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埼玉WKのSH内田啓介のプレーが見られるのも最大7試合。引退後は指導者として「花園」に挑む

斉藤健仁スポーツライター
今季もベテランとして試合に出場し、勝利に貢献し続けている(撮影:斉藤健仁)

 昨年12月から始まった「NTTジャパンラグビーリーグワン2023-24」のリーグ戦は4月6日から第12節が始まり、いよいよ残り5試合となった。「王座奪還」を掲げて開幕から11連勝で首位をひた走るのが埼玉パナソニックワイルドナイツだ。

◇開幕前から「やり切って辞める」と決めていた

 開幕前、ワールドカップ4回に出場した「ラスボス」ことHO堀江翔太(38歳)が今季限りでの引退を表明。さらに12月25日、第3節終了後、100キャップの節目ということもあり、長らくワイルドナイツを支えた日本代表22キャップを誇る、身長179cmの大型SH内田啓介(32歳)も今季限りでブーツを脱ぐことを発表した。

昨季、優勝してチームを去るということを僕の中では決めていたのですが、(プレーオフ決勝で)負けた瞬間に、このままでは終われない、今じゃないという気持ちになった。そしてもう1シーズン、やり切ってどんな結果になっても辞めるということを決めました

 前から決めていたことで、「(堀江さん)先に言うやん!」と内田が目を細めたように、堀江の発表の影響はまったく関係なかったという。

選手同士でも辞める、辞めないと(シーズン終了後に)ネットで知ることが多くて、最後、引退していく選手に会わずに終わるときもある。それがちょっと寂しかったし、ファンの方にもお伝えしたかったので、別に隠す必要もないかなと思ったので100キャップの機会に発表しました。惜しまれつつ辞めたいという気持ちもありましたね

昨季、優勝できなかったことでもう1シーズン、プレーすることを決めた(撮影:斉藤健仁)
昨季、優勝できなかったことでもう1シーズン、プレーすることを決めた(撮影:斉藤健仁)

◇筑波大3年で初キャップもW杯には縁がなかった……

 滋賀県出身で、大津ラグビースクールで小学校2年から楕円球を追った。中学からは京都で研鑽を積み、伏見工業(現・京都工学院)時代には高校日本代表に選出された。

 筑波大に進学後、大学3年で日本代表初キャップを獲得、2012年度は筑波大学3年時には関東大学対抗戦1位タイ&大学選手権準優勝に貢献、関東大学ラグビーのMVPにも選ばれた。

 2014年からワイルドナイツに入り、桜のジャージーに袖を通しての活躍も続けた。だが2015年ワールドカップではエディー・ジョーンズHCはSHを3人ではなく2人に絞ったことで内田は最後の最後で落選してしまった。ワールドカップスコッドが31名ではなく、2023年大会のように33名だったら間違いなく選ばれていただろう。

 サンウルブズでプレーもしたが、2019年もワールドカップへの出場もかなわなかった。そして2023年に入って、内田はワールドカップに向けた日本代表の大きなスコッドに入っており、オンラインのミーティングに参加していたという。もし日本代表に選ばれたら「覚悟を決めないといけない」とも話していた。

 しかし、5月、ワールドカップに向けたスコッドの中に内田の名前はなかった。「(日本代表活動に参加するのは)簡単なことではない。(日本代表候補に)選ばれても選手は(試合に出るための)セレクションにならない感じってわかるものですよ……」と言葉少なに説明してくれた。

2014年、宮崎で行われたラグビー日本代表合宿での一枚。内田は若手として将来を嘱望されていたSHだった(撮影:斉藤健仁)
2014年、宮崎で行われたラグビー日本代表合宿での一枚。内田は若手として将来を嘱望されていたSHだった(撮影:斉藤健仁)

◇母校・京都工学院で花園出場を目指す

 母校・伏見工業ラグビー部のスローガン「信は力なり」という言葉が好きな内田は筑波大学時代から「将来は先生になりたい。高校でラグビーを教えたい」と話していた。その通り、セカンドキャリアの選択肢としてその気持ちを持ち続けていた。

 筑波大時代、日本代表活動に参加していたため、教員免許に必要な単位が少し足りなかったという。コロナ禍、時間があるときに通信制の大学に通って必要な単位を取得し、ワイルドナイツの先輩・霜村誠一監督がラグビー部の指揮官を務める桐生第一に教育実習に赴いて中高の体育の教員資格を取得した。

 教員としての第一希望は母校である京都工学院(元・伏見工業)での指導で、引退後は京都府の採用試験を受ける予定だという。

「(2015年度から花園に出場しておらず)母校が今、あまり元気がないので、第一希望としては母校に戻ってもう1回盛り上げることができたらいいなと……。ただ私立ではなく公立なので、引退した後に、京都の採用試験を受けないといけない。花園に出たらその時、取材に来てもらってもいいですか?

 引退後は、伏見工業から京都工学院に名を変えた母校で指導者となり「花園」こと全国高校ラグビー大会を目指す。

◇多くて残り7試合。「シンプルに楽しみたい」

 あらためて今季限りの引退発表をした反響を聞くと、内田は「嬉しいことに、辞めないでとか、寂しいという声をもらえたりして、より頑張れます。ラストシーズン、練習や試合の一つ一つ、チームメイトと一緒にいる時間のすべてにおいて、本当に楽しませてもらっていて、すごくいい時間を過ごしています。チームとしては優勝しか見ていないですし、本当にシンプルですけど、楽しむことをやっていきたいですね」としみじみと話した。

 ワールドカップの舞台にこそ立てなかったが、179cmの体躯を活かしながら、ラン、長いパス、キック力にも長けた総合力の高いSHである。「うっちー」の愛称で親しまれた内田啓介のラストダンスは堀江よろしく、プレーオフも含めて多くて7試合。是非とも、そのプレーを目に焼き付けてほしい。

内田(左)と堀江の勇姿が見られるのは最大7試合となった(撮影:斉藤健仁)
内田(左)と堀江の勇姿が見られるのは最大7試合となった(撮影:斉藤健仁)

◇埼玉パナソニックワイルドナイツ リーグワンの4月以降の日程

4月6日(土) ワイルドナイツ対相模原ダイナボアーズ@熊谷ラグビー場

4月12日(金) ブラックラムズ東京対ワイルドナイツ@秩父宮ラグビー場

4月20日(土) トヨタヴェルブリッツ対ワイルドナイツ@パロマ瑞穂ラグビー場

4月27日(土) ワイルドナイツ対花園ライナーズ@熊谷ラグビー場 

※内田と堀江両選手の最後のホストゲームでは「ラストエール」企画として2人の想いを記したオリジナルデザインのエールフラッグを先着10,000名に配布予定

5月4日(土) 横浜イーグルス対ワイルドナイツ@レゾナックドーム大分

※ワイルドナイツがプレーオフに進出した場合、さらに2試合(5月18、19日に準決勝、25日に3位決定戦、26日に決勝が行われる)出場できる

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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