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投資、心理カウンセラー、将棋…。乃木坂46の元アンダーメンバーたちの多彩な活動

斉藤貴志芸能ライター/編集者
元乃木坂46の中田花奈(撮影/松下茜)

元乃木坂46で心理カウンセラーに転身した中元日芽香が、初の自叙伝『ありがとう、わたし~乃木坂46を卒業して、心理カウンセラーになるまで~』を6月に出版する。アイドル界のトップを走る乃木坂46の卒業生では、生駒里奈、西野七瀬、深川麻衣らが順調な活躍を続けているが、中元のように選抜に入ることの少なかった元アンダーメンバーたちは、中田花奈、伊藤かりんら独自の道を切り拓いているのが目につく。

アナウンサーになり大抜擢された齋藤ちはる

 乃木坂46のアンダーメンバーから、いち早く華々しい転身をしたのは、現テレビ朝日アナウンサーの斎藤ちはるだ。乃木坂46時代は長身のモデル体型で目を引いたが、選抜入りしたのは10枚目のシングル『何度目の青空か?』が初めてで、当時の1期生では最も遅れ、その後はまたアンダーが続いた。

 一方、仕事と学業を両立させて明治大学文学部に進学。演劇学を専攻すると共に、テレビ朝日のアナウンサー試験に合格して、2018年7月に乃木坂46を卒業。翌年4月に入社してからは、すぐさま『羽鳥慎一モーニングショー』のアシスタントに抜擢された。現在は加えて『林修の今でしょ!講座』や『ナニコレ珍百景』なども担当している。昨年6月には『Qさま!!』に解答者として出演。MCで乃木坂46の同期だった高山一実、ゲストで後輩の山崎怜奈との共演も果たした。

投資と麻雀で脚光の中田花奈はメディア出演も急増

 元アンダーメンバーでは最近、中田花奈が脚光を浴びている。投資に関する書籍を共著で出版し、『サンデー・ジャポン』などに出演。また、この3月には麻雀のプロテストに合格。プロ雀士として臨んだ初の公式戦でいきなり決勝進出も果たした。

 中田は2012年発売の乃木坂46のデビューシングルから選抜に入り、2枚目の『おいでシャンプー』ではセンターの生駒の右隣りのポジションに。だが、4枚目で選抜落ちし、5枚目で復帰したものの、6枚目からはアンダーが続いた。乃木坂46の冠番組の学力テスト企画で1位になるほど成績優秀で、塾に通って大学進学を目指していたが、高3のときに3rdシングルまで選抜に入り、受験をやめて乃木坂46一本で行くことを決めた途端の転落。中田は「何でこうなるの? と気持ちが荒みました」と振り返っている。

 その後も選抜復帰はなかなか叶わず、2019年には卒業と芸能界引退を考えていたが、同年12月にCSのアイドルによる麻雀番組のレギュラーを賭けた対局に勝利。冠番組を持ったことで思い止まった。麻雀は2015年に出演した舞台の台詞に“数え役満”があったことから興味を持ち、理系で数学好きな資質とハマったようだ。2020年10月に乃木坂46を卒業した後は、YouTubeでプロ雀士と雀荘カフェの経営を目指す密着ドキュメンタリーがスタート。プロテストには早くも合格し、雀荘カフェのオープンも経営の勉強やリサーチをしながら着々と進めている。

 一方、投資は父親がやっていたため、学生時代から株主優待を目当てに口を出したりして馴染みがあった。20歳になると自らも少額で始めて、昨年12月に日本大学の濱本明教授に受けた特別講義をまとめた『「バフェットの投資術」を学んだら、生き方まで変わった話。』を出版。『サンデー・ジャポン』では、仮想通貨について「メディアが取り上げているときが天井。私はもう売って利益確定させました」などと的確なコメントが話題を呼んだ。雑誌で投資指南インタビューも受けている。

 乃木坂46を卒業していちタレントとなった際は「仕事はそんなにないだろうな」と思っていたそうだが、麻雀と投資を軸に、グループ時代を大きく上回る個人でのメディア出演が続いている。

中元日芽香は適応障害を越えて心理カウンセラーに

 中元日芽香も乃木坂46の1期生。加入前から、地元・広島でPerfumeらを輩出したアクターズスクールに入りアイドル活動をしていた。BABYMETALのSU-METALこと中元すず香は妹。パフォーマンス力とアイドル性には定評があり、決め技の“ひめたんビーム”がお馴染みに。だが、選抜入りしたのは7枚目の『バレッタ』が初めてで、その後はまたアンダーが続く。2016年には15・16枚目のシングルで共に3列目の端ながら選抜が続いたが、翌年に体調不良による休業を経て、11月に卒業。芸能界も引退した。

 そして、2018年に心理カウンセラーとして活動することを発表。早稲田大学に在籍し、専門学校で認知行動療法やカウンセリング学などを学んだとのことだった。6月22日に発売される自叙伝『ありがとう、わたし~乃木坂46を卒業して、心理カウンセラーになるまで~』(文藝春秋)では、休業は“適応障害”が原因だったことを明かしている。

 選抜に入るために「頭の中は仕事が10割」という日々を過ごし、トップアイドルの責任感に気づかぬうちに追いつめられていた。選抜メンバーになっても、「最近仕事どう?」と友人に聞かれ「楽しいよ」と答えられず、リハーサルに足が向かなくなり、携帯にも出られない状態に陥ったという。

「アイドルというと特殊な職業に聞こえるかもしれませんが、過去の私と似たような葛藤を抱いている方が多いのではないかと、カウンセリングをする中で気付きました。そのような方々に経験をもって寄り添えたらと思い、今回執筆しました」

 自叙伝の出版に際し、そうコメントを寄せた中元。Skypeを使ったオンラインカウンセリングサロンを開設しているほか、NHK広島放送局のラジオ番組『ひろしま コイらじ』で悩み相談コーナーに出演している。

「今の自分があるのは過去の自分のおかげ」と、自叙伝のタイトルは『ありがとう、わたし』に(乃木坂46合同会社提供)
「今の自分があるのは過去の自分のおかげ」と、自叙伝のタイトルは『ありがとう、わたし』に(乃木坂46合同会社提供)

将棋親善大使の伊藤かりんは棋士とのコラボも

 将棋のアマチュア初段で、将棋親善大使を務めているのが伊藤かりん。乃木坂46には20歳を前にした2013年に2期生として加入した。アイドルとしては遅いスタート。学生時代に生徒会長を務め、2期生やアンダーメンバーのまとめ役として“有能”と呼ばれていた。グループに欠かせない存在ながら、選抜には一度も入ることがないまま、2019年5月に卒業している。

 グループ時代から将棋関係の活動には精力的だった。研究生だった2014年に芸能人の対局番組に乃木坂46を代表して出場したのがきっかけ。当時は小さい頃に祖父にルールを教わった程度だったが、「他に将棋ができるメンバーがいなくて、私は暇で何かやりたかったので」と立候補した。番組に二度出演した後、将棋雑誌の連載とNHKの『将棋フォーカス』のMCのオファーが来る。乃木坂46の人気メンバーでも、NHKのレギュラーは誰もやっていなかった。

 加藤一二三九段や谷川浩司九段と4枚落ち(飛車、角行、香車2枚なし)で対局。谷川九段には勝利した。2018年には森内俊之九段と2枚落ち(飛車、角行なし)で対局する試験に合格し、アマチュア初段に認定。卒業直前の2019年4月には将棋親善大使を委嘱されている。

 名だたる棋士たちと交流を持ち、卒業後に開設したYouTubeチャンネルで師匠の戸辺誠七段らとコラボして話題に。昨年の竜王戦の就位式では藤井聡太二冠とも対面した。今年も元日からNHKラジオのプロ騎士を招く番組『王手!最後のお願い 新春スペシャル』の司会を務めている。

 「頑張ることがなかった時代にやり甲斐をくれたのが将棋」という伊藤。コラボ動画などでは棋士たちのユニークな個性を引き出し、「私みたいな謎のポジションだからこそグイグイ聴けると思います」とも。将棋親善大使として「ライトな層に届くように、先生方(棋士)に光を当てることができないか考えています」と意欲的だ。

竜王戦の中間展望で戸辺誠七段、後輩の向井美月と(乃木坂46合同会社提供)
竜王戦の中間展望で戸辺誠七段、後輩の向井美月と(乃木坂46合同会社提供)

 同じ2期生で中3で加入し、美少女ぶりが評判だった佐々木琴子も、選抜入りがないまま2020年3月に卒業。アニメ好きで、憧れの声優・石原夏織の所属事務所に面接を受けて入った。公式HPには“現在研修中”とあり、本格声優デビューはまだだが、キャスティングはオーディション中心で“元乃木坂46”の肩書きに頼れない世界で、腰を据えて取り組んでいくようだ。

選抜でなかったからこそ磨いた特性を活かして

 乃木坂46の元アンダーメンバーたちが、独自の道を切り拓いていくのはなぜだろうか。まず、AKB48の公式ライバルとして結成された乃木坂46は、人気絶頂のAKB48に遠く及ばなかった初期から、メンバーたちのヴィジュアルを含めたポテンシャルの高さは目を見張るものがあった。やがてアイドル界でのポジションを逆転するほどで、アンダーメンバーといえども逸材揃いだった。アンダーメンバーだけのライブも人気を呼び、2015年には日本武道館2daysに計2万人を集め成功させている。

 そんな中で、個々は選抜入りを果たすために、主力メンバーにない自分だけの武器を磨こうと考えるのは自然なことだ。現役メンバーでも、2期生の山崎怜奈はいまだ選抜入りはないが、慶應大卒の博識を活かして『Qさま!!』にたびたび出演。歴女として、ひかりTVで冠番組『乃木坂46山崎怜奈 歴史のじかん』を持ち、今年2月には書籍『歴史のじかん』を出版した。TOKYO FMでも月~木曜の2時間の帯の冠番組でパーソナリティを務めるなど、個人でのメディア出演数は乃木坂46内で屈指だ。

 卒業してグループの後ろ盾なしに1人で道を進むにはなおさら、知名度が選抜メンバーに劣る分、自らの特性をより活かさなければならないだろう。乃木坂46ではアンダーに留まった卒業生たちが、芸能界やその他の世界でアイドル時代以上の活躍を見せてくれるか、楽しみにしたいところだ。

元乃木坂46の中田花奈が麻雀と投資で脚光

元乃木坂46の伊藤かりんが将棋界で果たしたいこと

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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