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『9ボーダー』で川口春奈ら3姉妹の三女役の畑芽育 「周りから取り残された19歳の気持ちはわかります」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)TBS

19歳、29歳、39歳の3姉妹が“大台”を前に焦りを抱えながら、幸せを探すドラマ『9ボーダー』。その三女を畑芽育が演じている。この1年で深夜帯などの連続ドラマ3本に主演ほか出演作が相次ぎ、今回はGP帯でのメインキャスト。浪人生という名目で実家に居座りながら目標を持てず、マッチングアプリで出会った相手に交際0日婚を申し込まれて揺れる役どころだ。実年齢は22歳になりたて。脚光を浴びる中での想いは?

ずっと自分と闘っている感じです

――映画のヒロイン、昼や深夜ドラマの主演と来て、今回はGP帯のメインキャスト。またひとつ階段を上がった感じですか?

 お話をいただいて、まず主演の川口春奈さんを始め、テレビで拝見してきた尊敬する役者さんたちと一緒に、素敵な作品を作れることがとにかく嬉しくて。ドキドキしながら撮影を待っていました。

――勢いのある女優さんを見ているのは楽しいですが、渦中のご本人はどんな感覚ですか? 目の前に明るい未来が広がっているような?

 いえ、全然です。私はお仕事を始めて20年くらいになりますけど、一瞬たりとも安心できたことはなくて。それは今もまったく変わりません。1年後、半年後、1ヵ月後のこともずっと案じていて、そのときにどうなっていたいか。どういるべきなのか。ずっと自分と闘っている感じです。

不安からワクワクする気持ちに変わってきて

――今なら何をやってもうまく行きそう、みたいに思えたりはしませんか?

 逆に、何をするにも不安が付きまといます。不安というか、あまりうまく言葉にできませんが、先々まで保証される職業ではないので……。ただ、10代の頃は将来について考えると、不安になることが多かったのが、20代に入ってからは、ワクワクするような気持ちになってきました。

――まさに9ボーダーを越えて変わりましたか。

 でも、今日は今日のことで精いっぱいで、次の撮影があさってなら、明日の夜にやっと考えられるくらい。本当に1日1日を凌いでいる感じです。

ローでマイペースな役は今までにない挑戦です

――『9ボーダー』で演じる八海は、掴みやすい役ではありますか?

 私にとっては、今までにないキャラクターへの挑戦です。本読みから、プロデューサーさんや監督のふくだももこさんに「もうちょっと低めのトーンでしゃべってもいいよ」とアドバイスをいただきました。最近学園ものやポップな作品が多くて、トーンを上げるクセが付いてしまっていたかもしれません。八海はポップな作品の中のローなキャラクターで、経験なかったポジションなんです。

――人物紹介では「どこか低体温」となっています。

 マイペースでもあり、19歳らしい悩みも抱えていて。家族とウマが合わない部分もあるけど、決して嫌いなわけではない。リアルな姉妹だったらありうる状況を、ドラマで映しています。その線引きを表現するのが難しいところで、壁にはぶつかってますけど、シン・畑芽育になっていきます(笑)。

――低めのトーンというと、技術的には声の出し方から変えているわけですか?

 普段より抑えたり、ゆっくりしゃべってみたり。細かい部分を工夫しながらやっています。でも、八海の心情は変わっていって、だんだんお姉ちゃんたちへの愛情が大きくなって。最終的にはもっと明るく、前向きに自分を出せる子になれたらいいな、なんて思っています。

わからないことをやっと人に聞けるように

――公式YouTubeのインタビューでは、芽育さん自身も19歳の頃は「人生の岐路。悩んだ年齢」と語っていました。でも、八海のように進路や結婚で悩んでいたわけではないですよね? 役者の道を進むことは決まっていて。

 先ほどもお話ししたように、常に先々のことを考えていて、不安が大きかった時期だったかなと思います。自分と周りを比べてしまって、どんどん追い抜かれて、1人だけ取り残されているような気持ちになって。八海に共感できる部分はあります。

――八海みたいに、1人で「もうわかんないよ」となったりも?

 わからないことだらけでした。今もそうですけど、やっとわからないことを周りの人に聞けるようになりました。19歳の頃は聞ける相手もいなくて、誰に頼ればいいかわからず、悩みを自分で抱えてしまっていて。そういう経験はしてきたので、八海と19歳の自分をすり合わせながら、お芝居しています。

占いではこの仕事に良い名前だと

――劇中の八海のように、占いに行ったこともありますか?

 私が初めて占いに行ったのは、2年前のちょうど20歳くらいのときでした。友だちと興味本位でしたけど、頼れる人が近くにいないから第三者の言葉が欲しい気持ちも、何となくわかりました。確かに、私も救いになる言葉を掛けてもらえたら、嬉しかっただろうなと思い返して。

――実際、占いで良いことは言われました?

 こういうお仕事をしていると話したら、畑芽育という名前は「すごく良い」と言われたことだけは覚えています。

撮影初日に3人で銭湯に入ってドキドキでした

――八海はおにぎりをデコったり、アート系サンドを作ったりしますが、芽育さんが実際に作ったものではないんですよね?

 アートめしの監修をしてくださる先生のご自宅に足を運んで、作る練習はしました。手つきや写真の撮り方も教えてもらいながら。八海はSNSを活用して、デコめしをどんどん表に出していくんです。先生の技術には全然及びませんけど、ちょっとでも近づきたいと思っています。

――ホットケーキを作るところは、さすが元『パティスリーMON』のパティシエだなと思いました(笑)。

 泡立て器を回して生地を作る仕草は、MONで鍛えられたものが出せました(笑)。毎クールやらせていただく作品が、次の作品に活きるなと思っています。

――3姉妹のシーンで、実家で営む銭湯に入ったのは初めての体験でした?

 スーパー銭湯はよく行きますけど、ああいう昔ながらの銭湯は初めてでした。風情のある建物の本物の銭湯で撮影して、映像もとてもきれいになりました。

――撮影では長く浸かって、のぼせたりはしませんでした?

 あんなに長くお風呂に入ったことはありません(笑)。でも、ぬるま湯だったので大丈夫でした。あのシーンは撮影初日で、いきなり春奈さん、木南(晴夏)さんと一緒にお風呂に入るとは思わなかったので、すごくドキドキしました。

川口春奈さんは人間的にも目標です

――主人公の七苗役の川口春奈さんは事務所の先輩でありつつ、今回が初対面だったそうですが、作品はご覧になっていました?

 もちろんです! 『桜蘭高校ホスト部』、『GTO』、『着飾る恋には理由があって』、『silent』……。私は春奈さんの作品を観て育ってきたようなものです。

――現場で学ぶことも多いですか?

 たくさんあります。振る舞いがテレビで観ていたままの印象で、まったく着飾らずチャキチャキとされていて。すごくタフで引っ張ってくれます。役者としてはもちろん、人間性も大好きで、私もこういうふうになりたいというロールモデルにさせていただいてます。

――演技に関して、すごいと思うところは?

 それは節々に感じます。ちょっとした顔の角度や目線の変え方から違ったり。一緒の画面に映っていても、絶対に春奈さんに目線が行くと思ってしまう。私にはまだ遠い背中です。

――合間などで良い話を聞いたりもしましたか?

 ディープな話もよくしています。将来のことや不安に思っていることも、全部吐き出せる関係になれて。いろいろな言葉を掛けていただいていますが、私の胸に秘めておきます。

お笑い好きとしてぜいたくな時間も

――あと、以前の取材で、お笑い好きの芽育さんがオズワルドさん出演のライブにも行かれた話をうかがいました。今回、伊藤俊介さんがおおば湯のアルバイトの梅津剣役で出演されています。

 カメラが回ってないところで、「劇場に足を運んでます」とかお話をさせていただいて。お笑いオタクとしてはすごく貴重でぜいたくな時間です。でも、みんなで伊藤さんのことをビシバシとイジりながら、ムードメーカーみたいになってくれています。

――芽育さんもイジっているんですか?

 この現場では、3姉妹がどうしても強いかもしれません(笑)。おおば湯で私たちがこっちでしゃべっているときに、ウメケンがあっちでしゃべるというシーンがよくあって。伊藤さんが台詞のタイミングを間違えたりすると、みんなでツッコみながら、仲良くやっています(笑)。

自分の役割を考えながら成長を感じてます

――他に序盤の撮影で、印象に残っていることはありますか?

 毎日が印象的で、自分にカメラが向いて素敵な台詞を紡げることに、感謝の気持ちでいっぱいです。YOUさんと対峙するシーンもあって、撮影に入る前は不安でした。ずっとテレビで観ていた方なので、お芝居をしていても恐縮してしまわないか。最初の頃は映像を観ても、自分が緊張しているのが何となくわかりました。でも、日にちを重ねるに連れて、一緒に作り上げていく感覚が備わってきて。それは当たり前のことですけど、しばらく前の私だったら、気後れしたままだったかもしれません。

――今は芽育さん自身、CMも含めてテレビにいっぱい出ていますから。

 今回も素敵な役者さんたちに囲まれて、自分の立ち位置や役割を考えながら、ちょっとずつ成長できているように日々感じています。

台本にない台詞が現場で加わります

――ふくだももこ監督は面白い演出をされると聞きます。

 すごく面白いです! ドライ(リハーサル)とカメリハと本番でお芝居を変えてくれたり、台詞がその場で追加されたり。台本になかった名言も生まれました。

――たとえば?

 1話の後半の木戸(大聖)さんが演じる陽太と八海のシーンは、台本では私が食べていたソフトクリームが手に落ちてしまって、拭いてくれた陽ちゃんにときめいていたんです。それが私の鼻にソフトクリームが付くことに変わって、陽ちゃんが手ぬぐいで拭きながら「赤ちゃんかよ」と言う台詞を、ふくださんが加えてくれて。ドキドキする名言だなと思いました。

――八海は酒屋の陽太に密かに恋していて、陽太は幼なじみの七苗を好きで。

 八海にとっては、陽ちゃんとは切ない場面が多いですね。でも、その様子が応援したくなる感じです。

ふざけるタイプで役とギャップがあるかも

――このドラマで芽育さんを知った方には、八海とイメージを重ねられるかもしれません。

 掛け離れているわけではないですけど、私は結構ふざけるタイプで基本明るくいたいので(笑)。バラエティとかでギャップを感じるかもしれません。低体温ではなくて、情熱的かなと思います。

――どんなときに高まりますか?

 ラッパーのAwichさんを聴いているときです。R&Bとか音楽が好きで、ライブに行くのが息抜きになります。『9ボーダー』の撮影が終わったら、フェスにも行きたいです。

――八海の部屋にはカプセルトイやキャラクターグッズが並んでいますが、芽育さんの部屋は?

 『ちいかわ』で溢れています。収集グセがあって、グッズをコツコツ集めているのは、似ているかもしれません。

10代の頃より遥かに忙しくて心が安定します

――芽育さん自身は19歳のボーダーをもう越えました。変わったことはありましたか?

 つい最近22歳になって、そろそろ子どものふりはできないなと。

――今回は年の離れた末っ子役で、若手キャストではありますが。

 1人の人間としてはもう立派に成人ですし、責任を持って行動しないといけない。誰かに頼れたら楽でも、そういうわけにはいかない。いろいろなことを考えながら、目まぐるしい毎日を過ごしています。10代の頃より遥かに忙しくなりましたし、そのほうが心が安定して、すごく充実しています。

――お顔つきもこの1年くらいで、大人っぽくなってきたのでは?

 変わりましたね。周りの方によく言われますし、自分でもそう思います。去年の誕生日に出した写真集を今見ると、顔つきが幼くて。人間、ちょっとずつでも変わっていくんだなと感じています。

「この役を演じるのを見たい」と言われるように

――次のボーダーの29歳になる頃には、今の川口春奈さんのようにGP帯でも主役をバンバンやっていたいですか?

 「畑芽育がこの役を演じるのを見たい」と言っていただけるように、成長していきたいです。そういう作品と、運命的な出会いがあったらいいなと思います。

――その先の39歳までは、まだ想像もつかない感じですか?

 そうですね。今はただ、お仕事が楽しくて仕方ないですけど、いつか母に一戸建ての家を買ってあげることを目標にしておきます。

Profile

畑芽育(はた・めい)

2002年4月10日生まれ、東京都出身。近年の主な出演作はドラマ『最高の生徒~余命1年のラストダンス~』、『女子高生、僧になる。』、『たとえあなたを忘れても』、『パティスリーMON』、映画『森の中のレストラン』、『なのに、千輝くんが甘すぎる。』など。ドラマ『9ボーダー』(TBS系)に出演中。

金曜ドラマ『9ボーダー』

TBS系/金曜22:00~

公式HP

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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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