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大河ドラマの渋沢栄一の娘からオタクOLに。小野莉奈が「無敵になれる」原動力とは?

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)テレビ東京 (C)志茂・ぶんか社/「部長と社畜の恋はもどかしい」製作委員会

大河ドラマ『青天を衝け』で渋沢栄一の娘・うたを好演した小野莉奈が、深夜に人気を呼ぶ『部長と社畜の恋はもどかしい』に出演している。残業ばかりの社畜OL・丸山真由美(中村ゆりか)と必ず定時で帰る部長・堤司治(竹財輝之助)が繰り広げるオフィスラブコメディーの中、真由美の後輩でアイドルの推し活のために働くオタクの三森さとみ役。新境地への取り組みと、自身の女優業での仕事観について聞いた。

大河ドラマは親世代からの反響が大きくて

――『青天を衝け』に出演して、反響は感じました?

小野 母と父が毎週観て喜んでくれたのが、一番身に染みました。家族LINEに親戚からのメッセージも来ましたし、友だちの親も観てくださったみたいで。昔通っていた塾の先生や高校時代の担任の先生からも「観てます」とLINEをいただいて、やっぱり親世代の方からの反響が多かったです。大河ドラマを楽しみにしている方がたくさんいて、私のことも観ていただけたんだなと思いました。

――渋沢栄一の娘として、女学生時代から結婚して母親になった後まで演じて、女優として糧になりましたか?

小野 いい意味で、今までにないプレッシャーがありました。初めて実在の方を演じるのも、子役の女の子たちが一生懸命演じた役を引き継ぐことも大きかったし、うたは渋沢家で流れを作るタイプだったんですね。言うことがハッキリしていて、自分の演じ方で劇中の渋沢家の雰囲気が変わってしまう責任も感じていました。そういうことを肝に銘じながら演じた役でした。

――莉奈さんはプレッシャーとは無縁のタイプかと思ってました。

小野 人にはプレッシャーはないと見られがちですけど、実は毎回緊張しています(笑)。

音楽を聴いて学生時代の気持ちを取り戻します

――放送中の『部長と社畜の恋はもどかしい』で演じている三森さとみは、アイドルオタクのOL。莉奈さん自身は「誰かを推す経験はない」とコメントされていましたが、人でなくても何かに熱中したことはないですか?

小野 一時期、絵をめちゃくちゃ描いていました。時間があれば、外に水彩画を描きに行ったり。幼稚園の頃から、1人で黙々とする作業が好きだったんです。みんなで遊ぶより絵を描いたり、砂場でお団子を作っていました(笑)。

――三森にとっての推しのライブのように、自分が上がるものはないですか?

小野 あまりないんですよね。強いて言うなら、音楽を聴いてモチベーションが上がる瞬間はあります。

――どんな音楽を聴くと、上がるんですか?

小野 洋楽です。私は歌詞の意味を考えながら聴くというより、リズムやサウンドがハマると、その曲を好きになるタイプなので。あと、学生時代によく聴いていた曲で、昔のことを思い出したりします。ダンス部のウォーミングアップで流れていた曲を通して、部活を一生懸命頑張っていた気持ちを取り戻すことがあります。

――莉奈さんの部活時代に流れていた曲というと……。

小野 テイラー・スウィフト、ワン・ダイレクション、ジャスティン・ビーバー、エド・シーランとかですね。

学生ものとは恋愛のテイストが全然違いました

――OL役も初めてですよね。そちらのリサーチ的なことはしましたか?

小野 私の姉が会社勤めのOLで、今はリモートなので家で仕事している姿を毎日のように見ています。家族と話しているときと、会社の人と電話や会議をしているときでは、声が変わって姿勢もちゃんとするんです。こういうふうに切り替えるのかと、ヒントをもらえました。

――年齢的には莉奈さんも21歳になって、自然に役に入れた感じですか?

小野 今まで学生役が多かったので、もうOLを演じる年齢になってきたんだと、今回すごく実感しました。今はどちらもできて、この狭間の時期を楽しみたいと思いつつ、まだ学生のままでいたい気持ちもあって(笑)。でも、これから大人な役が多くなると思うので、研究しないといけないですね。今回初めてOLを演じて、また違う楽しさも感じました。

――どんなところが楽しかったと?

小野 自分のお芝居というより、恋愛のテイストが学生ものと全然違うなと思いました。私のイメージだと、学生ものは自分の気持ちを素直にぶつけるシーンが多くて。会社での恋愛では「大人だから」という遠慮や建前がある気がします。フィルターが3枚くらいかかっているように見えて、だから、もどかしさが生まれるのかなと。

――『部長と社畜の恋はもどかしい』は“ムズキュンが過ぎる”オフィスラブコメディーと謳われていますが、キュンとするところもありました?

小野 私は直接関わってないですけど、堤司部長が丸山先輩にお弁当を作って渡すのがすごくいいなと思いました。丸山先輩の仕事を支えると言って、言葉だけでなく形にしている部長が素敵でした。

やる気なさそうで実はいろいろ考えていて

――三森は推しのライブに行くためにウソをついて真由美に自分の仕事をやってもらったり、一方で「仕事を教えてほしい」とも言ったりしていました。どんな人物像をイメージしましたか?

小野 一周回って、すごく正直な子だなと思います。推しのことしか頭にないようで、実はいろいろ考えているんですよね。探れば探るほど、新しい一面が見られました。一見やる気がなさそうに見えますけど、3話で自分の仕事ぶりを良くないと思っていることを丸山先輩に話していて。そういう想いを知ってから、三森を愛おしくも思えてきました(笑)。

――2話で定時に退社してライブに行ったくだりでは、ちゃっかりしている感じがしました?

小野 それも三森なりの背景があるというか。丸山先輩が隣りのデスクにいて、人の仕事も「いいよ、いいよ」って引き受けている姿をずっと見ていて。「なんで何でもやるの?」と不満に思いながら、自分も推しのライブに行きたいから甘えてしまう。でも、「これじゃダメなんだ」という葛藤や覚悟を、三森の言葉のひとつひとつから感じました。難しいところですけど、単純にライブに行きたいからウソを言ったわけではないと、演じながら思いました。

――演出で言われたこともありました?

小野 丸山先輩に対する言葉の言い方を「もっとやさしく」とか「ここはもう少し強く」というような演出はありました。よく言われたのは、推しの音楽を聴いて盛り上がっているシーンで「弾けてほしい」と。

――会社でイヤホンで聴きながらノリノリで踊っていたりもしました。莉奈さんはそういうこともしませんか?

小野 さすがに仕事中はしませんけど、家では結構乗って踊っていたりはします(笑)。

人のために頑張るときに本物の力が溢れます

――莉奈さんは女優が小学生の頃からの夢で、演技のことでは真由美のように、いくらでも没頭したりはしませんか?

小野 そういうことはあまりないですね。休むことも大事だと考えるタイプなので。没頭するものもなくて、何かほしいと思って模索中です。ただ、人と話すことは好きなので、それが趣味かもしれません。

――三森についてのコメントで「私も誰かのために頑張るとき、ものすごいパワーを発揮することがあって、自分でも驚きます」とありました。「誰か」というのはどんな人ですか?

小野 家族だったり、自分を支えてくれる人だったり。しんどいときとか、自分のためというより、その人のためにやらなきゃと思うほうが、出てくる力が違う気がします。本物のパワーが溢れてきて、そういうときの自分は無敵だといつも思います。

――会社と芸能界は違いますが、三森にとっての真由美のように、莉奈さんが頼りにしている先輩はいますか?

小野 現場ではヘアメイクさんに支えてもらうことが多いです。メイク中に話す時間が多いから仲良くなって、ちょっと違う角度から意見をいただけて。本当は監督さんに聞くことですけど、その前に「この台詞、こう言うのはどうかな?」と相談したりしています。

――人生の先輩として話を聞くこともあったり?

小野 そうですね。年上の方が多いので相談することもあって、年齢を重ねているからこそのアドバイスをいただきます。煮詰まっていたときに「あまり気にしすぎなくていいよ」みたいな言葉を掛けてもらって、納得したこともありました。

毎回現場での出会いを楽しみにしていて

――女優の仕事をしていて楽しいと感じるのは、どんなときですか?

小野 やっぱり家族が自分の出た作品を観て喜んでくれていると、自分も一番楽しい気持ちになります。自分のために続けるというより、支えてくれている人のために頑張ることが、原動力として大きいです。

――女優以外の仕事をするのは考えたこともないですか?

小野 考えたことはあります。役者をしていると、それこそ今回のOLとか、役として演じて「こういう仕事もあるんだ」と学ばせてもらっていて。でも、OLは私の性格だと難しいと思いました。

――デスクワークには向いてないと?

小野 というより、今の仕事では、毎回違う現場で出会いを楽しみにしているので。その楽しさがなくなるのは、悲しいと思っちゃいます。

――ちなみに、今は髪を伸ばしているようですが、次の役のためですか?

小野 違います。今までの人生でロングにしたことがなかったので、単純に伸ばしてみたいだけ(笑)。いつも途中で切りたくなってしまうんですけど、今回はもっと伸ばし続けたくて。逆に、役で切ることになったら、ちょっとショックかもしれません(笑)。

――それと、今年は初詣には行きましたか?

小野 お正月に京都の清水寺には行きました。

――何か願を掛けてきたり?

小野 弟が受験生なので「うまくいきますように」とお願いしました。

――やっぱり自分のことより家族を思って。

小野 あとは「無事に過ごせますように」とか、普通のことだけです。

――莉奈さんはよく“ネクストブレイク女優”的に名前が挙がりますが、今年はネクストでなくブレイクしたい、みたいなことは考えませんか?

小野 毎年そういう気持ちはあります。でも、これは神様に頼らないで、己の力で頑張ろうと思っています。

*写真は『部長と社畜の恋はもどかしい』より

Profile

小野莉奈(おの・りな)

2000年5月8日生まれ、東京都出身。

2017年にドラマ『セシルボーイズ』で女優デビュー。主な出演作はドラマ『中学聖日記』、『絶対正義』、『青天を衝け』、映画『アンナとアンリの影送り』、『アルプススタンドのはしの方』、『テロルンとルンルン』、『POP!』など。ドラマ『部長と社畜の恋はもどかしい』(テレビ東京系)に出演中。

ドラマParavi『部長と社畜の恋はもどかしい』

テレビ東京系 水曜24:30~(6・7話は24:40~)

公式HP

(C)テレビ東京 (C)志茂・ぶんか社/「部長と社畜の恋はもどかしい」製作委員会
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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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