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“炎上女王”と呼ばれた中井りか(NGT48)の真摯な素顔 「私のキャラでグループの避雷針になれたら」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/松下茜

NGT48の中心メンバーで、個人で数々のバラエティにも出演している中井りか。テレビやSNSでの発言が物議を醸し“炎上クイーン”と呼ばれていたが、最近の番組では「実はいい子?」との声が上がっている。11ヵ月ぶりのシングルでは自らガーリーなユニットをプロデュース。彼女に何があったのか? 話を聞くと、あまりに真摯な素顔が垣間見えた。

素の自分ではテレビに出られなかったので

――1年くらい前から、テレビなどで「炎上クイーンは返上したい」と発言してました。

中井 もともと自分で燃やしたいと思っていたわけではないんです。聞かれたことに対して、「毒舌を求められているんだろうな」と思ったら、そういうスパイスを少し加えて自分なりの言葉で伝えたりはしますけど、普段はただの引きこもりなので(笑)。

――「返上したい」という発言自体も含め、テレビ用だったと?

中井 素の自分ではテレビに出られなくて、毒舌とかひとつ皮をかぶってないと、ポンポン言葉も出てこないというか。誰かにイヤな思いは一切させたくないのに、ネットニュースになって、自分が辛い気持ちになってしまったこともありました。

――でも、最近『バスVS鉄道 乗り継ぎ対決旅』に出演した際には、「めちゃめちゃいい子なんだ」といった反響がありました。

中井 あの番組は2日間、ロケ中は常にカメラが回っていたんです。ずっといつものテレビで撮影していただくモードでいると疲れちゃうと思ったので、自分を作るのはやめました。歩き続けて疲れてきたときに、「鉄道チーム頑張ろう!」と口に出してないと動けなくなりそうだったこともあって、良く取っていただけたのはうれしかったんですけど、あれは素の私です。普段のテレビが少し無理していた感じかもしれないですね。

――りかさんは高校生のときは保育士を目指していたそうで、本来はやさしい人柄なんでしょうね。

中井 いや、自分でやさしいとは思わないし、性格は曲がっています(笑)。でも、子どもは好きだし、福祉にも興味ありました。保育園でも介護施設でも実習して、介護の道も考えていて。結局、どちらかを選ぶ前にアイドルになることを決めたんですけど、人のために何かするのは好きです。今もアイドルとして、ライブで歌って踊ることで笑顔になる人がいるのがうれしいので、根本は変わってないと思います。

王道を目指してカブるより本音でいこうと

――アイドルとしても、当初は握手会で釣り師と呼ばれていたり、正統派路線でした。

中井 釣り師というのはあとから付いてきたことで、ずっとファンの人を笑顔にしたい気持ちでやっていたら、そう呼ばれるようになっていました(笑)。ただ周りのメンバーよりも頑張ろうと思っていて、レッスンも劇場公演もすべてオーディションだと考えていました。

――早いうちからAKB48の選抜に入って、NGT48のデビューシングル『青春時計』ではセンターを務めました。

中井 恵まれてましたね。でも、最初は劇場公演の序列も15番目とかで、全然前に出られなくて。毎回の公演で「今日は絶対、○人を私のファンにしよう」と決めて臨んでいました。あと、SHOWROOMに力を入れて、観てくれる方たちがいたのが励みになりました。

――正統派アイドルに窮屈さを感じて、本音を言うようになった部分もありませんでした?

中井 テレビで「なんで毒舌になったの?」と聞かれて、「王道アイドルは疲れちゃったので」と言ってましたけど、そういうことより、王道を目指すメンバーはたくさんいたので。同じことをするよりも、邪道じゃないですけど(笑)、本音を言える存在が1人いたら目立てると思ったのがきっかけかもしれません。あとは、毎日SHOWROOMを配信していて、「今日はこういうことがあって悔しかった」とファンの人に話していたら、それが毒舌みたいに言われるようになりました(笑)。

アイドルの自分を削ることはしなくていいかなと

――「彼女でも作って初詣に行けば?」といった発言ですよね。そういうのも話題にはなって、個人で『青春高校3年C組』とか『今日から友達になれますか?』とかバラエティのレギュラーが増えましたが、自分でもやりたいことではあったんですか?

中井 実は自分からバラエティをやりたいとは思ってなかったんです。根本にあったのは、NGT48を知ってほしいということでした。東京でバラエティの仕事をいただけて、私を入口にNGT48を好きになってくれる人が増えたらいいなと思ってましたけど、カメラの前に立つのが苦しくなってしまったこともありました。ディレクターさんに「いつもの毒舌でお願いします」と言われても、本来の自分はそういう人間ではないので。そこで無理に頑張ったら、面白がってくれる人はいても、不快に思われる方もいるじゃないですか。世の中に嫌われて、話題にはなって、どっちを取るかだと思いました。でも、私はもともとアイドルになりたかったので。バラエティに出演させていただいても、結果的に嫌われてしまうんじゃないかと、イヤになった時期もありました。

――その辺、今はどう消化しているんですか?

中井 事務所と話し合って、話題になるために無理にキャラを作るような内容は控えていきたいと伝えました。ロケとかほんわかした番組は、グループのためにも全然やっていきたいんですけど、バラエティでアイドルとしての自分を削るようなことは、今はやらなくてもいいかなと思ってます。

――ともあれ、個人でのテレビ出演が増えて、りかさんの知名度も上がりました。プラス面も多かったのでは?

中井 アイドルとしての自分が第一で、そこを崩されたらどうしようという気持ちがあって。自分のことだけを考えると「あーっ……」となっちゃっても、メンバーのためになると思えば頑張れて、精神的に成長しました。

――やっぱりNGT48愛は強いんですね。

中井 グループ内でも、MCで少し攻撃的でスパイスになることを言う役目はあるのかなと思います。おとなしくてフワフワしたメンバーが多い中で、そこに自分も紛れてしまったら、ニュースにしてもらえないし話題にならない。NGT48を知ってもらうために、私のキャラを飛び道具にして、みんなの避雷針になるのは、自分の役割かなと思います。

ガッツリ練習する姿は見せたくなくて(笑)

――毒舌は別にしても、りかさんはバラエティでのトークセンスがすごくあるように感じます。

中井 本当ですか? 才能があると思ったことはなくて、NGT48の結成当初は、トークはどちらかというと苦手でした。あまり人前でしゃべりたくなくて、進行役なんてもってのほか。ただ、周りに求められていることはカン良くわかって、応えようとしていたら、こうなってしまいました(笑)。自信なんて、ずっとないです。でも、グループでどのポジションにいても一番目を引く存在でいようとは、自分の中で決めています。そこの芯はブレないようにしていて。他のメンバーに負けてないところはたくさんあると思うので、目立てる自信はどこかにあります。

――トークよりパフォーマンスのほうが自信あると?

中井 ダンスや歌は他のメンバーも上手ですし、スキルに自信はないですけど、好きなので。歌って踊るのを楽しんでいることでは、誰にも負けないと思ってます。それは観る方にも伝わって、楽しんでもらえるんじゃないかと。

――もともとダンス歴は長いりかさんですが、スキルをさらに上げる努力もしつつ?

中井 それはすごくしました。みんな同じ衣装を着て、同じ曲を同じ振りで踊っている中で、誰よりも目立ちたくて。ダンスでは誰よりも手を伸ばしたり、歌は誰よりも大きい声で歌うことは心掛けています。デビューした頃、私だけ「声がすごく聞こえる」と言われていたくらいで(笑)、そこは負けたくない気持ちがありました。

――他のメンバーがやらない練習をしたりも?

中井 私、メンバーの前でガッツリ練習するのは、イヤなんですよ。恥ずかしいし、自分の技を盗まれたくないから(笑)。家ではマットを敷いて、すごく練習します。フリーで踊るところで、誰よりも目立って誰ともカブらないポーズを身に付けることは、初期から今もずっとやっています。フリーと言われても、絶対適当にやらない。自分で作った踊りをする。そこを家でコソ練しています(笑)。

――努力は人に見せないと。

中井 レッスン場でガツガツ踊っている中井りかは、あまりカッコ良くないじゃないですか(笑)。

自分の好きな低い声でカッコつけて歌えました

――新曲の『Awesome』もコソ練したんですか?

中井 レッスンはダルそうにやって、家に帰って死ぬ気で練習しました(笑)。メンバーの前で踊って歌うのは、6年やって今さらですけど、何か恥ずかしくて。自分のキャラもあるし、負けず嫌いなのかもしれません。だから、家で練習して固めます。今回MVを撮ったのは振り入れの翌日で、まだ固まってなかったんですけど、ファンの皆さんの前で披露するときには、絶対目立ちたいです。

――今回は『にいがた総おどり』とのコラボソングで、こういうダンスミュージックは好きですか?

中井 好きです。音楽は昔から大好きで、ストリート系のヒップホップも、流行っているJ-POPも、いろいろなジャンルを聴いています。逆に、自分がアイドルをやっていると、家でアイドルの曲はあまり聴かなくなったかも。

――ダンスミュージックだと、どの辺がお気に入りですか?

中井 特定の曲というより、海外で流行っている洋楽をプレイリストで流したりします。家でテレビはつけたくないので、朝から洋楽ヒットメドレーみたいなのを流しながら、出掛ける準備をしています。

――今回のレコーディングでは、どんなことを意識しました?

中井 私は高音があまり出なくて、アルトやテノールくらいの低い声が好きなんです。『Awesome』はそっち寄りでカッコつけて歌える感じの曲だったので、自分の好きな音域の声を出しやすかったです。

女の子に好かれるユニットを作りたかったので

――カップリングには、りかさんがプロデュースするユニット・CloudyCloudyの『はっきり言って欲しい』が収録されます。

中井 私からユニットを作りたいと提案しました。というのは、アパレルブランドのプロジェクトを始めるに当たって、最終的にはNGT48のメンバーに自分の作った衣装を着てもらうのを目標にしたんです。それを叶えるため、まず私が特に衣装を着てほしい子を選んで、ユニットを作りたいと思いました。私の好きな衣装を着てもらって、踊ってかわいく見えるのはどんな子か考えました。

――今回はナースふうの衣装ですね。

中井 女の子にしか着られない服、マインドが女の子の方も含めて、女の子らしくいられるためのお洋服を作りたいと思っていて。だから、女の子に好かれる女の子をコンセプトにしました。

――ユニット名も自分で考えたんですか?

中井 はい。コンセプトに合うイメージとして、雲(cloud)みたいにフワフワしていて、触ったら消えちゃうくらい危うげな繊細さを突き詰めて、付けた名前です。

――詞や曲に関しては、どんなリクエストをしたんですか?

中井 ドン、ドンってお腹に響く低音と、鐘やベルのかわいい音をミックスさせた楽曲がいいですと、意味のわからないリクエストをしました(笑)。あとは、はかな気な感じを表現したいと。そしたら、すごく素敵な楽曲を秋元(康)さんが作ってくださいました。

あざとくブリブリ歌っていたから合格(笑)

――詞に関しては、秋元先生と直接話したり?

中井 相談させていただきましたけど、私は詞でそこまで細かいことはわからなくて。秋元さんは本当にプロなので、意図を汲んでいただいたと思います。アイドルソングでも秋元さんはよく“僕”という男の子目線で書かれますけど、今回は女の子の気持ちを代弁する詞にしてくださって、感動しました。

――「好きなんだ こいつのこと」とみんなの前で言われたりしています。

中井 でも、本当はたぶん、「私だけにはっきり言って欲しい」という気持ちがあるんですよね。曲調は明るいけど、ちょっと切ない感じになっています。

――りかさんの他のメンバーは、『Awesome』でセンターに抜擢された小越春花さん、小熊倫実さん、對馬優菜子さんとなりました。

中井 はるか村(小越)は「急にどうした?」というくらい、すごいブリッコして歌って、あざとさを感じました。こういう女子が実際いたらツッコミたくなるくらいブリブリしていたので、合格でした(笑)。

インスタには好きなものを詰め込んでます

――女の子らしさということだと、りかさんのインスタもガーリーでかわいいですね。それこそ炎上クイーンのイメージで見たら、ビックリするくらいに(笑)。

中井 インスタは私のパーソナルな部分を出すところだと思っています。好きなものを詰め込んで、自分の世界観を作るうえで指標になるので、ユニットのメンバーを選ぶときもインスタを見たりしました。

――ブランドの設立プロジェクトは貯金から100万円をおろして始めて、デザインから学ぶということで、地道に取り組んでいるようですね。

中井 布を選んでデザインをしたり、イチから全部自分でやって、いいものを作りたいと思っています。

――そのプロジェクトのYouTubeでも出てましたが、りかさんは「アイドルには賞味期限がある」という発言をされます。

中井 年齢ではなくて、自分がこのポジションに立てなくて悔しいとか、この子には負けたくないとか、そういう闘争心や向上心がなくなったときが賞味期限だと思います。周りがどうこう言うことでなくて、本人のマインド次第なんですよ。

――りかさんはまだ、若手メンバーにも負けない気は満々?

中井 負けないというより、負けてないので(笑)。どの位置にいようと一番目立てる自信はあるし、目立ちたい気持ちも全然消えていません。

後輩にいろいろな景色を見せてあげたい

――アイドルでいるうちに、成し遂げたいこともありますか?

中井 6年やってきて後輩もできて、夢を託さないといけないと思ってます。まだNGT48の中井りかとして認知されている部分は多いので、イベントだったりツアーだったり、後輩にいろいろな景色を見せてあげたい。学べるものがあるなら吸収してほしい気持ちはあります。でも、私は口で指示したり、リーダーシップを発揮できるタイプではないので、見て学んでくださいと。壁があって悩んだら、相談してくれれば全然答えますけど。

――アイドルに留まらない活動を目指す後輩にも、背中を見せようと?

中井 でも、私は別に外の仕事で何かを残せたわけではないから。後輩に外でも活躍してほしいけど、芯はブレないようにしないと。私みたいなアイドル人生をマネすると後悔するかもしれないし、そこは学んでほしいところですね。

――りかさん自身はユニットにアパレルブランドと、今やりたいことが始められている感じですか?

中井 今のところ、滞りなくいけてますけど、NGT48の活動でも、このご時世でできることは限られてくるので、その中で何をどうするかは考えています。

私のスタンスはずっと変わっていません

――『青春時計』の頃は「アイドルを卒業したら芸能活動もやめます」と話してましたが、今は長期的な展望もありますか?

中井 今もアイドルをやめるときは表の世界から退こうと思っています。そのあとは衣装も含めて、何かNGT48をサポートできたらいいなと。

――いずれにしても、まだまだ先のことでしょうけど、タレントとしての才能もあるりかさんが、サポートだけではもったいない気がします。

中井 タレントとして芸能界に残りたい気持ちはありませんけど、やりたくなったら、また自分のタイミングで動き出すかもしれませんし。とにかく今は、アイドルをまっとうできればいいかなと思っています。

――なるほど。今日お話をうかがって、りかさんってすごく真摯な方だなと感じました。

中井 私をどういう人だと思っていたんですか(笑)? 周りから見たらどうかわかりませんけど、私はずっと、こういうスタンスでやっています。

撮影/松下茜

Profile

中井りか(なかい・りか)

1997年8月23日生まれ、富山県出身。

2015年にNGT48の第1期生オーディションに合格。2017年にデビューシングル『青春時計』でセンター。『#きとキュントラベラー with T』(チューリップテレビ)、『トピックマガジン』(テレ玉)に出演中。

NGT48公式HP

『Awesome』 

6月23日発売

TYPE-A
TYPE-A

TYPE-A(CD+DVD) 1676円(税込)

TYPE-B(CD+DVD) 1676円(税込)

新潟盤(CD+DVD) 1676円(税込)

劇場盤(CD) 1047円(税込)

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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