春クールの連続ドラマが最終回を迎える。平均視聴率では『ドラゴン桜』(TBS系)と『イチケイのカラス』(フジテレビ系)が1位、2位となりそうだ。主演は阿部寛に竹野内豊と、共に50代の俳優。若い頃にはイケメンぶりでもてはやされたが、中年になってもゴールデンタイムの連ドラで主役を張れて、かつヒットに導くのは並大抵のことではない。カッコ良さが売りの時代を過ぎても活躍を続けるカギになったのは、コメディへの対応力だ。

田村正和さんは40代でコミカル路線を開く

 今年5月、田村正和さんが77歳で死去したことを伝える報道では、クールな二枚目俳優としての足跡を紹介しつつ、「80年代以降はドラマ『うちの子にかぎって…』『パパはニュースキャスター』などのコミカルな役にも演技の幅を広げて親しまれた」(共同)などと触れられていた。

 実際、田村さんは松竹の若手スターから、70年代に『眠狂四郎』や『鳴門秘帖』などの時代劇ドラマで人気を博し、30代は憂いを帯びた美形にハマる役で女性視聴者を魅了していた。そして、84年に不振で打ち切りになったドラマの後を受け、急きょ制作された『うちの子にかぎって…』で、子どもたちに振り回される小学校の教師を演じる。

 初めてのコメディだったが、好評で続編が作られ、『パパはニュースキャスター』など同様の路線も続けた。40代以降はダンディな役柄の他に、こうしたコミカルな作品も支持され、老若男女を問わない人気を得る結果に。50代で代表作となった『古畑任三郎』シリーズでも、切れ者ながらとぼけた刑事役に、そちらのエッセンスが活かされていた。

竹野内豊は『BOSS』の軽いノリが転機に

 今年50歳になった竹野内豊が『イチケイのカラス』で演じている裁判官・入間みちおは、絶対に冤罪を生まないという信念のもと、“職権”を発動して自ら事件を徹底検証する一方、普段の言動はユルくてマイペース。ふるさと納税が趣味で、机には何に使うつもりか不明な返礼品が並んでいたり。そんなキャラクターが、裁判を巡るシリアスな人間ドラマを、肩の力が抜けるオブラートで包む。

 竹野内がブレイクしたのは、26歳のときに反町隆史とW主演したドラマ『ビーチボーイズ』。エリート商社マンだったが会社を辞めて、海辺の民宿で働くクールなたたずまいの役で、ドラマのヒットと共にカッコいい俳優の代名詞的な存在になった。その後も『WITH LOVE』、『氷の世界』、『人間の証明』など数々のドラマで主演を務めてきたが、転機になったのが、38歳だった2009年に出演した『BOSS』。

 天海祐希がFBI帰りの女性キャリア役で主演した刑事ドラマで、竹野内は彼女のチームをバックアップする警察官僚を演じた。有能だがノリが軽く、女好きで合コン三昧という役どころ。自身のイケメンぶりを鼻にかけるナルシストでもあって、天海とチャラい掛け合いも見せて、コミカルな新境地を開いた。

 2014年にはバカリズム脚本の『素敵な選TAXI』に主演。乗客を数時間前の過去まで連れていけるタクシーの運転手役で、「タイムスリップの気分を出すため」と意味なくゴーグルを装着させて効果音を出したり、行きつけのカフェでコントのようなやり取りをして笑わせた。そうしたコメディ要素が、『イチケイのカラス』の味わいとも繋がっている。

阿部寛は『TRICK』の三枚目役が人気呼ぶ

 現在56歳の阿部寛は、大学生だった85年に『ノンノ』でモデルデビューし、『メンズノンノ』では創刊号から43号まで表紙を飾っている。87年には映画『はいからさんが通る』で、人気アイドルだった南野陽子の相手役として俳優デビュー。彫りが深く目鼻立ちのはっきりした典型的なソース顔に189cmの長身。時代を象徴するイケメンだった。

 そのルックスゆえに俳優としての役幅は狭く、出演作が減った時期もあったが、93年につかこうへいさんの舞台『熱海殺人事件 モンテカルロ・イルージョン』にバイセクシュアルの刑事部長役で主演。演技の基礎から改めて叩き込まれたという。そして、大河ドラマ『八代将軍吉宗』や『成田離婚』、『週末婚』など脇を固める役での出演が増えた。

 そんな中、36歳だった2000年には『TRICK』に出演する。仲間由紀恵が演じた自称・天才マジシャンの主人公とコンビを組む物理学者の役。プライドは高いが小心者で、怪奇現象を科学で解明すると豪語しながらトリックにすぐ騙され、見た目と裏腹に完全な三枚目だった。クセの強い演技で仲間との掛け合いも面白く、ドラマはシリーズ化されたほか、映画版も4本にわたって作られた。

 06年には、『結婚できない男』で偏屈な性格が災いして40歳で独身の主人公を演じて、高視聴率を記録。19年には53歳になってもまだ独身という続編『まだ結婚できない男』も話題を呼んだ。

 放送中の『ドラゴン桜』も2005年の第1シリーズから16年を経た続編。コメディではないが、阿部が演じる元暴走族の貧乏弁護士は、低偏差値高校の生徒の東大合格を請け負い、マンガチックな言動が引き付ける。生徒たちや長澤まさみが演じる元教え子とのやり取りにユーモアも漂う。

江口洋介は『ひとつ屋根の下』で早くから脱二枚目

 本日最終回の『ネメシス』(日本テレビ系)にも、53歳の江口洋介が出演している。W主演の広瀬すずと櫻井翔が務める探偵事務所のCEOで、2人の後ろ盾になりつつ、『探偵物語』の松田優作を彷彿させる帽子にジャージという妙ないで立ちで、腰痛持ち。毎回「探偵歴30年の~」と自分語りを始めて失笑を買うポジションだった。

「『東京ラブストーリー』や『101回目のプロポーズ』みたいな昔のトレンディドラマに」というセルフパロディ的な台詞もあったが、江口の出世作といえば91年の『東京ラブストーリー』。この大ヒットドラマで鈴木保奈美、織田裕二らと並ぶメインキャストを務め、以後もロン毛をトレードマークに、『101回目のプロポーズ』や『愛という名のもとに』など、全盛期のトレンディドラマに相次ぎ出演した。

 その流れで25歳だった93年に主演した『ひとつ屋根の下』で、江口は早くも脱二枚目を試みていた。生き別れになっていた兄弟たちと苦難を乗り越えて暮らす長男の役で、人情に厚いがお調子者という三枚目キャラ。二枚目ポジションは次男役の福山雅治が担った。

 以後も30年に渡り、幅広い役でコンスタントに出演が続いている。昨年も『天使にリクエストを』で主演を務めた。18年の『コンフィデンスマンJP』の1話では、長澤まさみが演じる主人公らに20億円を騙し取られる悪徳財団の会長役でゲスト出演し、映画版2作にも続けて登場している。

若きイケメン時代を超える代表作はこれからか

 若いうちはイケメンぶりで押せても、中年に入れば、そのポジションには次の世代が就いていく。実際、トレンディドラマなどで活躍しながら、いつの間にか見なくなったイケメン俳優も少なくない。年齢を重ねたとき、二枚目以外の役もできるかは、大きなカギだ。

 竹野内豊、阿部寛、江口洋介は50歳を超えた今もカッコいいし、中年に入って以降、渋みのある役でも評価は受けている。だが、今も連ドラで主役級を演じられるのは、カッコいい路線だけでなく、コミカルな役が転機となって、引き出しも増やしてのこと。田村正和さんが古畑任三郎を演じたのが51歳から63歳までだったのを考えれば、彼らの若い頃を超えるような代表作も、これから生まれるのかもしれない。