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「100億円×3本」は記録的!? 2019夏映画の興行。さらに4本目も出るか

斉藤博昭映画ジャーナリスト
今年3本目の100億円が見えてきた『トイ・ストーリー4』

映画の興行収入100億円。これは日本におけるメガヒットの目安である。

100億円を超える作品は、一年にだいたい1〜2本。年によっては、1本も到達しないケースもある。ちなみに昨年は『ボヘミアン・ラプソディ』の1本のみ。

しかし2019年は、夏の映画だけで3本が100億円超えという結果になりそうだ。もしかしたら4本という可能性も残っている。大ヒットを予想された作品が、期待どおりの数字を記録し、さらに予想外に観客を呼び込んだ作品も現れ、「メガヒット祭」と呼んでもいい活況を呈したのである。

8/25の週末までの数字で、6/7公開の『アラジン』が120億円を突破。7/19公開の『天気の子』が107億円、そして7/12公開の『トイ・ストーリー4』が93億円で、おそらくギリギリ100億円は確定的。さらなる可能性として、8/9公開『ライオン・キング』が公開3週目で46億円でまだまだ数字を伸ばしている。

『トイ・ストーリー4』が公開3週目で55億円だったことを考えると、『ライオン・キング』の100億円到達はやや厳しそうだが、英語版と吹替版を観比べるリピーターも増え、学校の夏休みが最終盤というハンデはあるものの可能性はゼロではない。

まだまだ記録を伸ばしそう。次の目標は200億円?(C)2019「天気の子」製作委員会
まだまだ記録を伸ばしそう。次の目標は200億円?(C)2019「天気の子」製作委員会

サマームービーだけで100億円3本というのが、どれくらいスゴいのか? これまでの年別の100億円超え作品を振り返ると……

2018年:1本(ボヘミアン・ラプソディ/129億円)

2017年:1本(美女と野獣/124億円)

2016年:2本(君の名は。/250億円、スター・ウォーズ フォースの覚醒/116億円)

2015年:0本

2014年:1本(アナと雪の女王/254億円)

2013年:1本(風立ちぬ/120億円)

2012年:0本

2011年:0本

2010年:3本(アバター/156億円、アリス・イン・ワンダーランド/118億円、トイ・ストーリー3/108億円)

2009年:0本

2008年:1本(崖の上のポニョ/155億円)

2007年:1本(パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド/109億円)

2006年:2本(ハリー・ポッターと炎のゴブレット/115億円、パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト/100億円)

2005年:1本(ハウルの動く城/196億円)

2004年:4本(ラスト サムライ/137億円、ハリー・ポッターとアズカバンの囚人/135億円、ファインディング・ニモ/110億円、ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還/103億円)

2003年:3本(踊る大捜査線 THE MOVIE 2/173億円、ハリー・ポッターと秘密の部屋/173億円、マトリックス リローデッド/110億円)

これ以前も年に0〜2本。1992年より前は100億円作品は出ていない(配給収入からの想定計算で)。

こうして振り返ってみても、一年に3本が100億円を超えるケースは珍しいことがよくわかる。しかも今年は夏だけで3本。4本が100億を超えた2004年も、お正月映画2本、春休みと夏休み1本ずつとバラけていた。

では2019年の夏、他の作品があおりを食ったかというと、確かに爆発的ヒットはないものの、どれも想定内の数字を獲得している。

ワイルド・スピード/スーパーコンボ』は30億円超え確実。シリーズ前作『ワイルド・スピード ICE BREAK』は40.5億円だが、今回はスピンオフなので、この成績は上々。

ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』も30億円を超えそう。そうなると昨年の『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』の30.9億円も上回る。GWの実写版『名探偵ピカチュウ』のヒットも追い風になったようだ。

そして『ペット2』も間もなく20億円。こちらも前作の42.4億円は難しそうだが健闘の数字。

劇場版おっさんずラブ LOVE or DEAD』もスタートダッシュに成功した。

ただ、こうして見ると、サマームービーなので仕方ないとはいえ、『天気の子』以外は、すべてシリーズや続編、ドラマの映画化、ディズニーの再映画化などばかり。『天気の子』も『君の名は。』に続く新海誠作品という流れであり、純粋にオリジナルの『ロケットマン』、『ダンスウィズミー』などは期待を超える数字を達成していない。これはアメリカ市場でも言えることで、この夏のメガヒット作品のほぼすべてがシリーズものである。もはや、映画界のこの流れは「常識」となっている。

『ライオン・キング』の今後の数字が気になるところ。(C) 2019 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
『ライオン・キング』の今後の数字が気になるところ。(C) 2019 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

そしてこの後、2019年内に、さらに100億円超えの可能性がある作品がある。11/22公開の『アナと雪の女王2』だ。ただ、こちらは2020年作品の対象になる可能性がある。お正月映画の大作として来年まで続映されるからだ。過去に『ファンタスティック・ビースト』の2作は11/23公開ながら、翌年の対象になった(今年末の『スター・ウォーズ』新作も2020年対象)。というわけで「アナ雪」の続編が2019年対象という扱いだったら、今年は4本の100億円超え作品という2004年以来の快挙である。

また、『ライオン・キング』が予想を覆したり、昨年の『ボヘミアン・ラプソディ』のような思わぬ社会現象を起こす作品が出現すれば、100億円×5本という新記録も達成されることになるのだが、はたして……。

『トイ・ストーリー4』 (C) 2019 Disney / Pixar. All Rights Reserved.

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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