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急発進の『街並み照らすヤツら』で酒屋の娘役の美少女が照らすもの。高校生女優の深夜ドラマに続く輝き

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)日本テレビ

 4月クールのGP帯の連続ドラマで、最も遅くスタートした『街並み照らすヤツら』(日本テレビ系)。2話が昨日放送された。この枠ではもともと「ビッグコミックオリジナル」で連載中のマンガが原作の『たーたん』が放送予定だった。

 しかし、前クールの『セクシー田中さん』で、原作者の芦原妃名子さんが脚本を巡るトラブルをSNSに投稿した後に急死。『たーたん』は同じプロデューサーによる、同じ小学館のマンガのドラマ化とあって制作中止に。『街並み照らすヤツら』は代替作として、急ピッチでオリジナル脚本、キャスティングからクランクインとなった。

 シャッター商店街でケーキ屋を営む竹野正義(森本慎太郎)は、妻の彩(森川葵)と共に店を切り盛りしてきたが、借金で潰れかけている。幼なじみの荒木太一(浜野謙太)の提案に乗って、保険金目当ての偽装強盗に手を染めてしまった。

 荒木が仲間を集めて強盗役を買って出て、ドタバタながら計画を実行。商店街にニュースが知れ渡る。だが、酒屋の娘の深川莉菜(月島琉衣)が偽装を見抜いたらしく、正義が「うちの店にも強盗してほしいんです」と頼まれる……という1話ラストだった。

『からかい上手の高木さん』ではピュアさが光って

 制服姿の莉菜役の月島琉衣はリアル高校生の16歳。日テレ側は『たーたん』の代替ドラマにキャストを引き継ぐ想定だったが、主演予定のムロツヨシや吉岡里帆らは辞退。月島は『たーたん』では、主人公が刑務所に入った友人から預り育てている娘の役だったという。

 2022年にミスセブンティーンから「Seventeen」の専属モデルとなり、今クールでは深夜枠の『からかい上手の高木さん』(TBS系)で主演もしている。そちらではおでこを出したロングの髪で、知らなければ同一人物と気づかないかもしれない。

 演じる高木さんは島の中学生で、教室の隣りの席の西片(黒川想矢)をいつもからかって楽しんでいる。ニコニコしながら「西片と手を繋いで学校に行きたいから自転車を置いてきた」「(初詣で)西片にデートに誘われますようにってお願いした」などと言っては、子どもっぽい西片は「またからかって!」とからかい返すことばかり考えていて。

 実はそれは高木さんの本心で、西片も時にドギマギしながらはにかむ。そんな2人の関係が何ともかわいらしく、微笑ましい。久々の甘酸っぱい青春ドラマになった。そして「一緒に帰ろう」のひと言だけでも胸をときめかせる、月島のピュアな輝きも際立っている。

つぶらな瞳と豊かな表情で引きつける

 『街並み照らすヤツら』の2話では、莉菜は学校帰りの道で、楽しげに話している同級生たちの後ろを1人で歩いていた。憂うつそうな表情。友だちがいないようだ。家の酒屋に戻ると、軒先のスタンドで常連客が飲んでいる。父親の龍一(皆川猿時)が酔い潰れているのを見て、ため息をついて店番を替わる。『高木さん』と違い、すべてを諦めたようなローテンションだ。

 そして、買い物に行った店で正義たちが「捕まる」と話していて、酒屋では客たちの「保険金が入る」という話を聞く。点と点が繋がり、正義と太一に偽装強盗を頼みに行った。「私の大学進学の資金を確保しておきたいんです」と懇願。目を見開いて「毎日何も考えないで飲んだくれてるお父さんを、恐怖のどん底に落としてやりたい」とも訴えて、屈折した闇を感じさせた。

 正義は話に乗らず、太一と仲間で決行することに。正義に「強盗してくれないんですか?」と問い掛ける月島のつぶらな瞳に引きつけられる。当日には、棚の上の一番高い酒を盗み忘れないように太一に頼み、「確実にお父さんがヘコむやつなんで」とも。

 その日に限って、莉菜が大学に行きたがってるのを知った龍一が、酒断ちを母親の仏壇の前で宣言。莉菜は「何度も見てきたパフォーマンス」と、自ら一升瓶で酒を注ぎ、龍一を酔わせて眠らせる。

 正義も結局駆け付け、店内の酒を運び出して、偽装強盗は何とか成功。翌日に1人で酒を煽る龍一の背中に、莉菜はほくそ笑んだが、「お前が無事で良かった」と言う龍一にほだされ、「やっぱり勝てないな」とすべてを打ち明けた。

 月島はこの2話ではメイン格で出番が多く、美少女ぶりが光っていた。同時に『高木さん』では見せていない表情の豊かさも魅力に感じた。

(C)日本テレビ
(C)日本テレビ

同世代のトップを行く當真あみに続くか

 若者のテレビ離れと共に、ドラマもターゲットが大人にシフトして久しい。一時は刑事ものや医療ものだらけになったりで、学園ものなどはすっかり少なくなった。そうなると、高校生女優の出演枠は極めて限られてくる。

 そんな中で、この世代のトップを行くのは當真あみ(17)だろう。昨年は、大河ドラマ『どうする家康』に家康の長女の亀姫役で出演。『最高の教師』では芦田愛菜が演じる同級生に特別な想いを寄せる優等生役。

 今年に入ってからも、日曜劇場『さよならマエストロ』で西島秀俊が演じた指揮者の弟子に志願する役でインパクトを残した。3月には、NHKの創作テレビドラマ大賞受賞作の『ケの日のケケケ』で初主演も。カルピスウォーターのCMにも2022年から出演していて、知名度が浸透しつつある。

 他には、『仮面ライダーガッチャード』(テレビ朝日系)のヒロインで変身もする松本麗世(16)、『大豆田とわ子と三人の元夫』などに出演していた子役出身で演技力に定評ある豊嶋花(17)、『最高の教師』で當真と共に優等生役で、登竜門の高校サッカー応援マネージャーも務めた藤﨑ゆみあ(16)らが高校生だ。

 逸材であっても、GP帯での高校生役が少ない中、月島の『街並み照らすヤツら』でのレギュラー出演は大きい。公式サイトのCAST欄では森本に次ぐ2番手になっていて、今後も多くの出番があることが期待される。

 『からかい上手の高木さん』と違う形で、たて続けに印象を残せば、當真に続き、一気に高校生女優のトップランクに躍り出そうだ。この若い世代が盛り上がることによって、青春ドラマがまた作られやすくなるかもしれない。

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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