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デビュー10周年のSUPER☆GiRLS「王道アイドルで変わらず突き進んできたのが強みになりました」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
SUPER☆GiRLSの渡邉幸愛と金澤有希(撮影/松下茜)

アイドル戦国時代と言われた2010年に、エイベックス初のアイドルオーディションから結成されたSUPER☆GiRLSが、CDデビュー10周年を迎える。初のオールタイムベストアルバム『超絶少女☆COMPLETE 2010~2020』には全シングル表題曲など29曲を収録。歴史を感じさせる。リーダーの渡邉幸愛(こうめ)と最年長の金澤有希に、グループの足跡と展望を語ってもらった。

「すごくかわいい子が入った」と驚きました

AKB48の大ブレイクに引っ張られ、百花繚乱のアイドルグループが群雄割拠の様相を見せていた2010年代のアイドル界。多くの人気アーティストを輩出してきたエイベックスもアイドル専門レーベルiDOL Streetを設立し、SUPER☆GiRLS(スパガ)が第1弾としてデビューした。メンバーが卒業や加入をしながら、昨年1月から渡邉をリーダーに“第4章”に入り、現在は10人組。

――幸愛さんはスパガには2014年に2期生として加入。有希さんは2012年にiDOL Streetの研修生=ストリート生になって、2013年にGEMを結成し、2018年からスパガの4期生。という中で、2人が最初に会ったのはどんなタイミングでした?

金澤 こうめちゃんの加入が発表されたパシフィコ横浜でのステージの後、楽屋でGEMのメンバーと顔合わせがありました。それまでも(渡邉が在籍していた)Party Rocketsとの対バンとかで知ってはいましたけど、ちゃんとあいさつしたのは、そのときが初めてでした。

渡邉 そうだね。

金澤 当時、こうめちゃんの加入はシークレットで、私たちも誰が入るか知らなかったんです。この公演で発表されるから「アイスト(iDOL Street)のファミリーの一員として観ておいてください」ということで行ったら、めちゃくちゃかわいくて! パティロケ(Party Rockets)さんのときのイメージとは違いました。「こんなにアイドルっぽかった?」という。

渡邉 あの日の私にそんなものがあったのか……。

金澤 いやいや。本当にそう思ったのをすごく覚えています。

――幸愛さんも有希さんのことはGEMで見ていて?

渡邉 そうですね。対バンでGEMはパフォーマンス力が高くて、私はそういう実力派グループが好きなので、MVも観ていました。最初に絡んだのは『座・花御代コンチェルト』というアイスト主催の舞台で、同じチームになって。毎日のように、みんなで鍋を食べに行ったよね(笑)?

金澤 行った!

渡邉 そこのお店はアイスクリームが食べ放題だったのを目当てに(笑)。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

キラキラしたグループで加入が楽しみでした

――有希さんにとっては、アイスト第1弾グループのスパガは目標だった感じ?

金澤 目標であり、憧れでした。私はもともと王道アイドルが好きで、スパガを見てアイストのオーディションを受けたので。逆にGEMには最初、戸惑いがありました。

――アーティスト寄りのグループだったから?

金澤 はい。もちろん大切な自分たちのグループで、精いっぱいやっていましたけど、スパガに対する憧れはずっとあって、ファミリー全員でのライブでもリハーサルから見入っていました。

――幸愛さんはスパガができたときのオーディションに落ちて、最初の頃は悔しさもあって見てなかったそうですね。

渡邉 そのスパガから加入のお話があって、「入りたいです」と意志を伝えてから、それまでのCDやDVDを全部いただいたんです。それを家でお母さんやお姉ちゃんと一緒に観ながら、「このグループに入るんだ」ってワクワクしていました。

――オールタイムベストの収録曲でいうと、たぶんデビューから『常夏ハイタッチ』くらいまでをご覧になったと思いますが、第1章のスパガにどんな印象がありました?

渡邉 キラキラしているなと。私がいたパティロケがロックをテーマにしたアイドルだったので、ガラリと色が違いました。こういうかわいらしいアイドルにも挑戦したかったので、キラキラの世界に飛び込むのが楽しみでした。

――有希さんはその頃、アイストの全体的な空気については、どう感じていました。

金澤 スト生の3期は29人いたんです。そこから新しいグループを作ると言われていたので、仲は良くてもライバルというか、バチバチ感があったと思います。半分以上が『エイベックス・アーティストアカデミー』(養成スクール)から来た子で、すごく輝いていて。目立てない自分に、悔しい想いもいっぱいしました。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

楽しい時期からセンターの後を継ぐのが重圧に

――そういう中で、幸愛さんはレーベル一番手のスパガに他のグループから入って、立場的にはどんな感覚でした?

渡邉 後から聞いたんですけど、私が加入するとき、スタッフさんがメンバーに「歌がうまくて、すごい子が入るから、お前たちもちゃんとするんだぞ」みたいなことを言っていたらしくて。

――最初から、そういう目で見られていたんですね。

渡邉 私はそんな話をされていたとは知らず、入ってからは不安のほうが大きくなりました。

金澤 私たちもこうめちゃんのことは、そう聞きました。スパガに新メンバーが3人入って、2人はスト生だったから知っていて、もう1人は「次期エースが来る」と。そのイメージが強すぎて、GEMの子は同年代なのに、会うと「幸愛さん」と呼んでいました(笑)。

――幸愛さんたち2期生が加わったスパガの第2章は『花道!!ア~ンビシャス』から始まりましたが、グループは前年に日本武道館に立っていて。当時はイケイケ感もありました?

渡邉 確かに私が初めて立ったステージもパシフィコ横浜で、八坂(沙織)さんの卒業コンサートということもありましたけど、5000人くらいのキャパで満員だったり。大きなグループに来た感じはしました。

――2016年にはリーダーが志村理佳さんから前島亜美さんになり、阿部夢梨さん、長尾しおりさんら3期生が加入して、第3章が始まりました。ベストアルバム収録のシングルだと『ラブサマ!!!』からですね。

渡邉 楽しい時期でした。YouTubeの『スパガ☆Times』で台湾や香港に行ったときの動画が上がっていて、久々に観返したら、みんな本当に楽しそうに笑っているんです。でも、その当時、メンバーの目的地が揃ってなかったというか……。自分のことだと、センターだったあみた(前島)さんが(2017年3月に)抜けて、キメのパートとかを全部受け継いだんですけど、「私には務まらないのに……」って複雑な気持ちでした。

――『スイート☆スマイル』から幸愛さんがエースの体制になりました。一方で、1期生がだんだん卒業していき、2018年には残っていた1期生と幸愛さん以外の2期生の計5人が年明けの卒業を発表。また、アイストのGEMとCheeky Paradeも含め、アイドルグループの解散も相次ぎました。アイドル界全体の変化は感じていました?

金澤 対バンのライブに出ると、今まで同じステージに立っていたグループがいなくなっていたりして、寂しい気持ちになりました。解散しなくても同世代の子がどんどん卒業していくのは、自分の中でプレッシャーでした。「もっと頑張らなきゃ」という気持ちにもなりましたけど、GEMも解散になってしまって……。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

憧れだったからプライドを捨てても入りたくて

――有希さんはGEMの後の選択肢はいろいろあったと思いますが、スパガに一番惹かれたわけですか?

金澤 最初は「もうグループ活動はしない」と決めていました。GEMの元メンバーが何人か参加したグループも考えたし、他のグループからのお話もいろいろありましたけど、ソロで活動を始めたんです。でも、1人でやっていても楽しくなくて。

――そういうものでした?

金澤 ファンの方とのコンタクトは楽しかったです。でも、私はみんなでひとつのものを作り上げていく過程や、ライブ中にメンバーと遊びを入れたりするのが好きだったので。芸能界引退も考えましたけど、「このまま辞めたら、私はアイドル界で何を残したんだろう?」という想いもあって。そんな頃、スタッフさんからスパガの4期生オーディションの話を聞いて、時間をかけて考えました。別のグループにいた私がいきなり入ったら、マイナスになるかもしれない。アイストでは後輩の夢梨ちゃん、しおりちゃんがグループ内だと先輩。ゴチャゴチャして2人に気をつかわせてしまう。そんな不安もありましたけど、結局は「スパガだから入りたい」と思いました。

――スパガはもともとの憧れだったから?

金澤 それと、メンバー編成が大きく変わる中で、もしかしたら自分が見てきたアイストを伝えるお手伝いができるかもしれない。だったら、もう一度だけガムシャラに頑張ってみようと、プライドを捨ててオーディションを受けました。

――有希さんにとって、第3章のスパガも憧れた第1章の頃とあまり変わらない印象でした?

金澤 そうですね。そこまで変わっていませんでした。

渡邉 私から見ると、2、3、4章と全部変わったかもしれません。自分の気持ちの変化もあると思いますけど。

――どう変わっていったと?

渡邉 私の目線だと、2章はほとんど1期生で、メンバーの闘争心を感じていました。私はついていくのに必死すぎて、ほとんど記憶がないくらいですけど。3章はやさしい雰囲気だったと思います。リーダーが志村さんからあみたさんに代わって、志村さんは全体を支える立場になって、柔らかさで包んでくれていた気がします。

SUPER☆GiRLSの渡邉幸愛(撮影/松下茜)
SUPER☆GiRLSの渡邉幸愛(撮影/松下茜)

またゼロから始めたら全員で気持ちを共有できて

――亜美さんが卒業した後、溝手るかさんがリーダーになり、さっき出たように幸愛さんがパフォーマンスの核を担いました。

渡邉 いいポジションに置いていただくことが増えて、「自分が、自分が」という意識が強まりました。後輩もできて、「同じ曲でもメンバーが代わると違うな」と思ったのも3章です。4章はどうだろう? 難しいですね。

――現在進行形ですからね。

渡邉 でも、私は今のスパガが一番好きです。ほぼゼロからのスタートで不安も多かったし、4期はもっと不安だったと思いますけど、全員が同じ気持ちを共有できました。

金澤 半数以上が新メンバーになってビックリしました。私たち次第でグループを壊してしまうかもしれないし、私たちが頑張れば新たなスパガを作れる。確かに不安もありましたけど、「やってやるぞ!」という気持ちでした。

渡邉 グループの雰囲気はめちゃめちゃ変わりました。私はリーダーとして引っ張る立場になって、自分のことよりグループに何かを残したいなと。後輩に伝えられることを伝え切ってから、卒業したいです。

SUPER☆GiRLS・渡邉幸愛 卒業撤回からリーダーに就いた1年の想い

https://news.yahoo.co.jp/byline/saitotakashi/20191220-00155611/

金澤 こうめちゃんが残ってくれて、本当に良かったです。最初はこうめちゃんも卒業するつもりだったそうですけど、1期生と深く関わってきたメンバーがいるのといないのでは、大きく違っていたと思うんです。あと、こうめちゃんの人間性は、4期のプライベートの会話でも話題になります。本当にいい人。同じグループになる前は、“アホな子”みたいに聞いていましたけど(笑)。

渡邉 ハハハ(笑)。

金澤 『スパガ☆Times』を観ても、いつもニコニコしていて、どっちかというと妹系のイメージだったんです。でも、本当にしっかりしていて。かと言って、ずーっとしっかりしているわけでもなく、私たちと一緒にふざけることもあるし、時には一番ふざける(笑)。そのメリハリが今のスパガの良い雰囲気を作っています。私もGEMでリーダー経験があるからこそ、尊敬します。

SUPER☆GiRLSの金澤有希(撮影/松下茜)
SUPER☆GiRLSの金澤有希(撮影/松下茜)

夢と愛が詰まった10年の歴史を感じます

――オールタイムベストの中でも、2人にとってスパガを象徴する曲というと、どの辺になりますか?

渡邉 私は『みらくるが止まンないっ!』です。1章のスパガを思い出して「私の憧れ!」みたいな感じがします。最初にワーッと声が入って、2章ではライブの最後にやることが多くて、「みんなでミラクルを起こしましょう」みたいなにぎやかさがあります。振付も好きで、ダンス的に言うと謎の動きもありますけど(笑)、そこがスパガらしくて好きです。

金澤 私は『がんばって 青春』です。理由を聞かれるとわからないくらい、“THEスパガ”というイメージがすごくあります。赤いチェックのスカートの印象も強くて。

――アルバム新曲の『NIJIIROロード☆』のレコーディングでは、胸をよぎるものとか、ありましたか?

渡邉 Dメロの“10年前に見た星 今でも輝いていて”からの3行を歌わせてもらいましたけど、私の想いを代弁してくれています。10年前に見たスパガはもう遠い星になってしまっても、今も輝き続けていて。レコーディングには、これまでの道のりの景色を全部思い浮かべて臨んだんです。“泣き虫な私を笑ってくれるキミと 夢を繋ぐ線路”のところはソロで歌わせていただいて、今までのメンバーはもちろん、ファンの皆さんのことも想って、「支えてくれて、ありがとう」という気持ちが高まりました。本当に泣きそうになりながら歌いました。

――ライブの光景とかが思い浮かんだんですか?

渡邉 ライブもですし、ファンクラブの会員さんに送る超絶メールというのがあるんですね。私は本当に落ち込んでしまったときが何回かあって、誰かに聞いてほしいけど、聞いてくれる人がいない。それで超絶メールに弱音を吐いてしまうと、すぐファンの皆さんがリプとかで励ましてくれて、そのひと言ひと言にすごく救われました。だから続けてこられたので、感謝したいですね。

金澤 私は“「夢」「愛」「友」が残したSoul 繋いでいくぜGo for it!”を歌詞カードで見たとき、「そうだよな」と思いました。スパガにはメンバーの夢も、スタッフさんの夢も、ファンの方の夢も、いろいろな愛情や友情も詰まっていて。メンバーは移り替わっても、たくさんの人がスパガに想いを注いでくれて、もしかしたら叶わなかった夢もあるかもしれない。それを私たちが叶えていって、愛情を繋いでいかなきゃいけないと思いながら、10年の歴史の重みを感じました。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

変化も楽しんで立ち止まらないグループに

――有希さん自身はスパガ加入から2年でも、グループは10年続いているのを実感することもありますか?

金澤 加入したときの夏フェスとかで、他のアイドルさんに「あっ、スパガさんだ!」と言ってもらえて。嬉しい気持ちの一方で、自分はグループでは新人ということもあって、「もっと憧れてもらえるスパガにしなきゃ」とすごく思いました。

渡邉 TIFや@JAMに10年連続で出演させていただいて、それだけ続けてこられたのは奇跡的でありがたいです。アイドル界でやってきた10年の月日には、自信を持っていいと思います。

――11年、12年……と、これからのスパガの姿はイメージできますか?

渡邉 全然想像できません。でも、今までのことも想像できなかったので。きっとこれからも残り続けいくと思うし、そうありたいです。

金澤 強いグループでいたい、というのは思います。変化は今後もあるかもしれない。未来のことはわかりません。でも、そんな変化すら楽しめる強さがあって、どんなときも立ち止まることなく、進んでいけるグループでいたいです。

――では最後に、たくさんのアイドルグループがある中で、スパガで良かったと思うのはどんなときですか?

渡邉 いっぱいありますけど、このグループのことを心から愛せることで、入って良かったと思います。もちろん自分のグループを愛してない人はいないでしょうけど、私は最初の頃、“誰かのグループにいる私”みたいな感じだったのが、今は“自分たちのグループ”と思えるので。

金澤 憧れていたスパガに自分がいるのは、単純に嬉しいです。加入当初は、歌詞の中に“スーパーガールズ”という言葉があっても、恐れ多くて言えなかったけど、2年経って、そういう歌詞が嬉しいし、力強く歌えるようになりました。この2年で最初から、フェスとか海外でのMV撮影とかいろいろ経験させていただけたのも、今までのスパガの歴史があってこそだと思います。

――世の中に向けて改めてアピールしたい、スパガの良さもありますか?

渡邉 変化球も多い中で、こんなに王道を突き進んでいるグループは少ないので、そこはスパガの強みです。ファンの方も、みんな原点に帰ってきてくれればいいのになと思います(笑)。

金澤 王道をずっと続けるのは大変なことで、途中で路線変更せずに10年やってきたのは、すごいことですよね。

CDデビュー10周年を迎えたSUPER☆GiRLS(エイベックス提供)
CDデビュー10周年を迎えたSUPER☆GiRLS(エイベックス提供)

Profile

渡邉幸愛(わたなべ・こうめ) 

1998年3月17日生まれ、宮城県出身、A型

撮影/松下茜
撮影/松下茜

金澤有希(かなざわ・ゆうき) 

1993年5月1日生まれ、北海道出身、AB型

撮影/松下茜
撮影/松下茜

『超絶少女☆COMPLETE 2010~2020』

12月23日発売

2CD+Blu-ray 4500円(税込)
2CD+Blu-ray 4500円(税込)

2CD only   3000円(税込)
2CD only 3000円(税込)

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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