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全米の日計ヒットランキングで「君たちはどう生きるか」「ゴジラ」と、まさかの日本映画トップ2に

斉藤博昭映画ジャーナリスト
(C)2023 Studio Ghibli

先週末(12/1〜3)の北米の映画興行ランキングで、『ゴジラ -1.0』が日本の実写映画で最高の数字を記録し、3位に入ったことが話題になったが、この週末には宮崎駿監督の新作『君たちはどう生きるか』の北米での公開が始まった。正式な初日は12/8なのだが、多くの作品は初日の前日にプレビュー公開されるのが一般的。つまり『君たちは』も12/7に公開され、その数字が上がっている。

基本的に興行収入のランキングは週末3日間が終わってからの結果が重要になるが、映画集計サイトのthe-numbers.comでは、日間の数字も発表される。『君たちは』の初日(プレビュー)である12/7のランキングでは

1位『君たちはどう生きるか』

2位『ゴジラ -1.0』

3位『Renaissance: A Film by Beyonce』(ビヨンセのコンサートフィルム)

4位『ハンガー・ゲーム0』

と、日本映画2本が2トップを飾るという異例のランキングとなった。(オフィシャルの順位は1位が『ゴジラ』となっている。プレビュー分は正式なランクに反映されないからで、実質の数字では『君たちは』が1位)

先週末に3位だった『ゴジラ』は、その後、日計ランキングで、12/4(月)1位→12/5(火)2位→12/6(水)1位という推移を見せ、12/7に2位であった。

『君たちはどう生きるか』は、12/7のみで239万ドルの興収を達成。『ゴジラ』の北米公開の初日(プレビュー)11/30の数字である210万ドルを超えてきた。

『ゴジラ』の初日のスクリーン数は1921で、『君たちは』は初日が1774スクリーン。1スクリーンにおける観客の数も、『ゴジラ』を上回ったことになる。ちなみに12/7のスクリーン数は『ゴジラ』が2308(初日よりだいぶ増加)、『ビヨンセ』が2539、『ハンガー・ゲーム』が3691なので、『君たちは』の賑わいがよくわかる。劇場単位の数字では、『君たちは』は『ゴジラ』や『ビヨンセ』の約2.6倍だ。

『ゴジラ』と同様に、宮崎駿作品も北米では確固としたファン層があるので、初日に詰めかけた可能性もありつつ、予想を上回る数字を残したと言えそう。この人気が週末にかけてどのくらい広がるかに注目が集まる。

北米の週末興行ランキングで日本映画が1位になったのは、コロナ禍でハリウッド大作の公開が激減していた2021年5月の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が記憶に新しい。その前となると、1999年の『ポケモン・ザ・ファースト・ムービー』だった。

本来ならクリスマスシーズンのこの時期、ハリウッド大作がランキング上位を席巻するはずが、今年はストライキの影響で公開延期も相次いだことで、国外作品により注目が集まり、シェアが拡大したのも大きな要因だろう。

いずれにしても、このままの推移が続けば、週末ランキングで『君たちは』が1位、『ゴジラ』が2位という、日本映画では異例のアメリカでの2トップの可能性があるということ。映画批評サイト、ロッテントマトでは『君たちは』が批評家95%、観客91%、そして『ゴジラ』が批評家97%、観客98%の支持(12/8現在)という、異常なまでに高い数字となっていることから、今後も口コミでの広がりにも期待できそうである。

(C)2023 TOHO CO., LTD.
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映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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