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俳優ストで、トム・クルーズ来日も急遽中止に…「ミッション」新作の大ヒットに影響は? 今後の可能性は?

斉藤博昭映画ジャーナリスト
2018年「ミッション」シリーズ前作で来日した時の空港でのトム・クルーズ(写真:Shutterstock/アフロ)

ハリウッドのストライキは、ついに俳優にも波及し、多方面で大きな打撃が予想されている。

7/14の午前0時にスタートした、全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)のストライキによって、しばらくの間、ハリウッドの俳優たちは仕事をストップしなくてはならなくなった。映画やTVシリーズの出演はもちろん、宣伝活動やイベントへの出席もできなくなる。

日本のわれわれにとって心配なのは、来日キャンペーン。来週はトム・クルーズが来る予定であったが、先ほど中止の発表があった。7/21公開、大人気シリーズ最新作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』に合わせての来日だった。さらに8/1には『バービー』(8/11公開)でマーゴット・ロビーらも来日予定だったので、こちらも厳しい状況。

とくにトム・クルーズ来日キャンセルのショックは大きい。昨年(2022年)の『トップガン マーヴェリック』があれだけの大ヒットを記録した要因のひとつは、直前でのトムの来日キャンペーン。新型コロナウィルスの影響で、ハリウッドの大物スターの来日が2年以上ストップし、満を持してやって来たのがトムだったこともあり、日本のメディアでは露出量が半端ではなかった。来日が大好きなトムの、相変わらずのファンサービスなど、とにかく話題づくめで、『トップガン マーヴェリック』への強力な追い風になった。来日の解禁直後というタイミングは、トムの強運にもよるかもしれない。

その「運」が、今回は逆になってしまった。まさかの来日直前での、ストライキの決行である。キャスト陣が宣伝活動できないとなると、どんな苦肉の策となるのか……。

これまでも主演作の多くで来日キャンペーンを実行してきたトム・クルーズ。今回は25回目となるはずだった。もちろん『ミッション:インポッシブル』シリーズでは、その全作で来日を果たしており、過去の例と、その日本での興行収入を振り返ると……

2006年の3作目『M:i:Ⅲ』では太鼓を叩く。
2006年の3作目『M:i:Ⅲ』では太鼓を叩く。写真: ロイター/アフロ

1996年 1作目『ミッション:インポッシブル』

会見で監督のブライアン・デ・パルマを絶賛 →65億円

2000年 2作目『M:i-2』

「プロデューサーとしても全力を傾けた」と真摯なコメント →97億円

2006年 3作目『M:i:Ⅲ』

新幹線の貸切、お台場ジャックと、とにかくド派手なイベントを敢行 →51.5億円

2011年 4作目『ゴースト・プロトコル』

滞在27時間という限られた時間で4つのミッションをこなす →53.8億円

2015年 5作目『ローグ・ネイション』

到着した空港で1時間におよぶファンとのふれあい →51.4億円

2018年 6作目『フォールアウト』

ファンサービスと、会見での「日本愛」コメントがすっかり定着 →47.2億円

以上のように、トムが公開直前に来日を果たした「ミッション」シリーズは、2作目こそ突出しているものの、平均して50億円前後を達成している。この最新作『デッドレコニング PART ONE』も当然のごとく、そのあたりの数字を目指すわけだが、タイトルからわかるとおり、2部作の前編。しかしこの1本でシリーズの集大成という仕上がりで、すでに絶賛の批評も相次いでいる。

俳優組合のストライキはしばらく続きそうだが、もし終了時、日本で「ミッション」最新作が大ヒットの成績を残していたら、その感謝でトムが来日してくれる……なんてことは夢だろうか。現実的には難しそうだが、これまでわれわれをアッと驚かせてきた彼のこと。わずかな希望を持ちたいものである。

少なくとも来年、2025年の『PART TWO』公開時には、日本に来て2作分のファンサービスをしてくれるかもしれない。

2015年、『ローグ・ネイション』のジャパンプレミア
2015年、『ローグ・ネイション』のジャパンプレミア写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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