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『おカネの切れ目が恋のはじまり』でドライな秘書を演じる大友花恋。年齢もキャラも自身と違う役で注目

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(c)河野英喜/HUSTLE PRESS

三浦春馬の遺作となり、全4話で放送中のドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』(TBS系)。29日の3話では、主人公の九鬼玲子(松岡茉優)が15年間も片想いをしている早乙女健(三浦翔平)に妻子がいたことが明らかになった。早乙女の有能でドライな秘書が、彼への秘めた想いをこじらせてリークしていたという驚きの展開で、この秘書の牛島瑠璃を演じているのは大友花恋。劇中では25歳の設定だが実年齢は20歳で、素顔も牛島と違い明るく朗らかな若手女優だ。

淡々と「理不尽ですよね」とやるせなさを伝える

 『カネ恋』の早乙女はイケメンの公認会計士でテレビ番組のコメンテイターも務め、女性からの絶大な人気を持っていた。おもちゃメーカーの経理部で働く玲子の初恋相手で、講演会のたびに大量の差し入れを手渡していた。

 大友が演じる牛島瑠璃は早乙女の秘書として、求められた業務はすべて完璧にこなす“できる女”。グレーな仕事もクールに処理し、早乙女から「牛島さんがチェックしてくれたなら問題ないよ」と信頼は厚い。

『おカネの切れ目が恋のはじまり』より (c)TBS
『おカネの切れ目が恋のはじまり』より (c)TBS

 だが、早乙女は実は妻子がいることが週刊誌に出て、バッシングを浴びる。牛島は玲子からリークしたのではと暗に指摘されると、「おっしゃる通りです」とあっさり認めた。早乙女が自分をねぎらってくれる食事会は仕事枠で月に一度、2時間。玲子とのデートはプライベート枠で後ろに仕事を入れず無制限。「私は24時間尽くしているのに理不尽ですよね」と淡々と話し、妻から離婚を言い渡された早乙女に「先生が地に堕ちても私だけは守ってあげますから」と冷たい笑顔で告げた。ひどい仕打ちではあるが、ねじれた想いがやるせなく伝わる演技だった。

25歳のできる秘書に見えるように立ち姿や声も意識

 牛島は25歳の設定で、実際の大友より5歳上。しかも、牛島はドライでほとんど笑顔を見せないのに対し、大友自身は3週ごとに出演する情報バラエティ『王様のブランチ』(TBS系)でお馴染みの通り、人当たりが良い朗らかなキャラクターで正反対だ。本人も「牛島瑠璃はテキパキ、ピシパシしていますけど、私はまったり、フニャフニャしていることが多くて(笑)」と話していた。それだけに演じるに当たって、立ち居振る舞いにも細かく気を配ったという。

『おカネの切れ目が恋のはじまり』より (c)TBS
『おカネの切れ目が恋のはじまり』より (c)TBS

「ヒールの靴での立ち姿から意識しました。凛と背筋を伸ばして、『確認しておきました』と書類を渡すときにピタッと動きを止めたり。タイミングとかテンポとか、どうしたらできる秘書に見えるか、いろいろ考えました」

 秘書検定の本も読み、25歳ということで「声を普段より低めにして、抜けていかないようにしました」とも。そうした役作りの成果は、牛島の有能な秘書ぶりに現れていた。

 恋敵の関係となった松岡茉優のことは以前からファンだったそうで、「真正面で話すシーンはシビれました。『私が松岡さんとバチバチしている……』と感動しました」と振り返る。

『王様のブランチ』では素の朗らかさを見せて

 大友は群馬出身で、小学生の頃に事務所のオーディションに合格し、2012年にドラマ『結婚同窓会~SEASIDE LOVE~』で女優デビュー。『恋仲』での野村周平が演じる医師が担当する入院患者、『お迎えデス。』での福士蒼汰が演じる主人公の義理の妹役などで、可憐な美少女ぶりが目を引いた。2017年には大ヒットした映画『君の膵臓をたべたい』で、浜辺美波が演じた主人公の親友役を、女子ならではの感情を出して好演した。

 昨年には、ブームを生んだドラマ『あなたの番です』で、舞台のマンションの住人の1人で下っ端の暴力団員(田中要次)と暮らすギャルを演じている。髪を染めたキツめのメイクで「ふざけんな!」「ぶっ殺す!」などと言う役で、知り合いにも自分と気づかれず「出てたの!?」と言われたそう。また、深夜ドラマ『新米姉妹のふたりごはん』では、山田杏奈とW主演。内向的だが料理には目を輝かすという役で、印象を残した。

 ドラマでは素と違う役を演じることが多い一方、『王様のブランチ』には2017年から出演。スタジオトークやロケで朗らかな顔をのぞかせている。また、大の読書好きでもあり、ブックコーナーで述べる本の感想には、知的なところを感じさせる。

(c)河野英喜/HUSTLE PRESS
(c)河野英喜/HUSTLE PRESS

『35歳の少女』でコネ入社の令嬢役など出演作が続く

 この秋にかけては、他にも出演作が相次いでいる。配信ドラマ『妖怪人間ベラ~Episode 0~』(Amazonプライム他)では主演。往年の伝説的アニメ『妖怪人間ベム』が原作のサスペンスホラーで、女子高生のベラ(emma)が転校してきたクラスで同級生になる役。

『妖怪人間ベラ~Episode 0~』より  (c)ADK EM/妖怪人間ベラ製作委員会
『妖怪人間ベラ~Episode 0~』より (c)ADK EM/妖怪人間ベラ製作委員会

 自身はホラーが苦手で、観ると体が攣ったりするそうだが、カラオケボックスで悲鳴の出し方を様々なパターンで練習したと言い、リアルな恐怖感を伝えている。

 また、10月10日にスタートする柴咲コウ主演のドラマ『35歳の少女』(日本テレビ系)にもレギュラー出演。不慮の事故から25年ぶりに目覚めた時岡望美(柴咲)の妹・愛美(橋本愛)の部下で、彼女の元カレの恋人という林田藤子役。父親のコネで大手広告代理店に入社し、甘やかされて育ってチヤホヤされるのを当然と思っているキャラクターだ。

 大平太プロデューサーのコメントによると、恋人役の細田善彦と共に物語にスパイスを効かせる重要な役で、脚本の遊川和彦がこだわりを持ち、最後の最後まで決まらなかった中でオファーしたという。

自身は母から鏡台を譲り受けて使う清貧系

 さらに、山里亮太(南海キャンディーズ)の短編小説集が原作の1話完結ドラマ『あのコの夢を見たんです。』(テレビ東京系)で、7話の『リトルスクールウォーズ』(11月放送予定)に主演する。こちらは誰とでも分け隔てなく接するサッカー部のマネージャー役。

『あのコの夢を見たんです。』より (c)「あのコの夢を見たんです。」製作委員会
『あのコの夢を見たんです。』より (c)「あのコの夢を見たんです。」製作委員会

 「太陽みたいに明るくて、ネガティブなところがまったくない子です。私は人に話しかける前にいろいろ考えて悩むタイプなので、実際の自分とは少し違います」と言うが、山里は大友にキラキラして活発なイメージを持っていたようだ。

 原作は大友が2016年に全国高等学校サッカー選手権の応援マネージャー(12代目)に選ばれた頃に書かれたもの。堀北真希、新垣結衣、広瀬すずらも務めた登竜門で、リフティングにトライするのが恒例だが、大友の15回という記録は歴代最多になっている。

 幅広い役柄をこなす演技力と共に、接した関係者が一様に人柄に好感を持つ大友花恋。“清貧女子×浪費男子”をテーマに掲げた『おカネの切れ目が恋のはじまり』での取材の際、自身がどちら寄りか聞くと、「私は清貧系だと思います」とのことだった。

「祖母から母とずっと使っていた鏡台を、母が『もう処分しようと思う』と言っていたのが悲しくて、譲り受けました。そういうものが増えていけばいいなと思っています。お金を使うのは1日いくらまでとも決めていて、レシートを全部確認してノートに付けて、やり繰りしています」

 イマドキの若い女性っぽくない発言だが、そんなしっかり者ぶりも彼女ならではの個性だろう。今後のいっそうの飛躍が注目される。

(c)河野英喜/HUSTLE PRESS
(c)河野英喜/HUSTLE PRESS
芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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