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HKT48の矢吹奈子と運上弘菜が映画に出演。韓国と福岡での2年半を経て変わったものは?

斉藤貴志芸能ライター/編集者
左:矢吹奈子 右:運上弘菜(撮影/松下茜)

日韓合同グループIZ*ONEで活躍し、HKT48復帰後にセンターを担う矢吹奈子。その不在中のHKT48で台頭してセンターも務めた運上弘菜。2人が出演する映画『向田理髪店』が公開される。それぞれ韓国と福岡での2年半を経て、共にグループを支える中核となった2人の現状と女優としての取り組みを聞いた。

日本を離れていた間にグループを守ってくれました

――弘菜さんがHKT48に入ったときは、奈子さんはもうスターだったわけですよね?

運上 大スターでした(笑)。私の初選抜の『早送りカレンダー』でセンターをされていて、恐れ多くて話し掛けられない、手の届かない存在でした。

――一緒に活動して、イメージが変わった部分もありました?

運上 常にみんなと気さくにお話しされていて、私たち後輩にも気軽に声を掛けてくれました。そこは韓国から帰ってきても変わりません。最近は一緒にツアーを回って、隣りのポジションにいたりもするので、以前よりは私からもお話しできるようになりました。

――奈子さんは弘菜さんが研究生になったときから、注目していたそうですね。

矢吹 そうなんです。4期生のお披露目から、目を付けていました(笑)。自己紹介を一番目にしたんだよね?

運上 そうです。

矢吹 そのとき、「うわっ、この子かわいい! 絶対これから来る!」と思ったんです。

――その通りになりました。

矢吹 私が韓国に行っていたときにセンターを務めたり。私とさくちゃん(宮脇咲良)が離れていた間、HKT48を守ってくれた存在だと思っています。

撮影/松下茜 ヘア&メイク/水野花菜 スタイリング/渕上陽子
撮影/松下茜 ヘア&メイク/水野花菜 スタイリング/渕上陽子

遥かにレベルアップして引っ張ってくれています

――韓国でIZ*ONEで活動中も、HKT48のことは気に掛けていたんですね。

矢吹 もちろんです。「今こういうことをしているんだ」「9周年の準備中か」とか。ライブのセットリストをさくちゃんと見て、「こういう感じなんだね。面白そうだね」と話したりもしていて。その中で、「なっぴ(運上)がセンターになったんだ」と思いました。

――弘菜さんも、奈子さんのIZ*ONEでの活動は注目していました?

運上 情報は常に追っていました。テレビでもよく観たし、街を歩いていて曲が流れてきたりもしましたから。奈子さんは移動中も常に写真を撮られているので(笑)、SNSに上がったのをメンバーと見て、「今日の奈子さん」みたいな感じで話していました。

――そして、去年5月に奈子さんがHKT48に戻ってきました。

運上 本当に以前と変わらず気さくで、みんなを平等に見てくださって。私だったら、もうちょっと気取ってしまうかもしれません(笑)。

――世界の矢吹奈子ともなれば。

運上 そうですね。世界で活躍して帰ってきたわけですから。でも、奈子さんは本当に変わりません。だけど歌やダンスに関しては、もともとすごくお上手な先輩だったのが、さらに何コもレベルアップして、みんなをいっそう引っ張ってくださって。メンバーとも「すごいよね」と話しています。

矢吹 嬉しいですね。

人生を見つめ直せる映画が好きです

――お2人は映画『向田理髪店』に出演していますが、もともと女優の仕事にも意欲があったんですか?

矢吹 子役時代はそんなに強い気持ちはありませんでした。でも、HKT48に入ってから、ずっと目標を携帯にメモしていて、韓国に行く前に「学園ドラマに出たい」と書いていたんです。日本に帰ってきて、『顔だけ先生』に出演できて、何年か越しに夢が叶いました。昔から興味を持っていたうえに、生徒役のみんなと年が近くて、いろいろな話を聞いて刺激を受けました。演技の勉強をするようになって、今もレッスンを受けています。

運上 私は今回、初めての映画の現場で奈子さんが演技しているのを間近で見たりして、勉強してみたいなと思いました。

――映画やドラマを観るのは好きでした?

運上 私は洋画が好きです。小さい頃から家族と映画館に行っていて、今は配信で目についたものを、どんどん観ています。時間があるときに何をするかと言ったら、映画鑑賞ですね。

――どんな作品が好きなんですか?

運上 たくさんありますけど、一番は『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』です。ああいう不思議な雰囲気があったり、人生を見つめ直して観終わってから考えられる作品が好きです。

――少女マンガ原作のラブコメとかは?

運上 あまり観ないですね。マンガもそんなに読んだことがなくて。

矢吹 そうなんだ。

衣装協力/FURFUR
衣装協力/FURFUR

韓国のラブコメにキュンキュンしました

――奈子さんの好きな作品は?

矢吹 ずっと好きと言っているのは『SPEC』です。瀬文さんと当麻の掛け合いが最高すぎて、ハマってしまいました。観たら絶対もう1回観たくなるくらい、面白い作品ですね。

――SPECホルダーでお気に入りもいました?

矢吹 もちろん一番は当麻です。死んだSPECホルダーを呼び出せるので。

――アイドルだった真野恵里菜さんが演じたサトリは?

矢吹 「さとります」の前に毎回あの踊りをやらないといけないのは、大変だなと思います(笑)。あと、ニノマエも大変そうな人生ですよね。時間を止められるけど、その分、自分の時間は進んで年を取るのが早いので。だから、普通が一番かもしれませんね。

――他には、どんな作品が好きですか?

矢吹 最近は韓国ドラマをよく観ます。『社内お見合い』でキュンキュンしました(笑)。私はラブコメが多いかもしれません。あと、アニメも観ます。

――弘菜さんは女優さんで好きな人はいますか?

運上 アン・ハサウェイさんと石田ゆり子さんです。石田さんはエッセイも読んでいますし、インスタグラムも面白くてチェックしています。一番の憧れの女性ですね。

衣装協力/SNIDEL
衣装協力/SNIDEL

台本にないことも想像しながらアイドルらしさを残して

――寂れた元炭鉱町が舞台の『向田理髪店』で、弘菜さんは中国から嫁いできた香蘭を演じました。中国人っぽさを出すようにもしたんですか?

運上 もともと台詞はない予定だったのを、中国語でひと言あいさつする場面を監督が入れてくださって。本番直前まで発音を調べて練習したんですけど、結局カタコトの日本語になりました。

――日本人としては、中国人のカタコトっぽく言うのも、また難しかったのでは?

運上 そうですね。“カタコト 発音”で検索しました(笑)。でも、台詞そのままの言葉は出てこなかったので、ひと言が難しかったです。

――「結婚を祝う会」でのチャイナドレスは似合っていました。

矢吹 めちゃめちゃ似合ってた!

運上 花嫁ということで、ウェディングドレスかと思ったら、やっぱり中国から来たので、チャイナドレスでした。珍しい体験で、すごく新鮮でしたね。

矢吹 お団子の髪形も、すごくかわいかった。

運上 中国ふうにしてもらいました。

――奈子さんは国民的アイドルで映画の撮影に来た大原零役。

矢吹 裏の顔もある子ですけど(笑)、表に出るときは明るく元気なんだろうなと思って、台本にない過去のことも想像しました。長く芸能活動をしていて、誰もが「アイドルといえば」と思い浮かべるような存在になったのかなと。あと、劇中劇では女優として役を演じていても、アイドルっぽさを残していたほうがいいと思って、そこは意識しました。

血のりにリアルにビックリしました(笑)

――撮影では、どんなことが印象に残っていますか?

矢吹 最後に撮ったのが、劇中劇で自分のこめかみを銃で撃つところでしたけど、その前に本宮(泰風)さんがバン、バンと撃たれて、血を流してズダッと倒れるシーンがあって。あそこは服の中の血のりが入った袋がボンとなる仕掛けで、一発本番だったんです。

――血のりで服が汚れるからですね。

矢吹 私は血がどういうふうに出てくるのか、想像もできなかったので、リアルに「エッ!?」とビックリした顔をしていると思います(笑)。

運上 私は体育館に街の人たちが集まって、みんなで映画を観ているシーンがありました。エキストラの方も多くて、結構長い時間がかかって、真冬ですごく寒かったんですね。私は衣装的に素足だったので、震えて擦っていたら、富田(靖子)さんが気づいてくださって。スタッフさんに話して、カイロを渡してくださいました。

――ベテランの富田さんが、そんな気配りを。

運上 私にとっては初めてのプロの演技の現場で、いつもテレビで観ている方たちとご一緒して、すごく緊張していたんです。でも、皆さん本当におやさしくて、声を掛けてくださって。温かい現場で良かったと、そのとき実感しました。

北海道から福岡に来て冬も半袖と短パンでした(笑)

――田舎町での物語で、弘菜さんは北海道の地元と通じるところもありました?

運上 私の地元も田舎町で、後継ぎ問題は耳にしますし、同級生が帰るかどうかという話も聞きます。重なる部分はすごくありました。

――そういう町からHKT48に入って福岡に来て、最初は香蘭みたいに馴染めなかったりも?

運上 そのときの不安な気持ちは重なったりもします。福岡は街自体はコンパクトで、メンバーが常に一緒だったので馴染みやすかったんですけど、暑いのが大変でしたね。最初の夏は家の中にいても、熱中症に2回なりました。

矢吹 エーッ!

運上 自分で気が付かないんです。逆に冬は、北海道と比べたら暑く感じて、レッスン終わりに半袖と短パンのままで帰ったら、同期に笑われました(笑)。

矢吹 そんなに違うんだ。

運上 今考えたらおかしいんですけど、当時はそれくらい気候の差を感じていました。

――奈子さんも東京から福岡に来ました。

矢吹 私も最初の冬は暖房をつけなかったです。東京と比べても暖かくて。学校ではすぐ友だちができました。中学に上がって、みんなも新しい生活が始まるタイミングだったので、ちょうど良かったです。

――韓国に行ったときは、生活面ではどうでした?

矢吹 IZ*ONEのメンバーとの共同生活で、合宿をしている感じでしたね。そんなに違和感はなかったです。最初はトッポギが辛すぎたのも慣れてきて、食べられるようになりました。

心のストッパーを外して殻を破れたら

――この映画の主題歌はHKT48の『全然 変わらない』。お2人は歌唱メンバーではありませんが、ずっと変わらないでいたいことはありますか?

矢吹 自分を過大評価しないようにしたいです。常に謙虚で自分に厳しくいようと、心に留めています。なっぴがさっき「韓国から帰ってきても変わってなかった」と言ってくれて、意識していたことができていたんだと思えました。

運上 私もファンの方や家族、お世話になった方への感謝は、常に忘れずにいたいです。その気持ちを伝えるようにもしています。

――逆に、変わりたいこともありますか? 奈子さんだと21歳になって、より大人っぽくなりたいとか……。

矢吹 もう子どもっぽいイメージはないと、カン違いしていました(笑)。でも、そういう部分があってもいいと思います。無邪気さがまったくなくなっても、私らしくないというか、ちょっと違う感じがして。変わりたいのは、自分の中で強く思っていることはあるのに、それをポンと出すのが苦手なんです。気持ちを言葉でも強く表せるようになりたいです。

運上 私は頭でわかっていても、行動に移せないことが多くて。たとえばダンスを大きく踊りたくて、練習ではできても、ステージに立つと緊張したり、人にどう見られるかとか考えすぎて、できないことがあるんです。しゃべることもそうですし、心にストッパーが掛かってしまって、出そうとしても出し切れない。それが悔しくて、いつも落ち込んでしまうんです。そのストッパーをなくして、殻を破れたらと思います。

――今回は劇中で直接絡む場面はありませんでしたが、次に2人で共演するとしたら、どんな関係の役がいいですか?

運上 HKT48で学園ドラマをやれたら嬉しいです。

矢吹 わかる、わかる。やりたいよね。

運上 昔はAKB48グループで『マジすか学園』とかあったので。

矢吹 青春もので同級生役をやれたらいいね。

Profile

矢吹奈子(やぶき・なこ)

2001年6月18日生まれ、東京都出身。

2013年にHKT48の3期生オーディションに合格。2014年発売の3rdシングル『桜、みんなで食べた』で初選抜。2018年発売の11thシングル『早送りカレンダー』でWセンター。同年に日韓合同オーディションからIZ*ONEのメンバーに選ばれ、韓国でデビュー。2021年に活動終了して、HKT48に復帰。2022年発売の15thシングル『ビーサンはなぜなくなるのか?』で単独センター。2021年にドラマ『顔だけ先生』に出演。10月19日放送の『コンビニ★ヒーローズ ~あなたのSOSいただきました!!~』(カンテレ)の1話に出演。ラジオ『アッパレやってまーす!月曜日』(MBS)に出演中。

運上弘菜(うんじょう・ひろな)

1998年8月9日生まれ、北海道出身。

2016年にHKT48の4期生オーディションに合格。2018年発売の11thシングル『早送りカレンダー』で初選抜。2020年発売の13thシングル『3-2』で初センター。

『向田理髪店』

原作/奥田英朗 脚本・監督/森岡利行

10月14日より新宿ピカデリーほか全国公開

公式HP

寂れた元炭鉱町・筑沢町で、向田康彦(高橋克実)は妻の恭子(冨田康子)と親から継いだ理髪店を営んでいた。ある日、東京で働いていた息子の和昌(白洲迅)が帰郷し、店を継ぐと言い出す。和昌は街の現状を目の当たりにするが、国民的アイドル・大原零(矢吹奈子)がヒロインの映画の撮影が筑沢で行われることになって……。

(C)2022 映画「向田理髪店」製作委員会
(C)2022 映画「向田理髪店」製作委員会

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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