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W杯4大会に出場した元日本代表LOトンプソン。最も印象に残っている試合は?(独占インタビューその2)

斉藤健仁スポーツライター
W杯には4大会出場したトンプソンさん。写真は2015年W杯出場時のもの(写真:ロイター/アフロ)

ラグビー日本代表がベスト8に進出した、昨年のラグビーワールドカップから1年。38歳のベテランとなっても、献身的なプレーでチームを支えた元日本代表LOトンプソン ルークさんが、ニュージーランドからオンラインでインタビューに応じてくれた(協力:ニュージーランド政府観光局、野辺優子)。

※アイルランド代表戦を振り返ってくれた独占インタビューその1

◇日本代表として71試合出場。最も印象深い試合は?

昨年度でプロラグビー選手を引退したトンプソンさん。あらためて、日本代表として71試合出場、さらにワールドカップ4回出場した中で、最も印象に残っている試合を聞いてみた。

すると「日本代表のキャリアで最も印象に残った試合は、たくさんあります。一つには絞れません」と言いつつも、トンプソンさんは懐かしそうにこう話した。

「もちろん、2007年初めて日本代表として香港でプレーした試合がまずそう。初キャップというのは本当に特別な瞬間でした。それから2015年の南アフリカ代表戦ですね。今でも勝ったなんて信じられない気持ちになるほど素晴らしい試合でした。そして去年のワールドカップのアイルランド代表戦。そして、ベスト8を決めたスコットランド代表戦も格別でしたね。本当にたくさんの試合が私にとって大切です」

トンプソンさんが「特別な瞬間」と話した2015年ワールドカップの南アフリカ代表戦、試合終了間際のスクラムでFWのチームメイトに気合いを入れていたシーンが強く印象に残っている。

インタビューに応じるトンプソンさん
インタビューに応じるトンプソンさん

「確かに『日本の歴史、作るの誰?』と言った記憶があります。当時、日本代表のヘッドコーチをしていたエディ・ジョーンズは「準備をして新しい日本の歴史を作ろう」ということを何度も言っていました。だからあの試合のあの瞬間、どうしてかわからないけど、まさに『その時がきた!』とつい言葉として出てしまったのでしょうね。

当時はとっても興奮していて、よく覚えていなかったんですが(苦笑)、ワールドカップが終わってから思い出しました!」(トンプソンさん)

当時の日本代表指揮官であるジョーンズHC(ヘッドコーチ)が繰り返し話していた言葉が、ついつい出てしまったというわけだ。

◇「堀江は本当にスマートな選手」(トンプソンさん)

日本代表選手と言えば、ワールドカップに過去3回出場しているHO堀江翔太(パナソニック)が「『トンプソン方式』で休みを取りつつ、次のワールドカップを目指す」という趣旨の話をしていた。

そんな堀江選手に期待することを聞くとトンプソンさんは「堀江はちょっと休んだほうがいいね(笑)。堀江は本当に誰よりも豊富な経験があるし、チームを引っ張る力に長けています。本当にスマートな選手ですし、少し休んで、彼のやる気がみなぎって再び日本代表に戻ってきたら、チームにとっては素晴らしいオプションになるでしょうし、ジェイミー(・ジョセフHC)も喜ぶと思います!」と、自分のペースで次回ワールドカップを目指している後輩の背中を押した。

そして日本代表と言えば、数々の国際試合で一緒に戦ってきた盟友・LO大野均選手もトンプソンと同じく昨年度、現役を引退した。あらためて大野選手についてコメントをお願いするとトンプソンさんは笑顔になって「キンちゃん(※大野選手の愛称)、お疲れ様でした。これからも頑張って。飲み過ぎに気をつけてください!」と流ちょうな日本語で話した。

また「近鉄が恋しい」と話していたトンプソンさんは、引退時に所属していた近鉄ライナーズのアドバイザーにも就任している。ただコロナ禍で移動することがかなわず、状況が落ち着いたら日本へ、東大阪へ行くことも検討しているという。

「近鉄には今もアドバイザーとして関わっています。今年はまだ残念ながら日本へ行くことができなくてちょっと残念ですが、日本に行くことを楽しみにしています」(トンプソンさん)

◇2021年はNZでラグビーW杯(女子大会)が開催される

ワールドカップと言えば2021年(9月18日から10月16日)にはニュージーランドのオークランドを中心に、ワールドカップ(女子大会)が開催される。

女子のワールドカップの印象を聞くとトンプソンさんは「女子のワールドカップの試合は見たことがないのですが、女子のニュージーランド代表やカンタベリーのチーム、日本代表の『サクラフィフティーン』の試合は見たことがあるので、とてもいい大会になるのではないでしょうか?

オークランドのことはあまり詳しくないのですが、いい都市だと思います。美味しいレストランもあるし、ラグビーチームもたくさんあるのでワールドカップを開催するにはいい街だと思います」と話した。

当然、2021年ワールドカップには日本のラグビーファンも多く訪れることになり、トンプソンさんの住んでいるクライストチャーチにも足を運ぶ人も出てくるはずだ。そこでクライストチャーチのオススメスポットを聞いてみた。

すると故郷についてトンプソンさんは「たくさんの観光スポットがありますよ! 中心部には歴史的な建物や美しい庭園なんかもあります。クライストチャーチゴンドラに乗って、上から街を眺めるのもいい。

あとはクライストチャーチから車で1時間半くらいの郊外もオススメです。ハンマースプリングスには温泉もあります。アカロアはフィッシングヴィレッジがあります。クィーンズタウンもいいですね!」とよどみなく話してくれた。

◇「僕の鹿牧場でバーベキューしましょう!」

最後に、あらためて日本のラグビーファンへのメッセージをお願いすると、トンプソンさんは「家族も気に入っていた、日本の食事も食べることができなくて残念です。もしクライストチャーチにきたら、鹿肉でよければですが僕の鹿牧場でバーベキューをしましょう(笑)。

ラグビーシーズンがなかったので行けなくて、日本のファンのみなさんに会えなくて寂しいです。来年1月にはトップリーグが始まるので、またラグビーを応援してください。コロナ禍で大変ですが頑張ってください。そして落ち着いたら、是非ともニュージーランドにも来てくださいね!」という言葉で締めくくった。

鹿牧場の写真(本人提供)
鹿牧場の写真(本人提供)

◇「バーベキュー ライブ配信」でトンプソンさんに会える!

クライストチャーチの中心部から車で30~35分ほどの場所で、トンプソンさんは、ひとりで鹿320頭あまりを育てている。そんなトンプソンさんの声をライブで聞くチャンスがある。

10月18日(日)の昼12時から30分間程度、ニュージーランド政府観光局公式ツイッター(@PureNZinJapan)で、トンプソンさんが自宅でニュージーランド式のバーベキューをしながら、現在の現地の様子やオススメの場所などを日本語で紹介する「トンプソン・ルークさんの自宅で楽しむバーチャル バーベキュー ライブ配信」を実施する。

トンプソンさんの現在の状況を知りたい、見たい方は是非、チェックしてみてはいかがだろうか。

提供:NZ政府観光局
提供:NZ政府観光局
スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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