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“片想いごっこ”に女子の憧れを詰めて…。高橋恭平の主演映画でヒロイン、畑芽育のドキドキシーンの裏側

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)2023「なのに、千輝くんが甘すぎる。」製作委員会(C)亜南くじら/講談社

高橋恭平(なにわ男子)の単独初主演となる映画『なのに、千輝くんが甘すぎる。』。彼と“片想いごっこ”をするヒロインを畑芽育が演じている。少女マンガ原作の青春ラブストーリーには出演自体が初めてながら、可憐なヴィジュアルとも相まって、女子の憧れを体現する役にハマっている。数々の胸キュンシーンの裏で、真摯な取り組みをしていたようだ。

自分はキラキラ映画と掛け離れてると思ってました

――『なのに、千輝くんが甘すぎる。』は超王道の青春ラブストーリーですが、こういう作品への出演は初めてでしたっけ?

 ここまでキラキラした青春もので、コミカルかつ明るい役は初めてに近いです。

――観る分には好きなジャンルですか?

 すごく好きでした。中学生、高校生の頃は、友だちとこういう青春ものを観に映画館に行っていて。今回の新城(毅彦)監督の作品も観ていました。

――『ひるなかの流星』や『午前0時、キスしに来てよ』とか?

 自分が出演するに当たって、もう1回観直しました。あと、少女マンガ原作で大好きだったのは、浜辺美波さんと竹内涼真さんの『センセイ君主』。それから、多部未華子さんと三浦春馬さんの『君に届け』も、映画館とオンデマンドで何回かわからないくらい、たくさん観ました。

――では、自分が出たい気持ちもあったわけですか?

畑 めちゃめちゃ憧れてはいました。ただ、自分の今までの役で持たれている印象からは掛け離れているだろうなと、勝手に思っていて。まさかのヒロインというお話をいただいて、ビックリしました。

お姫さま抱っこをいかにきれいに見せるか

――『千輝くん』の原作を読んで、真綾役が自分に合いそうな感じはしました?

 自分が演じる前提で、「ここはどうしようか?」と考えて読み進めていましたけど、役としても楽しそうな気がしていました。

――「甘酸っぱくてドキッとするシチュエーションがたくさん詰まっている」とコメントされていました。特にどの辺のシーンでそう思いました?

 予告編にもありますけど、お姫さま抱っこだったり、膝枕だったり、バックハグだったり。ずっと真綾視点で描かれていて、千輝くんと距離が近いシーンがたくさんあるので、観てもらう方々に自分を投影していただけると思います。

――そういうシーンは、演じていても甘酸っぱさを感じたわけですか?

 自分が高校時代にできなかった恋愛の疑似体験をできて、楽しかったです。

――お姫さま抱っこをされるのは、どんな気分でした?

 真綾としてはドキドキですけど、畑芽育としては高橋さんに負担を掛けないことでいっぱいでした。たぶんお互い、お姫さま抱っこをする機会もされる機会もないですから(笑)。いかに映像がきれいに見えるか、手探りしていました。

――見え方を第一に考えて。

 その中で、真綾はドキドキとキュンキュンと嬉しさが入り混じった表情をしないといけないし、考えることがありすぎて、どうしていたかよく覚えていません。ただ、高橋さんが軽やかに持ち上げやすいように気をつけました。

コミカルなところもかわいらしさを残して

――青春恋愛ものならではの演出もありました?

 基本的には、今までのお仕事での経験を詰め込んだつもりですけど、意外と自分が気づいてなかった細かいクセを、監督に教えていただきました。「口がモゴモゴ動きやすいから、もう少し目のお芝居がほしい」とか。現場で確認するモニターは小さくて、大きいスクリーンに映ると、ちょっとした動きが気になったりもするんですよね。

――顔のアップもありますし。

 真綾がいかにかわいらしく、そして、背中を押したくなるような女の子に見えるか。自分の想像を越えたところで監督が指示してくださって、助けられました。

――挙動不審になったり、心の声が漏れたり、コミカルなところもありました。

 真綾は嬉しいのも悲しいのも、わかりやすく顔に出る子なので、表情のお芝居は意識してます。かわいらしさを残しつつ、ちょっとお茶目なところや微妙なあんばいを監督と相談しました。どこまでやっていいのか。いったん振り切って、やりすぎと言われたら、ちょっと抑えて。

――やりすぎたこともあったと。

 ありました。「表情が面白すぎて、観る方がそっちに目が行ってしまう」ということでした(笑)。でも、「おバカさんだな」と思えるキャラクターでもいないといけなくて、頑張りました。

高校時代を思い出してキャピキャピと

――ドキドキとか、とろけそうな表情は自然に出たものですか?

 真綾の気持ちを考えながら、原作にも助けられました。同じシーンを見比べて、マンガで真綾はどういう表情をしているか研究したり、どんな心境でそこにいるのか、役の火種をマンガからもらうことも多かったです。

――原作に寄せる部分もあったと。

 リスペクトを持ちながら、私のオリジナリティも出すのは難しかったですけど、楽しい作業でした。観る方たちが真綾を自分と置き換えてもらえることを、第一に考えていました。

――場面ごとにいろいろありつつ、真綾のベースとして意識したこともありました?

 最初の本読みのとき、監督に「全然暗いから、もっと高校時代を思い出して」と言われて、明るくしないとダメだなと。声を少し高くする。表情ももっと豊かにして、テンポ感もアップさせる。本当にいろいろなことを考えて、明るい女子高生でいることを心掛けていました。

――実際の高校時代はそういう感じだったんですか?

 そうですね。私の高校は共学でしたけど、ほとんど女子で、一日じゅうふざけていた感じです(笑)。

好きな人と目を合わせるのは当たり前でなくて

――真綾の言う「片想い業界」には詳しいですか?

 その辺はいろいろ探りながら、役を作りました。恋愛している友だちから情報をもらったり、自分の小学校時代の片想いまで遡って思い出したり(笑)。

――演技に役立ったこともありました?

 友だちに「好きな人の顔はあまり見れないよ」と言われたんです。お芝居では見ないといけないシーンはありますけど、好きな人とは目を合わせることすら当たり前でないのは、確かにそうだなと。勉強になりました。

――「片想いをすると常識的ストーカーになる」というのもわかりました?

畑 その台詞も大好きで、真綾の言いたいことはすごくわかります。好きな人のことはずっと目で追っていたい。そういう気持ちは理解できました。

小鹿の動画で痛そうな歩き方も研究しました(笑)

――「好きな人の好きなものを好きになる」というのは?

 わかりますけど、まだ経験はないです(笑)。本当に好きな人ができたら、その人のどんな趣味も好きになれるか。自分に置き換えて考えてみて、そういうことすらきっと楽しいと思えるだろうなと、想像で補いました。

――好きな人が鉄道オタクだったら、一緒に電車旅をするとか?

 趣味は共有したいです。自分の知らないジャンルのことを教えてもらって、逆に自分の好きなものも知ってもらいたいです。

――劇中では、真綾は陸上部の千輝に合わせてジョギングを始めて、脚を引きずっていました。

 撮影でも走りましたけど、高橋さんほどではなくて、脚が痛くなったお芝居をしました。台本のト書きに「小鹿のように歩く」と書いてあって、どういう歩き方なのか、小鹿の動画を観て研究しました(笑)。いかに脚が痛そうに見えるか。そこは観る方に笑っていただけたらいいなと。タモリさんのものまねの映像も観ました(笑)。

――ひとつのシーンのために、そこまで。メインの恋愛シーンについては、なおさらですか?

畑 本当にたくさん研究しました。参考に胸キュン映画、青春映画もいっぱい観て、吸収したものが多かったです。

――特に参考になった作品というと?

 監督が「真綾のキャラクター像に近くて、ヒントを得られるかも」と教えてくれたのが、『午前0時、キスしに来てよ』で橋本環奈さんが演じられた役です。表情の使い方とか話し方とか、取り入れられるものは参考にさせてもらいました。

デートでは難しい映画を観て語り合いたいです

――デートシーンは普通に楽しめました?

 楽しかったです。でも、撮影中はジメジメして暑かったです(笑)。

――2人はお寺からのデートでしたが、自分の理想のデートコースはありますか?

 私は映画が好きなので、一緒に観に行きたいです。映画の観方で相手がどういう人か掴めるかもしれませんよね。観終わったあとで感想を語り合うと、どういう視点で観ていたとか、性格とかいろいろわかるかなと、今思いました(笑)。

――デートで観るなら、どんな映画がいいですか?

 小難しい感じの作品ですかね(笑)。大作系は楽しくても深く語り合う感じではなさそうなので、ミニシアターの小説が原作の映画とかで、どこが面白かったとか、誰のお芝居が良かったとか、お話ができたら楽しいだろうなと思います。

――感性を磨いてないと、芽育さんの彼氏になれなそうですね(笑)。

心配されるくらい本気で叫びました

――千輝のような学校イチのイケメンが相手だったら、真綾のように釣り合いは気になりそうですか?

 好きになったらどうしようもないと思いますけど、いざ真綾と同じ状況に置かれたら、「本気で好きにならない」という気持ちが働いて、余計に辛くなるでしょうね。周りからの反感が怖いのも当然だと思いました。

――後半には叫ぶシーンもありました。

 競技場をまるまる借り切って、エキストラのお客さんがたくさんいらっしゃったので、感情は入りやすくて。声が嗄れるんじゃないかというくらい、本気でたくさん叫んで、記録さんに「カメリハではなるべく声を出さないで」と心配されました。

――この青春ラブストーリーにヒロインとして出演して、殻が破れたようなところもありますか?

 自分にとっては今までにない作品で、チャレンジの気持ちで学ぶものは多かったです。前作の『森の中のレストラン』とは対極でしたから(笑)。

――そちらでは絶望を抱えて、森に自殺をしに来る役でした。最近の『Get Ready!』のゲスト回も陰のある役で。

 過去の作品とも観比べていただいて、「こういうお芝居もできるんだ」と思ってもらえたら、何より嬉しいです。

早口を直してゆっくりしゃべる女性になりたいです

――今までこういう作品に出てなかったのが不思議なくらいの、ヒロインぶりでした。でも、実際はもうすぐ21歳。高校時代とは恋愛観や理想も変わったのでは?

 最近思ったのは、会話を面白くできる人はいいなと。別にギャグを言ってほしいわけではなくて、話のテンポ感とか間に挟む相槌とか、細かいところにその人のユーモアが滲み出ると思うので。あと、友だちと「どうしたらモテるだろう?」という話もしました(笑)。

――それで結論は……。

 モテる女性はゆっくりしゃべるんです! そういう人になりたいね……と言いながら、今日もすごく早口になっていたと思いますけど(笑)。

――そうですね(笑)。

 つい、まくし立ててしまうんです。これからは気をつけて、緩やかにしゃべって、余裕のある女性になることを21歳の目標にします。

研音提供
研音提供

Profile

畑芽育(はた・めい)

2002年4月10日生まれ、東京都出身。

1歳から芸能界で活動。主な出演作はドラマ『99.9-刑事専門弁護士-』、『荒ぶる季節の乙女どもよ。』、『青天を衝け』、『プロミス・シンデレラ』、『純愛ディソナンス』、映画『ショコラの魔法』、『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』、『森の中のレストラン』など。公開中の映画『なのに、千輝くんが甘すぎる。』に出演。1st写真集を4月10日に発売。

『なのに、千輝くんが甘すぎる。』

監督/新條毅彦 脚本/大北はるか 原作/亜南くじら

出演/高橋恭平(なにわ男子)、畑芽育、板垣李光人、莉子ほか 配給/松竹

全国ロードショー公開中

公式HP

人生初の告白に玉砕した高2の如月真綾(畑芽育)は、落ち込んでいるところを学校イチのイケメン・千輝彗(高橋恭平)に見られる。周囲には塩対応な千輝に“片想いごっこ”を提案され、本気で好きにならないことを条件にしていたが、真綾の気持ちは揺れ動いていく。

(C)2023「なのに、千輝くんが甘すぎる。」製作委員会(C)亜南くじら/講談社
(C)2023「なのに、千輝くんが甘すぎる。」製作委員会(C)亜南くじら/講談社

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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