとつを「かわいいなぁ」と思うんです(笑)。ゆみはそんな亜季を、お姉さんのような気持ちで見守っているところもあります。

――それにしても、ソフトボール部でゆみはキャプテンで、亜季は補欠でサポート役。親友になりにくいとは思いませんでした?

福地 まったく同じではありませんが、私も似た経験があります。中学時代にバレーボール部に入っていて、相談していないのに同じ部活を選んだ幼なじみと同じポジションで、彼女がキャプテンだったんです。

――ゆみと亜季とは逆のような立場だったんですね。

福地 試合に一緒に出ることはなかなかできませんでした。でも、毎日早起きをして学校で練習をしたり、あのときだけの特別な時間だったように思います。自分が試合に出てないときは、周りをよく見ることができたり、常に役割があって支え合っていた気がします。

(C)日本テレビ
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対象的だから互いにパワーを送り合って

――ゆみについては「とてもパワーのある人」とコメントしていました。

福地 お節介という言葉が合っているのかわかりませんが、とにかく亜季のことをほっとけない。体も心も常に動いているキャラクターで、背中を押すシーンもあります。亜季が持っていて、ゆみは持ってないものもあって、知財(知的財産)のことで助けられたりもしていて。対象的だからこそ、お互いを補ってパワーを送り合っているように思いました。

――ゆみの明るさや元気さは、福地さん自身にあるもの?

福地 会うと元気をもらえる人はなんて魅力的なんだろうと、憧れはあります。ゆみは会話の流れや空気を作ったり、相手を導いたりしていて。そういったアプローチの仕方は、自分がやろうと思っていてもなかなか上手にできません。すごいと思います。

――演じるうえでは、普段よりテンションを上げる感じですか?

福地 この前撮影した亜季の家に遊びに行くシーンでは、監督から「同級生だけど近所のおばちゃんが来た感じで」と言われました(笑)。「台風のような人」という言い方もありますけど、そういう空気を作れるように頑張っています。

ひとつひとつの作業を楽しむことを意識してます

――ゆみがカフェで働いている部分では、手際とか準備したことも?

福地 ひとつひとつの作業をちゃんと楽しむことは意識しています。毎日のルーティンが心地いいな、このお店が何か好きだな、とか。コーヒー豆をゴリゴリ挽いて、粉末になっていくときの香りがいいなと思ったりしながら、その空間を自分のものにできたら、撮影ももっと楽しくなると思ってやっています。

――それで役も生き生きとして見えるわけですね。

福地 ゆみが働いている「カフェ ふわフラワー」は、亜季や皆さんの行きつけのお店なんです。仕事帰りに来たくなるカフェってどんなだろう? どんなところが好きで来てくれるんだろう? そういうことも考えています。

――そこまでイメージするんですか。

福地 自分がお店に立っていたら、常連のお客さんが訪れてくれるのは、すごく嬉しいと思うんです。自分自身、行くたびに落ち着く場所になったらいいなと思っています。

レプロエンタテインメント提供
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出来上がった家族の形が力になりました

――福地さんのこうしたポジションの役では、遡ると朝ドラ『なつぞら』での、広瀬すずさんが演じたヒロインのなつと一緒に育った夕見子役も印象的でした。

福地 あれだけ長い期間、同じ役を演じることは初めての経験で、北海道などで撮影していた日々は大切な思い出です。今でも緊張しぃなことは当時と変わりません。でも、全部の緊張を悪いこととして捉えるのでなく、前向きにその都度、仲良く付き合えたらいいなと思っています。

――夕見子はなつに上から目線でしたが、駆け落ち騒動のとき、なつが「夕見はただの一度も嘘をつかなかった」と訴えるシーンは、2人の関係性が見えて感動的でした。

福地 あのシーンのことを言ってくださる方は多いです。夕見はいつもなつを見守っていたのが、あのときはなつの言葉に助けられて。長い期間を一緒に過ごしたすずちゃんとの関係も相まって、とても心強かったのを覚えています。おじいさん役を演じられた草刈正雄さんには「思い切りやったらいい」という言葉をいただきました。出来上がっていた家族の形があったのが、一番力になりました。

一緒にいる空間で生まれる空気を大事に

――そして、5月からは『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』も放送が始まります。こちらでは河合優実さんが演じる主人公の岸本七実も、福地さんが演じる天ヶ瀬環も家族が問題を抱えていて、高校では三軍同士。体育の授業でいつもペアを組まされるという。

福地 高校生から大学生、社会人と成長するにつれて、2人の関係にもいろいろな変化があります。

――最初は『それパク』と違って、友だちという感じでもなくて。

福地 2人ともとても独特な間(ま)を持っていて、一緒にいる空間に生まれる空気を頼りに演じました。似ているところもまったく違うところもあって、相性が絶妙だなと。実際の生活でも、一緒にいる人に居心地がいいなと感じると、自然に友だちになっていく気がしていて。そういう巡り合わせは改めて考えると、すごいことだなと思います。

役として自然に出たものが積み重なりました

――現場で河合さんとはどう接しているんですか?

福地 環は七実と2人の場面がほとんどで、七実の家族のシーンの雰囲気などは、河合さんに聞いたお話から想像しています。劇中の環も普段から七実の家族の話を聞いて興味を持っていたので、役を演じるうえでも影響があったと思います。

――自意識をこじらせ気味の七実と妙に冷静な環の掛け合いも面白いです。

福地 大九(明子)監督のこだわりもありますが、現場で「どうする?」と言われて、やってみたものが採用されて、本番に行くことも結構ありました。撮影を重ねていく中で環らしい動きが自然に出て、面白いものを見つけてもらっているような感覚でした。その積み重ねで出来上がった役です。

――ドラマの中でスパイスになるようですね。

福地 学校のシーンは七実の家族とのシーンとは違って、大きな事件が起きることもなく過ぎていきます。ただそれだけなのに、見守りたくなると思います。

――3軍同士で愚痴を言っていたり。

福地 ストーリーと直接関係ないのですが、自分で映画やドラマを観ていても、そういう何でもないシーンに好きなものが詰まっている気がします。演じていても心地良かったと思えると、やっぱり嬉しくて。監督がモニターの前ですごく笑ってくれて、ひとつひとつ確認しながら、丁寧に作っている時間がとても楽しいです。

学生時代の友だちと集まる計画を立てるのが楽しみ

――福地さんの実際の友だちはどういうタイプですか?

福地 明るくて柔軟な人が多いです。それぞれ違った趣味を持っているけど、誰かが「これをやらない?」と呼び掛けたら集まったり。

――福地さんが呼び掛けることも?

福地 あります。年に1回みんなで集まる会があって、その計画を立てるのが楽しみです。「今年はどこで何しようか?」と考えて、大きい公園でピクニックをしたり。

――部活仲間の関係って、ずっと変わりませんよね。

福地 そうですね。とてもエネルギッシュだった学生時代の気持ちに戻れるのは、なぜなんでしょうか。

――4月クールのドラマも始まりましたが、個人的にこの春から取り組んでいることもありますか?

福地 部屋の模様替えをしました。物を整理しても、すぐ捨てるのではなく、ボックスに去年着なかった服などを分けて、1コ段階を置いています。その間に、もらってくれる人を探そうと思います。

Profile

福地桃子(ふくち・ももこ)

1997年10月26日生まれ、東京都出身。

2019年に連続テレビ小説『なつぞら』に出演。主な出演作はドラマ『#リモラブ~普通の恋は邪道~』、『消しゴムをくれた女子を好きになった。』、『鎌倉殿の13人』、映画『あの日のオルガン』、『サバカン SABAKAN』ほか。主演映画『あの娘は知らない』が公開中。ドラマ『それってパクリじゃないですか?』(日本テレビ系)に出演中。『舞姑さんちのまかないさん』(Netflix)が配信中。『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(NHK BSプレミアム)が5月14日からスタート。

『それってパクリじゃないですか?』

日本テレビ系/水曜22:00~

公式HP

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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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