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『仮面ライダーギーツ』謎のヒロインの青島心 「いつもテンションを上げているのに『もっと』と (笑)」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/武井保之

『仮面ライダーギーツ』でヒロインの1人、ツムリを演じている青島心。平和を乱す敵と戦う生き残りゲームの世界でナビゲーターを務め、素性は謎に包まれた役だ。東宝シンデレラオーディションのファイナリストから芸能界に入って11年の23歳。悔しい想いが続いた時期も経て勝ち獲った大役への想いと、女優としての取り組みを語ってもらった。

悔しくて焦っていた時期はありました

――『仮面ライダーギーツ』では、ドラマデビュー作の『絶狼<ZERO>-DRAGON BLOOD-』以来のヒロインとなりました。この5年間のうちには、オーディションなどで思い通りにいかないこともありました?

青島 悔しい想いは毎回していました。でも、マネージャーさんがそういう気持ちを察して言葉を掛けてくださるので、すぐ切り替えはできていたと思います。

――その間に何かを磨いていたりも?

青島 いろいろな現場でたくさんのことを吸収させていただいたのと、アクション練習にはずっと通っていました。そういう作品があったら、ぜひ獲りたいと思っていて。

――もともと少林寺拳法の黒帯なんですよね?

青島 そうです。事務所の東宝芸能でアクションをやられる方があまりいないので、唯一無二になれたらと。ツムリは変身しませんし、これから変身するのかも知りませんけど、特撮に出られて良かったです。

――最初がヒロインだっただけに、大きい役が続かないと焦りもありました?

青島 そうなんです。『絶狼』のときは初めてで何もわからない状態で、まずはちゃんと演技力を付けて……とは思っていましたけど、焦っていた時期はありましたね。だから、『仮面ライダーギーツ』が決まったときは嬉しさより、ホッとしたのが大きかったです。

オーディションは緊張して「大丈夫?」と言われて

――オーディションを受けるまでは『仮面ライダー』シリーズは観たことがなかったそうですね。

青島 観ていませんでした、ごめんなさい(笑)。日曜朝といえば『プリキュア』でした。

――女の子ですからね。オーディションを受けるに当たって観たりは?

青島 受かってからは観ましたけど、オーディションのときは観ていません。素の自分でいこうと思って。

――審査では「ガチガチに緊張していた」と発言されています。もちろんオーディションは緊張するでしょうけど、新人でもない身でそこまでだったんですか?

青島 いつもわりと緊張しますけど、このオーディションではプロデューサーさんたちから「大丈夫? 取って食べたりしないから」と言われるほどでした(笑)。演技審査の台本は事前に配られてなくて、会場に10分前に入ってからもらったんですね。見ながら演技しても良かったんですけど、パッと見たものをちゃんとできるか不安で、緊張が大きかったんだと思います。あとはやっぱり、ここで何とか役を獲らないといけないプレッシャーがあって。「落ちたらどうしよう……」というのが出ちゃっていた気がします。

手応えはなくてショボくれて帰りました

――最初からツムリ役ということで受けたんですか?

青島 いえ、台本には3~4コ役があって、全部やりました。ナビゲーターの役はそのうちのひとつで、今思えば(仮面ライダーギーツに変身する)英寿だったような役の台詞も言った記憶があります。演技の幅がどれくらいあるかを見られていたのかなと思います。

――仮面ライダーナーゴの祢音役もやったんですか?

青島 やりました。ただ、そのときの台本では、祢音の立ち位置の役にお嬢様感はなくて。最終審査のとき、監督に「お嬢様っぽくやって」と言われました。

――その中で、ナビゲーター役に手応えがあったんですか?

青島 これが実はまったくなくて。私の隣りにいた方が服装からナビゲーターっぽくしてらっしゃって、すごくハマっていたんです。祢音役はオーディションが終わってすぐ、(星乃)夢奈ちゃんがプロデューサー陣に呼び止められてお話をされていたので、「この子だな」と思いました。私はたぶんダメだろうと、帰り道はショボくれていました。

――そしたら、誕生日にツムリ役で合格したと連絡が来たとか。

青島 友だちが誕生日のお祝いをしてくれるということで、向かっていた道でマネージャーさんから「受かった」と連絡をいただきました。だから、ルンルンで誕生日会に行きました(笑)。

私も役の素性は知りません

――ツムリは“素性不明”というキャラクターですが、心さんは素性を聞かされているんですか?

青島 聞いてないです。聞いても「内緒」と言われて、ほとんど教えてもらえなくて。台本を読んで、視聴者の方と同じことを知るのが現状です(笑)。

――それだと演じにくくはないですか?

青島 めちゃくちゃやりにくいです(笑)。あとから「こういうことだったんだ」とわかると、「あのシーンはやり直したい」というのが出てきちゃうので。でも、仕方ないですね。

――オープニング映像の最後には、ツムリが英寿に銃を向けています。

青島 あれも意味がわからず、監督に聞いたら「伏線を回収しない説もある」ということでした(笑)。撮影では、銃を突きつけるときは「企みの笑みでなく、素でニコッとしてほしい」と言われたんです。でも、出来上がって観たら、企んでいる感じになっていました(笑)。

――本編では、まず明るく元気にいこうと?

青島 明るくナビゲートして、みんなが嬉しかったらツムリも嬉しいという感じでした。でも、9話の終わりからちょっとずつ、思っていることを顔や口に出すシーンが増えてきて。だんだん素が見える方向性のようです。

共演のみんなの協力でスイッチを入れて

――テンションはだいぶ上げて演じているんですか?

青島 そうですね。監督に何回も「もうちょっと上げられる?」と言われながらやっています。最初はテンションを上げることで精いっぱいだったのが、今は上げられるようにはなってきて、演じることに重きを置いているところです。

――スイッチの入れ方があるんですか?

青島 序盤は「ハッ!」とかやっていました(笑)。共演のみんなにも「一緒にやって」とお願いして、手伝ってもらって。

――ツムリのナビゲートは、うたのおねえさんやディズニーランドのキャストをイメージしたそうですね。

青島 クランクイン前の本読みの時点で、そういうテンション感がほしいと言われたので、軸にしました。あと、うたのおねえさんたちは思ってないでしょうけど、「そんなことも知らないんですか?」という感情も入れています。

――声も普段と変えています?

青島 テンションが上がると、自然に高くなっていると思います。「ミッション、スタートです」とかはツムリ仕様の声になっていますね。

野球観戦に行くとめちゃくちゃハシャぎます(笑)

――難しい演出もありますか?

青島 よく言われるのは「青島心はやらないと思いますけど、ツムリなのでやってください」と(笑)。(ゲームに勝った)デザ神降臨のとき、ジャンプを2~3回していましたけど、撮影ではハシャいで走り回って、すごくテンションを上げて「ヤーッ!」となっていたんです。それをずっとやっていると、青島心が出てきてしまって。

――青島心さんはそんなにハシャがないと?

青島 そうですね。たぶんメインの5人の中で、素は私が一番静かです。

――そんな心さんが最大限ハシャぐのは、どんなときですか?

青島 野球観戦に行くと、めちゃくちゃハシャぎます。私は阪神ファンなのですが、メイクさんと東京ドームで試合を観たときは、テンションが上がりました。

――阪神の中でも推しの選手はいますか?

青島 昔は能見投手が好きでしたけど、オリックスに移籍して、今シーズンで引退されて。今は、まだレギュラーではないショートの小幡選手に注目しています。守備がうまくて、私より年下で頑張っているのを見ると、勇気をもらえます。

説明シーンはまとめて朝から夜まで撮ります

――ツムリの話に戻ると、2話では平和を守る生き残りゲーム「デザイアグランプリ」の説明をする長いシーンがありました。台詞が多くて大変だったのでは?

青島 基本的に2話ずつ撮っていく中で、説明シーンは全部グリーンバックで、まる1日に詰め込むんです。そうすると、私だけケタ違いに台詞の量が多くて。しかも、説明なので感情の流れがないから、頭に入りにくいんです。そういう台詞を朝から夜までずーっとしゃべっていて、みんなはただ聞いているから、NGを出すとしたら私だけ。すごくプレッシャーがあって、最初の1・2話は特に大変でした。

――前の日は寝る時間を削って覚えたり?

青島 そうですね。3・4話分、5・6話分……と、説明台詞を撮る前日はあまり寝られないかもしれません。小分けに撮れればいいんですけど。似たような台詞も多くて。「ミッション、スタートです」もあれば「ミッション、開始です」もあって、間違えるとやり直しなんです。

――意味は同じでも、変えたらいけないんですね。

青島 撮影後半になると、どうしても集中力が切れそうになってしまって。そういうとき、夢奈ちゃんともっちゃん(杢代和人/吾妻道長=仮面ライダーバッファ役)の顔を見ると、なぜか落ち着くんです。だから、2人を見てシーンに入ります。

――2話ではツムリが変身ポーズもしていました。

青島 あれはスタッフさんに「仮面ライダー1号のポーズを取ってほしい」と言われたんです。ちょっとだけ練習して、ぶっつけ本番で撮りました。

戦うシーンで音と煙にビックリしました

――他にこれまでの本編で、特に印象的なことはありますか

青島 11・12話でツムリが初めて、みんなと一緒にデザイアグランプリの迷宮脱出ゲームに参加したんですね。みんなにくっ付いて守られていただけでしたけど、ずっとデザイア神殿から見ていた立場だと、戦うシーンはオンエアにならないとわからなかったので。戦っている気持ちと大変さがわかって良かったです。

――特撮ならではの体験もできました?

青島 パーン!と鳴って煙が上がりました。いきなり音が鳴り出したのでめちゃくちゃビックリしましたけど、声を出すと撮り直しになってしまうから、必死に我慢していました。

――細かいところだと、1話で変身用具のデザイアドライバーとIDコアを配りに行っていた中で、祢音と猫カフェにいるシーンが挿入されていました。

青島 猫ちゃんが2人のところになかなか来てくれなくて、ずっとお菓子を持っておびき寄せていました。流れたのはちょっとだけでしたけど、結構時間が掛かりましたね。

――2話では高級レストランで英寿と食事をしていて。

青島 あそこはイン前の本読みで毎回練習して、重要なシーンだと感じていて。前日は緊張で眠れませんでした。いつものツムリでなく、実は英寿とお互いをある程度知っているゆえの会話でしたけど、クランクイン当初で英寿役の簡(秀吉)さんとはまだ仲良くなれていなくて。その埋め合わせが難しかったです。

――撮影前日に眠れなくなることもあるんですね。

青島 明日のシーンは大事だと思うと、寝られなくなったりしますね。

劇場版の小悪魔は頭がおかしいくらいに(笑)

――今後、ツムリがメインになる回もあるんでしょうね。

青島 どうでしょう? 私はない気がします(笑)。このまま仮面ライダーたちに寄り添っていそう。でも、メイン回があったら嬉しいです。

――絶対に何か裏はありそうですよね。

青島 あると思います。ただ、最初の頃より、現場で「みんなに寄り添う」と指示されることが多くなっていて。感情が出るようになったのも、プレイヤーを守ろうとしてゲームマスターのギロリさんに盾突いたりしているので。みんなを裏切るとか、本性が見えてくる感じではないんですよね。

――劇場版の『仮面ライダーギーツ×リバイス MOVIEバトルロワイヤル』では、外見から違う小悪魔ツムリになっています。

青島 TVシリーズでずっと高めのテンションなのが、小悪魔ではさらに上を求められて(笑)。いつものツムリでも大変なのに、本当に疲れました。一度目をつぶって「私は今から頭がおかしい人になる」と思わないと(笑)、出せないくらいのテンション感でやっていました。私としては、妖艶さも出したかったんです。

――それは出せましたか?

青島 興味がないことには見向きもしないで、落差を激しくしました。コロコロ変わるところが、小悪魔っぽくなったと思います。

――劇場版には仮面ライダー龍騎も参戦しています。

青島 私は『龍騎』の皆さんとのシーンが多めで、勉強になりました。レジェンドの方たちのカッコ良さを間近で感じられたのは、いい思い出です。

話題になる作品には必ず理由があると思います

――劇場版が公開されると今年も大詰めですが、1年前の年末年始はどう過ごしていました?

青島 親戚回りに顔を出して、お雑煮を食べて……。特に何もなかったですね(笑)。大みそかは家でテレビを観ていて、毎年日付が変わったあと、友だちと近所の神社に集合して、お参りするのは恒例にしています。

――去年の初詣で願ったようなことは、叶った1年だったのでは?

青島 そうですね。お仕事関連のことをお願いしがちなので、『ギーツ』に出られたのは神様に叶えてもらったのかもしれません。でも、目先の大きな作品が決まることより、安定した演技の実力を付けることを目標にしていました。

――そのために日ごろから努力していることもありますか?

青島 作品はたくさん観るようにしています。オフには1人で映画館に行きますし、ドラマは今の作品より、過去作をサブスクでよく観ます。

――最近だと、どんな作品を観ました?

青島 クドカン(宮藤官九郎)さんの脚本が好きで、作品はずっとループして観ています。この前は『うぬぼれ刑事』をまた観たり。あと、しばらく前に話題になった『最愛』も観ました。世間で人気になる作品には必ず理由があると思うので、遅れながらも観るようにしています。『最愛』では『仮面ライダーゼロワン』の高橋文哉さんが出てらっしゃって、ここまで行けてすごいなと思いました。

落ち込むと『天使にラブ・ソングを…』を観ます

――映画ではどんな作品が印象に残りました?

青島 私、『天使にラブ・ソングを…』が好きなんです。今日はダメだった、気持ちが入らなかった……と落ち込んだときは必ず観て、気持ちをリセットして次の日に臨むことにしています。

――特に好きなシーンもありますか?

青島 教会で歌っているシーンが一番好きです。あと、最後にシスターたちがみんなで主人公を助けに行くところもいいですね。

――女優さんでいいなと思う人もいますか?

青島 何年か前に観た『脳男』での、松雪泰子さんの演技がめちゃめちゃ心に残っています。品がある精神科医の役でしたけど、二階堂ふみさんの顔にツバを吐いたんです。それでも品は残っていて、なおかつ、松雪さんでなく役に見えていました。

――同世代の女優さんを意識したりは?

青島 まったく気にしません。この世界、かわいい方やきれいな方はいっぱいいらっしゃって、全員が同じ枠でないというか、当てはまるイメージは違うので。人には人、私には私の役柄があると思っています。

ここで成長を止めず次に繋がるように

――来年の目標も立ててありますか?

青島 とりあえず『仮面ライダーギーツ』が無事に終わることを願っています。この数ヵ月で自分でも成長できたと思うので、ここで終わらせず、あと半年とちょっとでさらに成長して、次に繋げたいです。

――どんなところが成長できたと?

青島 テンションを上げるのが当たり前になって、ちゃんと演技を考えて、無理している感じが減ってきたかなと思います。

――予想としては、ツムリはどうなりそうですか?

青島 普通の人間になりたいです。今は人間なのかわかりませんけど、女の子らしい生活ができたらいいですね。それか、むしろこの世界から消えてしまうとか。

――他の衣装も着たいとか(笑)?

青島 着たい気持ちもありますけど、この衣装は1から全部、私に合わせて作ってもらったので、そう言うのも失礼かなと思って。ただ、わりとスースーする素材なので、冬場は寒いんです(笑)。1話の冒頭の海辺ではコートを着ていたので、あれを冬は着たいとお願いしてますけど、寒さに負けないように頑張らなきゃですね(笑)。

撮影/武井保之

Profile

青島心(あおしま・こころ)

1999年5月19日生まれ、静岡県出身。

2017年にドラマ『絶狼<ZERO>-DRAGON BLOOD-』で女優デビュー。主な出演作はドラマ『私たちはどうかしている』、『アンラッキーガール』、『青野くんに触りたいから死にたい』、映画『放課後戦記』、『映像研には手を出すな!』、『乾いた鉢』など。ドラマ『仮面ライダーギーツ』(テレビ朝日系)に出演中。映画『仮面ライダーギーツ×リバイス MOVIEバトルロワイヤル』が12月23日より公開。

『仮面ライダーギーツ×リバイス MOVIEバトルロワイヤル』

監督/柴﨑貴行 脚本/高橋悠也、木下半太

12月23日より全国公開

公式HP

「ギーツ/リバイス」製作委員会(C)石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映
「ギーツ/リバイス」製作委員会(C)石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

『仮面ライダーギーツ』

テレビ朝日系/日曜9:00~

公式HP

(C)2022 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映
(C)2022 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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