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「アバター」新作は日本でどこまでヒットするか。3時間超の上映時間、久々の3D本格体験で果たして…

斉藤博昭映画ジャーナリスト

『アバター』の13年ぶりの続編となる『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が間もなく12/16から劇場公開される。2009年の『アバター』は、3D映像としての新たな体験を届け、映画の歴史に刻まれる作品となった。

あれから13年が経っているが、今なお世界総合の興行収入でナンバーワンの地位を譲っていない。

1位:アバター(2009年) 29億2291万ドル

2位:アベンジャーズ/エンドゲーム(2019年) 27億9750万ドル

3位:タイタニック(1997年) 22億0164万ドル

ちなみにアメリカの歴代順位となると……

1位:スター・ウォーズ/フォースの覚醒(2015年)

2位:アベンジャーズ/エンドゲーム(2019年)

3位:スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2021年)

4位:アバター(2009年)

5位:トップガン マーヴェリック(2022年)

そして日本では……

1位:劇場版「鬼滅の刃」無限列車編

2位:千と千尋の神隠し

3位:タイタニック

4位:アナと雪の女王

5位:君の名は。

6位:ハリー・ポッターと賢者の石

7位:もののけ姫

8位:ハウルの動く城

9位:ONE PIECE FILM RED

10位:踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!

11位:ハリー・ポッターと秘密の部屋

12位:アバター

となっており、洋画では歴代5位である。それでも驚異的なブームを作ったのは間違いない。

2009年の『アバター』は日本での興行収入が156億円。今年、2022年の洋画の1位『トップガン マーヴェリック』が134.7億円なので、数字として改めてそのスゴさが実感できる。

『アバター』は上映時間が2時間42分。今回の『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は3時間12分。ちょうど30分、長くなっている。ここ数年、超大作の上映時間の長さが話題になっており、そこには賛否両論も見受けられる。同じ鑑賞料金で長い時間、楽しませてもらえるメリットと、やはりトイレの問題など生理的な限界のせめぎ合い。一本の映画を観る場合、最初からエンドクレジット終了まできっちり見届けたい、途中で絶対にトイレに立ちたくない、という風潮はある。特に近年は、エンドクレジットの途中やその後にオマケ映像が入っている作品もあるからだ。一方で、トイレを我慢してスクリーンに集中できないなら、数分を見逃してもスッキリして残りを楽しんだ方がいい……という考え方もある。これは一般論だが、日本の場合、他国と比べて「きっちりすべて観なければ」という人が多いような気もする。『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』のジェームズ・キャメロン監督は、この長尺に対して「もしトイレで見逃したシーンがあれば、もう一度観に来てほしい」と語っており、映画を「気楽に観られるか」どうかの判断にもかかってくる。トイレ心配な人は早めに通路側の席を予約した方がいい……かも?

ただ、同じキャメロン監督で、日本で洋画の歴代ナンバーワンを現在も維持する『タイタニック』は3時間14分。また、アカデミー賞11部門受賞で日本でもヒットした『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』は3時間21分で、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』よりも長かった。つまり作品が面白ければ、特大ヒットのポテンシャルはあるということ。劇場側としても長尺の作品は、一日で上映できる回数が必然的に減ってしまうので、興行の難しさはあるものの、そのハンデを撥ねのけるパワーを信じるからこそ、作り手は長い作品を届ける……という見方もできる。

もうひとつのキーポイントは「3D」である。2009年の『アバター』は、3D映画ブームを作った功績も大きい。立体として目の前にとび出してくる感覚ではなく、観客をスクリーンに没入させる効果で、映画の新たな地平を切り開いたからだ。そこが「初めて体験する世界」と驚かせ、大ヒットの要因でもあった。『アバター』を前後して、アクションやファンタジーの大作は、ことごとく3Dバージョンを公開し、そのブームを盛り上げた時期もあった。ただ2022年の現在、3Dを売り文句にする大作は少なくなっている。すっかり過去のブームになった感もある。

そこへきて、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が久々に「3D鑑賞を前提にした大作」として登場する。他の映画とは明らかに違う、新たな映像体験がどこまで今の観客にアピールするか。マスク着用のうえに3Dメガネは、もしかして負担に感じてしまうのか(個人的には、そろそろ映画館での鑑賞時のマスク着用お願いは不要と感じる)。このあたりは、公開されてからの反応が気になるところ。「アバターの3Dは、やはり特別なもの」という評価が改めて広まれば、大ヒットの道筋が見えてくるだろう。

ここ数年、作品をどんな環境で観るのかこだわる映画ファンも増えており、『トップガン マーヴェリック』でもIMAXや4DX、日本語吹替版など多様なバージョンで楽しませる公開形態がヒットを後押しした。『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』も迫力のIMAXレーザーや、より滑らかで美しいハイ・フレーム・レートなど、同じ3Dでも差別化されたバージョンで、大ヒットのカギとなるリピート鑑賞を喚起する。

当面の目標は大ヒットの指針となる興収100億円で、そこから『トップガン マーヴェリック』の134.7億円、そして前作『アバター』の156億円と目標が高くなっていくことが望まれる。12月公開作品は基本的に翌年の集計対象なので、2023年の映画興行収入で『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』はどんな位置になっているか。その予想はしばらく先のことになる。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』

12月16日(金)全国劇場にて公開

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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