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篠原涼子が30年前にアイドルグループで残していた功績

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(写真:2018 TIFF/アフロ)

 13年ぶりの新シリーズの放送が待たれる、篠原涼子の主演ドラマ『ハケンの品格』。新型コロナウイルスの感染拡大による収録見合わせで、2007年の前シリーズをダイジェスト編集した『特別編』が放送され、当時の篠原のカッコ良さに感嘆の声が上がっている。

 トップ女優の篠原が、もともと歌手として小室哲哉プロデュースの「恋しさと せつなさと 心強さと」で200万枚越えの大ヒットを飛ばしているのは語り草だが、それ以前のアイドルグループ・東京パフォーマンスドール(TPD)での活動は、一般にはあまり知られていない。30年前にデビューして篠原が中核を担ったこのグループ、実は現在のアイドルシーンに繋がる大きな功績を残している。

もともと歌手志望でアイドル冬の時代にTPDでデビュー

 4月15日放送の『1周回って知らない話~春の2時間SP~』に出演した篠原。「NGなし」と、端役で初出演したドラマ『高速戦隊ターボレンジャー』やアイドル扱いゼロの体当たりでコントに挑んだ『ダウンタウンのごっつええ感じ』などのレア映像が流れ、時代を追った変遷を自ら語った。

 中森明菜に憧れて歌手を目指し、TPDでデビューしたもののソロ活動を望み、小室哲哉から声が掛かって「恋しさと せつなさと 心強さと」がWミリオンに。だが、小室の手を離れてからはヒットを出せず、歌手として挫折。

 女優業には乗り気でなかったが、ドラマ『ナニワ金融道2』で評価され、蜷川幸雄の舞台『ハムレット』で演技の面白さを知る。この舞台で夫の市村正親と出会い……といった流れで、現在に至るまでが紹介された。TPDで歌う映像も流れ、篠原は「みんな自分がセンターに行きたくてバチバチしていたけど、今も仲良いです」と話していた。

 TPDがデビューしたのは1990年。篠原ら3人で結成したゴルビーズが母体の7人組で、他にはEAST END×YURIでラップソング「DA.YO.NE」をヒットさせた市井由理や、バラエティタレントとなりプロゴルファーの横田真一と結婚した穴井夕子らがいた。

 当時は、70年代から歌謡界の主流だったアイドルがおニャン子クラブの熱狂的なブームを最後に下火となり、“アイドル冬の時代”と言われていた。『ザ・ベストテン』や『夜のヒットスタジオ』などの歌番組も相次ぎ終了し、ライブで叩き上げてきたバンドが台頭。アイドルは対極のカッコ悪い存在と見られがちになった。

本格派のパフォーマンスが口コミで広まる

 そんな中でTPDは、初期は洋楽のディスコナンバーのカバーを中心に、アイドル的なかわいらしさよりも本格派のダンスパフォーマンスを追求。そして、アイドルがメディアに出るのが難しい状況下で、竹下通り脇にあったライブハウス・原宿ルイードで毎週末、『ダンスサミット』と銘打ったライブを開催する。

 MCを入れず、ノンストップで歌とダンスを繰り広げるのがコンセプト。当初は観客が10人にも満たなかったが、至近距離で少女たちのハイレベルなパフォーマンスが観られるステージは、SNSのなかった時代にほぼ口コミだけで評判が広まり、チケットの争奪戦が起こるほどに。テレビでは見られないのが、逆に希少価値を生んだ。

 シングルヒットこそ出していないものの、1993年には日本武道館2days、1994年には横浜アリーナ公演を成功させる。特定のメンバーがフィーチャーされる演出は少なかったTPDだが、篠原はルックスでもヴォーカルでも、ひと際目を引いて推進力となった。

「会いに行けるアイドル」の源流だった『ダンスサミット』

 アイドル冬の時代は90年代末のモーニング娘。のブレイクで雪解けを迎え、2009年ごろのAKB48の人気爆発を機に“アイドル戦国時代”と呼ばれるブームがまた起こる。そのAKB48のキャッチフレーズが「会いに行けるアイドル」。

 AKB48は秋葉原の専用劇場での公演をベースに、地道にファンを増やし国民的アイドルグループに駆け上がったが、TPDの原宿ルイードでの『ダンスサミット』はその源流だったと言える。テレビよりライブ。不遇なアイドル冬の時代から活況の戦国時代へ、架け橋になったのがTPDだったのだ。ちなみに、篠原の代表作のひとつ『アンフェア』で幼い娘を演じていたのが、現AKB48グループ総監督の向井地美音でもある。

 アイドル戦国時代の最中の2013年には、東京パフォーマンスドールの名前を17年ぶりに継ぐ新生グループが結成され、現在も活躍中。お披露目の際に篠原はビデオメッセージを寄せ、「ダンスサミットはお客様がいらっしゃらなくて、自分たちで竹下通りでチケットを売りました。どうにか武道館までやれることになって、あの頃の想いが今も繋がってます」と話していた。

 新生TPDは6月14日にダンスサミットを行う予定。2部構成で1部は結成7周年記念、そして2部はグループ誕生30周年アニバーサリー企画のキックオフイベントとなり、先代TPDのメンバーをゲストに迎えるという。

東京パフォーマンスドール 30周年特設サイト

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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