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2本のCMでステイホームを照らす笑顔。女優・野村麻純に静かな脚光

斉藤貴志芸能ライター/編集者
ミツカン味ぽん「してやったり篇」CMより(ミツカン提供)

ミツカン『味ぽん』のCMで家族に料理を誉められ「してやったり!」とニヤリ。ドクターショール『スクラブソープ』のCMで踵の荒れを指摘されて「バレたかぁ~」とお茶目に笑う。共に笑顔が印象的なママを演じているのは女優の野村麻純(のむら・ますみ)だ。コロナ禍で何かとふさぎがちなこのご時世に、ふと気持ちを明るくしてくれて評判になっている。

家族ではしゃぐノリの良いママをイメージ

 「テレビで見掛けるたびに『素敵だな』と思います」「明るい笑顔に元気をもらえます」といった声がSNSなどで寄せられている二つのCM。『味ぽん』では、野村麻純がムロツヨシ演じる夫と娘に鶏のさっぱり煮を出して「うますぎる」「ママ天才」と喜ばれ、自分も鶏手羽にかぶりつきながら「してやったり!」と満足げに笑う。

「これまでの味ぽんのCMではパパがごはんを作るパターンも多いので、『私がやらなきゃ!』というより、家族でおいしく食べて一緒にはしゃぐノリの良いママでありたいと思いながら、撮影しました」

 野村はこう話している。外出自粛下のテレビでより評判になった笑顔は、初めは表情だけを撮っていたのが食べながらの撮影になり、眉を大きく上げたり、目を見開いたり細めたり、いろいろな“してやったり顔”を試したそう。

「キメキメのドヤ顔で行くのかと思っていたら、普通に楽しんでいる表情が使われていました(笑)」

 ムロとは以前にも共演して「引っ張っていただいて心強いです」とのこと。

「カメラが回っていないときも、ムロさんのひと言で笑いが起きて現場が明るくなるので、私もその術を盗めるようにそっと観察していました。娘役の宝辺花穂ちゃんとは、お手紙交換をしたりして楽しんでいます」

恥ずかしそうにいたずらっぽく笑いました

 『スクラブソープ』では、母と息子の3人で縁側でくつろいでいると、母に「踵だって素肌よ」と言われ、「バレたかぁ~」と笑いながら自分の足裏をさする。角質ケアをした風呂上がりには、息子に「きれい」と足裏を触られて満面の笑みに。

「こちらは仕事をしながら子育てする母であり妻。でも、自分のお母さんの前では娘として、リラックスして甘える一面が出るのをイメージしつつ、素の私に近いです」

ドクターショール『スクラブソープ』CMより(ドクターショール提供)
ドクターショール『スクラブソープ』CMより(ドクターショール提供)

「バレたか~」は「ちょっと照れて恥ずかしそうにいたずらっぽく」をベースに、様々なバージョンとアングルで撮影。

「監督さんとお話しながら、短めに『バレたかっ』と言ったり、言う態勢を変えてみたり。私はもともと高い声が、テンションが上がるとさらに高くなるので、変に浮いてしまわないように気をつけました」

 息子役の男の子とは「撮影の合間にも、じっと見つめてニコッとし合うアイコンタクトをたくさん取ったりして、とても癒されました」と言う。

ドクターショール『スクラブソープ』CMより(ドクターショール提供)
ドクターショール『スクラブソープ』CMより(ドクターショール提供)

 この二つのCMの笑顔は、自分で観るとどう映るだろうか?

「私はカメラの前で笑うことを意識的に避けていた時期があって、今CMで自分の笑顔が流れるのは不思議に感じます。観た方が『良いね』と言ってくださって、『カメラの前で普通に笑っていていいんだ』と教わった感じ。でも、母とか普段の私を知る人には『やっと麻純らしさが出たね』と言われるので、『今までの私は何だったんだ!』とも思います(笑)」

30代を前に体力強化と自炊に励む

 野村は鹿児島出身の29歳。短大時代に広告代理店への就職が内定していたが「自分自身が表現をしたい」と辞退。役者を目指して事務所のオーディションを受けて合格した。

 2011年にドラマ『華和家の四姉妹』で女優デビュー。同年に宮藤官九郎脚本の『11人もいる!』で、穏やかな印象の自身と真逆の金髪ヤンキー役でインパクトを残す。

様々なドラマに出演している野村麻純(フラーム提供)
様々なドラマに出演している野村麻純(フラーム提供)

 その後も『リッチマン、プアウーマン』での石原さとみが演じたヒロインの親友役や、『49』など野島伸司脚本の3作ほか、コンスタントにドラマに出演。2016年にはNHK朝ドラ『とと姉ちゃん』でヒロインの高畑充希に嫌がらせをする先輩を演じた。一方、『フランス人がときめいた日本の美術館』では全国を巡って美術の紹介をしたりと、幅広く活躍している。

 自身の趣味にも“芸術鑑賞(美術館巡り)”や“絵を描く”を挙げていて、展覧会の感想や写真をブログに残したりも。

「最近ハマっているのは、自宅で水出し緑茶や水出しコーヒーを作って飲むことです。2年ほど前にはキックボクシングを始めて、家でもポータブルジムや筋膜リリースのためのトレーニンググッズを集めました。体力はもちろん、自分自身と向き合う力も強くなったと感じています。自炊も試行錯誤して、自分に合う食事バランスがようやく見つかって。30代を前に、そうしたことを継続できる環境作りに励む毎日です」

本当のママになったら子どもと絵を描きたい

 2本のCMではママを演じているが、自身はまだ独身だ。

「実際に母親になったら……というのは漠然としか考えたことはありませんが、自分の子どもはどんな感受性があって何に興味を持つのか、楽しみはあります。私が散歩好きなので、子どもと美術館とかいろいろなところに行きたいし、絵を描いたり何かを作ったり、一緒に自己表現を経験できたらと思っています」

 ステイホームで観るテレビで一服の清涼剤となっている、CMでの野村の笑顔。これまで多彩な役柄を演じてきたが、世の中のドラマ撮影が再開された際には、こうした明るい役でじっくり見てみたい気もする。

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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