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理想のレンタル彼女を演じる桜田ひよりのプロぶり 「男性をキュンとさせるように指先まで意識してます」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『彼女、お借りします』より(ABC提供)

モテない大学生と完全無欠なレンタル彼女の恋を描く『彼女、お借りします』がドラマ化。夜ドラ『卒業タイムリミット』でも好演した桜田ひよりが、ラブコメでは初のヒロインを務めている。男子の理想を絵に描いたような恋人を完璧にこなしつつ、素は地味な女子大生という役どころをどう演じたのか? 何気なくもプロフェッショナルな話が次々に出た。

ものを取る動きひとつでもきれいに見えるように

世界で累計発行部数が1000万部を突破した宮島礼吏のコミックが原作の『彼女、お借りします』(ABC・テレビ朝日)。非モテ人生まっしぐらの大学生・木ノ下和也(大西流星)は、初めてできた彼女に速攻でフラれ、半ばヤケクソでレンタル彼女を発注。デートに現れたのは顔よしスタイルよし、機転が利いて気遣いもできる水原千鶴(桜田)だった。

――『彼女、お借りします』の原作をもともと読まれていたそうですが、ラブコメは好きなんですか?

桜田 あまり触れてこなかったジャンルです。でも、『かのかり』は兄から聞いたり、周りで読んでいる方も多くて。見たら千鶴ちゃんのかわいさにやられて、お話も続きが気になって、ハマった感じでしたね。

――その千鶴をご自分で演じることになりました。

桜田 ラブコメのヒロイン役は初めてなんです。普段の撮影だと内面の感情を重視して、自分の顔がどうなっているかは一切気にしないんですけど、ラブコメ作品では必ずモニターをチェックしています。視覚的に顔の角度ひとつ取っても、女性からも男性からも「きれい、かわいい」と思ってほしいので。

――特に千鶴は、男性の理想の彼女になり切るわけですからね。

桜田 本当に完璧な女の子で、同性の私から見ても憧れる女性像を、自分が演じている感覚です。レンタル彼女をしているときは、指先まで意識を持っていくことをイメージしました。姿勢や仕草、ものを取る動きひとつでも所作がきれいに見えるようにして、しゃべる声も普段の自分よりワントーン高くしています。

あざとい仕草はハードル高いです(笑)

――和也をキュンキュンさせるという点では、どんなことをしました?

桜田 1話の2回目のデートで髪型を変えてきて、さり気なく「どうかな?」と聞いたときの、横向きで両手で髪を押さえる仕草はポイントでしたね(笑)。男性に「これキュンキュンします?」とは聞き辛いですけど、自分が原作で千鶴ちゃんにキュンとしたポイントは、シーンの中で絶対ひとつは入れるように意識しています。

――そういうことをするのは、ひよりさん的にはハードルでもないですか?

桜田 だいぶ高いハードルです(笑)。あざとい感じのシーンのあとは毎回、カットがかかったらめっちゃ笑うくらい、恥ずかしさはあります。でも、それが仕事だし、千鶴ちゃんもレンタル彼女の仕事としてやっているので。千鶴ちゃんの部屋の本棚に“男の落とし方”みたいな本があったんです。自然に振る舞っているようで計画的な部分があって、そこは私も割り切っています。

――普段そういうことはしないんでしょうけど(笑)。

桜田 やっていたら、すごいですね(笑)。でも、そういうあざとさがドラマでは自然に見えていると思います。

長いエクステで外見から近づけて

――“顔よしスタイルよし”という外見的な設定は、ひよりさんなら、そのまま行けますね。

桜田 そんなことはないです。髪形もこだわって作ってもらって、原作で有名なハーフアップでピョンピョン髪が出ているのも再現しています。外見のクオリティはできる限り近づける感じですね。

――長い髪はエクステだとか。

桜田 そうなんです。25歳以下のアジア人女性の染めたことのない髪を使っていると、熱弁されました(笑)。お手入れ方法も本当の髪に近い感じですけど、地毛にシールで付けていて、シャンプーでゴシゴシ洗えないので、揉みこむようにしています。

――実際はそこまで伸ばしたことはなかったり?

桜田 中1のときにへそ上まで伸ばしたくらいですね。千鶴ちゃんの見た目に近づけて、気持ち的にも全然変わりました。

現場ではテキパキ、家ではナマケモノ(笑)

――一方で、レンタル彼女でないときの千鶴は、地味な女子大生です。

桜田 普段は芯が通っていて自分の意見も言えるけど、人との距離感の測り方がうまい女の子だなと思います。相手がどういうことを言うかに興味を置いている分、レンタル彼女のときのように指先までは意識せず、自然体でやっています。

――そういう二面性は、ひよりさん自身にもあること?

桜田 これがあるんです! 自分で意識しているわけではないですけど、現場ではテキパキ動くほうで移動も速いんです。いつの間にか着替えていたり。それがプライベートだとナマケモノみたいで(笑)、家ではソファーから一歩も動きません。飲み物もリモコンも全部傍に置いておいて。歩くのもめちゃめちゃ遅くて、リビングから自分の部屋までそんなにかかる? みたいな(笑)。仕事中だったら絶対、秒で着くはずなんです。家族が私の仕事場を見たら、「ひよりがこんなに速く動けるの?」とビックリすると思います(笑)。

――千鶴について「真面目で努力家」とコメントされていましたが、ひよりさんも日ごろ努力していることはありますよね?

桜田 最近、美容に気を使うようになりました。今までは良さそうなコスメを適当に使っていましたけど、いろいろな方に「自分に合ったものを使ったほうがいいよ」と言われて。現場でメイクさんに使っていただく化粧水や乳液から、一番肌馴染みがいいものを選んだり、自分に合うマスカラやアイシャドウを探すようになりました。

笑顔の練習も鏡を見てしています

――千鶴は和也と2回目のデートをしたとき、和也の趣味に合わせて魚の名前を覚えてきたり、レンタル彼女の仕事に手を抜きません。ひよりさんも撮影に入る前は、万全の準備をしておくんですか?

桜田 他の方がどういうことをやられているのかわかりませんけど、自分なりに原作を研究したり、独特な世界観があったら、その監督の以前の作品を観たりします。

――今回の千鶴だと、台本に「美しい髪、白い肌、かわいい笑顔」といったト書きもあって。

桜田 笑顔が苦手と公言している私なりに頑張っています(笑)。どこから撮られるかわかりませんけど、鏡を見て練習もしました。それから手を繋ぐシーンがあったら、どう話せば「もう一回繋ぎたい」と思わせられるか、自分で考えたりもしています。

――演技的に悩むことはないですか?

桜田 そうですね。原作が教科書みたいになっているので。現場でもほぼ毎回、メイク中にその日に撮るシーンのアニメを観て、参考にしています。

悩んだときは愛犬に癒されます

――今までの女優人生の中では、壁に当たった役はありました?

桜田 悩むことは多いですけど、切羽詰まるまではなかったです。自分でいろいろ考えて、何とかやってきました。

――人生全般でも、思春期に何かで悩んだりもしませんでした?

桜田 仕事を辞めたいとか考えたことはないです。ひとつひとつコツコツとやらせていただきました。友だちのこととかで悩んだりは、もちろんしましたけど、19歳にもなると、もう越えました(笑)。

――落ち込んだときに何かをして立ち直ったりは?

桜田 本当に悩んだときは、今もですけど、愛犬に癒されています。仕草とか見ているだけで気持ちが安らいで、リフレッシュできますね。

――演技をするうえで大事にしているポリシーはありますか?

桜田 作品の中で、本当に生きているような人物になることは心掛けています。どんな作品の色にも対応できるようになれたら。コメディだったら、とことんコミカルに振るし、今回のようなラブコメなら、かわいらしさを中心に出していきます。

――ひよりさんが辛い役を演じると、本当に辛そうで観ていて胸が痛くなります。

桜田 観てくださる方にそう思っていただいけるのが、一番嬉しいですね。

仕事にも素にも見えるようにしました

――『かのかり』では、レンタル彼女をしながら素の感情が入り混じるところもないですか? 和也の元カノに「私の和也さんを悪く言わないでください」と言ったり。

桜田 そこは観てくださる方がどっちにも取れるように意識しました。レンタル彼女として言っているとも、素の千鶴ちゃんとして言っているとも見えるように。難しいところですけど。

――やっぱり何気にレベルの高いところで演じているんですね。原作から読んできて、和也についてはどんな印象がありました?

桜田 すごくかわいらしいと思います。自分の思っていることを女性にうまく伝えられないのも、思春期の男子という感じがして。千鶴ちゃんからしたら、そこがイライラポイントで、「何なの?」となっちゃうんですけど(笑)。

――レンタル彼女としてデート中に、怒り出すくらいに。

桜田 そのスイッチの切り替えは、自分で作らないといけない部分でもあって。観てくださる方がビックリするくらい、変わるようにしました。

妄想する分にはオーバーでいいと思います(笑)

――現場では、和也役の大西流星さんが座長ぶりを発揮しているんですか?

桜田 大西さんがいるだけで場が明るくなって、おかげでどんよりすることなく、団結感が出ています。めちゃくちゃ楽しい現場で、こんなにずっと笑っていることはないくらい。女性キャスト同士では、現実ではありえないシチュエーションや台詞について、「これ本当に言われたらどう?」みたいな話をしています。

――どんなシチュエーションの話で盛り上がりましたか?

桜田 後半のほうに和也くんの妄想シーンがあって。そこは本当に「絶対ありえない!」と話しました(笑)。面白いなと思いました。

――男子の妄想は女子的には浅はかに感じます?

桜田 妄想は誰でもオーバーになるので、まあ、いいんじゃないかなと(笑)。現実でやられたら、さすがに「おっと!」となりますけど、1人で妄想している分には全然いいと思います(笑)。

寂しいときにレンタルでも話したいのはわかります

――レンタル彼女というビジネスについてはどう思いますか?

桜田 すごく良いことだなと思います。異性が苦手な方も全然利用できるし、自分でレンタル彼女の役を演じていても、お互い楽しめると感じました。いろいろな方と会話するのは人生経験にもなりますし。

――レンタルする側の気持ちもわかると。

桜田 寂しかったり、誰かと話したいときにレンタルするのは、全然いいかなと思います。

――千鶴に「寂しくない人なんていない。隠せる人が多いだけ」という台詞もありました。

桜田 みんなが思っていることを言葉にしてくれた感覚がありました。千鶴ちゃん自身は寂しさを一切見せない子ですけど、あの台詞で考えていることがわかる感じがしました。

10代最後の夏は手持ち花火くらいできたら(笑)

――海でのシーンもありますが、ひよりさんも夏には行きますか?

桜田 ないですね。完全にインドアなので。海に行ったのは何年ぶりだろう? 水着はたぶん7~8年ぶりに着ました。夏はとにかく涼しいところに引きこもっていたくて(笑)。でも、撮影では「海でワイワイするってこういう感じなんだ」と思えて、楽しかったです。

――プライベートでは、そういう夏のキラキラした思い出はないわけですか?

桜田 誘われたら出掛けるので、友だちと手持ち花火をして、夏を感じたりはしました。お祭りとかには行かず、小さいところで楽しむことが多いです。

――今年は10代最後の夏になります。

桜田 手持ち花火くらいはできたらいいなと思います。地味に暮らしているので、1人花火をしているかもしれません(笑)。インスタに上げたら「本当に1人でやっていたんだ」と思ってください。

Profile

桜田ひより(さくらだ・ひより)

2002年12月19日生まれ、千葉県出身。

小学6年生のときにドラマ『明日、ママがいない』で注目される。主な出演作はドラマ『犯罪症候群』、『あなたには帰る家がある』、『24 JAPAN』、『神様のえこひいき』、『卒業タイムリミット』、映画『東京喰種 トーキョーグール』、『咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A』、『祈りの幕が下りる時』、『男はつらいよ お帰り 寅さん』、『ホットギミック ガールミーツボーイ』、『おそ松さん』など。「ミスセブンティーン2018」に選ばれ『Seventeen』専属モデルに。ドラマ『彼女、お借りします』(テレビ朝日・ABC)に出演中。

ドラマL『彼女、お借りします』

テレビ朝日/土曜26:30~ ABC/日曜23:55~

出演/大西流星(なにわ男子)、桜田ひより、秋田汐梨、工藤美桜、沢口愛華ほか

公式HP

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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