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『ちむどんどん』以前の“朝ドラ三姉妹”のその後は?

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『とと姉ちゃん』に長女役で主演した高畑充希(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

大詰めに入る朝ドラ『ちむどんどん』。ヒロインが料理に夢を賭けて奮闘するのと並行して、お騒がせの兄、そして小学校の教師になった姉、引っ込み思案だが歌手を目指す妹の物語も描かれてきた。黒島結菜、川口春奈、上白石萌歌が演じた三姉妹。2000年以降の朝ドラで、こうした三人以上の姉妹が登場したのは他に5作ある。演じた女優のその後も含めて振り返る。

『てるてる家族』の四姉妹に石原さとみと上野樹里

 まず、三人を上回る四姉妹の成長を描いたのが『てるてる家族』(2003年)。原作は作家・作詞家のなかにし礼が妻とその家族をモデルにした小説で、ヒロインの四女・岩田冬子を石原さとみが演じた。前年に『ホリプロタレントスカウトキャラバン』でグランプリを受賞して、デビューしたばかり。2036人が参加したオーディションで選ばれ、放送スタート時は16歳と歴代最年少のヒロインだった。

 フィギュアスケートでオリンピックに出場する長女・春子役は紺野まひる。歌手デビューして大スターになる次女・夏子役が上原多香子。成績優秀だが珍奇な発明好きでカップラーメンの開発に携わる三女・秋子役が上野樹里。冬子はドジでおっちょこちょいだが、行動力は抜群。才能ある姉たちに憧れを抱きつつ、天性の明るさで“人生のツボ”を見出し、家業のパン職人を志す役どころだった。

 同い年の石原と上野はSPEEDに熱中した世代で、メンバーだった上原との共演を喜んでいた。石原は朝ドラの王道を行くような爽やかさが溢れ、上野はマンボを踊り出したりとひとクセある役を好演した。

 石原はその後、『Ns'あおい』、『リッチマン、プアウーマン』、『アンナチュラル』など数々の作品に主演し、今日まで活躍中なのは周知の通り。上野は『てるてる家族』ではヒロインのオーディションに落ちて姉役になったが、以後は『のだめカンタービレ』、『江~姫たちの戦国~』、『監察医 朝顔』に主演など負けていない。結婚は上野が2016年、石原は2020年。『てるてる家族』以後は2人の共演が一度もないのは、意外でもある。

『てるてる家族』に末っ子役で主演した石原さとみ
『てるてる家族』に末っ子役で主演した石原さとみ写真:つのだよしお/アフロ

『花子とアン』吉高由里子の妹に黒木華と土屋太鳳

 『花子とアン』(2014年)では、吉高由里子が演じたヒロインの村岡花子(安東はな)の妹のかよ役が黒木華、もも役が土屋太鳳だった。『赤毛のアン』の翻訳者の半生を基にしたストーリー。山梨の貧しい家に生まれた花子は、東京の女学校で英語を学び、故郷での教師生活を経て、翻訳家の道を歩んでいった。

 かよは製糸工場で住み込みで働いていたが、花子を頼り上京。プロポーズされた相手を関東大震災で亡くしながらも、職業婦人として生きる。ももは花子の幼なじみに恋心を抱き、その想いを振り切るように北海道の農家に嫁ぐが、過酷な生活に耐えかねて上京した。

 吉高は当時25歳。すでに『美丘』や『ガリレオ』第2シーズンなどでヒロインを務めていて、『花子とアン』もオーディションでなくオファーを受けた。放送終了後はしばらく仕事をセーブしつつ、『東京タラレバ娘』から『わたし、定時で帰ります。』や『最愛』など、また主演作が相次いでいる。

 黒木もその後、映画『母と暮せば』(山田洋次監督)や『リップヴァンウィンクルの花嫁』(岩井俊二監督)などで個性的な演技を見せ、ドラマでも『重版出来!』、『凪のお暇』などに主演。実力派女優のポジションを築いた。

 土屋は『花子とアン』のももでは、花子の幼なじみの朝市(窪田正孝)が花子を好きと知りながら告白して、母の胸で泣く場面などで印象を残した。出演中に翌年の朝ドラ『まれ』のオーディションを受けてヒロインに。

 以後は『青空エール』、『8年越しの花嫁』、『となりの怪物くん』など枚挙に暇がないほど主演映画が続き、ドラマでも『チア☆ダン』、『やんごとなき一族』などに主演と、勢いは衰え知らずだ。

『花子とアン』で三女役だった土屋太鳳
『花子とアン』で三女役だった土屋太鳳写真:Motoo Naka/アフロ

『とと姉ちゃん』から高畑充希と妹の杉咲花が主役常連に

 『とと姉ちゃん』(2016年)では、亡き父に代わって母と二人の妹を守る“とと(父親)”のような姉というヒロインの小橋常子を、高畑充希が演じた。『暮しの手帖』の創業者がモチーフで、戦後に妹たちと共に女性のための実用雑誌を創刊する。

 その妹役だったのが相楽樹と杉咲花。相楽が演じた次女の鞠子は文学の道を志し、猪突猛進の常子と逆の慎重な性格で、相談相手になっていた。杉咲の美子は常子たちとやや年が離れた設定で、子役からのバトンタッチは9週目から。愛嬌があるちゃっかり者で、裁縫が得意な役どころだった。

 当時24歳の高畑は、中学時代に『山口百恵トリビュートミュージカル』のオーディションで主役に合格。ミュージカル『ピーターパン』の8代目ピーターパンや『奇跡の人』のヘレン・ケラー役など舞台を軸に活動。2007年にドラマ『3年B組金八先生』第8シリーズの生徒役でドラマデビューして、2013年の朝ドラ『ごちそうさん』にも杏の演じたヒロインの義妹役で出演している。

 演技力は高く評価されつつ、ドラマでは脇役タイプかと見られていたが、『とと姉ちゃん』のオーディションで2564人からヒロインに選ばれた。以後は『過保護のカホコ』、『同期のサクラ』、『ムチャブリ! わたしが社長になるなんて』などで硬軟自在に主役を務め、今やトップ女優の1人だ。

 相楽は2018年に映画監督の石井裕也との結婚と妊娠を発表。出産後は活動を休止している。

 杉咲はもともと子役からのキャリアがあり、『夜行観覧車』や『なぞの転校生』などで注目されていた。『とと姉ちゃん』終了直後に公開された映画『湯を沸かすほどの熱い愛』で数々の賞を受賞。ドラマ『花のち晴れ~花男 Next Season~』などでの主演も経て、2020年には朝ドラ『おちょやん』のヒロインに指名される。ちゃっかりして明るい役柄は、美子にも通じていた。

 最近では『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』で弱視の役を好演している。

『とと姉ちゃん』で三女役だった杉咲花
『とと姉ちゃん』で三女役だった杉咲花写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ

『スカーレット』戸田恵梨香の妹にミスマガジンと元天才子役

 『スカーレット』(2019年)では、信楽焼に魅せられて男性ばかりの陶芸の世界に飛び込んだ女性の半生が描かれた。ヒロインの川原喜美子を演じたのは戸田恵梨香。30歳を迎えるタイミングでオファーを受け、劇中では15歳から50代までを演じた。元より『コード・ブルー』、『SPEC』、『大恋愛~僕を忘れる君と』など実績は十分。女性陶芸家の先駆者が苦難続きの人生を力強く歩む姿を見せた。

 喜美子の家族は戦後間もなく、大阪から滋賀の信楽に移り住んで貧しい生活をしていた。次女の直子役は桜庭ななみ、三女の百合子役は福田麻由子。直子はわがままで自由奔放だが、実は甘えたがり。何かとトラブルを持ち込んできた。対象的に百合子は穏やかな性格で、家族を取り持っていた。

 桜庭は「ミスマガジン2008」のグランプリから、映画『最後の忠臣蔵』で日本アカデミー賞などの新人賞を受賞。ドラマ『ふたつのスピカ』、『リミット』などで主演もしていた。『スカーレット』で新境地を開いた後、『13』での13年間行方不明だった主人公など、クセのある役にも挑んでいる。

 福田はもともと子役として『女王の教室』や『白夜行』などで話題を呼んだ。大学時代には一度仕事を離れて、バイト生活をしていたそうだが、『スカーレット』には25歳で出演。大人になってからの代表作となった。昨年の『リカ・リバース』では裕福な主人公一家の家政婦に雇われ、闇を目にする役を演じている。

 戸田は2020年に松坂桃李と結婚。昨年『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』では、同じく朝ドラ『半分、青い。』でヒロインだった永野芽郁と先輩・後輩役でW主演した。

『スカーレット』に長女役で主演した戸田恵梨香
『スカーレット』に長女役で主演した戸田恵梨香写真:西村尚己/アフロ

『エール』から二階堂ふみの妹役の森七菜が躍進

 続く『エール』(2020年)は、『栄冠は君に輝く』や『イヨマンテの夜』などの作曲家・古関裕而がモデルの主人公・古山裕一を窪田正孝が演じ、妻となるヒロインの関内音役が二階堂ふみ。歌手を目指して、裕一と文通から親交を深める。勝ち気な性格で、夫の才能を信じて二人三脚を続けていった。

 音の姉の吟役は松井玲奈。おしゃれ好きで幸せな結婚を夢見ているが、見合いがうまくいかない。音に「行き遅れ」と言われて喧嘩もしながら、彼女の夢を温かく見守っていた。妹の梅役は森七菜。大きな眼鏡をかけた文学少女で小説家を志し、冷静なしっかり者だが斜に構えたところも。

 二階堂はオーディションで音役に選ばれているが、映画『ヒミズ』、『私の男』、『リバーズ・エッジ』など主演作は多く、数々の賞も受賞していた。陰のある役のイメージが強めだったのは、この『エール』で一掃された。

 松井もSKE48を卒業後、ドラマ、映画、舞台と精力的な女優活動で評価を受け、朝ドラも2018年の『まんぷく』に出演。安藤サクラが演じたヒロインの女学校時代の親友役だった。その後も出演作は途切れず、昨年のドラマ『プロミス・シンデレラ』では二階堂が演じた主人公を苦しめる役で、再び共演を果たしている。

 『エール』から大きく飛躍したのが、19歳だった森。新海誠監督のアニメ映画『天気の子』のヒロインの声優やオロナミンCのCMなどで、ネクストブレイク的に注目されていたが、この朝ドラで知名度と勢いをさらに付けて、放送期間中にスタートした『この恋あたためますか』でドラマに初主演した。

『エール』で三女役だった森七菜
『エール』で三女役だった森七菜写真:西村尚己/アフロ

三者三様の個性が以後の躍進も築く

 朝ドラで三人、四人の姉妹役となると、それぞれの色がより求められる。改めて振り返ると、演じた女優たちは以後も、そこで発揮した個性を活かして活躍を続けていることが多い。

 『ちむどんどん』ではまっすぐな暢子、品行方正な良子、内気な歌子という三姉妹を黒島結菜、川口春奈、上白石萌歌が演じた。元からキャリアを築いていた3人だが、これからも三者三様のスタンスで飛躍が見られそうだ。

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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