TikTokでバズったアイドルソング。超ときめき宣伝部の『すきっ!』が一般層まで広まった理由は?
瑛人の『香水』やYOASOBIの『夜に駆ける』など、近年TikTokから火がついたヒット曲が増えている。特に若いZ世代では、TikTokから音楽に触れるのも普通のことだ。そんな中、アイドルグループ「超ときめき▽宣伝部」(▽はハートマーク)が3年前に発売したアルバムの収録曲『すきっ!』がTikTokでバズった。<すき!すき!すき!すき!>と軽快に連呼する王道のアイドル曲で、好きなものを発信する動画に始まり、ダンスのかわいさも相まって、アイドルファンを超えて広まったようだ。反響を受け、リアレンジして再レコーディングした新バージョンが配信リリースされた。
3年前のアルバム曲を踊る動画が1日400投稿にも
超ときめき宣伝部(とき宣)はももいろクローバーZ、私立恵比寿中学らに連なるスターダストプラネット所属のアイドルグループ。2015年に結成されて、2016年にメジャーデビューした。シングルをコンスタントにオリコンTOP10に送り込んでいる。
現在は6人組で、モデルや『めざましテレビ』のイマドキガールとしても活躍中の坂井仁香らがメンバー。昨年4月に加入した菅田愛貴は「令和のアイドルで一番かわいい」と話題になった。昨日放送の『有吉反省会』(日本テレビ系)では、「ベースよりアイドルの撮影に夢中」なことを反省したELLEGARDEN・高田雄一の、推しのグループとして登場した。
『すきっ!』は2018年リリースの1stアルバム『ときおとめ』のリード曲。歌い出しから<すき!すき!すき!すき!すき!すき!すき!すき!>と連呼し、両手でハートマークを作って片脚を上げる振りも印象的。いかにもアイドルらしい、キュートなナンバーだ。ライブで盛り上がる人気曲になっていた。
とはいえアルバム曲でもあり、一般に知られていたわけではなかったが、今年2月末から、TikTokで自分の好きなアイドルやアニメ、彼氏や彼女などを発信する動画に使われ始めた。ストレートに<すき!>と繰り返す楽曲が合っていたと思われる。
そして、3月中旬にメンバー自身が『すきっ!』を踊る動画を上げると、ハートマークを作って踊る投稿が急増。1日で最多で400以上もあったりとバズって、2ヵ月ほどで18000を超えた。事務所やレコード会社が特に何かを仕掛けたわけでなく、自然発生の現象だったという。
MVも「かわいくてハマりそう」と評判に
メンバーたちも「アプリを開くと必ず『すきっ!』を踊ってくれている人がおすすめに出てきました」(小泉遥香)、「友だちから『最近よくTikTokで流れてくるよ』と言われました」(杏ジュリア)と反響を実感。「普段見ているTikTokerやYouTuberの方々が使ってくださっているのも見ました」(辻野かなみ)、「妹から学校の子が『すきっ!』を口ずさんでいたと聞きました」(吉川ひより)と、アイドルファン以外の一般層への広がりも大きかった様子だ。
彼女たちも投稿を目にするようになり、「楽しそうに踊ってくださる方がたくさんいて、幸せな気持ちになりました」(菅田愛貴)、「文字付きの動画を作ってくださる方がいたり、いろんな表現をしてくださって素敵です」(坂井仁香)などと感想を話している。
杏は「とき宣のことは知らなくても、振り付けを覚えて踊ってくださった方が多くて、うれしいのと同時に不思議な気持ちでした」と言うが、TikTokをきっかけに、とき宣への注目も高まった。
YouTubeの『すきっ!』のMVには、「TikTokできいて飛んできたんですけど、女の子たちがキラキラしててかわいい」「TikTokは倍速だけど普通のは好きの言葉一つ一つに気持ちがこもってる」「かわいいし歌うまいしハマりそう」といったコメントが並んだ。「坂井仁香ちゃんがいてびっくり!」との声も。
新バージョンはより爽快でキュートに
「3年前に発売した曲がたくさんの方に届いて『バズってる』と言ってもらえるなんて、思ってもいませんでした」(辻野)と驚きつつ、喜んだメンバーたち。この反響を受け、リアレンジでレコーディングし直した『すきっ!~超ver~』が配信リリースされた。
もともと少女マンガチックな世界観の曲だが、「新しいアレンジはアニメの世界にいるみたいな雰囲気で、とてもかわいいです」(小泉)と言うように、よりポップでガーリーになった印象を受ける。3年前からスキルアップしたメンバーたちの表現力も発揮された。
「昔より爽快感のあるキュートさをイメージして歌いました。昔は意識できなかったリズムなどにも気をつけました」(坂井)
「元の歌い方は活かしつつ元気さをプラスしたり、少しでも進化が出るようにレコーディングしました。ボイトレの先生に3サビを誉めてもらえてうれしかったです」(吉川)
坂井は「TikTokの動画で見た、たくさんの方の“すきっ!”という気持ちを、詰め込めたらいいなと思いました」とも。また、杏と菅田は3年前はグループに加入してなかった。
「私がとき宣を知ったのも『すきっ!』がきっかけだったので、私とあきちゃん(菅田)の声も入った音源を出せるのは、すごくうれしかったです。オリジナルとは違う自分らしさを大切にして、声の響きなどに注意して歌いました」(杏)
TikTokでは使われないが、この曲は胸キュンの萌え台詞も聴きどころ。辻野は「かわいいアニメの声優さんになったつもりで、前よりも明るさやかわいさを出せるように意識しました」と語る。アクセントも強調し、ライブで何度も披露してきただけに、自分の想いもしっかり乗せたとのこと。
勢いをグループの知名度に繋げられるか
コロナ禍で打撃を受けたエンタメ界の中でも、アイドルはファンと直接触れ合うイベントがなかなかできず、特に影響は大きいと言われる。配信やSNSでの交流が比重を高める中、TikTok発のヒットが生まれれば朗報だ。もちろん『すきっ!』もこれまでのヒット曲もTikTokを意識して作られたものではないにせよ、ダンスも大きな要素のアイドル曲は、意外と親和性が高いかもしれない。
『すきっ!』の動画投稿は「学生さんが多い印象でした」(吉川)、「学校の子が声を掛けてくれることが増えました」(菅田)とのことで、10代や女性への浸透にも繋がった。
とき宣メンバーは、「“TikTokでバズった歌!”みたいな感じで音楽番組で『すきっ!』を歌いたいです」(吉川)と意欲的。「バズると勢いがすごく出ることがわかりました。他の曲もバズりそうになったら即広げられるようにして、歌っている私たちのことも広まるように頑張っていきたいです」(小泉)と話している。