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東京女子流・庄司芽生が語るデビュー10周年と未来 「ガムシャラに進んで後から気づくことは多くて」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
東京女子流のリーダー・庄司芽生(撮影/山内洋枝 エイベックス提供)

一貫してクオリティの高い楽曲を送り出してきたガールズグループ・東京女子流が、デビュー10周年を迎えた。結成当時は小学生を含むローティーンだった4人のメンバーたちも今は20代。新曲4曲を収めた記念シングル「Tokyo Girls Journey(EP)」の発売を機に、リーダーの庄司芽生に聞く。

ただダンスが好きでグループに入ると思わなくて

――おうち時間はどう過ごしていますか?

庄司  最近は毎日、夜ごはんを作るのが楽しくて。前は簡単なものしか作れなかったんですけど、時間があるので手間がかかるものに挑戦して、ドライカレーとか作りました。スイーツも全然作ったことがなかったのでチーズケーキを焼いてみたり、いろいろ試してます。

――おいしく出来上がっているんですか?

庄司  時と場合によりますね(笑)。「ちょっと味が薄かったな」というときもあります。私、味見をしないので、ちゃんとしたほうがいいと思いました(笑)。

――この機会に東京女子流の昔の映像を観たりは?

庄司  1stツアーとか過去のライブ映像が期間限定で公開されたので、自分でも観返して「子どもだったな」と(笑)。歌声も話し方も踊り方も全部幼くて、10年経ったことを実感します。

――デビューシングル「キラリ☆」のMVを撮ったときのことは覚えてますか?

庄司  私が高架下で踊っているシーンが、MVの中で最初に撮ったんです。初めてで「自由にしていいよ」と言われてもどうしたらいいのか、すごくドキドキしました。リップシーンでもどこを見たらいいかわからないし、あまりにまばたきが多くて注意された記憶があります。使われた映像でも、結局まばたきをしちゃってました(笑)。

――「キラリ☆」には“僕達はどんな夢も叶えられるさ”というフレーズがあります。12歳だった芽生さんには、どんな夢がありましたか?

庄司  当時はただダンスが好きでやっていて、こういうグループに入ってステージで立つとは思ってもいなくて、どうなりたいとか全然考えてなかったです。

――期間限定で公開された映像には、2012年と2013年の日本武道館ライブもありました。

庄司  それも観ました。自分たちがステージに出る前に会場に映像が流れて、お客さんが高まって歓声が起こるのをスタンバイしながら聴いて、「ライブが始まるんだ」と実感したのを思い出しました。みんな緊張して「大丈夫かな? できるよね?」みたいな会話をしていた気がします。

――デビュー2年で当時の史上最年少記録(平均15歳)で武道館に立っていた頃は、自信を持っていた感じですか?

庄司  自信とか「私たちはすごい」とか全然なくて、ただ目の前のことをガムシャラにやっていました。後から振り返って、やっと「あのときはすごかったんだ」とわかることがありました。

――メジャーデビュー同期のももいろクローバーやスマイレージは意識してました?

庄司  当時からキラキラしていて、すごく先を進んでいて、私たちには手の届かない存在という印象でした。「負けない」というより「自分たちもあんなふうに輝けるように頑張ろう」と。

偶像の自分たちが見えないところで作られて

――東京女子流は当初から「楽曲が良い」と言われてきました。それはメンバーたちも感じていました?

庄司  確かに「曲がカッコイイね」とか「すごいね。凝ってるね」と言っていただくことは多かったんですけど、正直、自分たちは全然わかってなかったです(笑)。「何か渋いな」みたいな印象でした。でも、こうして10年経っても歌い続けられる曲ばかりで、自分も年齢を重ねるごとに歌詞に重みを感じたり、発見があります。

――大人になって良さがわかるようになった曲というと?

庄司  いっぱいありますけど、「Regret.」は特に印象が変わったかもしれません。当時は初めて歌い出しを担当して、とにかくそこを頑張らなきゃと毎回ドキドキして、曲の世界観とかあまり考えられませんでした。今聴くと落ち着きます。片想いの歌詞は切なくて苦しくなるほどなのに、曲の雰囲気が緩和してくれる。そのバランスが絶妙だなと思います。

――曲が等身大に感じられるようになったのは、どの辺からですか?

庄司  (2015年発売の)アルバム『REFLECTION』あたりから、ちょっとずつ自分たちと重ねていけるようになった気がします。歌詞も実年齢に近い感じになってきたかなと。

――2013年に発売されたアルバムのタイトル曲「約束」は、当時のスタッフから皆さんに贈られたそうですが、歌詞にある“自分でもなんだか分からない何かに いつか押し潰されそうで”という心境になったことも?

庄司  ありましたね。自分たちの見えないところで“東京女子流”という偶像が作り上げられていったり、直接でなく回って飛んでくる言葉で迷ったり、自分たちで自分たちにプレッシャーを掛けたり。そういうことは常にあって、勝手に押し潰されそうになっていました。でも、どんなときでも「女子流って良いよね」と付いてきてくださる方もいたので。そんな方々にもっと喜んでもらいたかったし、そう言ってくださる方を増やしていきたい想いが強くて、「進化していこう」とやってきました。

――「このままだとヤバイ」とか、焦りや危機感を持ったこともありましたか?

庄司  (2015年に)メンバーが1人卒業して4人になったときはそうでした。卒業した子は歌で引っ張ってくれて、ライブのMCもまとめてくれる中心的存在だったので。残った1人1人がもっと成長して、4人でどう見せていくか。「ここで踏ん張らなきゃいけない」という想いがありました。

歌って踊れるならどんなライブにも出ていこうと

――芽生さんは2014年からリーダーになりました。

庄司  「役割を変える」ということで会議室に集められて、1人ずつ肩書きが発表されて、私はリーダーと言われました。

――重荷に感じましたか?

庄司  当時はあまり重荷と思わなくて。私はどちらかいうと役割をもらえたほうが、そこに向かって頑張れたので、ありがたかったです。

エイベックス提供
エイベックス提供

――リーダーになって変わったことはありますか?

庄司  自分で考えるようになりました(笑)。それまで考えてなかったわけではないですけど、「みんながいるから大丈夫」という気持ちがどこかにあって。1人で深く考えるところまでは行ってなかったんです。でも、リーダーという役割を課されることで、「自分が引っ張らないといけない」と意識しました。1人で進みすぎないようにバランスを取って、意見をどう伝えるかも考えています。

――2015年には“アーティスト宣言”をして、アイドルイベントやアイドル誌から一時撤退。それも当時は必要なことだと考えたわけですか?

庄司  自分たちにミッションを与えるというか、より進化するために戦闘態勢を取る気持ちでした。対バンライブで一緒に出演する方も客層も変わって、そこで女子流をどう見せていくか。今までと違う曲調やダンスにどう向き合っていくか。あと、メンバーの(山邊)未夢が作詞したり、やったことのない挑戦をして、自分たちの幅をすごく広げられた時期だったと思います。

――自分たちから意見を発信するようになったりも?

庄司  ライブを作るうえでスタッフさんとのコミュニケーションが増えましたし、セットリストも少しずつ任せてもらって、自分たちで考えることは多くなりました。

――2017年にまたTIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)などに出演するようになったのも、自分たちの意志から?

庄司  そうですね。活動の幅を自分たちで狭めず、せっかく歌って踊れる場所があるなら、どんな会場でどんな環境でも出ていきたい気持ちが強くなったんです。

――この10周年の時点では、東京女子流の今後についてヴィジョンはありますか?

庄司  10周年と聞くと「今から入れない」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんけど、私たち的には全然そんなことはありません。この10年間、どこかで出会ってくれた方々がいたから今があるので感謝しかないですし、これから出会ってくださる方にも「日々の中に東京女子流があると楽しくなるよ」と伝えていきたいです。

全員がドロドロした恋を思い浮かべました(笑)

――10周年記念シングル「Tokyo Girls Journey(EP)」では、自分たちが今やりたいことができた感じですか?

庄司  バランスの良い4曲が集まったと思います。女子流だからこそ歌える曲、自分たちが好きな曲、このタイミングで伝えたい曲……。いろいろな要素が入りました。

――進むことも去ることもできずにがんじがらめになった恋を歌う「薔薇の緊縛」にも、もう背伸び感はないですか?

庄司  経験を積んだ女性の歌という印象が私にはあって、いい意味で背伸びはしつつ、自分と近い感じもする。今までにない歌詞との距離感だと思います。

――歌詞の方向性を決めるために、メンバーでキーワードを出し合ったとか。

庄司  ディレクターさんに1人ずつ出させていただきました。私が最後だったんですけど、個人的に女子流の歌の中の恋は実ったらいけないと思っていて(笑)。

――実らない恋の歌が多いですよね(笑)。

庄司  そういう歌を歌っている自分たちも好きなんです。プラス、デモを聴いたとき、トゲがある戦闘態勢みたいなイメージが浮かんだとお伝えしたら、「メンバーで打ち合わせした?」と言われました。みんなドロドロした一方通行の恋みたいなことを言ったようです(笑)。

――それで、もがけば絡まった鎖のトゲが刺さるような歌になったんですね。

庄司  歌詞の意味合いはわかりますけど、ひと言ひと言に重みがあるので、自分と歌の主人公を重ね合わせる感じです。ライブごとにそのときの感情で歌って、メンバーの歌い方や表情の絡み方も日によって違うので、表現するのが面白いです。

エイベックス提供
エイベックス提供

振付は見ていて「フーッ!」となるように

――振付は芽生さんが担当してますが、考えるのに時間はかかりました?

庄司  「こういうふうに行こう」というところに達するまではそんなにかからなくて、細かい調整や、アレンジが少しずつ変わる中で変更をちょこちょこしました。パートによって、すんなり「これで行こう」となったり、「ここはどうしよう?」となったり。

――特に悩みどころだったのは?

庄司  間奏の見せ場をどう持っていくかは、めちゃめちゃ考えました。いまだにライブで毎回、試行錯誤しています。私が振付することになって、ディレクターさんがあえてイントロや間奏を長めにして、間奏の音色も歌と少し変えてくれたんです。だから、そこで踊りのインパクトは残したくて。

――新井ひとみさんと芽生さんが、曲中の男女のように絡むところですね。

庄司  そうです。観ている方が「フーッ!」となるようにするにはどうしたらいいか、メリハリも考えて振りを作りました。

――ひとみさんが男性役で、イメージ通りになりました?

庄司  ひとみならやってくれると思ってました(笑)。ひとみも「今日は愛しい感じで行ってみた」と言ったり、睨みつけるくらいの威圧感を出して「縛りつけてやったぜ」とニヤッとしたり、いろいろバリエーションがあって、いい見せ場になってます。

――それを受けて、芽生さんの表現も変わると?

庄司  ひとみが私を縛り付ける動作から力加減が毎回違うので、そのときごとに身を委ねてます(笑)。

――最年少でデビュー当時は小学生だったひとみさんも、10年で大人になりましたね。

庄司  どうだろう? 今でも「まだ子どもだな」と思う瞬間と「ちょっと大人になったな」と思う瞬間があります。(中江)友梨にスリスリとスキンシップして「ゆりちゃ~ん、ごはん行こうよ」みたいに言ってるときは「相変わらず甘えん坊だな」と思います。でも、コーヒーを片手に歩いていたりすると「エッ、ひとみコーヒー飲むの?」と驚きます(笑)。あと、健康を気にして、アボカドの栄養成分を調べ始めたりもするんですよね。

何年か経って笑って今を振り返られたら

――「Ever After」を作詞・作曲した春ねむりさんは、女子流が新クリエイティブ体制になった2018年の「ラストロマンス」から楽曲提供が続いてますが、今の女子流にフィットしてますか?

庄司  「ラストロマンス」で今までなかった世界観を歌わせていただいて、それから積み重ねてきたものもあるので。今回はダンスやアレンジも、今までのおねむさんの曲の中で一番大人な雰囲気で、女子流との良いバランスが取れていると思います。

――夢うつつな感じの曲ですが、歌うトーンは試行錯誤しました?

庄司  曲自体が不思議な世界観を持っていて、寂しくて孤独だけど愛もちゃんと知っている主人公だと思ったので、歌い方は芯のある声より、心配になるくらいフワッとした感じがいいかなと。あと、あえてリズムをオンで取らず、気持ち遅らせて歌ったりもしました。

――「キミニヲクル」はJ-POP派の芽生さんの好みの曲では?

庄司  この曲が持つパワーが好きです。聴くだけで前向きになれる、キラキラした曲。歌っていても楽しいです。

――さり気なく力をくれる感じですね。

庄司  「今頑張れば明るい未来が待っているから」みたいな。未来の自分たちから今に向けて贈られた感じで、何年か経ったら「あのとき頑張って良かった」と思えると教えてくれる曲です。

――“こんなに探しても見つからないもの”は芽生さんにもありますか?

庄司  今はいくら探しても見つからなくて、後になって「実はあのときが」と気付くものはいっぱいあると思います。だから、何年か経ったときにちゃんと気付ける自分でいられるように、今を過ごしていきたいです。

――具体的に探しているものがあるわけではなくて?

庄司  どっちにも捉えられると思います。自分でも何を探しているか明確にわからないけど、とりあえず前に進まないといけなかったり。私は探す意識はあまりなくて、そのときごとの自分と向き合うのは、10年前から変わらないかもしれません。

――“夢をみてハシャいでた”とか“夢なんて見えなかった”とかで、思い出すこともありますか?

庄司  ありますね。10年は早かったけど、改めて振り返ると、たくさんの記憶が蘇って、いろいろな感情になっちゃいます。特にステージやリハでの出来事とかツアー中の気持ちとか、ライブに関することを思い出しますね。

――たとえば?

庄司  1stツアーの初日の会場が大阪で、ツアーができるなんて夢にも思ってなかったから嬉しくて、ステージ上でメンバーが泣いてしまったんです(笑)。「そこは泣く場所じゃない」と怒られた記憶があります。

――最後に、「キラリ☆」の“どんな夢も叶えられるさ”は、今はどんな夢を描いて歌っていますか?

庄司  具体的な夢はたくさんあります。でも、それ以上に、女子流と一瞬でも出会ってくれたすべての皆さんへの感謝を忘れず、また何年か経ったときに「10周年からこうなったね」と笑って話せるようになりたいです。この10周年シングルを一緒に旅するチケット代わりに、これから出会う方も大切にして、ひとつひとつ真剣に取り組んでいきたい気持ちです。

庄司芽生(しょうじ・めい)

1997年7月2日生まれ、山形県出身。

2010年5月に東京女子流のメンバーとしてメジャーデビュー。2014年6月よりリーダーを務めている。

「Tokyo Girls Journey(EP)」

CD+DVD ¥2000+税
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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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