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「あざとい」で押すアイドル・阿部夢梨(スパガ)。道重さゆみ、嗣永桃子以来のバラエティ進出を狙う

斉藤貴志芸能ライター/編集者
SUPER☆GiRLSのセンターで17歳の阿部夢梨 (C)河野英喜

6月で結成10周年のアイドルグループ・SUPER☆GiRLSのセンター、17歳の阿部夢梨。“あざとい”をキャッチフレーズに、自身のかわいさを時に公然と時にさり気なくアピールしてくる。パーソナリティを務めるラジオ番組で、テレビ関係者への出演売り込みも始めた。かつての道重さゆみや嗣永桃子のように、バラエティで異彩を放つアイドルになれるか?

個性の出し方に迷走し真面目キャラは拒む

 2010年6月にエイベックス初のアイドルオーディションから生まれたSUPER☆GiRLS(スパガ)。メンバーの入れ替えを繰り返し、現在は“第4章”となっていて、阿部は中2だった2016年に3期生として加入した。

 もともと小学生の頃から地元・石川のご当地アイドルグループで活動していて、エイベックスのキッズオーディションをきっかけに同社の育成スクールに通い始め、アイドルレーベルの研修生に。

 その頃から「かわいい」と関係者の評判になっていて、レッスン中にスパガのメンバーだった浅川梨奈が「アベユメリという子はどこ?」と見に来て、一緒に撮った写真をSNSに上げたりも。研修生では異例の、個人での雑誌モデルやテレビのローカル番組の仕事もしていた。

 だが、スパガ加入後は個性の出し方に迷走。芸能活動をしながら学校のテストでクラス1位になるほど成績優秀なこともあり、真面目キャラを勧められたりもしたが、「それだと面白くないし自分の殻を破れない」と思ったという。

あざとく見えても素なので仕方ありません(笑)

 2年ほど試行錯誤が続いた中で、一昨年、ツイッターに自撮りを目を開けたものとつぶったものと2枚ずつ上げていたら、当時のリーダーに「あざといね」と言われ出した。

「私は清楚な王道アイドルでいたかったので、『あざとい』と言われると腹黒いイメージがイヤで、『やめてください!』と意地になってました。でも、自分のことをかわいいとは思っていて(笑)、先輩たちがほとんど卒業して第4章に入ったら、キャラを爆発できるようになりました」

 取材でそう語っていた阿部。前から握手会で手首までギュッとしたり、高めのかわいらしい声でフレンドリーにコミュニケーションを取っていて、あざといキャラはファンにすぐ浸透。ツインテールでのパフォーマンスでも、ひとつひとつの振りや表情に愛くるしさを出している。

 他のメンバーによれば、楽屋でも「かなりの確率で鏡を見ている」とのこと。

「でも、無意識なんです。たくさんの人に応援してもらうにはかわいいほうがいいし、自分をかわいいと思ってなかったら、アイドルにならないじゃないですか。私は純粋な気持ちでアイドルをやっているだけ。それをあざといと言われても、素だから仕方ない(笑)」

 昨年7月の17歳の生誕祭でも「清く、あざとく、阿部夢梨」と大々的に掲げた。スパガの同年6月発売のシングル「ナツカレ★バケーション」からはセンターに立ち、9月発売の「片想いのシンデレラ」では“こんな時はあざとくWink”との歌詞が入り、最後は「これからもずっと大好きです」と思わせぶりな台詞で締めている。

田中みな実×弘中綾香の番組に出演を売り込み

 その阿部がパーソナリティを務めるラジオ番組が『SUPER☆GiRLS阿部夢梨のナイスゆめり!』(ラジオ日本)。こちらでもキス音を聴かせるコーナーがあったり、そこで「私のファーストキスはラジオ日本のマイクになった」と話したりと、あざとさを発揮中だが、5月26日の放送では緊急企画として「『あざとくて何が悪いの?』に出たくて何が悪いの?」とのコーナーが設けられた。

 『あざとくて何が悪いの?』は山里亮太、田中みな実、弘中綾香の3人が「あざとさについて語り尽くす」というテレビ朝日の特番で、過去2回放送されて反響を呼び、第3弾も決定している。

 田中みな実、弘中綾香といえば、阿部の掲げる“あざとい”キャラクターの2トップ。かつ同性の支持も得て、田中の写真集は50万部を突破。弘中も「好きな女性アナウンサーランキング」で1位になった。

 特番の第2弾では、視聴者アンケートを元にした“あざとい女”の再現VTRに松本まりか、柏木由紀(AKB48)が出演。5月4日に番組公式ツイッターで「誰が演じる“あざとい女・男”を観たいですか?」と意見を募られると、阿部はファンに交じって、自ら「阿部夢梨ちゃんがいいと思います」と売り込みの引用リツイート。

『ナイスゆめり!』公式HPより
『ナイスゆめり!』公式HPより

 しかし、関係者からは「いまだに反応はない」とのことで、「いつか出演できるように、あざとさを極めていく」と、緊急企画でリスナーからのメールを受けて“あざとい”に関してあれこれ語った。

 そして、『あざとくて何が悪いの?』のスタッフに向けて、「これだけ『私あざといです』と言い続けているので、こんなにピッタリな番組はないと思ったんです」「オファーがいただけるように自分磨きを頑張ります」などとたびたびアピール。リスナーにも「公式ツイッターさんに『こんな子がいます』とradikoのURLを貼り付けて、今すぐ送ってください!(笑)」と呼びかけた。

“ナルシスト”道重さゆみと“ぶりっ子”嗣永桃子の成功

 アイドルからバラエティというと、AKB48グループ出身の指原莉乃が今やいちタレントとして卓越した活躍を見せているが、自分を「かわいい」とアピールしていたタイプでは、道重さゆみ(元モー二ング娘。)と嗣永桃子(元Berryz工房)を思い出す。

 道重さゆみは写真集発売イベントで「改めて私は美形だなと思いました」などと言っていたナルシストの毒舌キャラで、バラエティで注目されたのは2009年に『ロンドンハーツ』の「格付けしあう女たち」に出演してから。

 確かにかわいいルックスながら、手練れの国生さゆりや杉田かおるとも暴言交じりでやり合い、misonoには「misonoさんだと痛いけど私はかわいいから許される」と言い放ったりする大胆さが受けて、その後も様々な番組に出演するように。

 毒舌キャラは以前からラジオなどで発揮していて、『ヤングタウン土曜日』では明石家さんまにも面白がられた。当時のモーニング娘。は一般層には低迷状態と見られていて、テレビに出演すると、後藤真希や安倍なつみなど元メンバーは知られていても現役メンバーは誰も知られてない現状を思い知らされたという。そこで「今のモーニング娘。を知ってもらうきっかけに」と、テレビで必死に爪痕を残そうとしていたことを後に語っている。

 ナルシストキャラはもともと本人の中にあったものをテレビ用にアレンジ、といったところだろう。タレントのキャラとはそういうものだ。

 同じハロー!プロジェクトのBerryz工房のメンバーだった“ももち”こと嗣永桃子も、ことあるごとに自分を「かわいい」と触れ回っていたが、彼女は「かわいすぎて、許してニャン♪」が決め台詞のぶりっ子キャラだった。

 2011年に『めちゃ×2イケてるッ!』の「AKB48以外だらけの大運動会」にBerryz工房の一員として出演。多くのアイドルが居並ぶ中で、冒頭から「許してニャン♪」をやったところに加藤浩次の跳び蹴りを食らい、相撲の後で「痛いの痛いの加藤さんに飛んでけ~」とやると今度は白い粉の中を引きずり回されたりと、体を張って話題に。そこから単独でのバラエティ出演が増えて、木村拓哉とも「『許してニャン♪』に激怒された」との体で絡んだり、『ヒルナンデス!』のコーナーレギュラーを務めたりもした。

 2人ともテレビではキャラを貫きつつ、ステージではアイドルとしての本分をまっとう。道重はモーニング娘。でリーダーとなった後に2014年に卒業。無期限休止を経て、2017年から活動を再開している。嗣永はアイドル活動の傍ら、大学で教職免許を取得。2017年に「幼児教育の道に進む」と、惜しまれながら芸能界を引退した。

ラジオで見せるセンスをテレビ向けに磨けるか

 阿部夢梨は地上波のテレビ番組には、昨年8月の『潜在能力テスト』で初めて単独で出演。「夢見る少女の食いしん坊、夢梨といったら“あ・ざ・と・い”。ツインテールがトレードマークの阿部夢梨です」との自己紹介を、MCの若林正恭(オードリー)から「情報量が多かった」とツッコまれた。クイズへの自信を問われると「得意かもしれないです」と両手でパンチの仕草をして笑いが起きて、クイズでは実際に正答率が高く、頭の良いところも見せた。

 その後は『リアル無理ゲー』で100万円をかけて巨大水風船を割らずに山頂まで運ぶミッションに挑戦したり、『水曜日のダウンタウン』で尾形貴弘(パンサー)にドッキリを仕掛けている。

(C)河野英喜
(C)河野英喜

 昨年2月から始めた『ナイスゆめり!』では軽妙なトークを聴かせ、ムック本『ラジオ番組表2020春号』の「好きなDJランキング」の中間発表で、AM部門の3位に。かつての道重や嗣永も元はラジオで才能を垣間見せていた。

 『あざとくて何が悪いの?』への出演が叶うかはわからないが、あざといキャラをテレビ向けにブラッシュアップしていけば、道重や嗣永のようにバラエティでの道が開けるかもしれない。そして、“アイドル界の田中みな実”的な存在にまで登っていけるか。

 『ナイスゆめり!』では、スパガの後輩メンバーに「夢梨さんにとって“あざとい”とは?」と尋ねられ、「生き抜く術」と答えたこともあった。ネタのようでもあり、本気の想いにも聞こえた。

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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