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101年目の初戦を白星で飾った明治大ラグビー部。1年生FB為房幸之介(常翔学園)が初の紫紺で躍動!

斉藤健仁スポーツライター
春の公式戦初戦で明治大の15番を背負ったのは1年の為房だった(撮影:斉藤健仁)

 第13回関東大学ラグビー春季交流大会は、4月28日(日)からは前週のBに続き、Aグループの試合も始まった。昨季、節目の100周年を迎えて大学選手権準優勝だった明治大(昨季対抗戦2位)は、東京・八幡山のグラウンドに流通経済大学(昨季リーグ戦2位)を迎えた。

 最初20分は相手のフィジカルに苦しんだ部分もあったが、スクラム、ラインアウトが安定していた明治大は前半6本、後半7本と計13トライを重ねて89-38で勝利し、101年目のシーズンの好スタートを切った。

◇1年生ながら部内マッチの競争を勝ち抜いた

 今季初の15人制の公式戦で、最も大きな印象を与えたのが1年生ながら「15」番を背負って80分間フル出場を果たしたFB為房幸之介(常翔学園出身)だった。なお兄は3月に明治大を卒業したばかりの、クボタスピアーズ船橋・東京ベイのPR為房慶次朗である。

 FB為房ら1年生の起用に関して明治大の神鳥裕之監督に聞くと、「今シーズンは競争でしっかり勝った選手を起用したい。頑張った選手が試合に出る形にしていきたい」と話したように、前の週に行われた部内マッチの結果を受けての抜擢だった。

 大阪府出身のFB為房は4人きょうだいの3番目。兄の影響で小学校1年から、大阪・みなとRCで競技を始め、大正北中でラグビー部に所属。中学時代、最大96kgまで体重が増えたときもあったがBKを貫いた。兄・慶次朗と同じ常翔学園に進学し、1年生からバックスリー(WTB、FB)やSOとして活躍し、2年時の春の選抜大会では12番としてベスト4に貢献した。

 しかし高校3年生の春、大阪高校総体のリーグ戦の東海大大阪仰星戦(●12-33)で右膝前十字靱帯を断裂し、秋の花園予選にも出られず、高校日本代表にも選ばれることはなかった。

 高校3年時は1試合も公式戦に出ることはかなわなかったがリハビリを続けて、兄も在学していた、今季、主将を務めるNO8木戸大士郎(4年)ら高校の先輩も多くいる明治大学に進学。「誘われたこともありますが、兄からいい大学だと聞いていました!」。先週の部内マッチで昨年4月以来の復帰を果たし、大学生初の公式戦から紫紺のジャージーの15番を背負ったというわけだ。

ランだけでなく、ジャッカルや「50-22」キックも決めたFB為房(撮影:斉藤健仁)
ランだけでなく、ジャッカルや「50-22」キックも決めたFB為房(撮影:斉藤健仁)

◇「万能的に動ける選手になりたい」(為房)

部内マッチでプレーが良かったから先発に上げてもらった。ビックリして緊張していました」とFB為房は率直に話したが、後半28分にはトライを挙げて、ラグビーと並行して10年続けた柔道で磨いたタックル、ジャッカルを決めて、さらには「50-22」キックを成功させるなど非凡なところを見せた。

 身長172cm、体重82kg。重心の低いランが光った為房は「万能的に動ける選手になりたいと思っているので、キック、パス、タックルと持ち味が見せられたので良かった!」と声を弾ませた。

好きな選手は為房慶次朗と言いたいところですが、(オールブラックスFB)ダミアン・マッケンジーです(笑)」と笑顔を見せた18歳は、「1年生からメンバーに絡んで、(今季のチームのスローガンでもある)『奪還』に少しでも貢献できるように頑張りたいです!」と初々しく話した。

◇桐蔭学園出身のSO萩井&CTB白井も試合に出場 

 この試合ではFB為房以外にも、昨季の桐蔭学園の高校「2冠」に貢献したSO萩井耀司CTB白井瑛人(ともに1年)の2人も控えから出場を果たした。

 他にも4月14日の東日本大学セブンズではCTB大和哲将(佐賀工業)、WTB長谷川諒(報徳学園)、CTB阿部煌生(流通経済大柏)もセブンズながら1年生での紫紺デビューをすでに果たしている。

途中出場ながらセンス溢れるプレーを見せたSO萩井(撮影:斉藤健仁)
途中出場ながらセンス溢れるプレーを見せたSO萩井(撮影:斉藤健仁)

◇すでに多くの1年生が大学デビューを飾った!

 明治大以外の大学1年生の活躍を見てみると4月21日、立教大学ではWTB村上有志(東福岡)が1年生の中では最速で公式戦デビューを果たした。4連覇を目指す帝京大では、ラグビー日本代表のエディー・ジョーンズHCの肝煎りで始まった「JAPAN TALENT SQUADプログラム」に大学1年で唯一選ばれたFL福田大和(中部大春日丘)と、CTB佐藤楓斗(1年/尾道)の2人が春の初戦で先発を果たし、法政大学もHO花澤祐太(1年/法政二)が先発した。

「JAPAN TALENT SQUADプログラム」に大学1年で唯一選ばれた帝京大FL福田(撮影:斉藤健仁)
「JAPAN TALENT SQUADプログラム」に大学1年で唯一選ばれた帝京大FL福田(撮影:斉藤健仁)

 日本大はNO8神崎朝飛(日大藤沢)、WTB森本福壽郎(脇町)の2人の1年生が先発して勝利に貢献。日本大に敗れたものの筑波大学ではLO中森真翔(1年/桐蔭学園)が先発しトライも挙げた。

 まだ春の公式戦の初戦を迎えていない早稲田大でも練習試合で、昨季の高校日本代表のキャプテンを務めたNO8城央祐(1年/桐蔭学園)が控えから出場し、慶應義塾大では日本代表で活躍した名WTB小野澤宏時の息子であるWTB/FB小野澤謙真(1年/静岡聖光学院)がセブンズながら公式戦に出場した。

 「群雄割拠」と言われ、優勝を予想するのが難しい、今シーズンの大学ラグビーシーン。1年生の台頭が著しいチームがきっと優勝争いに絡んでくるはずだ。

東日本大学セブンズでトライを挙げる慶應義塾大WTB小野澤(撮影:斉藤健仁)
東日本大学セブンズでトライを挙げる慶應義塾大WTB小野澤(撮影:斉藤健仁)

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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