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大学ラグビー ルーキーだけで個人的「ベスト15」を選出! 新人賞は早稲田大FL村田

斉藤健仁スポーツライター
決勝でも「7」番を背負った早稲田大FL村田(撮影:斉藤健仁)

1月11日(月・祝)、第57回ラグビー大学選手権の決勝が新・国立競技場で行われて、天理大(関西Aリーグ1位)が連覇を狙う早稲田大(関東対抗戦2位)を55-28で下し初優勝を飾り、今シーズンの大学ラグビーは幕を閉じた。

コロナ禍の難しい状況の中でも大学ラグビーシーンでは新人選手が活躍すると予想していたが、やはり多くのルーキーたちが躍動したシーズンとなった(開幕前に書いた、関東大学ラグビーの新人選手の記事)。

決勝戦でも昨年度は「花園」こと全国高校ラグビー大会にも出場した早稲田大FL村田陣悟(1年、京都成章)、天理大WTBマナセ・ハビリ(1年、高知中央)の2人が先発、ルーキーらしからぬプレーで会場を沸かせた。

◇新人賞は全10試合に出場した早稲田大FL村田

そこで大学1年生の選手たちだけで今シーズンの個人的な「ベスト15」、そして新人賞(ルーキー・オブ・ザ・イヤー)も選んでみた。

まず新人賞はやはり、開幕戦こそはベンチメンバーだったが、2戦目から大学選手権決勝まで前年度王者の早稲田大で9試合連続先発として出場したFL(フランカー)村田陣悟を選んだ。もちろんFLとして「ベスト15」にも選出した。

村田は昨年度、京都成章の主軸FWのひとりだった。ただ花園でAシードながらベスト8止まり、そして個人的にも高校日本代表に選ばれなかった悔しさを糧に、ルーキーイヤーながら先輩たちと比べてもまったく遜色ないプレーを見せ続けた。

身長185cm、体重98kgという恵まれた体格を武器に、「ハードワークして力強いプレーをして士気を上げて(チームに)貢献する」という村田の言葉通り、突破力だけでなく、力強いタックル、ジャッカルでも気を吐いた。もう少しフィジカル、フィットネスレベルを上げれば、さらに活躍することは間違いない(大学選手権前に書いた村田選手の記事)。

それでは他の14ポジションの選手も見ていきたい。

◇PR、HO

「フロントロー」と呼ばれるPR(プロップ)、HO(フッカー)。高校時代とスクラムのルールが変わり、新人選手として、もっとも適応が難しいポジションのひとつだろう。

その中でも「1」番の左PRとして選出したのは左PR山本敦輝(1年、常翔学園)だ。同志社大のレギュラーPRとしてスクラム、ラインアウトといったセットプレーに貢献しつつ、フィールドプレーでも存在感を示した。今後の成長が大いに楽しみな選手のひとりだ。

スクラムの要で「3」番の右PRは、大東文化大の右PR藤倉大介(1年、國學院栃木)。身長177cm、体重125kgという恵まれた体格で、高校時代からスクラムの強さには定評があり、シーズン中盤から頭角を現した。

明治大のPR為房慶次朗(1年、常翔学園)も対抗戦の2試合目から控えに入りトライを挙げたが、選手層の厚い明治大FWの中では先発として出場することはかなわなかった。

「2」番のHOは文句なく、帝京大のHO江良颯(1年、大阪桐蔭)だ。高校2年時、大学でもチームメイトとなったNO8奥井章仁ともに大阪桐蔭の花園初制覇に貢献し、高校2年でも高校日本代表にも選出された逸材である。

「1年生とは思えない」と岩出雅之監督が手放しで褒めるほどで、対抗戦の開幕戦から先発として出場。突破力だけでなく、モールからのトライも挙げるなど帝京大FWの中核のひとりとして躍動した。他には中央大のHO藤原能(1年、尾道)も存在感を示した。

新人らしからぬ活躍を見せた帝京大HO江良(撮影:斉藤健仁)
新人らしからぬ活躍を見せた帝京大HO江良(撮影:斉藤健仁)

◇LO

「セカンドロー」とも言われるLO(ロック)。運動量、接点の激しさ、そしてラインアウトの要として、やはりPR同様に、大学1年生からいきなりフィットするのは難しいポジションだろう。

「4」番の左LOとしては関西学院大LO野矢健太郎(1年、石見智翠館)と流通経済大のLO神田康生(1年、鹿児島工業)と悩んだが、身長192cmと将来性に富んでいるLO神田を推したい。明治大LO山本嶺二郎(1年、京都成章)はコンスタントにベンチ入りしたが、先発の座を得ることはできなかった。

また「5」番の右LOとして法政大LO竹部力(1年、大分舞鶴)がルーキーながら開幕から強豪チームのスタメンを張った。身長185cm、体重111kgの竹部はPRとしても将来性があり、2年生からはPRとしての出場もあるかもしれない。竹部の父も祖父も法政大の選手として大学選手権で優勝を経験している。

◇FL/NO8

バックローと呼ばれるFL、NO8。まずNO8から見ていくと帝京大NO8奥井、さらに京都産業大NO8ヴェア・タモエフォラウ(1年、札幌山の手)の2人が挙げられるだろう。シーズン最後まで「8」番を背負い、大学選手権でもトライを挙げたタモエフォラウを選んだ。

FLは右FLには、前述したとおり早稲田大のFL村田を選んだ。FLのもう一人は京都産業大FL三木皓正(1年、京都成章)、筑波大FL梁川賢吉(1年、尾道)の2人で悩んだが、開幕から先発していたFL梁川に軍配が上がった。

非凡なアタックセンスを見せた日大SH前川(撮影:斉藤健仁)
非凡なアタックセンスを見せた日大SH前川(撮影:斉藤健仁)

◇SH、SO

「ハーフ団」と呼ばれ、ゲームをコントロールする「9」番のSH、「10」番のSO。

「9」番でテンポ良い球さばきを見せたのは日本大SH 前川李蘭(1年、目黒学院)。パスだけでなく強気な仕掛けも目立ち、キッカーとしても能力が高い。シーズン終盤こそはSH村上陽平(4年)に先発の座を譲ったが、来季は日本大の「9」番を背負うはずだ。

「10」番として非凡な才能を見せたのは東海大SO武藤ゆらぎ(1年、東海大大阪仰星)だ。神奈川県の横原ラグビースクール出身だが、高校進学時、桐蔭学園に早稲田大SO/CTB伊藤大祐、東海大相模には明治大SO池戸将太郎が進学したため、大阪の東海大大阪仰星を選んだという。武藤は3戦目の専修大戦から10番を背負ったが、前を見て、パス、キック、ランとチームに勢いを与えるプレー選択が秀逸だった。

対抗戦の開幕は明治大SO池戸もMOMに輝くなど非凡なところを見せたが、フィジカルレベルが上がったシーズン中盤以降は、先輩選手に先発の座を譲った。タックル力を上げて、来季は10番を背負い続けることを期待したい。

シーズン中盤から東海大のアタックをリードしたSO武藤(撮影:斉藤健仁)
シーズン中盤から東海大のアタックをリードしたSO武藤(撮影:斉藤健仁)

◇CTB

フィールドの中盤で攻守の要となるCTB(センター)。「12」番のインサイドCTBには、シーズン中盤からの出場だったが早稲田大CTB伊藤大祐(1年、桐蔭学園)がポテンシャルの高さを発揮した。

ランでの突破が目立ったが、パスやキックのスキルのレベルも高い。早稲田大では1つ上の吉村紘(2年)がSO、伊藤が12番という布陣で来季以降も戦っていく可能性が高いだろう。

シーズン序盤は「13」番では筑波大CTB谷山隼大(1年、福岡)も目立った。だがもう一人のCTBは「12」番で一番輝いた明治大CTB廣瀬雄也(1年、東福岡)を選びたい。

田中監督に「タックルができない選手は試合に出さない」と諭されて、タックル練習に取り組んだ。シーズン中盤には信頼を得て、帝京大戦から「13」番の児玉樹(3年)とCTBコンビを組んで12番を背負い続けた。パス、キック、ランといった攻撃的センスは折り紙付きであり、それを存分に発揮したシーズンだった。

廣瀬は大学選手権の準決勝で天理大に敗れた後、Twitterで「自分にしか出来ない苦い経験 それを糧に出来るのも自分次第」とつぶやいた。来季は一回りも二回りも成長した姿を見せてほしい。

12番を背負って存在感を見せた明大CTB廣瀬。ラン、パス、キックとスキルが高い(撮影:斉藤健仁)
12番を背負って存在感を見せた明大CTB廣瀬。ラン、パス、キックとスキルが高い(撮影:斉藤健仁)

◇WTB、FB

「バックスリー」と呼ばれる「11」番、「14」番のWTB(ウィング)、そして「15」番のFB(フルバック)。

まずFBは、文句なしで慶應義塾大FB山田響(1年、報徳学園)だろう。高校2年生でユース五輪の3位に貢献したスピード、ステップの鋭さは健在だ。フィジカルレベルも上がり、1年生ながら黒黄ジャージーの15番を背負い続けた。左足のキックも正確で、「慶明戦」ではチームに勝利をもたらすPGを決めた。

逆転のPGを決めて、「慶明戦」の勝利に貢献したFB山田(撮影:斉藤健仁)
逆転のPGを決めて、「慶明戦」の勝利に貢献したFB山田(撮影:斉藤健仁)

WTBの一人目は、開幕前に天理大の小松節夫監督は「(シオサイア・)フィフィタ(4年)の控えかな」と話していたWTBマナセ・ハビリだ。

シーズン中盤からは「11」番を付けて、エッジで突破力とボールキープ力の高さを見せて初優勝に貢献。決勝では前半29分にジャッカルを決めた。このプレーは試合の流れを決めるビッグプレーのひとつとなった。来季はフィフィタが背負っていた「13」番を背負うかもしれない。

もう一人は、昨年度の花園で御所実業の準優勝に寄与した選手のひとりだった法政大WTB石岡玲英(1年)だ。ランとステップが持ち味の選手で、関東リーグ戦では開幕から全7試合に先発出場し、鋭いカウンターアタックでも魅了した。来季はFBでの出場もあるかもしれない

他にもバックスリーにはWTB/FBは東海大の谷口宜顕(1年、東海大大阪仰星)、WTBポロメア・カタ(1年、東海大福岡)、同志社大CTB/WTB岡野喬吾(1年、常翔学園)らもインパクトを与えたが、優勝に貢献した天理大WTBハビリ、7試合に先発した法政大WTB石岡を選んだ。

大学選手権で対戦する天理大WTBハビリ(一番左)と早稲田大FL村田(右) (撮影:斉藤健仁)
大学選手権で対戦する天理大WTBハビリ(一番左)と早稲田大FL村田(右) (撮影:斉藤健仁)

◇将来、桜のジャージーを目指してほしい!

2015年ワールドカップで大活躍したFB五郎丸歩(ヤマハ発動機/早稲田大)もそう、2019年ワールドカップに出場した日本代表選手を見わたしてもキャプテンFLリーチ マイケル(東芝/東海大)しかり、NO8姫野和樹(ハイランダーズ/帝京大)、SO田村優(キヤノン/明治大)、WTB福岡堅樹(パナソニック/筑波大)、FB山中亮平(神戸製鋼/早稲田大)ら多くの選手が大学1年生からスタジアムを沸かせていた。

今シーズン活躍したルーキーたちは、当然、来季以降もチームの中心となるだろう。そして将来は桜のジャージーを目指してほしい!

◇個人的な今季のルーキー「ベスト15」

※2019年度の高校日本代表選手

PR山本敦輝(同志社大1年、常翔学園)※

PR藤倉大介(大東文化大1年、國學院栃木)

HO江良颯(帝京大1年、大阪桐蔭)※

LO神田康生(流通経済大1年、鹿児島工業)

LO竹部力(法政大1年、大分舞鶴)

FL梁川賢吉(筑波大1年、尾道)

FL村田陣悟(早稲田大1年、京都成章)☆新人賞

NO8ヴェア・タモエフォラウ(京都産業大1年、札幌山の手)

SH前川李蘭(日本大1年、目黒学院)

SO武藤ゆらぎ(東海大1年、東海大大阪仰星)

CTB伊藤大祐(早稲田大1年、桐蔭学園)※

CTB廣瀬雄也(明治大1年、東福岡)※

WTBマナセ・ハビリ(天理大1年、高知中央)

WTB石岡玲英(法政大1年、御所実業)※

FB山田響(慶應義塾大1年、報徳学園)

ルーキーながら大活躍した法政大WTB石岡(撮影:斉藤健仁)
ルーキーながら大活躍した法政大WTB石岡(撮影:斉藤健仁)

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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