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「ラグビー界の大谷」発掘へ。ジョーンズHC肝煎りのJAPAN TALENT SQUADプログラム開始

斉藤健仁スポーツライター
秋濱(明大)、佐藤(早大)、青木(帝京大)の3人は将来有望だ(撮影:斉藤健仁)

 ワクワクする選手の名前が並んだ。

 4月19日、日本ラグビー協会は、将来の日本代表選手の育成を加速するためのプロジェクトとして、新たに「JAPAN TALENT SQUADプログラム」の開始を発表した。

◇「ラグビー界の大谷」を発掘する

 1月にラグビー日本代表の指揮官に再任したエディー・ジョーンズHCはリーグワンだけでなく、高校日本代表、U20日本代表候補の合宿等を視察し、「JAPAN XV」のサモア遠征にも同行した。

 ジョーンズHCは会見等で「ラグビー界の大谷(翔平)を生み出したい」「2023年ワールドカップのメンバーは年齢の高い選手が多かった。だから私たちはチームを再編することが求められている。だから有望な若手選手を発掘するということは、非常に重要なことで、最重要事項です」と話していたが、早速、行動に移した形だ。

 このプログラムは選手が在籍する大学と連携の上、選抜された14名(※下記参照)の大学生選手を対象に、日本代表スタッフの大学訪問などを含む、S&C(ストレングス&コンディショニング)や栄養面における年間を通したサポートを行うものだ。

 大学の公式戦シーズンを除き、定期的に1月にラグビー日本代表の指揮官に再び就任したエディー・ジョーンズHCによるスキルセッションと各専門スタッフのアドバイスを行い、日本代表として世界の舞台で活躍するワールドクラスの選手を育成することを目指している。

その1回目のプログラムが4月25日(木)に東京・八幡山にある明治大ラグビー部の練習場で行われる(2回目以降はスケジュールを検討した上で決定)。

昨季も飛び級でU20日本代表で活躍したFB矢崎。今春の日本代表入りもあるか?(撮影:斉藤健仁)
昨季も飛び級でU20日本代表で活躍したFB矢崎。今春の日本代表入りもあるか?(撮影:斉藤健仁)

◇福岡合宿に参加した7人は当然選出された

 ジョーンズHCのお眼鏡にかなった14名の内訳を見てみよう。

 まず2月に福岡で、FLリーチ マイケル(ブレイブルーパス東京)やNO8姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)ら日本代表キャプテン経験者も参加し、ジョーンズHCが直接指導した、男子15人制の「トレーニングスコッド合宿」に参加した大学生は当然、選出された。

 それはHO佐藤健次(早稲田大4年)、LO石橋チューカ(京都産業大2年)、FL青木恵斗(帝京大4年)、SH土永旭(京都産業大4年)、SH髙木城治(京都産業大2年)、CTB秋濱悠太(明治大4年)、FB矢崎由高(早稲田大2年)であり、この7人は当然、今回のプログラムにも選出された。

 なお大学4年生の選手4人はU20日本代表候補中心に構成され、4月にサモアで「パシフィックチャレンジ」で3連勝し、2020年以来の優勝を成し遂げた「JAPAN XV」にも参加。特にこの4人はオーバーエイジとしてふさわしい活躍を見せた。

 「JAPAN XV」に参加したU20日本代表候補のLO石橋も接点、セットプレーで身体を張り、昨季も飛び級でU20日本代表として大活躍したFB矢崎は、サモアで3試合連続トライを挙げて存在感を見せつけた。

明治大2年のSO伊藤龍之介。JAPAN XVで3連勝に貢献、評価を上げた。右はジョーンズHC(撮影:斉藤健仁)
明治大2年のSO伊藤龍之介。JAPAN XVで3連勝に貢献、評価を上げた。右はジョーンズHC(撮影:斉藤健仁)

◇「JAPAN XV」で活躍したSO伊藤、CTB本橋も選出

 会見等で、ジョーンズHCで名指ししたことのあるPR八田優太(京都産業大2年)、WTB海老澤琥珀(明治大2年)の2人のU20日本代表候補も選出された。PR八田はスクラムの強さには定評があり、スピードとスキルに長けたWTB海老澤はパシフィックチャレンジの最終戦のトンガA戦で、前半だけでハットトリックを達成する決定力の高さを見せた。

 U20日本代表候補からはSO伊藤龍之介(明治大2年)、インサイドCTB/SO本橋尭也(帝京大2年)の2人も選ばれた。この2人はジョーンズHCが視察したパシフィックチャレンジで、10番、12番としてともに安定感あるプレーを見せてBKを引っ張ったことが高く評価されたということになろう。

 LO/NO8田島貫太郎(明治大4年)、SO/FB小村真也(帝京大4年)の2人は大学でのプレーぶりが指揮官の目にとまったということになろう。

◇帝京大1年の福田はサプライズ選出

 さらに、中部大春日丘高校を卒業し、4月に帝京大に入学したばかりのFL福田大和(帝京大1年)の名前があったことが最大のサプライズだった。ジョーンズHCは「花園」こと全国高校ラグビー大会や高校日本代表候補合宿に参加し、「(高校生で気になる選手が)1人いた」と話していたが、それがFL福田ということだろう。

 福田は中部大春日丘高校時代、高校の先輩になぞらえて「姫野2世」と呼ばれたバックローだった。姫野も大学1年生で日本代表候補合宿に招集された経歴を持つ。このまま姫野を追うように成長を遂げていってほしい。

 いずれにせよ2月の福岡合宿、そして「JAPAN XV」のサモア遠征に参加した7人はジョーンズHCが高く評価している選手であることは間違いない。

 ラグビー日本代表は5月20日から、長野の菅平高原でトレーニング合宿を行い、リーグワンが終わった後、6月6日から宮崎で本格的に始動する。14名の大学生の中で、何人が日本代表合宿に呼ばれるか大いに注目したい。

◇「JAPAN TALENT SQUADプログラム」参加14選手

☆トレーニングスコッド合宿参加@福岡

※「JAPAN XV」に選出

FL青木恵斗(帝京大学4年/桐蔭学園出身)☆※

CTB秋濱悠太(明治大学4年/桐蔭学園出身)☆※

LO石橋チューカ(京都産業大学2年/報徳学園出身)☆※

SO伊藤龍之介(明治大学2年/國學院大栃木出身)※

WTB海老澤琥珀(明治大2年/報徳学園出身)※

SO/FB小村真也(帝京大学4年/ハミルトンボーイズ出身)

HO佐藤健次(早稲田大4年/桐蔭学園出身)☆※

SH髙木城治(京都産業大2年/東福岡出身) ☆※

LO/FL田島貫太郎(明治大4年/東福岡出身)

SH土永旭(京都産業大4年/光泉カトリック出身)☆※

PR八田優太(京都産業大2年/城東出身)※

FL福田大和(帝京大1年/中部大春日丘出身)

SO/CTB本橋尭也(帝京大2年/京都成章出身)※

FB矢崎由高(早稲田大2年/桐蔭学園出身)☆※

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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