Yahoo!ニュース

『ラブライブ!サンシャイン!!』で東京ドームに立ち時代劇でヒロイン。小宮有紗の根本にあるものは?

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/S.K.

女優デビューしてスーパー戦隊シリーズで注目され、大ヒットアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』には声優として出演。作中から展開するユニット・Aqoursではドーム球場でライブも行った小宮有紗。ヒロインを演じた時代劇『漆黒天-終の語り-』が公開される。さらにDJにも取り組むなど幅広く活躍する小宮が、「やってみないことにはわからない」というチャレンジ精神を語ってくれた。

新撰組の本は100冊以上読みました

――『漆黒天-終の語り-』は江戸時代が舞台ですが、時代劇はお好きなんですか?

小宮 前にも何度か、お着物で出させていただきました。自分ではおじいちゃん、おばあちゃんと一緒に観た程度ですけど、史実のほうは好きです。

――『銀魂』から新撰組に興味を持ったとか。

小宮 そうなんです。新撰組は本当に好きで、一番ハマっていたのが高校生の頃。図書館で新撰組や隊士たちの名前で検索して、出てきた本は全部読みました。学生の夏休みとか、暇じゃないですか。1日5冊とか借りて次の日に返す勢いで、全部で100冊以上読んだと思います。

――それはすごい。何にそこまで惹かれたんでしょう?

小宮 新撰組って物語になることも多くて、「本当はどうだったんだろう?」って、どんどん興味が出てきたんです。気になる隊士がいると「どんな人だったんだろう?」とか。ここで亡くなったことになっているけど、ネットで調べたら生き残ったという説もあったり。「どういうこと?」って、永遠ループになりました。

――中でも土方歳三ファンなんですよね?

小宮 シンプルに顔がカッコイイなと(笑)。でも、引っ張っていく力があって、縁の下でめちゃめちゃ支えていて、魅力的な人だったんだと思います。最近はお仕事でお城の番組に出させていただいて、そっちも面白くなって。歴史熱がより高まっています。

普段から素直に表情が変わるタイプです

映画と舞台が連動する『ムビ×ステ』の第3弾となる映画『漆黒天-終の語り-』。江戸の町に現れた記憶を失くした男(荒木宏文)は、なぜか刺客たちに命を狙われながら、尋常でない剣の腕で返り討ちにし続けてきた。なりゆきで助けられたコソ泥の喜多(小宮)は彼を“名無し”と名付け、共に素性の手掛かりを探し始める。

――江戸の町でコソ泥をしている喜多役では、着物でおでこを出しています。

小宮 あれはかつらではないんです。地毛が長いのと武家の娘でなかったので、結ったほうがいいと、結髪さんに毎日やっていただいていました。私は昔はずっと前髪がなかったんですけど、最近ではおでこを出すのは珍しいですね。

――着物も馴染みました?

小宮 普段着ることはありませんけど、好きなので「やっぱりお着物はいいな」と思いながら撮影していました。町娘で裸足に草履というのは意外となかったので、新鮮でした。

――着物で走るシーンも冒頭からありました。

小宮 下駄でなくて草履だと走りやすくて、ガツガツ行けちゃいました。

――喜多の人物像としては、チャキチャキした感じですかね。

小宮 そうですね。江戸っ子でハッキリものを言う。あのストーリーで明るい部分を担う役と受け止めて、撮影に臨みました。

――表情も豊かですね。笑ったり、睨んだり、かわいい声を出したり。

小宮 私、普段からあんな感じなんですよ(笑)。素直に生きるタイプなので。役では抑えめにするときもありますけど、喜多は自由でいいかなと。周りの方々との掛け合いで、感じたままにお芝居していたら、自然にああなりました。

『漆黒天-終の語り-』より(東映ビデオ提供)
『漆黒天-終の語り-』より(東映ビデオ提供)

考えなくても台詞が出るようにしておいて

――撮影前に参考に何かを観たりはしませんでした?

小宮 なかったです。ただ、台詞の量がすごく多かったので、考えながら言っていたら、私が思う喜多にならない気がして。何をしていても、台詞だけは絶対出てくるようにしておきました。それで現場では、皆さんがどう来るかを見て、何も考えずに話していました。

――無意識でも台詞が口をつくくらい、入れておいたわけですね。

小宮 今回は会話の中での台詞というより、周りの人たちがあまりしゃべらず、私がずっと1人で話しているシーンが多くて。誰かの台詞がきっかけになることもないので、なおさらちゃんと覚えないといけなかったんです。

――「まっぴらごめん」みたいな言葉も出てきました。

小宮 「~じゃないかい」とか普段は言わないので(笑)、最初は「ちゃんとできるかな」と思っていました。でも、お着物の衣装を着て髪も結ってもらうと、気持ちも変わるので。あと、太秦の撮影所は全部が本当に江戸の町。そこに入ったら、自然に町娘っぽくなれていたのかなと思います。

面倒見の良い町娘として素直に演じました

――名無しへの接し方については、どう捉えました?

小宮 相手が他の誰でも、喜多はお節介を焼いていたと思うんです。監督とも相談して、面倒見のいい町娘として素直に演じました。

――名無しの身の上話に涙するシーンもありました。

小宮 あそこは難しかったです。心から悲しいならやりやすいですけど、今回はお話もちょっと複雑で、感情がうまくストーリーに乗るのか。でも、泣きたくなくても涙が出てしまう……みたいなところだったかなと思います。

――他に、撮影で印象的だったことはありますか?

小宮 狂言作者の宗吉役の唐橋(充)さんが面白い方で、お芝居も素晴らしくて。名無しと3人でのシーンが楽しかったです。毎回台本と違うことをされるので、「こんなに自由でいいんだ」と(笑)。

――ストーリー的には最後に驚きの展開があります。

小宮 初めて台本を読んだとき、「エッ?」と思って。突然来たので、流れがわからなくなって、遡って読み直しました。あれはビックリしますね。

歌はコンプレックスだったのがライブを楽しめるように

――『漆黒天』が公開される頃には、Aqoursの東京ドームライブもあります。小宮さんはよく女優と声優を両方やることについて語られていますが、歌にも最初から意欲的だったんですか?

小宮 いえ、まったく(笑)。カラオケも全然行かないし、歌は得意でなくて。お芝居の延長として声優の勉強もしてみたいと思って、受けたオーディションが『ラブライブ!サンシャイン!!』だったんですけど、ライブは最初、どういう気持ちで立ったらいいか、考えすぎてしまいました。でも、途中で「違うかも」と思ったんです。楽しまないと自分も損。自分が楽しんでいたら、観にきてくださった皆さんも楽しいと気づきました。そこからライブがめちゃくちゃ楽しめるようになって、いい意味でストレス発散もできて(笑)、気持ちが変わりました。

――どのくらいの時点でそうなったんですか?

小宮 4年前の東京ドームはまだ全然でしたね。アニメのストーリーがひと段落して、自分たち自身でAqoursとして頑張っていくことになってからです。歌にコンプレックスがあったのも、ありがたいことにたくさんステージに立たせてもらって、やっと慣れてきました。

――ドームのような大会場で歌うのは、気持ち良いもの?

小宮 幸せだなと思います。緊張より楽しさが勝って、「うひょーっ!」って感じで走り回って(笑)。あんな広いところで、あいさつするときとか自分の色のペンライトを振ってもらって、ぜいたくですよね。誰もが立てる場所ではないので、そのありがたみをちゃんと受け止めて、いつも皆さんに楽しんでほしい気持ちでいます。

やってみないと良いか悪いかもわからないので

――小宮さんは芸能事務所に所属していて、声優業界との空気の違いとかは感じませんでした?

小宮 最初はどういうものの言い方をしたらいいかもわからなかったんですけど、『ラブライブ!サンシャイン!!』ではずっと一緒のメンバーなので。声優の専門学校から活動している他の子たちを見て、勉強させてもらっています。あそこにいるときは、1人のメンバーとして溶け込んでいる感じですね。

――映画やドラマの現場と変わらないと。

小宮 逆に、今はAqoursでいることに慣れすぎて、映像作品のほうに行くとめっちゃ緊張します(笑)。「台本を持たないで台詞を言えるかな」とか。そうならないように、今回も家でたくさん台詞を読み込みました。

――『ラブライブ!サンシャイン!!』のオーディションを受けたときも、事務所的には前例がなかった中で、社長に直訴したとか。

小宮 自分の意志は曲げないタイプで、社長にも向かっていきました(笑)。今は受けて良かったと本当に思っていて。社長もすごく応援してくれて、ライブも観にきてくれます。

――とにかくやってみる主義?

小宮 自分が興味を持ったら、やってみないことには良いのか悪いのかもわからないし、違っていたら、そこから先に進まなければいい。やらずにモヤモヤしているほうが、気持ち悪いんですよね。

食べるのは毎日同じものばかりです(笑)

――日常生活でも、いろいろチャレンジするタイプですか? たとえばレストランで新しいメニューがあったら、試してみるとか。

小宮 そこは違って、レストランに行くと毎回同じものを頼みます(笑)。好きなものはずっと食べられて、カレーにハマったら毎日カレー。とんかつにハマったら、とんかつしか食べません。『漆黒天』の撮影中は、ずっとポテトチップスを食べていました(笑)。

――ごはん替わりくらいに?

小宮 ごはんも食べますけど、ポテトチップス優先(笑)。1日1袋にオロナミンC、チョコラBB、みたいな。絶対に健康的ではないですけど(笑)、自分が食べたいものを食べないとストレスが溜まるんですよね。今はストレートのりんごジュースにハマっています。

――仕事では今はDJもやられていますが、今後さらに挑戦したいジャンルもありますか?

小宮 やっぱりお芝居は好きなので、ずっと続けていきたいです。DJでは曲を繋ぐのは自分なりに安定してきましたけど、スクラッチは難しいので練習したいです。ダンスはアイドル系がだんだんわかってきたので、違うジャンルも踊れるようになれたら。

――ヒップホップとか?

小宮 ヒップホップもいいですし、私はクラシックバレエをやっていたので、コンテンポラリーダンスとか。そうやって自分の可能性を広げたいとは、常に思っています。歌も自分の役に今ならどういう曲が合うか考えながら、貪欲に行きます。

同じダンスでどこがカッコイイのか見てマネします

――今まで「やってはみたけどダメだった」ということはありませんでした?

小宮 ありますよ。ジムが合いませんでした。腰に重りを乗せて上げて、お尻を鍛えるトレーニングをしていたとき、「私、なんでこんな辛いことをしているんだろう?」と思ってしまって。そうなったら、もうダメじゃないですか。1ヵ月分のお金を払っていたんですけど、1週間でやめました。

――ジムに行こうと思ったのは、シェイプアップのためですか?

小宮 鍛えようと思って。最近マシンピラティスを始めたら、それはすごく自分に合っていました。バレエをやっていたからストレッチもしますし、伸ばしながらの筋トレで体の表面よりインナーマッスルから鍛えるのは、向いているんだと思いました。辛いし先生も謎にスパルタですけど(笑)、効果をライブでも実感します。

――どんな効果がありました?

小宮 歌が前より安定した気がします。応援してくださる皆さんもSNSで「ありしゃの歌が上手くなっている」とつぶやいてくださいました。絶対ピラティス効果だと思います。他に変えたことはないので。

――歌とかで壁に当たったこともないですか?

小宮 歌はヘタくそから始まったので(笑)、それより下がることはなく、上がっていくしかなかったです。踊りもバレエしかやってなかったので、ダンスが得意なメンバーを見て、同じ振りなのにどこがカッコイイのか、いつもマネしている感じです。

年齢不詳になっていきたいです(笑)

――小宮さんって28歳になられたんですね。まだ20代半ばくらいのイメージがありました。

小宮 よく言われます。何でだろう? 落ち着きがないから(笑)? アニメの衣装を着続けているのが大きい気はします。ミニスカートで脚が出ていたりもするし。あそこではずっと17歳なので、普段もまだ17歳の気持ちがあるかもしれません(笑)。

――ストレスのない人生ですか?

小宮 何かを我慢しなきゃいけない、みたいなストレスはないです。気の向くまま、素直に生きているので。

――とはいえ、30代を見据えて考えることもないですか?

小宮 見た目的に老けないようにしていきたいです。ピラティスもそのためで、鍼や整体にもよく通っています。最近は美顔のために、顔に刺す鍼も始めました。

――目指す女性像はありませんか?

小宮 やっぱり年齢不詳になっていきたいですね(笑)。

――実写でも女子高生役ができるくらいに(笑)?

小宮 いつまで制服を着られるか。たぶんAqoursでライブをやる限りは、着ていきます。

――マルチにいろいろやる姿勢は変わらないんですね。

小宮 欲張りなことだと思いますけど、せっかくいろいろやらせていただけているので、全部頑張っていきたいです。

撮影/S.K.

Profile

小宮有紗(こみや・ありさ)

1994年2月5日生まれ、栃木県出身。

2012年にスーパー戦隊シリーズ『特命戦隊ゴーバスターズ』でドラマデビュー。主な出演作はドラマ『仮カレ』、『ブスの瞳に恋してる2019』、『マイラブ・マイベイカー』、映画『夢二~愛のとばしり』、『ダブルドライブ~狼の掟~』、『お前ら全員めんどくさい!』、『としまえん』、『13月の女の子』など。アニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』で声優。ユニット・Aqoursで活動。映画『漆黒天-終の語り-』が6月24日より公開。

『漆黒天-終の語り-』

監督・アクション監督/坂本浩一 脚本/未満健一

6月24日より新宿バルト9ほかにて公開

公式HP

『漆黒天-終の語り-』より(東映ビデオ提供)
『漆黒天-終の語り-』より(東映ビデオ提供)

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

斉藤貴志の最近の記事