Yahoo!ニュース

『真犯人フラグ』から『ナンバMG5』でヤンキー中学生。清楚イメージを覆す原菜乃華のハイテンションの裏

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/河野英喜 ヘア&メイク/馬場麻子 スタイリング/津野真吾(impiger)

1年前からドラマ出演が相次ぎ、『真犯人フラグ』では行方不明になった一家の娘役で注目された原菜乃華。現在は『ナンバMG5』に出演中。主人公の難破剛(間宮祥太郎)らヤンキー一家の末っ子・吟子役。初のコメディで、清楚な美少女イメージを覆す役柄に挑んでいる。前回の5話では自身の初恋にまつわる騒動も。高校を卒業してからの心境も含めて聞いた。

病気や失踪の役が多いのでコメディもやりたくて

――『真犯人フラグ』に出演していた頃は、「どうなってるの?」みたいなことはよく聞かれました?

 聞かれましたね。でも、私も最終話の台本を読むまで、犯人も何も知らなくて。だから、話せないというより「私も知らないんです」といろいろな方に言ってました(笑)。

――知名度が上っているのも感じました?

 そうですね。会う人ごとに「失踪して体調悪くない? ちゃんと食べてる?」と心配されたり、「元気そうで良かった」と言われたりしました(笑)。

――他にも『恋の病と野郎組』や『村井の恋』などドラマ出演が続いていますが、もうオーディションより指名が掛かることが多くなっていますか?

 オーディションにもたくさん行っていますけど、『ナンバMG5』ではありがたいことに、吟子ちゃんの役をいただきました。

――ヤンキー中学生役とは驚きませんでした?

 今まで何かを抱えている役や、病気だったり失踪する役が多かったので、コメディはずっとやってみたかったんです。しかも、ヤンキー一家の末っ子という演じたことのない役で、不安やプレッシャーより楽しみのほうが大きかったです。

――ヤンキーものの作品を観てはいたんですか?

 そんなに観ていませんでしたけど、言葉づかいの悪い役もやってみたかったので、研究しました。

令和ギャルのピースの仕方まで調べました

――ヤンキーの研究はどういうふうにしたんですか?

 吟子ちゃんは(2005年刊行の)原作ではヤンキーという描かれ方ですけど、監督には「令和のギャルのイメージ」と言われました。だから、携帯でギャルのしゃべり方やイントネーション、ピースの仕方とか、いろいろ調べました。あとは、街を歩きながらギャルっぽい子を観察しました。

――菜乃華さん自身には、ギャル要素はないですよね?

 私は友だちに「おばあちゃん」と呼ばれているくらいなので(笑)、ないと思います。撮影中も、つい座り方がきちんとしてしまって、「危ない危ない」と脚を開いたり(笑)、行儀悪く座るように意識しています。

――普通とは逆に(笑)。兄の剛と友だちになった伍代(神尾楓珠)と初対面のときは「オッス、あたい吟子」と言ってました。「あたい」も普段言いませんよね(笑)?

 「おお、そう来たか」と思いました(笑)。馴染みのない言葉だったので、違和感が消えるまで台詞を練習しました。

――いつもしゃべっている言葉に聞こえるように。

 語尾がきれいにならないようにも気をつけています。原作と台本を交互に読み比べながら、「このときはこんな表情」と考えたり、吟子ちゃんの声の高さもイメージしつつ、キャラクターを作っていきました。私の中で一番高いテンションを引っ張り出しています。

難しいことを考えずに現場で楽しんでます

――コメディは観るのは好きだったんですか?

 好きですね。笑いたいときやコロナ禍で人とあまり話せないとき、シリアスな作品よりコメディを選びがちです。

――出演側になると、コメディならではの演出もありました?

 「ここをこうしてほしい」というのは、あまりなかったです。難破家の家族全員で雰囲気を作ってくださるので、難しいことを考えずに飛び込むだけ、みたいなところがありました。

――今までの作品では念入りに役作りをされた話をうかがいましたが、今回はある意味、現場でのノリを大事にしているような?

 そうですね。皆さんに引っ張っていただきながら、その場で楽しむことをモットーに頑張っています。本番で笑ってしまっても、意外とOKが出たりもするので(笑)。家族のシーンが多くて、みんなでモニターをチェックして、「ここ面白いね」と笑うのが恒例になっています。

――特に難破家で盛り上がったシーンはどの辺ですか?

 1話で「いただきます」の前に、宇梶(剛士)さんが演じるお父さんが「やぅし!」という掛け声を出したんですね。台本では「よし」しか書いてなかったのを、監督が「難破家らしい面白いテイストを」とのことで、本番で宇梶さんがあれをやってきて。みんな笑いをこらえるのに必死でした(笑)。あと、1話では満島(真之介)さん演じる猛が犬の松に怒るシーンも面白くて。本編をよく観ると、私と鈴木紗理奈さん演じるお母さんがしっかり笑っているテイクが使われていました(笑)。

口は悪くても素直で明るいことを忘れずに

――そういう雰囲気の現場だと、吟子のギャルっぽい振る舞いも自然に出やすいものですか?

 あまり意識しなくても、声の高さやテンションがああいう感じになります。皆さんもメイク室にいるときとセットに入ったときで全然違うので(笑)、楽しい現場ですね。

――食事のシーンが多くて、いつも山盛りの料理が出てますね(笑)。

 普通にごはんとして食べています(笑)。食事シーンがある日は、お昼のお弁当をいただかないでおきます。本当に消え物がおいしくて、しかも温かい状態で出てくるので、カットがかかったら皆さんで一緒に食べます。撮影のあとでタッパーに詰めてくださるので、家に持ち帰って夜ごはんにもします(笑)。

――犬の松は現場でどんな感じですか?

 「松、行くぞ」って無理やり引っ張っていくシーンでも、いい子すぎて、ちょっと引っ張ると付いてきてしまうんです。それで困ったりもしますけど、本番はしっかりやってくれるワンちゃんです。かわいいので、撮影の合間に触りにいってます(笑)。

――ヤンキー中学生という以外で、吟子の人物像について考えたことはありますか?

 言葉づかいは悪いんですけど、素直で明るい良い子というのは忘れないようにしています。

シャバく変装したシーンは笑いNG連発でした(笑)

――5話では吟子の初恋の話がありました。

 吟子ちゃんが自分の将来について考え始めて、勉強しようと思って、優等生の佐藤くんとの恋が生まれました。それが家族にバレて、ヤンキー一家なことを隠そうと、みんながシャバく変装したシーンは本当に面白かったです(笑)。

――お母さんがアメリカ人になったり(笑)。

 笑いNGを連発してしまいました(笑)。その楽しい空気感がたぶん伝わって、家族とのシーンでは神回になったと思います。

――改造自転車に乗るシーンはまた出てくるんですか?

 今のところ、1話の登場シーンだけです。あれに乗るのは本当に難しくて。普通の自転車と同じかと思ったら、練習しないと無理でした。鬼ハンドルで車高が低くて、全然安定してないんです。脚がすごい角度になって、うまく進まないし、方向を変えるのも大変。転びそうになりました。

――練習はどこでしたんですか?

 本番前までの待ち時間に、ロケ地近くの公園でグルグル回っていて。何とか乗れるようになりました。

――今後の展開で楽しみなことはありますか?

 家族愛に友情、恋愛とすべてが盛り込まれた作品で、熱くなったりキュンキュンしたりして、「明日も頑張ろう」という気持ちになれると思うんです。学園ものも今は少ないので、観られて嬉しいですし。そんな中で、私たち家族のシーンはコメディ全開(笑)。全力で皆さんを笑わせたいと思っています。

退路を断って仕事1本で行くことにしました

――いろいろドラマに出ていた最中に、菜乃華さんは3月に高校を卒業しました。卒業式で感動的なことはありましたか?

 なかったです。サラッと終わってしまいました(笑)。コロナで行事などもなくなって、泣けるほどの思い出はできなかったかもしれません。

――進学しないで仕事1本でいくことは、早くから決めていたんですか?

 ギリギリまで迷ってました。でも、私は器用でないので。学業をこなしながらお芝居にも100%全力で取り組めるかといったら、不安だったんです。退路を断って、この道1本でやっていこうと決めました。今、社会人1年目なので、お仕事がほしいです(笑)。

――卒業してまだ2ヵ月くらいですが、気持ち的に変わったところもありますか?

 そんなに変わりませんけど、毎日提出するレポートがなくなった分、映画を観たり台本を読んだりする時間を増やせたのは嬉しくて、充実しています。

――映画は学割が使えなくなりましたよね。

 それは本当に悲しいところです(笑)。学生料金と一般料金では、だいぶ違いますから。最近は映画館にあまり行けてなくて、配信で観たりしています。

――面白かった作品はありますか?

 今はドラマの撮影もあるので、1話が短いアニメを観ていて、『ワンダーエッグ・プライオリティ』が面白かったです。友だちにオススメされて、感想を語り合えたらいいなと思って観ました。作画はポップですけど、結構シリアスでした。

節約するのが一番変わったところです(笑)

――レポートがなくなった分、自分で新たに何かしようとは考えていますか?

 今まで映画やドラマは結構観てましたけど、小説を読む機会は少なめだったので、いろいろ読もうとしているところです。小説が原作の作品も多いので、慣れておいて「この役やりたい」みたいなモチベーションにも繋げたいなと思って。

――どんな小説を読んだんですか?

 朝井リョウさんの『正欲』を読みました。湊かなえさんも読みますけど、作家さんを見ないで、表紙で「これ好きかな」と思ったら買ったりもします。あとは、過去に読んだ小説を読み返したり。原田マハさんの『本日は、お日柄もよく』、東野圭吾さんの『秘密』、住野よるさんの『青くて痛くて脆い』や『君の膵臓をたべたい』とか。

――感じ方が昔と変わりました?

 昔はよくわからなかったのが、今読むと前よりわかることは多いです。『青くて痛くて脆い』は大学生の話で、中学生のときにはあまりしっくりこなかったんですけど、今は自分が登場人物たちと近い年齢になって、大学の情景もわかるようになっていました。本当に感じ方はどんどん変わっていくと思います。

――18歳の新成人としては、大人になってきた実感は他にもありますか?

 お金を自分でやりくりするようになりました。節約のために今月は好きな物を買うのを我慢したり、お菓子を買うのもコンビニより、ちょっと遠くのスーパーまで行ったり。それが一番変わったところかもしれません(笑)。

衣装協力/SAAAGE boutique
衣装協力/SAAAGE boutique

撮影/河野英喜

Profile

原菜乃華(はら・なのか)

2003年8月26日生まれ、東京都出身。

2009年に子役としてデビューし、映画『地獄でなぜ悪い』やドラマ『朝が来る』で注目される。主な出演作はドラマ『死との約束』、『ナイト・ドクター』、『真犯人フラグ』、映画『3月のライオン』、『はらはらなのか。』、『罪の声』、『胸が鳴るのは君のせい』など。『ナンバMG5』(フジテレビ系)に出演中。

『ナンバMG5』

フジテレビ系/水曜22:00~

公式HP

フジテレビ提供
フジテレビ提供

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

斉藤貴志の最近の記事