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日本発のハリウッド映画化は当たりハズレも激しい。世界で爆発的ヒットの「マリオ」は日本でどうなる?

斉藤博昭映画ジャーナリスト
(C) 2023 Nintendo and Universal Studios

世界中で大ヒットを記録している映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が、いよいよ誕生の地、日本でも公開される。

現在(4/24時点)、北米での興行収入は4億3432万ドルで、現時点で2023年のナンバーワン。全世界では8億7183万ドルでやはり年間1位。しかも公開から3週間ちょっとでの数字なので、この勢いはまだまだ強まりそう。現在2位の『アントマン&ワスプ:クアントマニア』が世界で4億7442万ドルだから、なんと「マリオ」は2倍近く。大きく引き離してのぶっちぎり状態だ。

マリオを生んだ日本での公開は4/28。ゴールデンウィークとともに始まるが、どんな成績を残すか未知数でもある。

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』はハリウッドのアニメスタジオ、イルミネーションと任天堂の共同製作。監督や主要スタッフの面々から、ハリウッドによるアニメ化と言っていい。日本のゲームやアニメ、コミックをハリウッドが実写やアニメで映画化するプロセスはこれまでも何度も目にしてきたが、その結果は、作品の仕上がりも含め、当たりハズレがかなりあった。

原作に深く親しみがあるわれわれ日本人は、ハリウッド映画化に対し、つねに期待と不安の両方を持って迎える傾向(むしろ不安の方が大きい?)。アメリカや他国では大ヒットしても、逆輸入された日本では、そこそこの成績というケースも目につく。しかし過去の例を振り返ると、意外に年間におけるランクが、全世界と日本では近かったりもするのだ。

まず最大の失敗作と言われているのが……

DRAGONBALL EVOLUTION』(2009年)

世界:5572万ドル(年間97位) 日本:8億6700万円(年間57位以下*)

*日本のランキングは10億円以下の未発表作品があるので暫定順位(以下、同様)

日本武道館で豪華なジャパンプレミアが行われた『DRAGONBALL EVOLUTION』だったが…
日本武道館で豪華なジャパンプレミアが行われた『DRAGONBALL EVOLUTION』だったが…写真:アフロ

鳥山明の「ドラゴンボール」は世界的に人気だが、作品は酷評の嵐だったので、この結果に。

同じく世界/日本とも振るわなかったのが……

ゴースト・イン・ザ・シェル』(2017年)

世界:1億6980万ドル(年間56位) 日本:9億9400万円(年間62位以下*)

原案は「攻殻機動隊」

スピードレーサー』(2008年)

世界:9394万ドル(年間67位) 日本:4億円(年間57位以下*)

原案は「マッハGoGoGo」

ファイナルファンタジー』(2000年)

世界:8513万ドル(年間51位) 日本:10億円(年間43位

原案は同名ゲーム

世界/日本とも、まあまあ上出来の成果だったのが……

2019年、『名探偵ピカチュウ』のアメリカでのプレミアより
2019年、『名探偵ピカチュウ』のアメリカでのプレミアより写真:REX/アフロ

GODZILLA ゴジラ』(2014年)

世界:5億2497万ドル(年間14位) 日本:32億円(年間12位

名探偵ピカチュウ』(2019年)

世界:4億3300万ドル(年間18位) 日本:30億1000万円(年間18位

モンスターハンター』(2020年)

世界:4214万ドル(年間40位) 日本:12億5000万円(年間29位

ゴジラ、ポケモン、ゲームのモンハンと、世界的にも日本国内でもメジャーな人気を長年キープしているので当然の結果か。このあたりは「マリオ」にも通じる。

世界では普通だったが日本で大成功したのが……

バイオハザード』(2002年)

世界:1億0298万ドル(年間50位) 日本:23億円(年間17位

この映画シリーズは回を追うごとに、とくに日本で人気が高まった珍しい例。

逆に日本ではサッパリだったのが……

NYの感謝祭のパレードにも登場するなどソニックはアメリカで人気キャラ
NYの感謝祭のパレードにも登場するなどソニックはアメリカで人気キャラ写真:ロイター/アフロ

アリータ:バトル・エンジェル』(2019年)

世界:4億0498万ドル(年間21位) 日本:9億7101万円(年間64位以下*)

原案はコミック「銃夢」

ソニック:ザ・ムービー』(2020年)

世界:3億0676万ドル(年間6位) 日本:1億7100万円(年間77位以下*)

「ソニック」のように日本のSEGAが作ったゲームキャラクターながら、日本よりも他国での認知度が高かったりと、日本/海外の温度差が映画化の成績にも如実に表れている。

そして、かつてマリオの世界は1993年、ハリウッドで実写映画となっているが……

スーパーマリオ 魔界帝国の女神

北米で2091万ドルで年間74位、日本では配給収入3億円(現在の興収で推定6億円)と大惨敗。作品の評価も惨憺たるものだった。

今回の『ザ・スーパーマリオ・ブラザーズ』は批評家には賛否があるようだが、世界の観客には圧倒的な支持を受け、好結果につながっている。世界興収で最終的に年間トップか、それに近い順位になる可能性が高く、もし日本でも同等(1〜3位あたり)の年間順位になるとしたら、興収100億円くらいの数字が必要となりそう。はたして、どうなるか。日本でも意外なほど大ヒットするのか。

ゴールデンウィークは『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』という、シリーズ初の興収100億円突破が確実視される強力ライバルもいるので、「マリオ」の日本での数字は映画業界としても気になるところ。

さらに『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』と同じく4/28には車田正美の「聖闘士星矢」を基に、日本とハリウッドの共同製作で実写化した『聖闘士星矢 The Beginning』(英題は『Knights of the Zodiac』)も公開される。こちらはアメリカ公開が5/12など他国の数字はこれからなので、日本での初動成績が注視される。

日本発コンテンツのハリウッド映画。なかなか企画が進まないものも含め、今後いくつも待機しているので、完成・公開のたびに大きな話題になることを期待したい。

※文中の興行収入などは、Box Office Mojo、興行通信社の数字を参照

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』

4月28日(金)全国ロードショー 配給:東宝東和

『聖闘士星矢 The Beginning』

4月28日(金)全国ロードショー 配給:東映

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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