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ラグビーW杯の「静岡の衝撃」からちょうど1年。元日本代表LOトンプソン、独占インタビューその1

斉藤健仁スポーツライター
38歳のベテランながら日本代表のセットプレーを支えたトンプソン(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

9月28日(月)、静岡のエコパスタジアムで行われた2019年のラグビーワールドカップ(W杯)、日本代表(当時・世界ランキング9位)がアイルランド代表(2位)に19-12で勝利した「静岡の衝撃」「エコパの歓喜」といわれた試合からちょうど1年が経った。

献身的なプレーで38歳のベテランとなってもチームのセットプレーを支えた元日本代表LOトンプソン ルークさんが本日、ニュージーランドからオンラインでインタビューに応じてくれた(協力:ニュージーランド政府観光局、野辺優子)。

※独占インタビューその2はこちら!

◇鹿を320頭世話する日々。「日本が恋しい!」

プロのラグビー選手を引退し、現在は、故郷のノースクライストチャーチで鹿農場をひとりで運営しているトンプソンさん。少し日焼けした顔に見えたが、日々、農作業をしていることもあって1年前と変わらぬ姿がそこにあった。

「(プロラグビー選手とは)だいぶ生活は変わりましたが楽しんでいます! 鹿牧場を営んでいて、今、320頭くらいいます。メインは牡鹿の角を育ていて、漢方薬を作ることです。働いているのは自分一人だけ。ここニュージーランドの新しいチャレンジもワクワクしてやっています!」(トンプソンさん)

やはり「第二の故郷である日本を寂しい」と思うときも多いという。「日本は恋しいですよ。長いこと住んでいましたし、友達もたくさんいるし、私にとっては特別な場所です。近鉄(ライナーズ)も恋しいです。ラグビーからの引退することは寂しくないけど、仲間と離れているのが寂しいですね」

元気な姿を見せたトンプソンさん
元気な姿を見せたトンプソンさん

◇トンプソンさんが「静岡の衝撃」を振り返る

ラグビーW杯から1年が経ち、本日がアイルランド戦からちょうど1年経った。率直な心境を聞いた。

トンプソンさんは「W杯から1年なんて本当に時間が経つのは早い! 1年間、めっちゃ、早いね(日本語で)。もちろん、アイルランドに勝利したことは本当に特別な瞬間でした。本当に誇りを持ってグラウンドに立っていたことを覚えています。(プレーして)疲れたけど、チームが成し遂げたことにさらに誇りを感じて幸せでした。

高いレベルの試合を見せることができ、日本のラグビーに新しい歴史を作ることができた。本当に特別なチームだったし、ニュージーランドから家族みんなが見にきてくれていました。思い出してみても素晴らしかった!」と懐かしそうに振り返った。

あらためて、アイルランド代表に勝てた要因を聞くと、まっすぐに見て、こう答えた。

「アイルランド代表に勝てたのは、何よりも(日本代表に)信念があったからだと思います。選手たちは互いを信頼して、ゲームプランを信じて、コーチも選手たちの力を信じていました。

どうやったら勝てるか、何をすべきか、ジェイミー(ジョセフHC)とブラウニー(トニー・ブラウンコーチ)の素晴らしいプランがありました。選手たちはそれをわかっていたので、フィールド上でそれをきちんと遂行すれば良いと思っていました。

選手たちの力も素晴らしく、コンビネーションも良かった。それから、(大会に至るまで)たくさんのプレッシャーを乗り越え、トレーニングを重ねてきました。そこに至るまでに準備してきたこともあると思います」(トンプソンさん)

◇トンプソンさんが期待する若手とは?

一戦から退き、引いた目で、今の日本代表をどう見ているのだろうか。

日本代表を「マイチームのひとつ」というトンプソンさんはOBとして「今年の日本代表は活動がないことは残念ですが、日本代表はとても高いポテンシャルを持っている。2019年W杯の勢いを維持できれば、再びトップ8、さらにトップ4になる事もできると思っています。もちろん、それは簡単ではないけど、それを実現する可能性は持っていると思います。

もちろん、他のチームももっと進化していますし、さらに準備して、さらにレベルアップしようとしているので、さらに大きなチャレンジになる。でも日本代表は、システムやカルチャーをジェイミーやブラウニーによって作る機会に恵まれ、リーダーグループがチームを先導し、新しいスター選手が出てきて他の選手もステップアップするようになりました。簡単ではないけど、チャンスは十分にあります」と大きな期待を寄せた。

また2023年W杯フランス大会に向けて期待している選手を聞くと、トンプソンさんは「キープレーヤーであるFL/No8姫野(和樹/トヨタ自動車)、FLリーチ(マイケル/東芝)、SH流(大/サントリー)、FB松島(幸太朗/クレルモン)らが2019年W杯で経験を得たことが次の大会では重要になってくるでしょう。

それから、PR具(智元/Honda)が非常に成長しました。ケガをしなければワールドクラスの選手になっていくでしょう。あとはまだW杯まで少し時間があるので、元気で若く、安定したパフォーマンスができる選手が育ってくるといいですね。

サントリーのCTB梶村(祐介)などがそのひとり。近鉄の若いFLにも期待していて、できれば日本代表に選ばれるチャンスがあればいいなと思っています。(コーチ陣が)これからの1、2シーズンを見てセレクションされていくのでは」とエールを送った。

トンプソンさんは「とにもかくにも、日本代表がどんどん強くなってくることにワクワクしていますし、今後も応援していきたいです!」と満面の笑顔を見せた。

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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