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今度こそ本当に公開される? 信じていい? 1ヶ月後に迫った「007」最新作

斉藤博昭映画ジャーナリスト
ダニエル・クレイグのボンドも、ついに見納め。ようやくスクリーンで目撃できる?

10/1(金)、世界最速で日本で公開される『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』。この『007』最新作に関しては、何度も何度も公開延期がアナウンスされ、「もうこのまま劇場で観られないのでは?」などとファンの悲痛な声も上がったりしていた。

実際に延期が重なる間に、Netflixなどでの配信直行の可能性も取りざたされたり、シリーズの権利を有するMGMの負債が積み重なったことで、売却が模索されてアマゾンが買収するなど、先行き不安なニュースが流れ続けた。

ここ数ヶ月、ハリウッドの大作も劇場公開され始め、『007』もようやく公開を迎えられそうだ。しかしそのような状況にあっても、本当に公開に行き着くのか不安を感じさせるニュースを引き続き、見かける。

新型コロナウィルスのパンデミックが一定の落ち着きをみせ、アメリカで映画館がオープン。ハリウッド大作の興行もとりあえず復活の兆しを見せているものの、デルタ株の広がり、アメリカではワクチン接種の頭打ちなどで、パンデミック前に期待されていた数字には及ばない作品も目立つ。

8/16の業界誌、バラエティの記事にも、『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』や、パラマウントの『トップガン/マーヴェリック』(11/19日米同時公開)、マーベルの最新作『エターナルズ』(11/5日米同時公開)あたりが、この2〜3週間、つまり9月頭まで公開について悩み抜くのではないか、と伝えている。これらの作品は、観客が完全に映画館に戻ってくる時期を、ずっと狙っていたからだ。

しかし、『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』は、9/28にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでのワールドプレミアと記者会見が決定。『007』のプレミアには英国王室も出席したりする大掛かりなもの。さすがに今回は王室の列席がなさそうにしても、ここまで準備万端に整えたのは、過去の公開延期時にはなかった。さすがにこの一大イベントはキャンセルされないはずで、そうなれば順調に公開日にたどり着けるはず。

これまでの『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開予定と変更を改めてたどると……。

2018/9/20

全世界公開が、2020/2/14と発表されたが、その後、同年の4月に変更。

2020/3/10(1回目の延期)

コロナのパンデミックが世界に広がり始め、4月の公開を11月に延期することが決まった。

(それに先立つ2/17には、すでにコロナ禍に突入していた中国でのプレミアの中止が発表された)

これに伴うように、同年5月以降の話題作『ブラック・ウィドウ』、『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』も延期。

2020/6/17

全米および日本で11/20の公開が決定。イギリスでは11/12公開。

2020/10/3(2回目の延期)

11月の公開が延期されると発表。その2日後、4/2に公開日が決定。

2021/1/20(3回目の延期)

秋に再々延期の噂が流れ、その2日後、10/8全米公開、日本が10/1公開に決定。

このように振り返ると、コロナに無関係な最初の微調整は別として、3回目の延期は公開の2ヶ月半前に決まっているが、1回目と2回目の延期は約1ヶ月前というギリギリのタイミングで発表された。今回も公開まで間もなく1ヶ月前。それゆえにメディアも「もしかしたら」と疑心暗鬼にかられるのだろうが、ここ数日で何も正式発表がなされなければ、無事に公開となるだろう。

当初の公開予定から、なんと1年8ヶ月

『ワイスピ』や『ブラック・ウィドウ』も1年ちょっとで何とか公開にこぎつけ、とくに前者は日本でも大ヒットを記録している。

ファンは待っていてくれるのだ

しかしあまりに延期が続くと、観たい欲求も薄れてしまうリスクもはらむので、『007』はそろそろ限界の段階だろう。

ダニエル・クレイグの最後のジェームズ・ボンド役。しかも『ボヘミアン・ラプソディ』のラミ・マレックとの共演。ここまで待たされた観客の期待をどこまで超えてくれるか。ようやくお披露目の瞬間がカウントダウンされる。

『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』

10月1日(金)、全国ロードショー

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映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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